当英語塾では、まずは文法をしっかりと理解・定着することを目標とします。そして、なぜそうなるか、を生徒自らの言葉で説明することを授業内で求めます。例えば、一つ一つの英文を読んだ時、その英文のポイントは何なのか、例えば、「現在完了形・~用法の文です」とか「不定詞・何用法の文です」といったように自らがその英文のポイントを押さえて読むことを求めています。(単純に、文法として学習している時はできても、長文の中である一文を抜き取って文法的なポイントを説明するよう求めると、意外と自分の言葉で説明できないことは多いです。)
更に早いお子さんですと中2あたりから徐々に長文読解をするようになりますが、文法的理解に加えて、文脈にふさわしい解釈ができるかどうか、が問われます。例えば、野球をしているある一人の生徒が、顧問の先生からこんなことを言われます。
You didn’t play well at Friday’s practice,did you? Alex will play for you in the next game.
この時のforをどう訳したらよいでしょうか?大抵forというのは「~のために」という意味のことが多いですから、この場合も「アレックスが君のために次の試合でプレイします。」と訳してしまいがちです。しかし、待ってください。それで本当にいいですか?「君のためにプレイする」って一体どういうこと?変じゃない?
この場合は、顧問の先生から「君は金曜日の練習で出来が良くなかった」と言われているわけですから、
「次の試合では君は試合には出られないよ、君の代わりにアレックスが試合に出るよ」と宣告されているわけです。そういった場面を頭の中で立体的に立ち上げながら英文を読んでいかなければ、正しく話を理解することができません。
では次の英文はどうでしょうか?「核兵器廃絶」に関する英文の一部です。
In 2009 U.S.President Obama said that his administration would seek the peace and security of a world without nuclear weapons.
青字の部分without nuclear weaponsを直前の名詞a worldにかけるのか、はたまたseek という動詞にかけるのか、で意味(訳)が変わってきます。しかしそもそもそういった試行錯誤もせず、安易に「核兵器なしに世界の平和と安全を求める」と訳して涼しい顔をしている生徒が多いです。
これは二つの点でダメです。一つは、全く何も考えずに、つまりは意味を吟味もせずにただ訳しているだけということ。もう一点は、ある種の非常に常識的な社会認識・語彙(ちょっとした中高生なら当然知っているべきこと)が欠けているということ。
まずは、こんな風に試行錯誤するべきだし、して欲しいという「試行錯誤の模範例」を示してみましょう。
In 2009 U.S.President Obama said that ・・・ うんうん、「2009年にアメリカのオバマ大統領がthat以下と言った。(なんて言ったんだろう?)」
his administration would seek the peace and security of a world
「彼の(オバマ)政権は、世界の平和と安全を求めるつもりだ」(うんうんいいね)
without nuclear weapons.
ここは、一体どこに係るんだろう?
1.仮にseek に係るとすれば「核兵器なしに世界の平和と安全を求めるつもりだ」となる。
「核兵器なしに世界の平和と安全を求める」ってどういうこと?
「核兵器なしに世界の平和と安全を求める」ということは、核兵器を使わずにということ、つまり、「通常兵器とか毒ガス、殺人ロボットを使って世界の平和と安全を求める」ということ?しかしなんか変だな。そんなことをアメリカの大統領が言うのかな?言いそうな気もするけど・・・アメリカだし・・・・でもこの人、なんかノーベル平和賞とかもらったんじゃなかったっけ?そんな人がこんなことを言うのかな???
2.a worldに係るとすれば、「核兵器のない世界の平和と安全を求めるつもりだ」となる。
「核兵器のない世界の平和と安全」うんうん、世界の平和と安全のために核兵器のない世界を目指すってことね、こっちの方がノーベル平和賞をもらった人の発言としてはぴったりの気がする!ということは、a worldにかけて、a world without nuclear weaponsが一つの塊なんだね。
と、これくらいの試行錯誤はしてほしいと思うのです。
当英語塾は1:1のマンツーマンですから、上記のようなことをお子さん一人が全て自分で考えて答えなければならないわけです。非常にハードだと思いますが、思考力だけでなく言語能力(表現力)も非常に鍛えられます。
英語学習とはつまるところ、「言葉力=日本語力を鍛える」ということなのだ、英語学習を通して実は、日本語の運用能力を鍛え、自分の持つありとあらゆる知識を動員して思考力を鍛えているのだ、という言い方もできるかと思います。
尚、先日オバマ大統領が来日し広島で演説もなさいましたので、「核なき世界」という言葉が少しは生徒たちの中にも浸透していることを願いますが、新聞やテレビ番組などを通じて、そういった概念・語彙にすでに馴染んでいるお子さんですと、上記の英文などなんでもない。a world without nuclear weaponsが一つの塊、「核なき世界(の平和)」という言葉が当然のこととして出てくるはずです。が馴染んでいないお子さんにとっては躓く障害の一つとなりえます。ただ、そういった言葉を知らなくても、ちょっと立ち止まって常識に照らして考えてみればわかることのようにも思います。いずれにしても、英語をただ勉強するだけでは英文は正しく読めないということの一つの例としてもご理解くださればと思います。