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2024/03/15

2024年東大の英文要約問題[2]–2つの解釈の可能性

4)英文読解と解説ーー二つの解釈の可能性

 

第1パラグラフ

 

There is no doubt that one of the major issues of contemporary U.S. history is corporate propaganda. It extends over the commercial media, but includes the whole range of systems that reach the public: the entertainment industry, television, a good bit of what appears in schools, a lot of what appears in the newspapers, and so on. A huge amount of that comes straight out of the public relations industry, which was established in this country and developed mainly from the 1920s on. It is now spreading over the rest of the world.  (アンダーラインと赤字は私による。以下の英文も同様です)

 

最初のパラグラフでは、まずは主題が提示されます。現代アメリカ史において、企業プロパガンダは、大きな問題(issue)であり、しかも今では、世界中に広がっていると言うのです。

 

 

読み手としては、propagandaという強烈な言葉にハテナ?という思いを抱きつつ、何故そんなに大きな問題(issue)なのだろうかと読み進めることになります。言うまでもなくpropaganda は、非常に危険で否定的なニュアンスしかありません。全文を通して、受験生はこの言葉とその概念について自問自答することになるはずです。

 

 

 

先取りとなりますが、要約文においては、この「問題(issue)」が反映されている必要があります。(大手予備校の模範解答=要約文のほとんどは、いったい何が問題であるかのか理解しがたい、平板な文になっています。)

 

 

 

 

第2パラグラフ

 

Its goal from the very beginning, perfectly openly and consciously, was to control the public mind, as they put it. The public mind was seen as the greatest threat to corporations. As it is a very free country, it is hard to call upon state violence to crush people’s efforts to achieve freedom, rights, and justice. Therefore it was recognized early on that it is going to be necessary to control people’s minds. All sorts of mechanisms of control are going to have to be devised which will replace the efficient use of force and violence. That use was available to a much greater extent early on, and has been, fortunately, declining—although not uniformly–-through the years.

 

 

第2パラグラフで、プロパガンダの問題点が少しづづ明らかにされます。

 

 

プロパガンダの目的は「大衆の思考(the public mind)を操作すること」、そしてそのことが公然と意識的に(openly and consciously)論じられていました。

 

 

2つの論点が重要です。

 

 

 

一つは、プロパガンダの果たす役割の説明です。

 

 

 

大衆が自らの自由や権利を振りかざすと、[大]企業としては大いに困る。しかし、自由が認められている国において、国家が暴力的に武力を行使して鎮圧する訳にはいかない。だから、国家の暴力装置に取って代わるような、大衆の思考を操作し懐柔する技術の開発が必要になったのだそうです。(なお、もし書き手がマルクス主義者であれば、国家の「イデオロギー装置」といった表現を使ったでしょう。しかし、後で明らかにしますが、非マルクス主義者・非共産主義者ですから、表現は異なります)。

 

 

要するに、暴力を使った大衆の支配から、思考管理による支配へと変遷していったようです。統治の技術論としては進化なのかもしれませんが、読み手としては、両手を挙げて喜んで良いのか、ちょっと困惑してしまうところでしょう。

 

 

 

この文の書き手は、プロパガンダをどのように評価しているのでしょうか。ここでは、幸いにも(fortunately) という言葉が重要です。プロパガンダは少なくなる方が「幸い」だという訳ですから、プロパガンダを否定的に捉えているようです。

 

 

 

もう一つは、プロパガンダの活用は公然と意識的にされていたことです。そんなことが露骨に論じられていたとは、ちょっとビックリではないですか?どうしてそのような言葉が、公に包み隠さず論じられていたのでしょうか。そして、その帰結はどうなったでしょうか。読者はそういう疑問を持ちながら、第3・4パラグラフへと読み進めます。

 

 

 

第3・4パラグラフ

 

The leading figure of the public relations industry is a highly regarded liberal, Edward Bernays. He wrote the standard manual of the public relations industry back in the 1920s, which is very much worth reading. I’m not talking about the right wing here. This is way over at the left-liberal end of American politics. His book is called Propaganda.

 

Bernays’s Propaganda opens by pointing out that the conscious manipulation of the organized habits and opinions of the masses is the central feature of a democratic society. He said: we have the means to carry this out, and we must do this. First of all, it’s the essential feature of democracy. But also (as a footnote) it’s the way to maintain power structures, and authority structures, and wealth, and so on, roughly the way it is.

 

 

第3・4パラグラフでは、プロパガンダという、現代的に見ると否定的な印象しか持ち得ない技術の開発に尽力した人物、 Edward Bernays(エドワード・バーネイズ)が詳解されます。彼は、右翼ファシストや全体主義者とは全く正反対で、左派リベラルで民主主義の擁護者らしいのです。そしてその彼が、大衆の考えを操作すること、すなわちプロパガンダすることは、民主社会を維持し、既存の権力構造や富の構造を維持する方法であると論じていたようです。 

 

 

読み手は、第二パラグラフまではプロパガンダ=大衆の思考操縦=悪の技術かな?と思い始めているのですが、今度は、強力なカウンターを喰らってしまいます。プロパガンダは、実は、民主政治の要にある方法論だったのか?!と仰天するのです。

 

 

同時に、この文の書き手はいったい何を言いたいのか、どういう立場に立っているのか、読者は少々戸惑うはずです。

 

 

 

第5パラグラフ(最終パラグラフ)ーー二つの解釈

I should mention that terminology changed during the Second World War. Prior to World War II, the term propaganda was used, quite openly and freely. Its image got pretty bad during the war because of Hitler, so the term was dropped. Now there are other terms used.

