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塾ブログ 林間教育通信

2016/08/05

オバマ大統領の広島演説に吠える!

 

 

8月になりました。先日のブログでオバマ大統領の核廃絶に関する演説の一部を取り上げましたので、それに関連して今回は広島でのオバマ大統領の冒頭部分を少し取り上げて、ちょっと公開授業をしてみましょう。生徒は中2のAさん(架空)です。

 

 

 

オバマ大統領広島演説冒頭部分

 

Seventy-one years ago on a bright, cloudless morning, 

death fell from the sky and the world was changed. 

 

A flash of light and a wall of fire destroyed a city, and 

demonstrated that mankind possessed the means to destroy itself. 

 

非常によく練られた、といいますか、「考えたな」という‟工夫”が感じられる文章ですね~。

 

先生「はいAさん、最初の文にはandがありますが、これはどことどこを等位接続していますか?」

 

Aさん「death fell from the sky とthe world was chagedという節と節を等位接続しています。

 

先生「正解!では訳してみてください。」

Aさん「71年前、明るく雲一つない朝、死が空から落ちてきて、世界は変えられた。」

 

先生「よろしい。で、このdeath(死)とは何を指しているんですか?」

Aさん「原子爆弾のことですよね!?」

 

先生「正解!」

Aさん「でも先生、原子爆弾って勝手に空から落ちてくるんですかぁ?」

 

先生「んなわけないでしょ、あなた。公開授業だからって、んもう、なかなかいい突っ込みするんだからぁ、先生うれしい!」

 

 

 

先生「で、the world was changed.の文の形はなんですか?」

 

Aさん「はい、これは受け身の文です。でも先生、受け身の場合よく後ろの方にby~って、行為主体者が出てきますけど、これにはありません。確か、一般の人々だとか、不特定多数の人々の場合には省略されるって習ったんですけど、この場合もそういうのですか?」

 

先生「どう思う?」

Aさん「・・・。」

 

先生「受け身の文の場合、by~というところを省略すれば、いくらでも犯人、じゃなくて、行為主体者を隠す、という文を作ることができるということですね。自分に非があるけれどそれを隠したい場合=犯人隠しをしたい場合にはどんどん受け身の文を使いましょう!・・・はい、では次の文を訳してください。」

 

Aさん「閃光と炎の壁が、ある一つの都市を破壊し、人類が人類自らを破滅させる手段を手に入れたということを証明した。」

 

先生「よろしい。カンマの後ろのandはどことどこを等位接続してますか?」

Aさん「destroyedとdemonstratedというところ、動詞と動詞を等位接続していま~す。」

 

先生「よろしい。では共通の主語があるということですね、共通の主語は何ですか?」

Aさん「はい、a flash of light and a wall of fire です。」

 

先生「そうですね。」

Aさん「ってことは先生、閃光と炎の壁が、人類を破滅させる手段を手に入れたということを証明した、ということになるんですね?」

 

先生「そういうことになるね。」

Aさん「なんだか文学的な表現というか、比喩的というか・・・、凄く恐ろしいことを美しくまとめたような文章ですね。」

 

先生「あらあなた、なんて鋭いことを言うの。いい感性してるわね。じゃあさらに、同じことを他の言い方もできるという勉強もしてみましょう。

 

ちょっとネットで検索していると、Miami Heraldという新聞の記事の中にこんな表現があったのよ。

 

 

 

Nearly 71 years after the United States dropped the world’s first atomic bomb, President Barack Obama made an unprecedented journey here to offer a solemn tribute to the tens of thousands of victims and to amplify his quest for a world without nuclear weapons.
(Read more here: http://www.miamiherald.com/news/nation-world/world/article80257192.html#storylink=cpy)

 

下線部分に、「アメリカが世界で初めての原子爆弾を落とした約71年後に~」とあるわよ。

 

 

The washington Postにもこんな文があったわよ。

 

President Obama became the first sitting U.S. president to visit Hiroshima Friday. Nearly 71 years after the U.S. deployed an atomic bomb on the Japanese city, Obama called for an end to nuclear weapons and offered respects to the victims. 

 

deployという単語は「~を配置する、活動させる」といったような意味ですので、まあ、やはり上と同じような表現になっていますね。

 

つまり、(・・・オッホン、ここはあくまでも英語の授業らしく)オバマ大統領の演説では、the U.S.という主語とan atomic bombという目的語を使わない表現を、ーですから当然動詞も自動詞の表現をー(敢えて)なさったということですね。当事者でありながら非常に距離をおいた表現で、巧妙にごまかしています。(しつこいかしら?)

 

しかし当時の日本の新聞等の報道によると、多くの広島市民、そして多くの日本国民はオバマ大統領のあの美しい演説を歓迎し、中には感動の涙を流す人々も少なくなかったとか・・・(一体何に感動したんだろうか?)

 

余談ですが、例えば、キューバの革命家チェ・ゲバラは革命政権成立直後に広島を訪れ、「君たちはアメリカにこんなひどい目に遭わされて、怒らないのか」という言葉を残されたそうです。(はい、日本人はみんな(正確には「多く」が)温和な人種なんです、はい!)

 

 

次は広島ではなく、長崎の被爆者、谷口稜曄(すみてる)さんの数年前の言葉です。(谷口さんは長崎原爆投下で背中に大やけどを負い、その写真は長崎原爆を象徴する代表的なものとなっています。)

 

 

(私にとって)「生きる」とは「苦しみに耐える」ことに他なりませんでした。私たち被爆者は全身に原爆の呪うべきつめ跡を抱えたまま、苦しみに耐えて生きています。 」

 

 

生きるというのは誰にとっても苦しいことがあるのでしょうが、谷口さんのような方が口になさる「苦しみに耐えて生きています」というその言葉の重み・決して癒されることのないその苦しみを思う時、私個人としては、あのオバマ大統領の、美しく整えられた言葉をどうしても受け入れることが出来ません。

 

 

おいテメエこの野郎、ごまかすんじゃねえぞ、とヤジの一つも飛ばしたいくらいです。

 

原爆資料館を見ることもなく、前もって用意されたあんな美しい言葉で延々と核廃絶を訴えられても、虚しいばかりで、怒りも悲しみも全く癒されませんでした。あんな時間があるならば一分でも一秒でも長く原爆資料館に身を置き、オバマ大統領がおっしゃるところの、雲一つない晴れ渡った朝に起こしてしまった、あまりにも非道な、残酷極まりない暗黒の世界に、自らの身を置いて欲しかったです。

 

炎や熱風に襲われて、見る影もないほど真っ黒焦げになってしまった人々、水をくれ助けてくれ、と苦しみ喘ぎながら逝ってしまった人々の無念、今なお原爆の爪痕を背負わされながら生き続けている人々の、筆舌に尽くせぬその人生の苦しみを、少しでもいい、オバマ大統領の心に重ねて、そして傷んでほしかったです。

 

普通の神経を持った人ならば打ちひしがれるはずです。そのオバマ大統領の姿を見せてくださった方がよほど心が(少しは)救われたと思います。

 

 

 

・・・あら、Aさん、ごめんなさい、私熱く語りすぎてしまったわね。ちょっと途中でうっかりお下品な言葉まで出ちゃったけど・・・。でも、世の中の様々な出来事を題材に勉強するってこと、大切よ。それが本当の勉強よ。机の上でばかりベンキョウしていても、薄っぺらい知識しか身につかないのよ。(っていうか、身につくか?)広島長崎の原爆資料館なども是非訪れてみて。あなたの人生観そのものが変わるかもしれないわよ。」

 

Aさん「zzz…」

 

(終わり)

 

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