入試で出題される現代英語を読むためには、教養が不可欠です。教養があるとは、ある程度広範囲の語彙を持っている事だと定義しても良いでしょう。
つまり、現代を理解するのに必要な語彙を持っていないと、英文を読めないのです。
実は、たったのワン・センテンスを読むのでさえ、教養力が大きく作用してきます。教養があれば読めるが、無いと読めない文があります。あるいは、一つの文だけで、教養の有無を判定できてしまいます。
当塾(シリウス英語個別指導塾)の塾生に対し、次のような教養力テストの質問をしてみました。
(1)”The world is getting smaller and smaller”(「世界はますます小さくなっていく」)とは、どういう意味なのか。 [(注)英文和訳を求めているのではありません]
(2)”animal kingdom”や”plant kingdom”という言葉があるが、どういう意味か想像してみよ。(大阪大学2022年の問題より)
ウチの高校生の正答率は、どの程度だったと思いますか。
中堅進学校から一流進学校の生徒さんがいますが、新高1は全滅でした。どちらの問題も、全く解答出来なかったのです。「世界は小さくなった」というフレーズはよく聞くのですが、「小さくなる」とはどのような現象を指すのか説明出来なかったのです。
しかし、新高校2・3年生は、ちょっと違いました。中堅進学校の文系志望の生徒さんたちでしたが、(1)の意味を答え、その意味を説明することが出来ました。文系の受験生が文系的な話題を知っているのは、ちょっと安心です。
一方、理系受験生はですが、(2)の意味を適切に推測してくれました。理系受験生は、文系的問題は出来なかったかもしれませんが、理系的問題ならば、見事に正確な推測をすることが出来たのでした。もちろん、kingdomの意味を習ったことはないはずです。
事例はごく限られたものですが、高校生として1-2年間でもそれなりに教養を積んだ結果、背景知識を必要とする英文の意味を推測できるようになったと言っても良いのではないでしょうか。
最後に、二つの問いについて、簡潔に見てみます。
(1)”The world is getting smaller and smaller”(「世界はますます小さくなっていく」)は、交通機関とコミュニケーションの発達、さらには近年のインターネットなどの登場により、世界の諸地域・国家がより緊密に結びつくようになったことを示す、一種の決まり文句です。近年では、グローバル化を論じる際の枕詞的フレーズとなっています。
ある程度の教養がある生徒であれば、何を論じようとしているのか瞬時に理解できるはずです。
(2)“animal kingdom”や”plant kingdom”は、実際に大阪大学の和訳問題で出題された箇所からの出題です。英語的には少々難しいですが、阪大の受験生は、animal kingdomとplant kingdomを訳出しなければなりません。
kingdomとは、animal(動物)とplant(植物)という広範囲な事物と結びつく、非常に抽象的な名詞でなければなりません。それは一体何を指しているのか、考えてみる必要がありますね。
実は、自然の分類法に関わる「界」という意味なのです。animal kingdomは「動物界」、plant kingdomは「植物界」となります。古典的な学説として、生物を大きく動物と植物との二つに分けるられるのですが、このときにkingdomという言葉を使うという訳です。
少し難しいですね。
文系受験生と新高1生は、「サファリかな?」と答えました。アフリカのサファリ・パークは、「動物の王国」というタイトルでテレビ番組化されますからね、気持ちは分からなくはありません。しかし、動物は世界中に存在するものであり、アフリカの草原に限定される概念ではありません。また、植物は地球のほとんどどこにも存在する訳ですから、サファリ地帯では、不味いですね。残念ながら、ちょっと短絡的な解答でした。
教養力を身につけるには、どうしたら良いのか。高校生には是非とも新書本をどんどん読んでもらいたい。とくに、国立難関大(東大、一橋大)や早慶上位学部(早大政経学部、法学部、慶應大経済学部、法学部)の場合には、そのことを強く訴えたい。