 

 

 

 

ここで話が急展開します。従来であれば、公然と何の気兼ねもなく(openly and freely) 用いられていたプロパガンダという用語が、第二次大戦に入ると突然用いられなくなったのです。というのは、反民主主義の代表格であるナチス総統のヒトラーが、プロパガンダという用語を積極的に使ったので、この言葉の印象が悪くなったからだそうです。(注。ナチス独逸には、プロパガンダ省というのがありました。もちろん宣伝省と訳すことも可能です)。

 

 

このパラグラフをどう解釈するのかで、実は見解が大きく2つに分裂しています。

 

 

一方は、民主主義を体現しているバーネイズの「良い」プロパガンダが、ナチス・ヒトラーの「悪い」プロパガンダ政策のとばっちりを受け、プロパガンダという言葉が悪い印象を持たれるようになってしまった。だから第二次世界大戦以後は、大っぴらに活動できなくなってしまったという解釈です。つまり、バーネイズはヒトラーのとばっちりを受けたですから、<とばっちり説>と呼びましょう。

 

 

 

他方は、バーネイズの米国のプロパガンダも、ヒトラーのナチス独逸のプロパガンダも、本質的な差異はあり得ないとする解釈です。なにしろ大衆の意識や思考を操縦する技術というのですから、どのような体制にも奉仕できるはずです。また、一般大衆を愚弄するエリート主義の立場でしかあり得ないからです。

 

 

別の言い方をすれば、プロパガンダは民主社会の要だというのは、あくまでもバーネイズの誤った説であり、書き手をそんな説を実は全然認めていないのだと解釈しているのだ、と考えます。(注。民主主義そのものが不正にみちた体制に過ぎない、という解釈もありうるようですーー追加注釈となります)。

 

 

実際、ヒトラーのような反民主主義者がプロパガンダを駆使したのであれば、バーネイズの議論、つまりプロパガンダと民主主義が表裏一体であるかという主張は、極めて怪しいものだと了解できるはずです。いやむしろ、嘘を宣伝し広めるという意味での「プロパガンダ」にすぎなかったのだと、英文の書き手は言いたいのでではないでしょうか。

 

 

要するに、バーネイズの嘘がバレてしまったので、プロパガンダという言葉は、第二次世界大戦以後、表立って使えなくなってしまったという訳です。これを<バーネイズのデマ暴露説>としましょう。

 

 

 

<とばっちり説>と<デマ暴露説>のどちらが正しいのか。実を言えば、大手予備校がネット上で掲載している模範解答のほとんど全ては、<とばっちり説>を採用しているように見えます。実際、論理的には大きく破綻していませんし、そういう解釈も否定しきれないかもしれません。

 

 

 

しかし、その上で、私は<デマ暴露説>を取ります。いくつかの理由を挙げておきます。

 

 

 

① 第一パラグラフの issueは何か

 

 

<とばっちり説>では、バーネイズの思想を肯定的に受容しています。つまり、民主主義の要にプロパガンダがあるというバーネイズの思想を、英文の書き手が肯定している説ですが、その場合、一番最初のパラグラフの問題(issue)がいったい何なのか説明不能に陥ります。バーネイズの思想を肯定してしまったら、企業プロパガンダが世界を跋扈しているとして、何の問題もないことになるのではないでしょうか。

 

 

 

やはり、プロパガンダに根本的な問題があるのだと書き手は考えているとみなすべきでしょう。

 

 

 

② 東大生とエリート主義

 

 

民主主義の中核にプロパガンダが不可欠だというバーネイズの説を認めるとしましょう。この時、その民主主義は、「エリート主義的民主主義」とか「寡頭制民主主義」(←表現を改めました)、「指導される民主主義」と呼ばれることになるでしょう。つまり「参加民主主義」とか「ポピュラーデモクラシー」といった概念とは対立し、重要なことは賢人やエリートが決定すれば良いという民主主義です。

 

 

受験生は将来の東大卒業生候補ですから、そういったエリート主義に共感を覚えるのは、もしかしたら当然かもしれません。なにしろ東大生になれば、将来は電通に勤めたり、高級官僚になったり、あるいは東大教授になっったりして、日本の「愚か」で「無知な」一般大衆の思考や意識を操り指導する「エリート」になりたいと憧れてもおかしくないからです。

 

 

論理的には全否定しにくいです。しかし東大ともあろうものが、バーネイズのような天才的エリート主義者ーーおそらくサイコパスでしょうーーを称賛する英文を、敢えて入試問題には採用するとは考えられない。何しろ、マッド・サイエンティストならぬマッド広報マンの思想ですからね。

 

 

 

マッドサイエンストに密かに(あるいは公然と)憧れている医学部受験生がいるとしたら、大学は面接で絶対に落とすでしょう。同様に、マッド広報マンになりたい東大受験生は、落とさなくてはなりません。

 

 

 

そんなわけでデマ暴露説が正しい、あまり論理的でない理由ですが、私はそう信じてしまうわけです。(もちろんのことですが、エリート主義を信奉する立場から、私の論点が批判されるかもしれませんね)。

 

 

 

③バーネイズと書き手の正体は?ーー後付けの考察

 

 

後付け的な議論となりますが、<デマ暴露説>が正しい状況証拠を出しておきます。

 

 

 

バーネイズの著書の翻訳本のタイトルは『プロパガンダ教本: こんなにチョろい大衆の騙し方 (2007年) だそうです。日本語のサブタイトルは、びっくり仰天ですね。

 

 

 

そして、これが決定的な決め手となるのですが、英文の書き手は、あの有名な言語学者のチョムスキーだと判明しました。

 

 

改めて紹介するまでもありませんが、チョムスキーは著名な政治評論家でもあります。イデオロギー的には左翼・リベラルに近いが、共産主義や前衛主義左翼(=エリート主義左翼、民主集中制)とは対立する立場にいます。いわゆるアナーキズムですね。当然のことながら、アナーキストは大衆の思想を操縦するなどというエリート主義には断固として反対するはずです。

 

 

 

また、チョムスキーはバーネイズ『プロパガンダ』を評価しているようですが、つまるところ、悪魔の自白として、貴重な資料だと考えているのでしょう。

 

 

Bernays’ honest and practical manual provides much insight into some of the most powerful and influential institutions of contemporary industrial state capitalist democracies.”—Noam Chomsky (←クリック)

 

 

 

 

以上の理由から、バーネイズはヒトラーのとばっちりを受けてしまった説は、誤りなのです。

 

 

 

 

話のオチは?

