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塾ブログ 林間教育通信

2016/05/23

バイリンガル英語講師にご用心。

英語圏で育った、いわゆる帰国子女でバイリンガルの英語の先生は、私学の中高一貫校を中心に増えているようです。

 

バイリンガルの英語講師というのは、しばしば憧れの対象です。確かに上級レベルの学習者にとっては、とても頼りがいがあるだ存在だろうとは思います。しかし、中学生などの英語入門者・初級者にとっては、むしろ用心しなければならない存在です。

 

新しい文法事項についてもほとんど何の説明もなしに教材を丸投げしてしまうとか、和訳をしてくれないとか、バイリン英語教師の悪評は私達の耳によく聞こえてきます。使用している教材も英語で書かれた英文法の本だったりするので、難しくて分かりにくいとか、生徒の方ではチンプンカンプンだというクラスの話も聞きます。

 

また、厳密にはバイリンガル講師とは限らないのですが、英語は英語で理解しようとか、和訳や文法用語なしにそのままイメージを取り入れようといった理想を掲げ、その内実は悲惨な結果であるという学校もあるようです。

 

更に、英語学習の方法論だとか英単語の覚え方のアドバイスも的外れだったりする場合が多々あります。お子さんがバイリンガル英語講師に当たった場合は、しっかりと対策を練っていく必要があります。

 

今回は、バイリンガル(志向の)講師や、英語は英語で勉強しましょうと提案する英語教師の指導方針の問題点の一つについて、少し詳しく説明してみましょう。

 

前回、次の様な図を描きました。日本人の英語学習者が英語を読むときには、

 

英語==>英語化された変な日本語(中間言語)==>自然な日本語

 

という回路で理解するのだというご説明をしました。この回路を作り上げることで英語を発信(話す、書く)する時にも、

自然な日本語==>英語化された変な日本語==>模範英語

という回路を用いることができます。これが正しい学習の仕方です。(ただし、「変な日本語」は学習者がステップアップするにつれて、だんだんと不要になります。英語がすり込まれていくうちに、変な日本語なしに英語の意味を理解し話せるようになるからです)。

 

模範英語  ====>英語化された変な日本語====>自然な純日本語

模範英語 <====英語化された変な日本語<====自然な純日本語

 

しかし、バイリンガル講師あるいはバイリンガル志向の講師は、それを良しとしません。「英語化された変な日本語」、あるいは「日本語化された変な英語」といった中間的言語を嫌うのです。英語を読んだり話したりするとき、変な日本語で媒介されるべきではないと考えているからです。言い換えると、英語を読んだり聴いたりしたとき、日本語を介さずに「そのまま理解」できるようにすれば良いと思っているのです。あるいは、自分の言いたい事を「直接そのまま」自然な英語にできるようにさせたいと考えているのです。彼らの理想を図式化すれば次の様になるでしょう。

 

自然な日本語 <==  自分の言いたいこと   ==>自然な英語

自然な日本語  ==> 気持ち、概念、議論など<== 自然な英語

 

たとえば、“this” と学ぶにあたって、「これ」という和訳を用いず、「時間的ないし空間的に近くにあるモノを指す概念」であるというふうに覚えさせるかもしれません。あるいは、「日本語に訳すな、イメージで覚えろ」とか、「オレンジの絵を見たら、orangeが思い浮かぶように、あるいは、orangeという言葉を聞けばこのオレンジの絵が浮かぶように」といったアドバイスになるかもしれません。

 

日本語を媒介させないで、「英語」と「その概念や気持ち」を直接つなぐ回路を設けるというのは、ある意味では非常に理想的です。英語学習者ならば、大いに憧れる境地でもあります。「英語は英語で」とか、「英語を、イメージや絵と直接結びつける」といったバイリンガル(志向の)教師の指導方針は、一見すると格好いいと思うかもしれません。ネイティヴみたいに英語を読んで話せる近道に思われるかもしれません。

 

しかし、日本の普通の学校に在籍する、日本人の生徒には薦められません。というのは、バイリンガル的英語教育は、日本の学校に在籍する、普通のご家庭の、普通の語学センスのお子さんには、ハードルが高すぎるからです。実際、様々な弊害が出ているようです。例えば、英語は英語でという教育を学校で受けている生徒たちは、正確な英文和訳が出来ませんでした。もちろん、和訳しないというのなら読んだ英文の意味を英語で説明してもらいたいものですが、全く英語を話すことはできません。バイリンガル教育だというのならば、生徒自身が英文を英語で説明出来なくてはいけませんね。つまり、「英語は英語で」といった教育方針は幻想だったのです。