しかし、何か数冊を推薦するとなると、大変難しいですね。当塾ではとりあえず、『朝日中高生新聞』を読むことから始めてくださいと、面接時に皆さんに申し上げています。『中高生新聞』といっても、1週間に一回発行される週刊誌ですから、手軽に読むことが出来ますので、ご安心ください。
大学入試レベルならば、中高生新聞を読むだけで、英語、国語、社会(とくに地理など)等で、大きく得をするに違いありません。
そして、それ以上となると、何が良いでしょうか。いつもは新書本を読めと言っていますが、具体的なタイトルを挙げないと、不親切かもしれませんね。
大いに迷いますが、文系に興味があるのであれば、三省堂大図鑑シリーズはどうでしょうか。経済学、経営学、政治学、哲学、世界文学、宗教学、心理学、世界史、社会学、西洋音楽史等があり、大学での専攻を決めるのに役立つので、お勧めしましょう。調べてみたところ、相模原市、町田市、横浜市、川崎市、大和市等の公立図書館で、読んだり借りたりできるようです。
理系では、Newtonの大図鑑シリーズが実に充実しているようです。生物、太陽系、地球、数学、化学、鉱物、AI,人類学等々。多すぎて数え切れません。もちろん、ほとんどの市の図書館で読むことが出来ます。機会がありましたら、『AI大図鑑』や『人類学大図鑑』のレポートもしたいです。
今日はこれまで。
せっかく名門の中高一貫校に合格出来たのに、英語で伸び悩んでしまう生徒さんというのは、残念ながら非常に多いですね。しかし、英語が出来ないと言っても、幾つかのタイプに分かれているように見えます。ここでは、そのうちの主要タイプである(1)怠け者タイプ、(2)言語への無関心タイプの二つに分けて、感想を述べておきたい。
名門一貫校の英語落ちこぼれタイプの圧倒的多数派は、怠け者タイプでしょう。要するに、英語は退屈で覚えなくてはいけないし、面倒臭いので、やりたくないのでしょう。
私見では、どうもこのタイプのお子さんの場合、お父さんにその原因の一つがあるような気がします。つまり、例えば、子供に対して非常に甘いとか、あるいは、子供の教育に無関心でお母様に丸投げしているのではないでしょうか。このことについて、責任をもって断定はできません。あくまで、単なる個人の一つの感想に過ぎません。
名門校の生徒さんで、それなりに英文法を学んだのに、そして英単語の意味も説明しているのに、まとまった意味のある英文をさっぱり読めなかったり、頭に入ってこないというタイプの生徒さんがいます。
もちろんそういうタイプの人は、英語力向上で伸び悩むことになります。
ちょっと不思議な症候群です。英文の意味を文法的に解読できないとか、和訳できないとかいうのとは、少々異なります。日本語であれ、英語であれ、文章をよく読めない。あるいは文章に限らず、映画や漫画などの作品をあまり読めないタイプがいるのです。
この生徒たちの特徴を列挙すると、次のようになります。
これらの生徒さんたちも、試験というゲームとして文を読むならば、答えを探す事はある程度は出来るようです。しかし、本当に文を理解していると言えるのかどうか不明です。
こういうタイプの生徒さんについて、断定的な事は書けないのですが、それでも推論を小中学生時代に大きな原因があるように思われて仕方ありません。つまり、読書習慣を持たないうちに、中学受験勉強の特訓を始めたために、文章や物語を読む喜び楽しみを知らないし、興味も持てなくなってしまったのではないか。
ところで、ある塾の先生の説(水島 醉『「受験国語」害悪論』)によるならば、中学受験国語の勉強の中には、文章読解の習慣を身に着けるのに悪影響を与える性質のものがあるのだそうです。つまり、与えられた問題(「それ」はなにを指すか抜き出しなさい)に答えるために、本文中から答えの箇所を探し出すゲームに熱中してしまうと、文章読解から得られる本来の楽しさを、子供たちが見失ってしまうようになるのだそうです。私は中学受験国語に詳しくはありませんが、十分に有りうることでしょう。
まとめましょう。中学受験のための国語(日本語)の勉強をした子供たちの中には、おそらくその受験勉強のために、本来の人間の生活様式を著しく痛めてしまい、本来の文化的遺産の享受をできないようになっている人たちがいると、水島さんは言いたいし、告発したいのでしょう。そして、我々が直面している、英語の文章が読めなくなっている生徒さんと、かなり共通点があるように思われるのです。
どのようにすれば、彼ら・彼女らを救済できるのか。このテーマについては、改めて論じる予定です。