 

さて、ヒトラーが積極的にプロパガンダ活動をすることによって、バーネイズのプロパガンダの怪しさが暴露されてしまった訳です。しかし、これをオチとしてはいけないでしょう。プロパガンダという言葉は、第二次大戦の終結とともに消えたが、名前を変えているだけです。大衆の思考操縦という技術は、秘密裏に活用され、世界中に広がり、現在に至っている訳です。ヒトラーも重宝した思考操縦の技術が、世界のあらゆる所で今なお貫いているのです

 

 

 

これは、実に恐ろしくゾットすることではありませんか。最後の静かなつぶやきで、我々は今日の世界の現状を思わずふりかえってしまうことになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おわり。なお、大手予備校の模範解答についての検討は別の機会に行います。

 

 

 

 

 

興味深い資料

 

Edward Bernaysについては、過去にも入試問題等でとりあげられているようです。(他にも、英語長文の問題集でも取り上げらていたはずですが、残念ながら問題集の名称はわかりませんでした。タバコ会社の依頼を受け、女性にもっとタバコを吸わせる心理操作キャンペーンの有名なエピソードがとりあげられたはずだったのですが)

 

バーネイズを取り上げた英語長文問題

 

中央大学商学部(2013年)
英検1級の長文読解(2016年度第3回)

 

 

エドワード・バーネイズの翻訳

エドワード・バーネイズ(中田安彦訳)『プロパガンダ教本: こんなにチョろい大衆の騙し方』 (←クリック)(2007年=2010年)

 

 

なお、問題を再掲しておきます。

 

2024-1

 

 

 

2024-2

 

 

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2024/03/15

2024年東大の英文要約問題[1] ーー問題と解答例

2024年東大の英文要約問題[1]ー問題と解答例

 

 

はじめに

 

本来は、「生成AI✖️東大英語(3)ーー生成AIには話のオチが分からない」というタイトルのブログを書くつもりでしたが、書いているうちに予定が完全に変わってしまいました。結果、2024年の東大の英文要約の解説をニ回に分けて書くこととになりました。

 

 

なぜ予定を変更せざるを得なくなったのか。一つには今回の英文は、少々書き手の意図が分かりにくいものだったからです。さらに重要なのは、大手予備校がオンライン上で発表する模範解答に、私が大いに不満を覚えたからです。些細なミスなどではなく、英文のオチだとか、主張をはっきりと咀嚼してないものばかりだったからです。

 

 

構成としては、今回は、東大が出した問題、およびその解答例を、大手予備校の代表的なものと、当塾のもののを紹介することにします。そして次回には、詳しい英文の解説を提供いたします。

 

 

 

1)東大英語はどんな球種を投げてくるか分からない。

 

前回のブログにおいて、生成AI(ChatGPTなど)は要約文の作成において、起承転結の転の部分を敏感に捉えて理解する事ができないと論じました。しかし、当たり前のことですが、東大英語の文章はいつも起承転結のやり方で論述しているわけではありません。2020年の英文は、たまたま起承転結で捉えられるのに過ぎないのです。

 

 

 

特に東大の入試問題の場合に顕著なのですが、全く意表をつく文章の展開方法が用いられている可能性があります。最初に結論があってその後に理由を述べますよとか、最初に問いかけがあって最後に結論が来ますよ、といった陳腐なワン・パターンにはとどまらないのです。

 

 

要するに、東大が要約問題で用いる英文は、ワンパターンな文章展開の認識では読めないのです。現行の生成AIの能力からすると、ほぼ読解不可能だろうと予想できます。

 

 

 

2) 2024年の東大英語要約文には、最後にオチがある

 

2024年の東大要約問題では、最初にちょっとした謎が提起され、最後のパラグラフで、とってもオチが出てきました。前半の文章の80%では、文意が分かりにくいまま進んだのですが、最後の最後にボソッと呟きが入り、読み手は「ああ、結局そういうことだったのか」と驚嘆することになります。

 
オチの結果、前のパラグラフで導入された怪しげな命題がひっくり返され、読み手をゾーッとさせるブラック・ユーモアが提示されることになったのです。とても興味深い小話でした。

 

 

もっとも、ある種の予備知識や、政治・歴史・社会等についての教養がないと、このオチとブラック・ユーモアを理解することは出来ません。普通の高校受験生には、少々あまりにもハードルが高すぎました。(もっとも受験生は心配する必要はありません。オチを理解できなくても、ある程度以上の点数を取れるよう配慮があるはずです)。
もちろん生成AIにも、やっぱり難しすぎました。

 
他方、英語講師はオチを説明することによって、英文全体の要約をしなければならないはずです。しかしながら、ほとんどの予備校や塾講師は気が付いていないようで、英単語の意味を和訳してペタペタと並べ、平板で面白くもなんともない要約を作り上げてしまいました。さらには、絶対にやってはいけないはずの、致命的なミスすらしている「模範解答」すら見出されます。

 

 

 

 

3)2024年の東大の英文要約問題

 

以下は、2024年の東大入試の英語問題1(A) の全容です。

 

 

以下の英文を読み、 その内容を70~80字の日本語で要約せよ。 句読点も 字数に含める。

  There is no doubt that one of the major issues of contemporary U.S. history is corporate propaganda. It extends over the commercial media, but includes the whole range of systems that reach the public: the entertainment industry, television, a good bit of what appears in schools, a lot of what appears in the newspapers, and so on. A huge amount of that comes straight out of the public relations industry, which was established in this country and developed mainly from the 1920s on. It is now spreading over the rest of the world.

