
前回(←クリック)、「日本の英語教育では英話を話せるようにならない理由」で、アメリカの大学の言語コースの単位を履修すれば、外国語を話せるようになると紹介しました。
繰り返すことになりますが、アメリカの大学では2年くらい以上、語学コースの単位を取ると、ある程度の会話が出来るようになるのです。私自身は、8週間の夏季集中言語コースを2回(2年分)履修することにより、多くを学び、インタビュー出来るくらいに話せるようになりました。
本当は、日本においても、海外赴任予定者や留学予定者などの語学が必要な人に対し、そのような語学教育のサービスがあれば良いですね。しかし、残念ながらそのような語学講座の存在はあまり聞きません。ネックになるのは、少人数指導(10人未満)で、一週間に3−5回の授業を実施するという点でしょう。やる気のある生徒の募集や、優秀な講師の募集も、かなり厄介でしょうし、お金もかかるでしょう。
しかし、日本の条件に合う、もう少し現実的な代替案はないのか。つまり、日本人がもう少し英語を話せるようになるための、実行可能な英語講座はあり得ないのでしょうか。英語を話すための言語プログラムも、不可能ではないと考えます。それも、高校英語の授業内容を少し変えるだけで、ある程度実行可能なはずです。
結論を先取りします。英語をある程度話せるようにするためには、高校の英語の授業で、従来の高校英語の内容を取りやめ、代わりに中学英語の徹底的な復習をするれば良いのです。具体的にいえば、次の課題を中心にこなします。
①中学英文法の例文暗唱とその瞬間英作文
②中学教科書の音読
③中学レベルの英語長文の多読・多聴
これも前回と重複する点がありますが、簡単に説明させてください。
一流高校に合格した生徒さんであれば、中学英語を正確に英文を読めるようになっているはずです。しかし、そんな優秀な生徒たちであっても、彼らが出来るのは、実は「読む」ことだけです。優等生であっても、中学英語を「話す」「書く」ことはほとんど出来ないはずです。つまり、現行の英語教育では、最優秀の生徒さんでも、中学英語を完全に習得できていないのです。それなのに、高校生という理由だけで、中学英語よりもさらに難しい高校英語に突入させているのです。
中学英語ですら話せない、書けないのに、さらに難しい英文法・語彙を勉強させているのです。これでは、「読む」能力は向上しても、「話す」「書く」能力はほとんど伸びないでしょう。だからこそ、私の提案があります。日本人の英会話能力を高くするのであれば、高校で無理な高校英語に取り組むのではなく、中学英語を完全にマスターするように努めれば良いのではないでしょうか。「読む」能力を向上させる代わりに、「話す」「書く」英語の基礎を養うことに全力を注ぐのです。
以上が、私の提案の骨子です。何を学ぶべきなのかも説明します。
「話す・書く」英語を学ぶ際にもっとも大事なことは、まずは、中学英文法の基本例文をしっかりと覚え、「瞬間英作文」(=和訳文を瞬時に英語にする)を出来るようにすることです。『どんどん話すための瞬間英作文トレーニング』(←別にこの本である必要はありませんが)はロングセラーであることはよく知られています。
ついで、完全に理解できる中学レベルの教科書を、何回も音読しよく聴くことです。易し目の英文だからこそ、音読の成果が上がることは、一般によく知られていることです。また実際に、中学の英語教科書が英会話に役に立つということで、『英会話・ぜったい音読』もロングセラーです。
この二つをしっかりと訓練すれば、英会話の基礎は出来上がると言って良いでしょう。
直接には英会話力の向上にどの程度寄与するのか分かりませんが、易しい英文の多読・多聴も加えたいところです。
ただし、以上の訓練だけで英語を話せる・書けるようにはなるかといえば、ちょっと厳しいでしょう。というのは、 現行の高校の授業では、少人数指導は無理ですから、教室内で英語を「話す・書く」練習がほとんど出来ないからです。
また、学習者が話したり、書いたりしても、聴き手や読み手の反応(リアクション)が期待できません。生徒は沢山いるのに先生は一人だけですから、どうしようもありません。生徒同士がペアになって作業することは出来ますが、はっきり言って、同級生と英語でやり取りしてもちっとも面白くはないでしょう。
つまり、授業はどうしても単調で退屈になりがちになります。
したがって、本当は日本語の分かる先生に個別指導してもらいたいところです。
またインターネットを用いるオンライン英会話ですが、ある程度基本例文を覚えていないと、何も話せないで終わってしまうでしょう。現実的に言うと、「話す・書く」ための中学英文法を修了した段階で活用すると良いでしょう。それならば、日本語を話せない外国人の英語の先生であっても、オンライン英会話でぐんぐん実力をつけることができるようになるでしょう。最初は片言でしょうが、慣れればかなり話せるようになるはずです。英検準1級やTEAPのでスピーキングやライティングならば、9割以上の得点を取れることは、当塾としても保証して良いくらいです。
私の出した案は、中学英語を復習することによって、「話す・書く」素地を養うという方法論です。しかし、代償なしという訳にはいきません。いわゆる高校英語と、その「読む」訓練時間を削減」するのですから、当然のことですね。要するに、難しい英文を読めなくなってしまうのです。
実を言うと、アメリカの語学教育の場合も、初級・中級では会話的な側面が重視され、読解は上級者になってから取り組むことが多いようです。(私自身、話せるけれど、あまり読めませんでした)。
つまり、「話す・書く」重視の方法論を採用すると、カタコト英語ならば話せる・書けるようになるが、英文読解はあまり出来なくなる訳ですね。
話せるが読めないというのは、難しい知らない単語ばかりなので、英語の記事には手も足も出ない感じです。単語や文法は中学英語止まりですから、仕方ありません。難しい単語を覚えない代わりに、易しい単語を積極的に活用する訓練をしてきたのですから。
ちょうど、日本語は話せるが、漢字を読めないので日本語 は読めない外国人と似たような状況だと考えてもらってもよろしいです。
となると、従来の「読み」重視路線を放棄し、「話す・書く」重視路線に本当に変更して良いのか、疑問に思えてくるでしょう。相当大きな問題であり、簡単に結論は出ないでしょう。ぜひとも皆さんも考えてもらいたいです。
たとえば、次のどちらが良いですか?
「英検準2級ー3級レベルの英文読解力だが英語をどんどんと話せる人」
vs.
「英検準一級レベルの英語長文は読めるが、話したり書いたりするのは苦手な人」
今回はこれまでとしますが、次回はさらにこのテーマについて考察を進めます。