武田塾さんは、志望大学別の「学習参考書ルート」を提示することで、大いに注目を集めています。すでに多くの皆さんは、ある程度存知のことと思いますので、詳しく紹介するまでもないでしょう。
さて、武田塾さんの「学習参考書ルート」なのですが、大学受験生に対して、参考書・問題集の選び方・使い方ついて、非常に良質な情報を提供しているのですが、必ずしも全部を鵜呑みにして欲しくありません。
というのは、武田塾さんが暗黙の前提としている高校生は、県立の進学高の高校生であり、中高一貫校の生徒さんたちを念頭に入れていないからです。県立進学高の生徒さんと中高一貫校の高校生とでは、その現状が大きく異なっている可能性が高いのです。
英語について言えば、県立進学高の生徒さんたちは、中1や中2レベルの英語ならば、ある程度以上は理解しています。そしてそうでなければ、高校受験を乗り越えられなかったはずです。他方、中高一貫校で英語に躓いてしまった高校生の場合は、中1レベルの英語すら丸で分かっていない場合が多いのです。
武田塾さんのYoutube番組をいくつか視聴してみますと、中学英語の復習は大事であると強調はするのですが、三週間や1ヶ月くらい復習をすれば良い、というアドバイスになっています。
例えば、次の二冊の教材(=どちらもお勧めすべき良い教材です!)を、1ヶ月以内に仕上げよと言うアドバイスになるようです。
簡単な中学英語のワーク教材(山田『中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく』)
中学英文法のまとめ用参考書(大岩『大岩のいちばんはじめての英文法、超基礎文法編』)
県立進学高の生徒さん、神奈川県で言えば、厚木高校や希望丘高校の生徒さんに対してならば、武田塾さんのアドバイスには賛成出来ます。しかし、中高一貫校の英語の落ちこぼれ君の場合はダメです。
理由は明白です。たった1か月未満、しかも二冊の薄い教材を一通り仕上げるだけでは、中学英語をマスターできるはずがないからです。
ちょっと考えてみてください。中学時代にそれなりに努力し、県立相模原高校なり県立湘南高校に合格した人と、3年間遊んで暮らしていた中高一貫校生とに対して、同じアドバイスができるはずがないのです。中学時代を英語をサボってしまった中高一貫校の高校生の場合、武田塾さん流のアドバイス(=2・3週間から一か月未満くらいの中学英語復習)は参考にならないというのは、ご了解いただけるでしょうか。
もっと徹底的な訓練を集中的に実行する必要があります。3年間とは言いませんが、ある程度のまとまった年月をかけなくてはいけません。
我々の経験からすると、中高一貫校の落ちこぼれ君が中学英語の習得をするためには、最短で3ヶ月〜半年くらい、人によっては2年間くらいの時間が必要となります。(数学が得意な生徒さんは比較的短期間で、数学が苦手だと学習時間が長くなる傾向にあります)。
ポイントを簡単に申し上げると、問題集や解説書を一通り終わらせるだけではダメだということです。徹底的な反復演習、とりわけ英文の繰り返し音読が必要不可欠です。文法を完全に理解した上で、教科書本文と重要例文を繰り返し音読することです。そして、しっかりと反復練習を自覚的に訓練すれば、並の県立進学高の生徒さん以上の英語力を身に付けられるはずなのです。
中学英語を、独学で習得するのは、やはり難しいですね。
中高一貫校の落ちこぼれ中学生に対する処方箋としては、家庭教師や個別指導塾で週2回以上の指導を受けることと書きました。高校生にも、ほとんど同じことが言えます。プロの家庭教師またはプロ個別指導に、週2回以上の指導を委ねるのが良いのです。
しかし、高校生の場合は、ある程度自覚が高まっているはずなので、やる気のある生徒さんの場合にかぎり、集団式の塾・予備校や有料の映像授業、あるいは独学であっても、理論的には、それなりに有効な学習方法論ではあります。
いずれの場合も、復習をしっかりとすることが最大のポイントです。例えば、習った英文を、毎日5ー10回、文法と意味・イメージと発音に注意しながら、丁寧に音読するようなインプットです。
逆にやってはいけないのは、記号選択式の問題を解き散らかすような勉強法です。言語学習の入門・基礎段階においては、4択式問題でいくら正解をしても、ほとんど何の意味もありません。