 

  Its goal from the very beginning, perfectly openly and consciously, was to “control the public mind,” as they put it. The public mind was seen as the greatest threat to corporations. As it is a very free country, it is hard to call upon state violence to crush people’s efforts to achieve freedom, rights, and justice. Therefore it was recognized early on that it is going to be necessary to control people’s minds. All sorts of mechanisms of control are going to have to be devised which will replace the efficient use of force and violence. That use was available to a much greater extent early on, and has been, fortunately, declining—although not uniformly—through the years.

 

  The leading figure of the public relations industry is a highly regarded liberal, Edward Bernays. He wrote the standard manual of the public relations industry back in the 1920s, which is very much worth reading. I’m not talking about the right wing here. This is way over at the left-liberal end of American politics. His book is called Propaganda.

 

  Bernays’s Propaganda opens by pointing out that the conscious manipulation of the organized habits and opinions of the masses is the central feature of a democratic society. He said: we have the means to carry this out, and we must do this. First of all, it’s the essential feature of democracy. But also (as a footnote) it’s the way to maintain power structures, and authority structures, and wealth, and so on, roughly the way it is.

 

  I should mention that terminology changed during the Second World War. Prior to World War II, the term propaganda was used, quite openly and freely. Its image got pretty bad during the war because of Hitler, so the term was dropped. Now there are other terms used.

 

 

2024-1

 

2024-2

 

 

 

4)模範解答例

 

 

ここでは、模範解答をそのまま列挙しておきます。

 

 

代ゼミ

暴力に頼らず大衆の心を操作し、民主主義体制を維持するため、戦間期に米国で生まれたプロパガンダは、今では呼称を変えて、宣伝広告などとして世界中に広まっている。(78字)

 

 

 

駿台

企業のプロパガンダは暴力に頼らない大衆心理の操作を目的としており、民主主義の本質的特性だが、この用語自体は第二次大戦中の悪印象のため、現在は使われていない。(78字)

 

 

河合塾

企業のプロパガンダが目指す非暴力的な大衆心理の操作は、当初は民主主義の根幹をなし社会を維持する手段とされた。だが、この語は戦時中に印象が悪化し使われなくなった。(80字)

 

 

東進

米国での企業のプロパガンダは、暴力を用いない大衆心理の操作を目標とし, これは民主社会の要と認識されていたが、ヒトラーによる印象悪化を受けてその呼称は変えられた。 (80字)

 

 

 

ChatGPT-4

 

現代アメリカ史の大きな課題の一つは企業プロパガンダで、これは1920年代から発達した公共関係産業によって、大衆の意識を制御することを明確な目標としている。エドワード・バーネイズはこの分野の先駆者で、民主社会における大衆操作の重要性を説いた。第二次世界大戦後、プロパガンダの語感が悪化したため、用語が変更された。(155字)

 

 

シリウス英語個別指導塾

プロパガンダは大衆の思考操作技術だが、以前は民主社会の要として公然と称賛された。だがヒトラーが使い出すとそのウソがばれ、この言葉を使わず内密に思考操作を続けた。(80字)

 

プロパガンダは大衆の思考操作技術だが、以前は民主社会の要として公然と称賛された。だがヒトラーが使うとこの言葉を引っ込め、秘密のうちに技術を運用するようになった。(80字)

 

 

(追加別解 2024/03/17)

宣伝は大衆の考えを操る技術で、暴力を使わずに民主体制やナチズム体制の存続に貢献できる。かつては大っぴらに、現在は水面下で、世界中で広範囲に運用されている。(77字)

 

 

 

 

 

 

当塾の要約解答例は、大手予備校のものとかなり書き方が異なっていることは、読んでいただければすぐにお分かりかと思います。解説・説明は次回で。

 

 

 

 

 

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2024/03/07

ChatGPT×東大入試(2)—-生成AIに欠如しているもの

5)ChatGPT−4は簡潔な要約文を作成できない

 

前回のブログでは、ChatGPT−4は東大の要約問題の字数制限を守れないと述べました。求められた字数を超えるか、あるいは満たないかのいずれかになってしまうのです。

 

 

なお、他の年度の東大の要約問題もChatGPTにか解かせましたが、いずれも字数不足または字数超過になってしまいました。しかし、要約文の文章の仕上がりに着目してみると、単純に東大が要求する字数を守れないと言う問題ではないようです。むしろ、長めの要約文ならば良いものを作れるのですが、簡潔な要約文と作成するとしっかりしたものが出来ないのです。

 

 

前回記事の参考資料にもアップしておきましたが、ChatGPTが作成した長すぎる要約文を読んでみてください。

 

 

「エイジフレンドリー[=高齢者にやさしい] コミュニティ運動は、急速に増える高齢化人口に対応するために登場しました。この運動は、異なる世代が共通の利益を認識し、行動する包括的な社会を目指しています。しかし、実際には高齢者へのサービスに焦点を当て、若者や家族からのデータ収集が不足しています。異なる世代のニーズを理解し、全ての世代が幸せに暮らせるコミュニティを築くためには、多世代からの意見を集めることが重要です」。 (ChatGPT、193字)

 

「エイジフレンドリー[=高齢者にやさしい] コミュニティ運動は、多世代が共に幸せに暮らすために始まりましたが、実際には高齢者中心の対応で若者の意見が不足しています。全世代に適した都市を作るには、多世代からのデータ収集が必要です」  (ChatGPT、101字)

 

 

東大が求める簡潔さを満たしてはいませんが、英語長文の要約として読めば、的確で信頼のおける内容です。模範解答にしても良いぐらいです。(もしよろしければ、前回、参考文献として掲載した英文または全訳も読み返してください)。

 

 

他方、大事なエッセンスを残しつつ、字数を短くするのが生成AIは苦手です。誤解がないように付け加えると、単に短くすることならば簡単に出来ます。しかし、文章の中にあるピリッとしたスパイスの部分、あるいは興味深い論点まで全部切り捨ててしまうのです。

