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2017/06/21

進路指導について

高校生くらいになると、生徒の皆さん(と親御さん)には、それぞれ行けたらいいなという具体的な志望校が出てくる方が多いかと思います。ただ、客観的にみると、その志望校の選び方が非常に非合理的な場合があります。

 

例えば、本はほとんど読んでいないのにもかかわらず、国立大学の文学部を志望したり、どう見ても国語が苦手で数学が得意なのに、外国語系の大学を志望したりと、自分の得意不得意と関係なく、志望校を決めてしまうケースがあります。

 

もちろん、得意不得意に関係なく、絶対にこの道を進みたいのだ!という強い信念がある場合は、とことんその道を追及するという選択肢もあり得るとは思います。しかし、多くの場合は、そこまでの強い意志があるわけでもなく、ただ漠然と、あるいは、学校の先生の全体に向けた話を自分にそのまま当てはめて、「そうしよう」と決め込むケースが多いように感じます。

 

 

大手予備校では、チューターと称する現役の大学生(あるいは経験の浅いスタッフ)等が受験生の学習や進路に関するアドバイスをすることが多いようです。本人の希望を聞きながら、模試の成績表にある数字(偏差値)と突き合わせて、アドバイスをなさるのでしょう。しかし、彼らにとって「あなた」はone of themでしかありません。また、直接「あなた」を教えているわけではないので、「あなた」がどんな強みや弱みを持っているのかといったことを、肌感覚では全く分かっていないはずです。私たちからすれば、それでどうやって「あなた」に対して本当に実のある有益なアドバイスができるのか、全く不可解です。

 

 

生徒や保護者のみなさんには、どうぞご自分たちに耳触りのよい意見ばかりを鵜呑みにしないように、お願いしたいところです。

 

ここで、私どもの経験のいくつかから、残念な例を挙げておきましょう。

(その前に、注を入れなければいけませんが、結果として、本当に残念な例というわけでもないところが、皮肉と言えば皮肉です。つまりは、本人の本来持っている本質にぴったりの、納まるべきところに納まったという見方もできるからです。)

 

 

ある生徒さんは、高2の段階で、英語と数学がなかなかの好成績(河合塾模試偏差値70越え)でした。私たちも、早稲田や慶應の理工学部あるいは東工大に進学してくれるものだとばかり思っていたわけですが、ある時突然、文学部を狙うと言い出しました。最初は早稲田の文化構想学部でしたが、次第に東大の文学部志望だと言い張るのです。就職に不利な文学部系の学部を、雑誌・新書本も読まないし、論説文や評論文にも縁がない生徒が目指すというのは、信じらない選択です。やむを得ず、池上彰から読んでみるようにアドバイスしましたが、文学部志望の高校生が池上彰の一般向け入門書の読書から始めなくてはならないのは情けない話です。(注意、文学部というのは、いわゆる文学研究の他に、哲学、歴史学、社会学等の研究をする学部です。高校の科目で言えば、国語と社会の延長上にあるとも言えます)。

 

私どもは、折に触れて、理系の方が向いているのでは?というお話をし続けましたが、絶対に文学部だという主張を曲げませんでした。そして最終的には、ここにいても埒があかないと思ったのでしょうか、とうとう当塾を去っていきました。折を見て、受験の結果をお伺いしましたが、案の定、私たちの予想通りの結果となっていました。もっとも、文学部を不合格だったのですから、就職を考えれば不幸中の幸いとみなすべきなのでしょう。。。

 

(ちなみに私たちが私立文系を薦めていた中田君(現、早稲田大学政治学科)は、高校2-3年の段階では、イタリアの政治哲学者マキャベリ『君主論』や米国文学の祖エドガ・アラン・ポー『詩集』を読んでいましたし、当塾では彼の趣味(=イタリア近代オペラ)に合わせてNew York Timesのオペラ批評を読むこともありました。文系の一流大学志望者は、そういう感じになるのです)。

 

もう一つの例として、これもまた、英語と数学はまずまず成績の良いお子さん。特に数学が非常によくできて、私たちは東大でも狙えるのでは?と一時期は本気で進めていた時期もあったくらいのお子さんです。しかし本人は数Ⅲをやり切る自信がないとのことで、文系志望に変更してしまいました。このお子さんは、国語が苦手で、期末テストで全部文章を読みきれないくらいですし、もちろん、本だとか新聞はほとんど読まず、様々な世界情勢、社会問題等への関心もありませんでした。それなのに、文系志望にしてしまいました。こういうお子さんが早慶以上の一流大学の文系に進むというのは、基本的には無理筋なのです。

 

 

私たちとの共通の目標がなくなってしまい、このお子さんも当塾を去っていきました。結果として進まれた大学は、なるほどそうなったのか…というものでした。(このお子さんの場合、数学と英語がよくできるのですから、どうしても文系だというのなら、数学受験で慶應商学部を目指せばよかったわけですが。)