当塾(シリウス英語個別指導塾)では、『シリウス発展編』というテキストの例文暗唱を重視しています。『シリウス発展編』は一般に市販されていませんが、市販されているものであれば、例えば、『くもんのハイレベル中学英語、文法・作文』のようなものを、文法と英作文のテキストとして使うのも、良いかもしれません。
音読用の長文テキストは、以前であれば、『ニューホライズン』や『ニュークラウン』のような検定教科書は優れていたのですが、教科書改悪の結果、新しい教科書は非常に残念なものになってしまいました。
古い版の検定教科書を入手するか、『英会話・ぜったい音読』などを使うと良いのでしょうか。ただし指導者がいないと、独学では勉強しにくい教材でもあります。(例えば、“You will +動詞の原形“ で命令を表す表現などが出てきます。あるいは、go to churchとgo to a churchの使い分けがあって、その意味の違いを理解しなくてはなりません)。
中高一貫校の高校生が中学英語の習得するには、早い生徒さんですと3ヶ月間くらいで完成出来る場合があります。しかし、通常は5ヶ月以上くらいと思ってください。また、学習者によっては、2年間くらいかかるかもしれません。中学英語を習得するのは、やっぱり大変なのですから、仕方ありませんね。
すでに述べましたが、数学が得意なタイプの生徒さんですと、英文法の習得は比較的短期間で終えられるようです。逆に言えば、数学が苦手なタイプですと、時間がかかってしまいます。
なお、私立文系あるいはGMARCHや上智大学を志望する生徒さんであれば、中学英語の習得期間を多少端折り、短期化するのも一つの方法論でしょう。要するに、中学英語を書く力(ライティング)や話す力(スピーキング)を養成するのに、あまり時間をかけない戦略を採用するのです。これは、武田塾さんの戦略でもあります。
以上、中高一貫校の落ちこぼれ高校生が、どうやって中学英語を習得すべきなのか、簡単に解説をしました。
中学英語の習得に案外時間がかかることに、驚かれる方もいるかと思います。しかし、何事も基礎は大事なのです。中学英語を完璧にすることを目指し、十分に時間を使ってもらいたい。たとえば6か月以上中学英語の習得に時間をかけるとしても、大学受験には間に合わせることができます。
また当塾のようにしっかりと中学英語を学べば、英作文(ライティング)・英会話(スピーキング)はびっくりするほどの力をつけることができるので、むしろ受験には有利だともいえます。国公立大学はもちろんのことですが、上智大学や立教大学などのTEAPや英検などを利用する外部試験方式では、それらの力が問われているからです。
今回はこれ迄とします。
2023年の冬に、中高一貫校で英語に落ちこぼれたらどうすればよいのかについて、いくつか記事を書いてきました。ここにリンクを貼っておきます。
中高一貫校の中学生、英語で落ちこぼれた時の対策(その手は悪手!) (←クリック)
英語の落ちこぼれ中高一貫校中学生のための処方箋 (←クリック)
中高一貫校高校生の英語落ちこぼれへ組への処方箋(前編)(←クリック)
中高一貫校の英語の落ちこぼれ高校生への処方箋(後編)(←このブログ記事です)
まずは、英語力の現状認識が必要です。
中高一貫校の生徒さんの場合、高校受験を経ていませんので、自分の英語力についてシビアーに問われた経験がありません。
かなり多くの中高一貫校の生徒さんは、高校受験経験者よりも、英語力がかなり落ちる場合が多いです。しかし、勇気を持って、自分の英語力がどの位置にあるのか、確認してみましょう。中1英語から徹底的にやり直す必要があるのか、それとも中3英語から軽く復習すれば良いのか。今自分がどこにいるのかを確認し、今後の計画を立てていきましょう。
中学英語をどの程度マスター出来ているかをチェックするには、英文和訳と和文英訳の力を調べてみるのが一番です。というのは、英検2級に合格していても、中一英語を和訳したり、英訳出来なかったりすることが、頻繁にあるからです。
ただし、独りではチェックしにくいでしょう。その場合は、問題集などを用いて間接的に調べてみましょう。
当塾では、生徒さんとの個人面談の際に簡単なチェックをしています。少し具体的に言うと、以下の通りです。
中1レベルの英語を英文和訳出来るか。また、和文英訳できるか?
中2〜3レベルの英文を読ませ、文法的に和訳できるか?