 

大事なことは、性急に「英語は英語で」という回路を作ろうなどと目指すのではなく、まずは自分が培ってきた母語である日本語を最大限に活用していくことです。以前にも紹介しました模範英語と自然な日本語の中間言語のようなもの、あるいは「英語化された変な日本語」だとか「日本語化された変な英語」を活かす事です。そして、そうしているうちに、だんだんと英語の使い方を取り込んでいき、日本語を英語で塗りつぶしていくことが出来るのです。こちらの方が、よっぽど効率的効果的で、確実に成果が出ています。

 

少し分かりにくいかもしれませんが、これからが核心部分ですので頑張って読んでください。バイリンガル的な「英語は英語で」教育の欠点の一つは、「英語だけでは英単語だとか英文法のしくみをほとんど覚えられない」 ということなのです。英検2級くらいの英語学習者ならば、英英辞典だってある程度使えるでしょうし、英語で書かれた英文法の本だってある程度以上は、読めて理解できるかもしれません。しかし、仮に理解できたとしても、記憶に残らないのです。英語入門者であれば、なお一層覚えられません。百歩譲って、英語で英語を完全に理解したとしても、特別な事件でも起きない限り、すっかり忘れてしまう可能性大です。なぜなら、外国語の、ある単語や語句、または文法の規則性を覚えるためには、少なくとも一度は自分の言葉によって、つまり日本語の力を借りてしっかりと意識の中に刻み込むことが必要だからです。外国語=英語によってこれをすることは非常に困難です。

 

 

ちょっと違う例ですが、中学一年生が英単語の意味とスペリングをどう覚えたら良いでしょうか?バイリンガル教師ならば、絵と音声とスペリングを結びつけよとか言うかもしれません。しかし、英語を始めてたった数ヶ月の生徒にそれは無理というもの。最も現実的なのは、変な日本語や変な英語もどんどん活用することです。こんなやり方ちょっと恥ずかしいけれど(笑)、大事な事ですからはっきり書きますよ。英語を初めて学習する中学一年生の多くは英語のスペリングで苦労します。一つの方法論はインチキ英語かもしれませんが、ローマ字英語を使いましょう。やはり、この方が覚えやすいようです。こんな具合です。

 

Wednesday → ウェドネスディ → ウェンズディは水曜日

girl → ギルル → ガールで女の子

notebook → ノテボコ → ノゥトブックでノート

son → ソン じゃなくて サンは息子

 

英語のスペリングと音の関係についての規則(phonics)が定着するまでの間、こういったやり方はやはり便利ですし、有効です。真面目に学習していけば、そのうちこういう恥ずかしい中間語はなくなるはずです。自転車の補助輪はいつか外すためにあるのですから。(ただし、sonをソン、foundはフォウンドだと思い込んでいる中高生は沢山いるのではないでしょうか。いい加減にそろそろ卒業しましょう!)

 

長くなりましたのでまとめます。

 

バイリンガル(志向)の英語講師は、英語を英語で理解するとか、英語を直接イメージと結びつけようとしますが、あまりにも性急なためにうまくいきません。学習者の腑に落ちなかったり、意識の中にしっかりと刻み込むことができないので、結局は覚えることが出来ないのです。良く出来すぎた理想論に騙されないようにしましょう。

 

 

日本人学習者にとっての正しい方法論は、日本語を完全に排除するのではなく、むしろ日本語でしっかりとその論理を理解して、英語化された変な日本語(中間言語)を駆使しながら、英語という言葉の発想を徐々に理解し取り入れることです。これが私達日本人が英語を習得する上で、最も効率的効果的な方法論です。

 

当塾ではこのやり方でしっかりと結果が出ています。英文解釈はもちろんのこと、英語話者と英会話もできるようになっていますし、英文ライティングもしっかりとできるようになっています。(当塾の中学2年生の英会話の例を以前とりあげました。宜しければ右をクリックしてください。動画(1)動画(2)  また、英語の多読の自由英作文の事例は(右をクリック→) 「多読記録」でとりあげました)。

 

次回、バイリンガル教師の問題点についてもう一つ書くべきことがありますので書きます。

 

 

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