 

 

6)ChatGPTは「起承転結」の「転」を捨象してしまう

 

生成AIは、起承転結でいえば、「転」の部分を欠落させ、「起→承→結」の流れで要約しようとしてしまうのです。つまり、文章の展開だとか流れにある面白さを、生成AIは認識出来ないようなのです。結果、簡潔かつ興味深いの両立が出来ないのです。

 

前回の参考資料であげたChatGPTの、短すぎる要約文を再掲してみましょう。

 

 

「多世代が幸せに暮らすための高齢者に優しい町作り運動は、全世代向け都市づくりには、高齢者だけでなく若者の意見も必要です」 (59 語)

 

「多世代が共生する高齢者に優しい町作り運動では、若者からのフィードバックも集め、全ての年代が快適に暮らせる環境が求められています」(64語)

 

 

どちらの要約文も単線的な文章展開です。要するに、次のような展開です。

 

  • 高齢者に優しい町づくり→若者の意見→全世代が快適になる

  • 高齢者に優しい町づくり→全世代向け→若物の意見

 

 

 

しかし本文の文章の第三・第四パラグラフをよく読んでる必要があります。(よろしければ、これも前回のブログの最後(←クリック)に掲載されておりますので、お読みください)。

 

 

第三パラグラフは、however(=しかしながら)を冒頭部分に置いて始まります。より正確に書けば、In practice, however, で始まります。つまり、高齢者に優しい町づくり運動は、何らかの問題を抱えていたのです。ついで第四パラグラフでは、 その問題を理念と実践のギャップとして捉えた上で、ギャップが生じた理由を考察し、さらにその処方箋を提示します。

 

 

一つの理念や理想(=高齢者に優しい町づくり)の実現が、現実には一筋縄でうまくいかなかったこと、そして壁にぶつかったからこそ、その過程で様々な考察が生まれた訳です。人間の解答者であれば、字数が許すのであれば是非とも取り上げたいと考えるはずです。

 

 

図式化すれば、次のようなものになるでしょう。

 

 

(起)高齢者に優しい町づくり→

 

(承)その理念=全世代にとって良い町→

 

(転)高齢者中心の実践(でうまくいかない

 

(結)実践の(失敗した)理由と打開策

 

 

 

生成AIに要約文を短くせよと命令すると、「起承転結」の「転」の部分は捨象してしまえば良いと判断し、60字前後の要約文を作ってしまいます。けれども設問では80字まで書けるのです。人間の解答者ならば、残りの20字を使って「転」の箇所を表現できると考えます。

 

ChatGPTが出した要約文と人間の書いた要約文を再掲しておきます。

 

 

最初の青の文がChatGPTによるもの、次の赤の文が人間の解答です。人間の解答のアンダーラインの部分が「転」の箇所となります。

 

 

「多世代が共生する高齢者に優しい町作り運動では、若者からのフィードバックも集め、全ての年代が快適に暮らせる環境が求められています」ChatGPT、64語)

 

 

 

「高齢者にやさしい町づくりのためには、高齢者の意見に焦点を当てれば良いと想定されがちだ。しかし現実には世代差が存在するので、全世代の声を集めないとうまくいかない」(シリウス英語個別指導塾、80字)

 

「全世代を視野に入れるべき町づくりが実際は高齢者優先になるのは、高齢者に良い社会は万人に良いと考えるからだ。 考え方の異なる全世代から意見を募るべきである」 (駿台青本、 76字)

 

「高齢者にやさしい町づくりは全世代共通の利益を目指すが 、高齢者に良い社会は万人にも 良いと考え高齢者を優先しがちだ。世代間の差を考慮し各世代から意見を集めるべきだ」 (竹岡『東大の英語、要約Unlimited』、80 字)

 

 

「高齢者に優しい町づくりは、社会的な繋がりの強化と全年代への配慮を目指すが、これまで高齢者のみに焦点を当ててきた今後は様々な世代からデータを集めることが必要だ」 (大学受験.net 80字)

 

「高齢者にやさしい町づくりは幅広い世代にとって共通の利益になると謳われながら、実際には高齢者の利益が偏重されている。全世代からデータを集め改善を模索すべきである」(敬天塾解答、80字)

 

 

7)結論あるいは一つの仮説ーー生成AIに欠けているもの

 

 

「転」の部分を文章のエッセンスとみなすか、それを見逃してしまうかが、人間と2024年3月現在の生成AIの分かれ目となっている。ネット上の模範解答も含め、いくつかの要約文を調べたが、いずれも「転」を重視している。人間の解答はバリエーションがあり、重点部分あるいは捨てる部分が何かについての判断は、多少異なってはいる(注)。しかしそれでも、共通項はしっかりとあるのだ。

 

 

人間には、「転」あるいはドラマ的展開に反応する能力が備わっているのではないか。あるいは、人が誰かに語りかけたり、文を書いたりする時、それを推進するモチベーションとなる力の源に感じる能力といったら良いだろうか。他方生成AIは、音声言語であれ書いた文章であれ、何か平板なものにしてしまう傾向が有るし、また感知できないのではないか

 

 

生成AIが、東大の要求する簡潔で面白い要約文を書けないからといって、こんな風に議論を展開して良いのかと思う人もあろう。しかし、とりあえず2024年3月8日現在、私はそんな風な感想を持ったと記録しておきます。

 

 

以上

 

 

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(注)実を言うと、今回の問題についての竹岡先生の採点基準には、ちょっと違和感を持つ。こんな基準はあまりに許容度が狭すぎると思っている。また、大学受験.netさんの問題解説では、「理由(=なぜ高齢者中心のデータ収集をしてしまったのか)は結果よりも優先度が低い」と言う明言があり、それは要約文にも反映されています。私はちょっと同意できないのではあります。むしろ駿台青本の立場に賛成しているわけです。しかし、そのような見解の差異は、たいして大きな差異ではないだろうし、要約例のバリエーションとして広く認めていくべきであるという立場をとっています。

 

 

 

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2024/03/05

ChatGPT×東大入試(1)ーー生成AIは東大要約問題を解けるか

Chat GPT×東大入試(1)

 

ー生成AIは東大の英語要約問題を解けるか

 

 

 

1)ChatGPTは東大英語要約問題を正解できる?出来ない?