現状としては、中高一貫校の生徒さんの場合、一流あるいは準一流の中高一貫校の高校生であっても、中2英語のレベルを全然クリア出来ない人が、残念ながらかなり多いようです。たとえば、不定詞(中2英語)を訳せなかったりします。
結果、当塾の入塾生の場合、ほとんどの生徒さんには、中1英語から復習してもらっています。
一人で自分の実力を測定しようとするならば、中学生用の問題集を解いてみましょう。本人の志望大学によって、問題集の難易度は変わります。
英文法力
『最高水準問題集 特進中1英語』(文英堂)
『最高水準問題集 特進中2英語』(文英堂)
『最高水準問題集 特進中3英語』(文英堂)
長文読解力
『英語長文 難関攻略30選』(東京学参)ー超難関高校入試レベル
『英語長文レベル別問題集(3)』(東進)ーー難関高校入試レベル
英文法力
『最高水準問題集 中1英語』(佐藤誠司、文英堂)
『最高水準問題集 中2英語』(佐藤誠司、文英堂)
『最高水準問題集 中3英語』(佐藤誠司、文英堂)
長文読解力
『英語長文レベル別問題集(2)』(東進)ー県立高校入試レベル
現状認識の結果はどうだったでしょうか。
中高一貫校のかなりの生徒さんは、英語力に問題アリだったのではないでしょうか。中高一貫校は高校受験がないので、理屈から言えば能率的に勉学できるはずなのですが、現実には英語力で停滞してしまうことが、頻繁に起きているようです。
しかし、ご安心ください。高校一年生あるいは中等学校の4年生から真面目に取り組めば、東大・京大を含む一流大学の入学試験に、間に合わせる事が出来ます。日本の大学入試は、幸か不幸か、それほど難しいものではないからです。
とはいえ、どのような教材を用い、どのくらい勉強すれば良いのでしょうか。ここでは、中高一貫校の高校生が手を出すべきではない教材等について、まずは簡潔に説明しておきましょう。
❌❌❌❌大人のための学び直し英語系の学習本や無料Youtube
本屋さんや世の中には、中学英語を「短時間で」マスターしましょうと謳う本やYoutubeの番組であふれています。しかし、これらの本やYoutube番組の多くは、利用してみないほうが良いでしょう。
ちょっと真面目に考えてみれば分かりますよね。中学の三年間、英語の勉強をまるでサボっていたのに、高校になってから、たった10時間や15時間頑張れば、その遅れを取り戻せたりするなんて、そんな上手い話はあり得ないじゃないですか。
実は、それらの「速成」を謳う英語学習本は、中高校生のために書かれてはいません。むしろ、いったん有名大学を卒業した人が、社会人になって、もう一度英語を学習し直してみようと思い立った際に、役に立つように出来ている本なのです。
一度、英語を勉強した人たち、つまり大学受験で英語学習を頑張ったことのある社会人ならば、あまり細々とした説明は不要でしょう。昔習ったことを思い出すキッカケを与えて貰えば、それで十分だからです。だから、さらっと簡潔に書かれているのです。
社会人向け英語学習本の一例を挙げれば、濱崎潤之輔『中学3年間の英語が一冊でしっかりわかる本』です。一度大学受験を通過した社会人には決して悪い内容ではないのですが、英語が苦手な中高生には到底理解不可能な内容です。これらの本をよく見ると、「大人の学び直し」とか「やり直し英語」と、明記されていますね。要するに、英語の落ちこぼれ高校生向きではないのです。
Youtubeの無料の中学英語の番組も、事情はあまり変わりありません。2022−23年現在、短時間で中学英語を学び直してしまおうというコンセプトのものばかりですね。中高生には、そういうった趣旨の番組は、ほとんど参考になりません。結論を繰り返せば、高校生の場合は、高校生を意識して作られた英語本や映像授業を選ぶべきなのです。
❌❌❌❌ Z会等の通信教育
❌❌❌❌ NHKのラジオ講座、テレビ講座
通信教育やNHK講座については、以前、落ちこぼれの中学生向きではないと、説明しました。このことは、高校生でも、全く同じです。英語力に余裕ができた時に、使えるかもしれない教材にすぎません。
以上、前編はこれまでとします。次回では、武田塾さんの学習モデルについて、検討する予定です。
中高一貫校の生徒さんが英語で落ちこぼれた時、どうやって脱出したらよいかというトピックの記事について、リンクを貼っておきます。
中高一貫校の中学生、英語で落ちこぼれた時の対策(その手は悪手!) (←クリック)
英語の落ちこぼれ中高一貫校中学生のための処方箋 (←クリック)