 

 

上記の二つの例は、客観的には非常にもったいない。もっと合理的な志望校選びをすれば、私どもがお勧めした大学合格も夢ではなかったはずですが、そういう風にはしたくなかったのでしょうかね。個人の問題ですから、それ以上申し上げることはありません。

 

 

このパターンのお子さんたちに欠如しているのは、「合理的な考え方」だとか「根拠」です。英語と数学が得意ならそれを活かせる進学先を選択するのがベスト。どうしても違う方向に進みたいのなら、その為に必要なことを全力で努力する。この二つの「当たり前」をどちらも無視してしまっては、掴めるはずのものも掴めない、当たり前のことです。

 

 

上記の例から、勘の良い方なら既に読み取っていただけていると思いますが、当塾から受験をして合格を勝ち取った生徒たちは全員が成功例。実は、当塾に最後まで残って受験を迎えたお子さんのほとんどが、第一志望に合格しているという実績があります。

 

 

当たり前と言えば当たり前のことなのです。私たちは、お子さんと1:1で向き合い、対話方式の授業を通して密に接しているわけですから、それぞれのお子さんの強みと弱み、持っている能力、日々の暮らし方生き方等が、手に取るように伝わってきています。ですから、「この子はこういう面は弱いけれどこういう力がある。この大学のこういった学部はどうだろうか?」と、どんどんイメージがわいてきます。そういうイメージは、密に接し、日々の授業での対話やその前後の会話を通して、お子さん一人一人をよく見ているからこそ湧いてくるものです。

 

 

だからこそ、ご本人にとってより誠実な、よりリアルな意見をお伝えすることが出来ます。それは時に、受け入れがたい、厳しい場合もあるかもしれません。しかし、そこで反発するのではなく、冷静に、素直に、合理的判断でそれを受け入れ、新しい視点を持つことができれば、自分の夢を実現できる可能性、あるいは満足のいく進学先が決まる可能性はより高まるのです。

 

 

ポイントは、自分の力を客観視するということ。客観的に真剣に見てくれる人の意見に素直に耳を傾けるということ。本も新聞も読まない、ニュース番組も見ない、世界情勢や社会問題に関心もない人が、東大だとか慶應の文系受験を志しても、無理です。そういった場合は、主に、早稲田大学や上智の文系に焦点を当てれば、どこかに落としどころが見つかるはずです。(どうしても慶應なら商学部。)逆にいうと、あまり勉強はコツコツしないし、長い英文を読んでいるとそのうち眠くなってしまうような子でも、普段から新書本や新聞に親しみ、様々な芸術に親しんでいるようなお子さんであれば、慶應でも早稲田でも、どうぞお好きな文系上位学部へ、と言って、応援してあげることができます。

 

 

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2017/06/01

偏差値の見方――慶應大学文学部は狙い目か?

2018年度受験用の河合塾の入試ランキング表(2017/05/24更新)偏差値表)(←クリックしてください) が発表されました。 そこで、私大文系(社会科学系と文学系)の上位をまとめてみました。

 

ここでは、早稲田・慶應の看板上位学部(早稲田の政経学部、法学部と、慶應の経済、法学部)を赤字早慶下位学部(残りの文系学部)を青字にしました。そして上智大学と中央大学の看板学部である法学部法律学科には、アンダーラインをつけてみました。以下の通りです。

 

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偏差値70

慶應(法)、慶應 (経済B)慶應(商B) 早大 (政経―政・経)

偏差値67.5

慶應 (経済A)、早大(法)早大(政経-国際)早大(文)、早大(文構)、早大(社科)、早大(商)上智 (総)

偏差値65

慶應 (商A)、慶應(文)、早大 (教育文系)、早大(国養)、早大(人科)、上智 (法)上智(外)上智(文)上智(総人)上智(総グロ)上智(経済)中央(法-法)、立教(経営、全学科)、立教 (社会)、立教(異文化)、青学 (国際), 明治 (政経、全学科)、法政 (グロ)、法政(心理)

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(注)一科目受験の青山学院と慶應大学の学部、およびICUは除きました。なお、慶應大学のAは数学受験で、Bは非数学受験です。

 

さあ、ちょっと面白い結果がでました。つまり、こんな事が言えそうです。

 

  • 早慶の上位学部と下位学部の難易度の差は、偏差値上には表れていない
  • 偏差値65では、早慶、上智、MARCH看板学部が並列している(早慶に合格する人でも明治や立教は落ちるかもしれないし、MARCH上位の人ならば早慶に合格できるかもしれない)
  • 慶應大学も、数学受験(経済、商)だと合格偏差値は低くなる

 

 

慶應の商学部や文学部は狙い目か?

