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2022/06/12

自由英作文(その4)求められる4つの力ー①問題文を正確に読む力

自由英作文に求められる4つの力

ーー①設問文を正確に読むーー

 

日本の大学入試の自由英作文は、きらりと光る才能を見せるような試験ではありません。むしろ、巷に転がっている、典型的だったり凡庸だったりする意見を、そのまま提示しさえすれば、それで満点が取れるはずの試験です。

 

しかし、実際高校生に教えていると、狭義の英語力というよりは、その生徒の思考力や教養力など、総合的な能力が問われる試験のように思えてきます。

 

 

たとえば、「老人の自動車免許返納制度に賛成か、反対か。立場を決め、その理由を述べなさい」という課題があったのですが、ある生徒は「老人は不注意だから免許を返納すべきだ」という立場で自由英作文を書くことになったことがあります。しかし、「不注意」という言葉の内容を具体的に説明することが全く出来ませんでした。これでは自由英作文は書けません。

 

英語の表現が浮かんでこないのではありません、日本語でも一切具体的な事例を出せなかったのです。つまり、「老人は不注意だ」という命題の具体例、たとえば、「老人はアクセルとブレーキを踏み間違える」とか「老人はブレーキを踏み遅れる」といった事例を挙げられなかったのです。

 

おそらく日頃からニュースを見たり聞いたりしないのでしょう。このような生徒の場合、自由英作文では完全にお手上げ状態になってしまうわけです。

 

 

一流大学合格のための自由英作文で求められる能力

 

英検準一級レベルあるいはGMARCHや上智大のレベルを超える自由英作文、つまり、慶應(経済・医)や早稲田(政経、法)、旧帝大や東大・一橋に合格できるような自由英作文を書けるようになるためには、何が求められているのでしょうか。

 

 

ここで私は、内容的にもしっかりと読める自由英作文を書くための能力として、

 

問題文を正確に読む力

抽象語と具体語を行き来する力

物事を抽象化したり、原因や理由を考える力

文と文との「飛躍」に気付く力、また適切に並べる力

 

 

という4つの能力を挙げてみたいと思います。

 

 

  1. 問題文を正確に読む力ーー与えられた設問に対して早合点せず、丁寧に正確にその意図を読み取る能力
  2. 抽象語と具体例ーー空虚で無内容な抽象語に逃げ込まず、有意義な抽象語(や概念)とその具体的事例を往復する能力。
  3. 抽象化ーー物事を抽象化したり、その理由や原因を考える能力
  4. 文と文との「飛躍」に気付く力ーー英語の文と文との間で、話題が予告もなしに突然「飛躍」していないか、検証して気が付く能力、さらには英語的に適切な順番で並べる力

 

 

今回は①について詳しく説明しておきたいと思います。

 

①問題文を正確に読み取る力

 

問題文を読み取る力が大事だなんて、当たり前のことじゃないかと思われるかもしれません。しかし、自由英作文においては、(実は他の教科においてもですが)、この当り前のことを実行するのが実に難しいのです。非常に多くの生徒・受験生が、問題文を読み損なってしまい、的外れな回答を書いてしまっています。

 

 

なぜそういう事態が起きるのか。おそらく、英文を書こうとすると、ある種の興奮状態に陥っているので、冷静な判断ができなくなり、勝手に「これだ!」と早合点をして、決めつけてしまうのだろうと推測しています。いくつかの事例を具体的に取り上げてみましょう。

 

 

まず、前々回のブログ(英作文の学習ルート(3)自由英作文(その3)英検と慶應(経済)の間、当塾の英作文添削事例から」について簡単に振り返ってみます。問題文は「現代社会で幸福な人生をおくるためには、どのような技術を身につけるべきか」という問でしたが、受験生は「現代社会において必要な能力は何か?」であると短絡的に理解し、誤解してしまいました。結果、「自分で考える力」(=思考力)の習得が大事だというやや的外れな回答になってしまったのである。(もちろん、自分で考える力が大事だ、という筋でそのあとを論理的に正しくつなげていけば問題ない英文を書きうるのですが、それは出来なかったのです。)

 

 

他の事例を取り上げてみましょう。

 

 