中高一貫校高校生の英語落ちこぼれへ組への処方箋(前編)(←このブログ記事です)。
中高一貫校の英語の落ちこぼれ高校生への処方箋(後編) (←クリック)
中高一貫校の中学生のお子さんが、学校の英語の授業についていけなくなりそうな時、あるいは、すでに授業が分からなくなってしまった場合、どのような手を打てば良いでしょうか。
現実的に考えると、家庭教師または個別指導塾に通わせるしか選択肢がありません。
とはいえ、どの家庭教師・個別指導塾でも良いという訳ではありません。いくつかの条件を挙げてみましょう。
落ちこぼれでしまった生徒を救済するために、絶対に欠かせないのは、家庭教師であれ個別指導であれ、週2回以上の授業を受けることです。たとえどのような事情かあるとしても、絶対に守ってください。
◉塾関係者や語学教育関係者の共通の経験からすると、英語は週一回の授業では成果がほとんど上がらないからです。
◉ある程度の学習密度がないと、前回習ったことをすっかり全部忘れてしまうので、何もかも最初からやり直さなくてはならないからです。これでは英語力を積み上げる事が出来ません。
ちなみにロンブ・ カトー著 米原万里訳『 わたしの外国語学習法 』(ちくま学芸文庫)によると、外国語を学習するならば、週に最低10−12時間必要だという説が提示されています。
◉週一回だけの授業では、大半の学習者が挫折してしまうからです。
私自身、大学生時代にドイツ語等いくつかの外国語(第三外国語)に挑戦しましたが、週一回の授業しかない場合は、毎回の如く挫折してきました。今考えると、週一回しか授業がない場合、挫折してしまうのは、やむを得ないことなのでした。
◉落ちこぼれ君は学校の英語の授業がちんぷんかんぷん状態なので、塾や家庭教師の授業だけが英語の勉強時間となっているからです。
学校に追いついていれば、塾の授業と学校の授業がかみ合い、週一回でも成果が上がります。しかし、落ちこぼれ君の場合は、週2回以上通塾しましょう。
週2回を勧めると、やはり週一回で良いと希望される方が非常にたくさんいらっしゃいます。予算が足りないか、クラブ等で忙しいからといった理由があるようです。その場合にはどうしたら良いのか。いくつかのヒントを出しておきます。
◉期間限定で週二回の通塾をしましょう。
たとえば、4〜6か月限定で週二回の通塾はどうでしょうか。その後は家庭教師や塾を止めれば良いのです。ただし、予め家庭教師や塾の先生に、その旨、申し出ておくこと。
当塾でも、お医者さんの家庭のご兄弟が、8か月間限定の集中授業を受講されました。お兄さんは、その後、首都圏の国立大学医学部に現役進学されたそうです。
◉一回の授業時間を少し短くしましょう。
例えば、80分×2 → 60分×2 はどうでしょうか。
1時間あたりの料金は、多少割高になることが多いでしょうが、授業回数だけは2回以上を確保してください。
◉高校生になるまで待つ。
実際、高校生になってから、集中して勉強すれば、一気に遅れを取り戻すことは、不可能ではありません。高校生になると、少し大人になってきますから、自覚をもって勉強に取り組むことができます。また、大学受験が目の前に迫っていますから、やらなくては不味いと理解できるからです。そういう訳で、高校生で始めれば、成果が上がりやすくなります。つまり、コスパが良くなるのです。(ただし、いつまで経っても、やる気の出ない高校生も沢山います、念のため)。
◉ 学生講師や素人講師などに教えてもらう。
当塾としては、あまりお勧めしたくはないのですが、料金的に安くなるのであれば、そういう手もアリかとは思います。ただし、お子さんと一緒に遊んでしまう先生だけは、ご注意ください。
◉クラブ等で忙しいのであれば、オンライン授業(スカイプ授業)と対面授業を組み合わせましょう。
オンライン授業は通塾時間がかかりませんし、夜遅くの授業でも負担は減ります。
たとえば、
80分 ×1 対面授業
60分×1 オンライン授業
とするのはどうでしょうか。
当塾(シリウス英語個別指導塾)のようなプロの個別指導講師の経験から申し上げますと、真面目に宿題をこなしている生徒さんであれば、週二回(一回80分または60分)の授業で学校に追いつき、追い越すことが可能です。
しかし、どの生徒さんも必ずしも成績が上昇するとは保証できません。というのは、学校の英語の授業についていけなくなった生徒さんの多くは、なまけ者君だからです。