 

 

ChatGPTを使えば文章の要約を瞬時にやってのけると、一部ではちょっと前から大評判です。もちろん英文の要約も、一瞬で仕上げてくれます。

 

 

となると英語教育関係者ならば真っ先に気になるのは、東大の入試英語にある要約問題で生成A Iが合格点を取れるのか否かです。

 

 

まずはネットで検索してみましょう。東大の英語要約問題を生成AIが解けるか否かについて、いくつかのサイトが出てきます。(しかしちょっと不思議なことに、あまり多くのサイトが出てきません。「東大英語 要約 ChatGPT」と検索してみたところ、正面からこのテーマに臨んだのは、2024年2月の段階ではわずか3件でした。)。

 

 

とはいえその3件の記事をチェックしてみると、ちょっとおもしろい結果が出てきました。ChatGPTは東大の英語要約問題を簡単に解くことができると論じると述べるサイト(例「東大入試の英文要約問題とか簡単だろうなと思ったらやっぱり余裕だった」と「東大英語大問1をAIが解決!?チャットGPTが難関に挑戦!」などの記事)と、出来ないというサイトに分かれていたのです。(出来ないと断じるのは、敬天塾さんという塾のサイトでした)。

 

 

Chat GPTの文章要約力について、意見が完全に真っ二つに割れてしまった訳ですが、どちらが説得力があるでしょうか。(宜しかったら、皆さんも読み比べてみてください)。

 

 

2)生成AIは字数制限を守ることが出来ない。

 

結論を先に述べます。生成A Iが東大英語の要約問題を解けるか否かですが、どう頑張っても合格点は取れそうにありません。つまり、敬天塾さんの評価が正しいです。調べてみると、敬天「塾」さんは東大入試を専門とする学習塾さんのようです。情報に信頼性があるのは、至極当然の事かもしれません。

 

 

他方、Chat GPTならば東大英語の要約問題を簡単に解くことが出来ると絶賛したのは、英語学習や教育関係とは無関係な人たちだと分かります。結局こういう人たちが、いい加減な情報発信をしているようです。

 

 

ChatGPT等の生成AIの情報に限定して述べると、具体的な試行錯誤を踏まえず、ただただ便利ですよと紹介しているものがあまりに多いようです。どのような使い方をすれば、どこまで有益なのか、実際に自分で使って検証していない情報を安易に鵜呑みにしてはいけないようです。

 

 

さて、話を戻しましょう。生成A Iはどうして東大英語の要約問題で合格点を取ることができないのでしょうか。答えは実に簡単明瞭です。ChatGPTであれ、Geminiであれ、Claude2であれ、生成AIは要約問題に課される字数制限を守ることが出来ないのです。(ただし2024年3月現在の時点において)東大英語の要約問題は、「70〜80字の日本語で要約せよ」といった設問が与えらるのが普通です。しかし、ほとんどの場合、長過ぎたり短すぎたりする要約文になってしまいます

 

 

ちなみに、「東大入試の英文要約問題とか簡単だろうなと思ったらやっぱり余裕だった」というブログ記事を読んでみますと、Chat GPTは128字で要約していました。しかし、設問をよく読んでみると、は80〜100字の日本語で答えなくてはならないのです。これでは0点です。

 

 

さて、ここで生成AIの致命的な欠陥は、生成AIに書き直しや修正をするようにと何度も命令を出しても、字数制限を厳守出来ないということです。多すぎるか、少なすぎるかのどちらかになってしまうのです。だから生成AIには要約力はあるが、東大の設問に答える力はないと結論づけざるを得ないのです。

 

 

 

3)2020年の東大英語要約問題をChatGPTー4に解かせる

 

 

2020年の東大の英語要約問題を生成AI(Chat GPTー4)に解かせてみました。なお、東大の入試問題、およびChatGPTの解答については、一番最後に参考資料として掲載しておきます。ご興味のある方は御覧ください。

 

 

設問は、与えられた英文を読み、70〜80字で要約するものです。ところが生成AIの最初の要約は、なんと193字です。字数を守るように命令しているのですが、ChatGPTは全く字数制限を考慮してくれないのです。そこで字数を厳守するように命令すると、101字に書き直してくれました。もちろん、これでも長すぎます。だから再度書き直しを強く命ますが、今度は短すぎる59字になってしまいました。そこでもう一度書き直しを命じましたが、出てきた答案は64字で、やはり字数不足です。

 

まとめますと、193字⇛101字⇛59字⇛64字 と長すぎたり短すぎたりしてしまうことしか出来なかったのです。

 

結局、ChatGPTの方が根を上げてしまいました。字数を考慮する、いや字数を数えることは、生成AIが一番苦手とすることのようです。

 

 

4)ChatGPTの問題点は字数厳守が出来ないだけか?(続く)

 

次のことが問われます。生成AIが字数制限を考慮できないのは、甚だしく不味いことなのか、それともどちらかというと、些細な問題に過ぎないのかという問です。

 

実際の大学入試で字数制限を守れないのであれば、それは確かに致命的なミスです。しかし、つまるところ、たかだが東大受験には「向いていない」に過ぎないと考えることも出来るではないですか。おそらく、東大英語の要約問題は解けなくても、たとえば(国立)電通大の昔の要約問題ならば、正解できるに違いないのですから。

 

 