「なぜ貴方は慶應大学医学部の学生として受け入れられるべきなのか」

2022年度の慶應大学医学部の設問は「なぜ貴方は慶應大学医学部の学生として受け入れらるべきだと思うか」というものでした。ところがある受験生は、「なぜ貴方は慶應大学医学部に入学したいのか」と読み間違えてしまいました。結果、自分の優れた点をアピールする場なのに、慶應大学医学部の優れた点を書き連ねるという大失策を犯してしまったのです。

 

間抜けな話のようですが、自由英作文問題においては非常に多い典型的早合点です。自由英作文を書く際には、どんなに急いでいても深呼吸をし、問題文をしっかりと読み返し、問われていることの核心をしっかりとつかむということを肝に銘じておくべきです。

 

 

「自分が映画に出るとしたら、どういう役割をしたいか」

もう少しやや面倒な早合点の事例を、インターネットから紹介しましょう。

 

 

河合記述模試の結果が帰ってきたのですが、英語の自由英作文の採点基準がわかりません。配布資料には「簡単な英文には高得点はあげられない」と書かれていましたが、指定の字数も守りましたし、内容にも変な事は書きませんでした。しかし、部分点すらなく、自由英作文は0点でした。以下、内容です。

 

Q.もし自分が映画に出るとしたら、どういう役割をしたいか。理由ともに30文以上で述べよ

 

A.I want to

perform a main cast.

(=>play a leading role).

 

This is because

if I became

a famous person,

I would get 

a (削除big money.

 

Being rich, I could help

my parents do anything

they want to do.

 

赤字は当ブログで付け加えた添削・修正案です)

 

 

なぜこの自由英作文は0点だったのでしょうか。

 

よく問題文を丁寧に読み直してみましょう。すると、設問に対する答えとしては不適切だと分かります。

 

というのは、設問で求めているのは、映画でどのような「役割」を演じたいかだったのに、回答では「主役」を演じたいとしか書いていないからです主役だろうが脇役だろうが、もっと具体的に「どんな役」かを述べなければ設問に答えていることにならない訳です。

 

 

もう少し分かりやすく説明します。例えば、以前NHKで「正直不動産」というTV番組があったのですが、もし主役はどんな「俳優」かと問われたら、ジャニーズ出身の山下智久で、彼が俳優としてどうなのかを説明しなければなりません。しかし、この番組の主役が演じた「役割」を尋ねられるのならば、「嘘をつけなくなった不動産営業マン」と答えるでしょう。問いによって答えは大きく変わるのです。

 

 

要するに、「映画でどんな役割を演じたいのか」という設問ならば、刑事役、大泥棒、怪獣退治をする人、戦国時代の武将、恋愛する大学生をやってみたい等々と答え、さらにその理由をつけ加えなくてはなりませんでした。有名な俳優になって金儲けして云々を書いてしまっては、的外れ答案だと言うことで減点されるのも当然でしょう。(とはいえ、0点は少々厳しすぎる採点かもしれませんね)。

 

 

「諺の『郷にいれば郷に従え」について意見せよ」

 

次もインターネット上の自由英作文(添削希望者)です。設問について重大な勘違いをしています。

 

kotowaza

 

 

Q. 「『郷にいれば郷に従え』についての意見を述べよ」

 

A、I agree with the idea

( +when in Rome,

do as the Romans do”

 

Answerにも、諺を書いておくこと) .

 

Because (because の位置を変えること。注釈で説明する)

I think that

 

proverbs is

(=>are) true.

 

Proverbs

was(=>were) made

 

by old people

(=>ancient people)

 

old peopleでは「老人」になってしまう)。

 

and has

(=>have)

 

been used

 

for many years.

 

In fact, when I went

abroad,

 

I did as people did.

 

So it went well.

 

 

訳 (私は(+「郷に入れば郷に従え」という)考えに賛成だ。諺は真実だと思う(because「からだ」は削除すべし)。諺は昔の人によって作られ、長い間使われてきた(+からだ because は次の節の先頭に置くと良い)。実際、私が海外に行った時、私は人がするようにした。だからうまくいった)。 (赤字は添削の加筆または修正案)

 

 

[注]

アンダーライン部は意味が通らないので、becauseの位置を次のように変えると良い。

 

Because I think that proverb

 

is true. Proverb was made

 

by old people

 

and has been used

for many years.

