昨今は、雑誌の特集号のテーマとして、しばしば英語特集号が組まれます。先日、ふと読売新聞の広告を見ると、2017年の『PRESIDENT 2017年4.17号』は、「『中学英語』でぺらぺら話すーー世界が証明◎1500単語で大丈夫」というものがありました。
もちろん、いくら何でも、中学英語と1500単語だけで、一流会社のビジネスマンが世界を渡っていけるとは思えません。ましてや、「学生、新入社員、部課長も必読!」を唄って売り込むのは、少々残念で情けない話です。しかし、「中学英語」で英語がぺらぺらだとか、1500単語で大丈夫だかいった宣伝文句も、一面の真理があることは、やっぱり否定できないのです。我々はどんなことを読み取れるのでしょうか?
(1)中学英語で英語を話せるようになるというのは、ホントです。
まず、中学英語をしっかりと学べば、潜在的には英語を「ぺらぺら」話すことくらいは可能だということです。たしかに英語が良くできると言われる中学生であっても、普通はほとんど全く話せないわけで、中学英語でぺらぺら話せるという話はちょっと信じがたいことですね。しかし、中学英語で習う文法力と1500語程度の初歩的な語彙力を身につけるだけで、とにかく最低限のサバイバル英会話をこなすことはできるというのは、本当のことなのです。
もちろん、高度な話題や複雑な内容は話せませんし、ましてや大人の日常会話をこなせるわけではありません。しかし、海外旅行に出かけてショッピングをして交通機関に乗ったり、現地の人や他の観光客とやり取りしたりすることくらいならば、全く問題無いでしょう。また、英検準一級やTEAPの英語の面接で合格点をとるだけならば、中学英語で充分にお釣りが来るはずです。
中学英語には、それなりの潜在力があるということですね。
(2)日本人は、エリートビジネスマンも、一流大学の大学生も、英語力が世界的に見て著しく低いという現実がある。そしてその理由
それにしても、「学生、新入社員、部課長」を相手に、有名ビジネス誌が「中学英語レベルの英会話力を養いましょう」と謳っているのは、いったいどういうことでしょうか。
現実を直視して申し上げましょう。一流企業に勤めているエリートビジネスマンの英語力は、著しく低い人が多いということなのです。だから、「中学英語」を再学習しましょうと提案せざるをえないのです。
一流企業のサラリーマンの英語力が低いとは、どういうことを意味するのでしょうか。英語塾講師として勇気を持って述べれば、大学の英語教育が優れていないばかりか、日本の大学の英語入試のレベルも、あまり高くない、いやむしろかなり低いということなのです。中学英語、つまり基礎的な英語力が大事なのはその通りですが、それを強調せざるをえないというのは、我が国の入試英語のレベルが高くないからなのです。
いったいどういうことか、と思われる方が多いでしょう。東大や早慶の英語は難しくないのか?とびっくりされる方もいることでしょう。たしかに早慶や東大の入試英語の大変なことはまことにその通り確かです。入試問題を教える側だって、ふうふう言いながら解いています。とにかく問題文の量が異様に多く、スピードが要求されます。また、紛らわしい選択肢も多い。ちょっとした苦行であることは間違いありません。
しかし、問われている英語力がすごく高いかというと、必ずしもそういう訳ではないのです。ここでは、試験内容について詳しく触れるのは避けますが、東大英語ですら、リスニングは甘く(同じ文章を2回も読み上げる)、本格的な長文ライティング課題はなく、スピーキング試験は全然ないといった具合です。
けれども、私がここで本当に書いておきたいのは、もっと直感的に理解できる、英語学習や大学受験勉強の、とてつもない大事な話(=秘密)です。
ずばり、申し上げましょう。東大や京大(ただし理3や医学部をのぞく)に合格する程度の英語力でよいのであれば、中高六年間もかける必要はないのです。個人差はありますが、正しいやり方で真面目に取り組めば、3ー4年程度で達成できます。また、早慶の文系上位学部(早大政経学部、慶大経済学部など)ならば、2年間くらい集中学習すれば間に合います。早稲田の下位学部やGMARCHで良いならば、1年でも不可能ではありません。
(念のために付け加えておきますが、文系学部であれば高い日本語の読解能力、理系科目であれば高い数学の力があることは、大前提です。あまり勘違いもしてほしくはありません。もし文系志望のお子さんがいらっしゃるのであれば、高1年生の段階で志望大学の英語長文問題の和訳を読ませてみてください。もし、ちんぷんかんぷんであれば、その大学は問題外なのかもしれません。和訳を読んで分からないのであれば、英語で理解することはまずは不可能だからです)。
実際、当塾出身のOくん(相模中等)の場合は、中学の三年間は英語学習をさぼりましたが、後半の高校三年間でがんばりましたので、京都大学には英語を高得点で合格できました(点数開示による)。中田くん(浅野)は、最初の中学二年間は完全に英語学習を放棄していましたが、中学三年生の一年間は当塾でしっかりと学び、学年トップレベルの英語力になることができました。残念ながら、その後は再び怠けてしまい停滞してしまいましたが、受験最後の半年くらいは集中力を発揮し、結局は早稲田の政経学部に合格することができましました。本当に真面目に勉強したのは、2年間程度だったのです。
以上のことから何が分かるか?
中高で英語学習をさぼっていても、一流大学に合格できてしまう。だから、多くの一流大学卒業生は、中高生時代には英語の勉強を時々あるいは長期的にサボったりしながら、乗り越えた人が多いのです。社会人になってから英語力がないと日本人が嘆いてしまう本当の理由は、実はこういうところに秘密があったのです。
もっとも我々は、みなさんに、「英語学習はサボりながらやっても平気ですよ」なんて、サボりのススメをしているのでは決してありません! むしろ、英語学習の現状を踏まえ、英語学習の積極的戦略を考えていくことを提案していきたいのです。