さて、私にはしっかりとした確証がある訳ではありません。しかし、ChatGPTには、ある種の致命的な読解力不足があるのではないかと考えて言えます。ダラダラとまとめたりする事ーーそれは貴重な能力には違いないのです!ーーは出来るが、文章の急所やポイント、つまり、「ほら、ここが大事だよね」と書き手が強調したい点を、あるいは「あっ、なるほど。そういうことか」と読み手が相槌を打ちたくなるエッセンスを、生成AIがしっかりとは捉えられいないように思われるのです。だからこそ、東大が求める絶妙な字数の範囲内で、英文を要約する事ができないのではないでしょうか。

 

 

次回に続きます。

 

参考資料

 

2020年東大英文要約問題

 

1A)以下の英文は、高齢者にやさしい(age-friendly町づくりを促進するための世界的な取り組みについて論じたものである。この文章の内容を7080字の日本語で要約せよ。句読点も字数に含める。

 

 

The age-friendly community movement has emerged as a powerful response to the rapidly growing aging population. Although definitions of “age-friendly community” vary, reflecting multiple approaches and methods, many models highlight the importance of strengthening social ties and promote a vision that takes into account all ages. For example, Kofi Annan, who served as the seventh Secretary-General of the United Nations, declared in the opening speech at the UN International Conference on Aging in 1999, “A Society for All Ages embraces every generation. It is not fragmented, with youths, adults, and older persons going their separate ways. Rather, it is age-inclusive, with different generations recognizing and acting upon their common interests.”

 

 

The World Health Organization and other international organizations further articulate this premise by defining aging as a lifelong process: “We are all aging at any moment in our life and we should all have the opportunity to do so in a healthy and active way. To safeguard the highest possible quality of life in older age, WHO endorses the approach of investing in factors which influence health throughout the life course.”

 

 

In practice, however, the age-friendly community movement has focused primarily upon the needs and interests of older adults and their caregivers and service providers. In doing so, it has failed to gather enough data from youth and families about what produces good living conditions in a city or about opportunities for and barriers against working together with older adults.

 

 

What accounts for this gap between vision and practice? One answer may lie in the common assumption of the age-friendly community movement that what is good for older adults is good for everyone. In other words, if the age-friendly movement succeeds in making communities suitable for older adults, those communities will then be suitable for all generations. While there are many shared interests among different generations, recent studies in the United States and Europe indicate that young adults and older adults differ in their voting patterns and attitudes more than at any time since the 1970s. These studies suggest that in order to fully understand what constitutes a city that is friendly to people at different stages of the aging process, it is critical to gather data from multiple generations about what makes a city good for both growing up and growing older.

 

 

 

全訳(拙訳)

高齢者にやさしい町づくり運動は、急速に増加する高齢者人口への有力な対応策として登場しました。「高齢者にやさしい町づくり」の定義は様々で、多様なアプローチや方法を反映していますが、多くのモデルでは社会的絆を強化すること重視し、全ての年齢を考慮に入れる将来像(vision)を訴えかけています。例えば、国連第7代事務総長を務めたコフィー・アナンは、1999年の国連国際高齢者会議の開会演説で、「全年代のための社会とは、すべての世代を喜んで受け入れるものです。若者、成人、高齢者がそれぞれバラバラにわが道を歩んでしまうのではありません。むしろ様々な世代が、共通の利益を認識して行動し、全年齢を包括的に受け入れるものです」と宣言しました。

 

 

世界保健機関(WHO)およびその他の国際機関は、加齢を一生涯にわたるプロセスであると定義し、この前提をさらに明確にしました。『私たちは皆、人生のどの瞬間においても加齢しています。だから、健康的に積極的に年を取っていける機会が、すべての人に与えられるべきなのです。高齢期における生活の質を可能な限り最大限に守っていくために、生涯を通して健康を維持できるような要因に投資していくアプローチを、WHOは支持しています』

 

 

しかしながら高齢者にやさしい町づくり運動は、いざ実践段階となると、高齢者とその介護者およびサービス提供者のニーズや関心に、もっぱら焦点を当てしまいました。すると、都市における良好な生活条件を生み出し、高齢者の協働の機会をもたらしたり、あるいは逆に障壁となってしまうものについて、若者や家族から十分なデータを集められなくなりました。

 

 

この理想像(ヴィジョン)と実践との間のギャップを、どうやって説明できるでしょうか?一つの答えは、高齢者にやさしい町づくり運動において当たり前に想定されていることに見出されるのかもしれません。つまり、高齢者にとって良いものは、すべての人にとって良いという想定に問題があるのかもしれません。別の言い方をすれば、高齢者に適した町作りに成功すれば、その町づくりは全世代の人々に適合したものになるはずだという想定です。異なる世代間に共通する関心事は沢山ありますが、最近のアメリカとヨーロッパの研究では、若者と高齢者とでは、投票パターンや政治社会的態度について、1970年代以降のどの時代をとっても、差異が大きくなっていることが示されています。つまり、加齢プロセスの様々な段階にいる人々にとって良いと思える都市はどんなものかを完全に理解するためには、成長していく人と老化していく人の双方にとって望ましい都市について、複数の世代からデータを収集することが重要なのです。

 

ChatGPTの要約例

 

最初の要約文では、字数制限を完全に無視した。設問では70-80字のところ、193字になってしまった。

 

「エイジフレンドリーコミュニティ運動は、急速に増える高齢化人口に対応するために登場しました。この運動は、異なる世代が共通の利益を認識し、行動する包括的な社会を目指しています。しかし、実際には高齢者へのサービスに焦点を当て、若者や家族からのデータ収集が不足しています。異なる世代のニーズを理解し、全ての世代が幸せに暮らせるコミュニティを築くためには、多世代からの意見を集めることが重要です」。(193字)

 

 

字数厳守を命令したが、101字でまだまだ字数が多すぎる。

「エイジフレンドリーコミュニティ運動は、多世代が共に幸せに暮らすために始まりましたが、実際には高齢者中心の対応で若者の意見が不足しています。全世代に適した都市を作るには、多世代からのデータ収集が必要です(101字)