 

 

=>==>

 

 

I think proverbs are true

 

because they were made

 

by ancient sages

 

and have been used

 

for many years.

 

(諺は、古代の賢人たちによって作られ、長年の間活用されてきたので真実だと思う。)

 

 

 

英文の文法的・語法的ミスは上記のように少々手直ししてみましたが、内容面では大きな勘違いが残っています。

 

というのは、そもそも諺というのは、数学の公理のような普遍的真理ではないので、いつでもどこでも成り立つような命題ではありえないからです。当然のことながら、問題を出す側も「いつでもどこでも成り立つ普遍的真理であると証明しろ」と命令したりしません。

 

ところが設問について早合点してしまい、「諺だから真理だ」と的外れな方向に議論を進めてしまいました

 

 

もう少しこの人の答案を丁寧に読んでいきましょう。まずこの諺について、「賛成だ」(I agree with the idea)とまず立場をはっきりさせました。これ自体には大きな問題ありません。(本当は、限定付きで賛成すべきでした)。しかしその理由として、諺は長年の間受け継がれてきたので、「真実だ」(true)だと論じてしまいました

 

諺について、特定の留保なしに諺の全てを真実だと述べるのは、設問者の意図を完全に読み間違えたと言って良いでしょう。

 

 

何故こんなことになったのか。

 

この回答者は、英文を書くときには「抽象→具体」の順番に並べるのだと習って知っています。だからまずは抽象的命題を立てようと焦ったのでしょう。そして「諺だから真実だ」という命題を思いついたので、全く吟味せずに、これならば抽象的な命題としてピッタリだ、と早合点してしまったのでしょう。しかし、諺を論じるのに適切な切り口ではありませんでした。

 

①「問題文を正確に読む力」をまとめます。自由英作文では設問についての早合点、早呑込みが本当に多発しています。普段以上に丁寧に設問文をよく読み返し、ズバリその核心をしっかりとつかみましょう。

 

 

 

なお諺と似たようなモノとしては、古典文学等がある。古典文学も同様に長い年月読まれ続けた作品ですが、通常、「真実」や「真理」がそこにあると評価したりはしません。むしろ、「今なお読むに値する」とか「優れた作品」だという具合に評価します。

もっとも「真実だ」と評価される、古から伝えられた文書がない訳ではありません。キリスト教やイスラム教の宗教的原理主義者が想定している「聖書」がその例です。しかし、今回はそういう類のものではありませんね。

 

 

因みに、上記の問題では、与えられた諺に対してどのように応答すればよかったのか。

 

諺というのは、ある特定の条件において役に立つ(或は、役に立たない)アドバイスなのですから、真実だと切り出すのではなく、特定の条件で有効だと述べるべきだったのです。この人の場合は、海外旅行で役に立ったと後で書いているのだから、むしろこれを最初に持ってくるべきでした。例えば、こんな具合にしてみましょう。(when 以下がある特定の条件です)。

 

I like the proverb

 

“When in Rome,

 

do as the Romans do”

 

very much

 

especially when I go

 

to foreign countries

 

whose local customs

 

are different from

 

those of Japan.

 

(私は「郷にいれば郷に従え」という諺は、日本と習慣の異なる国に行くときに大変役に立つと思います)。

 

さらに具体例としては、

 

For example, when I went

 

to Bali, a very hot country,

 

I wore long pants

 

as people there do.

 

That was why I was welcomed

 

at the temples

 

while those in short pants

 

were not.

 

などと加えられると良かったのです。

 

 

或は、逆にこう書くこともできるでしょう。

 

I do not like

 

the proverb

 

“When in Rome,

 

d

 

as the Romans do”

 

very much

 

 especially when

 

an organization

 

or a society

 

needs transformation.

 

Let us imagine newcomers

 

who do not do

 

as the local people do.

 

I wonder if

 

they might be able to

 

be catalysts for change.

 

(この諺は、組織や社会が変革を必要しているときにはあまり好きにはなれません。というのは、地元の風習に従わない新入りが社会変革の触媒の役割を担ってくれる可能性があるからです)。

 

 

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