今回は、英作文の第二段階(和文英訳の応用編)が、第一段階(和文英訳基礎編)とはどう違うのかを説明します。
第一段階(和文英訳基礎編)では、英語を日本語に直訳した和文(=英語みたいな不自然な日本語)を、一字一句そのまま、日本語に戻してみようという練習です。また、日本語の主語は英語でも主語にしますし、日本語の述語は英語の動詞にしようとします。一つだけ例をあげます。
「その知らせは、彼を、幸せにする だろう」
⇨ ”The news(主語)will make(動詞) him (目的語) happy(補語)”
第二段階(和文英訳)になると、やるべきことが大きく変化します。これまでは日本語を一字一句正確に英訳するのが学習課題だったのですが、第二段階(和文英訳発展レベル)からは、日本語と英語は一対一には対応していない、だから和文をそのまま訳そうと思ってはいけないと宣告されるのです。「英語に直訳せよ」を脱皮して「直訳禁止」になるわけです。
第一段階(基本例文暗唱)では、学習者が英訳しやすい和文ばかりが出題されました。ところが第二段階では、そもそも今まで英語のテキストでは一度も出会ったことのない表現を、辞書なしで英語に訳せと命じられるのです。
たとえば、「両立」「鎖国」「社会人」「国際人」「目の保養」「死なれる」「うなだれる」といった日本語を考えてください。これらの言葉は受験生の英単語本の和訳には掲載されていないでしょう。さあ、どうしたら良いのか?ここで求められるのが「和文和訳」という技術です。第二段階(和文英訳応用編)の最大の課題の一つと言えるでしょう。
最初は駄目な直訳例を出してみましょう。「社会人」を”a social man” 「国際人」を”an international person”と直訳しても、まるきり意味不明な英語です。文脈に即して、その意味するところを英語に訳してみないといけないのです。(「社会人になってみると」であれば、例えば、”getting a job after graduation” =「卒業して仕事を持ってみると」と私は訳してみたことがありますが、これも文脈によって変化させる必要があるでしょう)。
では「両立(させる)」を英語にしろと言われたらどうしましょうか。実は、「両立」をぴったりと表現する英単語は単語帳にはありません。そしてだからこそ、こういう言葉を適切に英訳できる力が求められています。
「両立」の英訳をいくつか考えてみます。「AとBを両立させる」でしたら、「AとBとを同時にこなす」と和文和訳して、”do A and B at the same time”と言い換える。これが一番分かりやすいでしょう。
あるいは、「AとBとを両方しっかりやる」と和文和訳して、”do well both A and B”とする。
要するに、和文和訳というのは、難しい日本語表現を自分が英訳しやすい日本語に変えていく技術のことなのです。これが案外難しいですね。今までに全然考えたことがないので、思いつかないのです。
別の例をだしてみましょうか。「この前の日曜日に何をして過ごしましたか」はどうでしょうか。すると、第一段階の基本例文を暗唱した生徒ならば、”How did you spend last Sunday?”と即答できます。しかし、別の表現が全く出てこない。考えてみてください、もっと簡単な表現があるじゃありませんか。”What did you do last Sunday?” とか、”How was last Sunday?”だとかです。こちらの方が遥かに容易ですよね。しかし、自分の言いたいことやアイデアを、知っている英語表現に変換する訓練をしたことがないと、全く浮かんでこないのが実情です。
是非とも、”What did you do last Sunday?”を2秒で思い浮かべるようにしたいものです。第二段階和文英訳応用編をしっかりと頑張ると、英作文だけでなく、英会話(スピーキング)能力の向上にも確実につながることをお分かりいただけたでしょうか。
和文英訳の学習のポイント
(注意)和文英訳の訓練には切がありません。英語を教える人は何十年も時間がありますが、受験生は適当に切り上げることも必要です。