 

偏差値65上にある大学学部が面白いですね。早慶から上智、さらにはMARCH(明治、青学、立教、法政、中央)までもが同居しています。しかし、「慶應の商学部や文学部は狙い目だぞ」となるとは限りません。偏差値表を安易に鵜呑みにしないで欲しいところです。

 

慶應の商学部( A)は偏差値65と低めに出ていますが、勘違いしてはなりません。これは数学受験ですから、文系科目が得意で、さらに数学も出来る生徒であれば、慶應大学の商学部は比較的容易であるという訳で、数学が苦手な文系の生徒には、全然関係のない話なのです。

 

要するに、偏差値に表れる難易度もあれば、偏差値には顕在しない難易度もあるということなのです。ですから、偏差値表はあくまで難易度の目安に過ぎないと心得てください。

 

偏差値上の差異はないけれど、実際には難易度で差違が有る場合があるのです。たとえば、慶應の看板学部である経済学部や法学部と、商学部とではどれも偏差値70です。しかし、入試問題の質が相当異なっています。慶應の法学部に合格するためには、高度な論述力(小論文)が求められます。また、経済学部に合格するには、日本一難しい英語の自由英作文を突破しなければなりません。慶應(経)の自由英作文は、単に英語を書く能力があるだけでは合格答案は書けません。というのは、日頃から新聞や新書本を読み、現代の様々な問題への関心を養っていないと、まったく歯が立たないような入試問題になっているからです。これに対して、慶應の商学部では論述力や自由英作文はほとんど求められていません。

 

ところが、河合塾の全統記述模試では、自由英作文の問題が課されません。ですから、受験生の自由英作文の実力は、河合の模試では分からないのです。自由英作文(あるいは小論文)というのは、書ける生徒はある程度以上書けます。しかし、書けない生徒は、いくら英語の偏差値が高くても、ほとんど全然書けません。(経験的に言うと、早慶の商学部までが限度の生徒と、早慶上位や難関国立文系(東大、一橋、京大)を目指せる生徒とに分かれてきます。(中学3年~高校1年くらいまでにはある程度はっきりとわかります…)。

 

 

そんな訳ですから、小論文や自由英作文をある程度以上できる受験生であれば、法学部、経済学部と商学部は同じ程度の難易度でしょう。しかし、小論文や自由英作文はほとんど全く書けないという受験生であれば、法学部や経済学部は無理ということなります。

 

慶應の商学部(数学選択)や文学部の相対的な偏差値の低さについても、同様なことを指摘できます。

 

文学部の場合ならば、受験勉強を真面目にやっておらず、国語や英語の成績があんまり良くない生徒だとしても、純文学や哲学的文章に読み慣れているような文学オタクであれば、慶應大学文学部には合格しやすい。(そういう昔ながらの生徒は、現代では少なくなってきましたが)。逆にいえば、文学や評論はほとんど読んだことのない「ガリ勉君」には、慶應大学文学部はそもそも向いていないし、難しすぎる。慶應の文学部の入試問題からは、そういうことが読み取れます。

 

 

本当の穴場はどこか

ところで、この表から我々はどのようなことを読み取れるのか?

 

私は、早稲田の人間科学部(人科)の偏差値がちょっと高めに出ていることが気になります。人間科学部は所沢キャンパス、つまり、所沢市の小手指駅からバスで15分という少々残念すぎる場所にある。早稲田の最大の魅力は、なんといってもそのロケーションで、我が国最高の雰囲気の街中にあることです。もちろんサークル活動も、早稲田キャンパスがその中心です。ところが人間科学部の学生は、そういうロケーションから無縁のところで学生生活を送らなければならない、それなのになぜ早稲田の他の学部と同じ偏差値なのか。非常に不可解です。理屈に合わないではないですか。

 

推測に過ぎませんが、来年度には反動で易化するのではないか。もしかしたら、――全然確約できませんがーー狙い目です。所沢バス15分でも、早稲田大学ですからね。なお、神奈川県からでも自動車通学ならば思ったほど遠いわけではなく、Google Mapによれば1時間20分で着くと出てきました。

 

とはいえ、普通に考えるならば、早稲田キャンパスにある早稲田大学の学部の方がずっと良い。とすれば、教育学部、それも初等教育学専攻が一番のオススメでしょう。なんとかして早慶に滑り込みたいという生徒には、私はいつもこの学部を強く推しています。「初等教育なんて専攻して、将来小学校の先生になるの?」などと言わないで、受けてみてもらいたい。

 

あ、慶応志望者のことを忘れていました。慶應志望の人は、やっぱり湘南藤沢キャンパスの総合政策と環境情報が狙い目です。偏差値72.5と高めですが、やはりここが一番合格しやすいようです。偏差値を見ただけではなかなか分かりませんね。もちろん英語が出来るだけでなく、小論文を書けることが前提となります、念のため。

 

 

 

 

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