 

さらに字数厳守を命令してみると、今度は59字で少なすぎる。

「多世代が幸せに暮らすための高齢者に優しい町作り運動は、全世代向け都市づくりには、高齢者だけでなく若者の意見も必要です」(59字)

 

再度、字数を守るように命令したが、64字でまだ字数が足りない。設問で求めれれているのは、70~80字なのですが。

「多世代が共生する高齢者に優しい町作り運動では、若者からのフィードバックも集め、全ての年代が快適に暮らせる環境が求められています」(64字)

 

 

人間の要約例

 

「高齢者にやさしい町づくりのためには、高齢者の意見に焦点を当てれば良いと想定されがちだ。しかし現実には世代差が存在するので、全世代の声を集めないとうまくいかない」(シリウス英語個別指導塾、80字)

 

 

高齢者にやさしい町作りは、理念としては全世代の利益に沿うはずだが、現実には高齢者の意向ばかり反映された。しかし世代差が存在するので全世代の声を集めるべきだ」(シリウス英語個別指導塾の別解、74字)

 

 

「全世代を視野に入れるべき町づくりが実際は高齢者優先になるのは、高齢者に良い社会は万人に良いと考えるからだ。 考え方の異なる全世代から意見を募るべきである」 (駿台青本、 76)

 

「全世代対応を目指しているが実際は高齢者優先なのは, 高齢者に 良い社会は万人に良いという前提ゆえかもしれない。 世代間で考え 方は違うので全世代から意見を募るべきだ」 (駿台青本の別解、78)

 

 

「高齢者にやさしい町づくりは、現実には高齢者の利益に焦点を置いているが、全世代の利益を考慮する社会を目指すためには様々な世代からの意見を収集すべきである」 (河合塾、76字)

 

 

「高齢者にやさしい町づくりは全世代共通の利益を目指すが高齢者に良い社会は万人にも 良いと考え高齢者を優先しがちだ。世代間の 差を考慮し各世代から意見を集めるべきだ」 (竹岡『東大要約Unlimited』、80 字)

 

「高齢者にやさしい町づくりは、社会の絆を強め、全世代を考慮することが重要だが、実際は高齢者に焦点が当てられている。今後は複数世代からのデータ収集が必要だ」(大阪英語特訓道場、76字)  

 

「高齢者に優しい町づくりは、社会的な繋がりの強化と全年代への配慮を目指すが、これまで高齢者のみに焦点を当ててきた。今後は様々な世代からデータを集めることが必要だ」 (大学受験.net 80字)

 

「高齢者にやさしい町づくりは幅広い世代にとって共通の利益になると謳われながら、実際には高齢者の利益が偏重されている。全世代からデータを集め改善を模索すべきである」(敬天塾解答、80字)

 

 

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2024/01/28

竹岡『東大要約』の誤読(補足)

 

前回のブログでは、竹岡『東大要約』の「38 欧州での子どもの権利の変遷」では、「大規模産業」という意味不明な言葉を使っていることを指摘し、むしろ「産業化以前」あるいは「産業革命以前」といった用語にすべきだったことを論じました。また、竹岡の不適切な訳語の原因には、研究社の『英和大辞典』があるのではないかと述べました。

 

 

今回は、前回のブログの補足をします。というのは、竹岡の38章の解説文には、その訳語以外にもちょっと誤読をしていることに気が付いたからです。ちょっと細かい点のようにも見えますが、歴史認識の上で重要な論点を含むので、ここで簡単に指摘します。

 

 

 

解答に至る解説文の中にですが、以上のような要約文があります。IMG_3111 (1)

 

 

竹岡「大規模産業(⇛産業革命)が始まる19世紀前半までのヨーロッパでは、子どもは労働力の一部であり、教育を受ける権利などを有さず、親が自由にできる存在だった」と、本文の第一段落で要約しています。

 

 

 

ぼーっと読んでいるとなんの問題もありません。しかし世界史の常識と照らし合わせてみれば、この日本語にはちょっと不味いですね。

 

 

と言うのは、竹岡の要約文を読むと、(1)産業革命が19世紀前半に始まったかのように読めてしまうるからです。しかし産業革命が始まったのは、18世紀前半から中頃だと言われています。だから、これは要約文としては、ちょっと駄目なのです。

 

 

 

(2)竹岡の要約文を読むと、産業革命が始まると、時を待たずして子どもの権利が認められたかのように見えます。しかし、子どもの権利が認められ始められるようになったのが19世紀後半であるが、産業革命が始まったのは18世紀前半だとすれば、産業革命の開始後子どもの権利をなかなか認められなかったのだ。それも100年くらい、あるいはそれ以上の長期にわたって、子どもの権利はずっと無視されてきたのだと解釈できるはずなのです。

 

 

 

考えてみれば、我々は19世紀のイギリスの児童に対して強いてきた重労働の歴史を我々は知っているではありませんか。19世紀の著名なノンフィクションやフィクションーーエンゲルスやディケンズの著作がその代表となるでしょうーーは、今なお言及されています。

 

 

child labor

 

Industrial_Rev

 

 

 

 

 

もっとも私は、要約文に深読み考察を書けと主張している訳ではありません。しかし、産業革命が起きたら、すぐにでも子どもの権利が認められるようになったかのような要約文は、誤解を与えるのでちょっと不味いだろうと指摘しているに過ぎません。ただし、誤解なきように付け加えると、模範解答の部分は問題ありません。不味いのは、途中の要約解説の箇所だけです。

 

 

 

 

 

なお、原文では以下の通りです。丁寧に読めば、「産業革命以後に」子供に対する味方が変化したと記述されているわけではないのです。

 

In pre-industrial Europe, child labour was a widespread phenomenon and a significant part of the economic system. Until and during the nineteenth century, children beyond six years of age were required to contribute to societies according to their abilities.

 

 

 

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