怠け者君は、ご家庭で宿題をしっかりと、毎日、やりません。完全にサボったりはしないとしても、授業前日の一夜漬けかもしれません。いわゆる「やっつけ仕事」ですね。その場合、週2回ではちょっと厳しいかもしれませんね。お金はかかってしまいますが、週3−4回くらいの授業を受けるのが良いということになります。
◉真面目な性格の生徒さん—-宿題を真面目にこなす生徒さんであれば、週2回でOKでOKでしょう。
◉毎日の宿題をサボりがちな生徒さん—-プロ家庭教師・個別指導塾講師の一対一個別指導で、週3−4回以上が必要です。
◉学生講師等の家庭教師や個別指導塾の場合—-中下位の中高一貫校で一流大学を目指していない場合は、必ずしもプロ講師(家庭教師)でなくても良いかもしれません。しかし、その場合、週4ー5回の授業を受けさせると良いでしょう。
個別指導塾の場合は、必ず1対1の個別指導で、しっかりと丁寧なレクチャーがあるところを選んでください。
個別指導塾と銘打っている塾の多くは、実は先生1人 対 生徒2~3人の指導だったりします。これでは、英文法を丁寧に体系的に説明することは出来ません。授業というのは、問題演習と答え合わせでしかなかったりする訳です。落ちこぼれ君は、これでは英語が分かるようにはなりません。
中学英文法は、易しいようでいて、実は大変難しいです。というのは、色々な単元を全部覚えていなくてはならないからです。
中学生で習う英文法には、例えば、一般動詞とbe動詞の区別、他動詞と自動詞、疑問詞、進行形、受動態、現在完了、助動詞、接続詞、前置詞などといった非常に多くの単元があります。定期試験であれば、それらを一つか二つマスターしていれば良いかもしれません。
しかし、将来一流大学に進学する中学生の場合、最終的には、全部の単元を完全理解をしていなければなりません。これが難しい。
新しい単元に取り組もうとすると、既習事項を完全に忘れていることを発見する。その繰り返しです。どうやって忘却の連続から抜け出したら良いのか。
巷の本屋さんでは、『中1ワーク』『中1ドリル』『中学英語を一つひとつ○○○』等々、沢山の問題集が売られています。どれも悪い教材ではありません。しかし、これらの問題集を、一通り完成させたとしても、中学英文法は習得できません。というのは、一度やっても、やった端から忘れてしまうのが普通だからです。
もちろん、中学英語のアプリ教材(iPad教材など)も、似たり寄ったりです。中学生は、最初に習ったことを、折り返し地点にたどり着いた時には、すっかり全部忘れてしまっているのです。
英語学習は、忘却との戦いです。忘却を克服する実績やノウハウがあるのかが問われています。
繰り返しになりますが、ポイントをまとめます。
中学生は次からつぎへとすぐに忘れてしまいます。生徒さんが、忘れても、忘れても、何度でも繰り返し学び直させること、そして、それを定着させるようなノウハウや実績があることが求められています。落ちこぼれ君を、最初の第一歩から訓練し、基礎を習得させる経験を積んだ講師(個別指導塾・家庭教師)がいるのかどうかが問われています。
オンライン授業はとても良いのですが、それでもやはり中学生には、対面授業の機会あることが望ましいですね。
対面授業が良い理由の一つは、生徒さんのテキストやノートをチェックしやすいことが挙げられます。
よろしければ、お子さんの単語本(帳)をチェックしてください。何も書き込みがない、きれいな単語本であれば、全然勉強をしていないか、あるいは、勉強法がわかっていない証拠です。きれい過ぎるノートも、感心できません。要するに、中高校生のほとんどは、ノートやテキストの使い方を知らないのです。
対面授業でないと、勉強状況や勉強法の指導を適切に出来ないのです。
(ただし、怠け者クンの場合は週3~4回の授業が必要)
★★★ ほとんど必須要件
(b)プロ講師(家庭教師・個別指導塾講師)による1対1の個別指導であること
(c)中学英文法養成のノウハウと実績があること。
★★強く望まれる
(d)対面授業があること (中学生の場合、オンラインだけでは厳しい)
以上、ぜひ参考にしてください。
後記 中高一貫校の英語落ちこぼれからの脱出のテーマについて、以下のブログを書きました。
中高一貫校の中学生、英語で落ちこぼれた時の対策(その手は悪手!)(←クリック)
英語の落ちこぼれ中高一貫校中学生のための処方箋 (←このブログ記事です)。
中高一貫校高校生の英語落ちこぼれへ組への処方箋(前編)(←クリック)
中高一貫校の英語の落ちこぼれ高校生への処方箋(後編) (←クリック)