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2022/06/12

自由英作文(その4)求められる4つの力ー①問題文を正確に読む力

自由英作文に求められる4つの力

ーー①設問文を正確に読むーー

 

日本の大学入試の自由英作文は、きらりと光る才能を見せるような試験ではありません。むしろ、巷に転がっている、典型的だったり凡庸だったりする意見を、そのまま提示しさえすれば、それで満点が取れるはずの試験です。

 

しかし、実際高校生に教えていると、狭義の英語力というよりは、その生徒の思考力や教養力など、総合的な能力が問われる試験のように思えてきます。

 

 

たとえば、「老人の自動車免許返納制度に賛成か、反対か。立場を決め、その理由を述べなさい」という課題があったのですが、ある生徒は「老人は不注意だから免許を返納すべきだ」という立場で自由英作文を書くことになったことがあります。しかし、「不注意」という言葉の内容を具体的に説明することが全く出来ませんでした。これでは自由英作文は書けません。

 

英語の表現が浮かんでこないのではありません、日本語でも一切具体的な事例を出せなかったのです。つまり、「老人は不注意だ」という命題の具体例、たとえば、「老人はアクセルとブレーキを踏み間違える」とか「老人はブレーキを踏み遅れる」といった事例を挙げられなかったのです。

 

おそらく日頃からニュースを見たり聞いたりしないのでしょう。このような生徒の場合、自由英作文では完全にお手上げ状態になってしまうわけです。

 

 

一流大学合格のための自由英作文で求められる能力

 

英検準一級レベルあるいはGMARCHや上智大のレベルを超える自由英作文、つまり、慶應(経済・医)や早稲田(政経、法)、旧帝大や東大・一橋に合格できるような自由英作文を書けるようになるためには、何が求められているのでしょうか。

 

 

ここで私は、内容的にもしっかりと読める自由英作文を書くための能力として、

 

問題文を正確に読む力

抽象語と具体語を行き来する力

物事を抽象化したり、原因や理由を考える力

文と文との「飛躍」に気付く力、また適切に並べる力

 

 

という4つの能力を挙げてみたいと思います。

 

 

  1. 問題文を正確に読む力ーー与えられた設問に対して早合点せず、丁寧に正確にその意図を読み取る能力
  2. 抽象語と具体例ーー空虚で無内容な抽象語に逃げ込まず、有意義な抽象語(や概念)とその具体的事例を往復する能力。
  3. 抽象化ーー物事を抽象化したり、その理由や原因を考える能力
  4. 文と文との「飛躍」に気付く力ーー英語の文と文との間で、話題が予告もなしに突然「飛躍」していないか、検証して気が付く能力、さらには英語的に適切な順番で並べる力

 

 

今回は①について詳しく説明しておきたいと思います。

 

①問題文を正確に読み取る力

 

問題文を読み取る力が大事だなんて、当たり前のことじゃないかと思われるかもしれません。しかし、自由英作文においては、(実は他の教科においてもですが)、この当り前のことを実行するのが実に難しいのです。非常に多くの生徒・受験生が、問題文を読み損なってしまい、的外れな回答を書いてしまっています。

 

 

なぜそういう事態が起きるのか。おそらく、英文を書こうとすると、ある種の興奮状態に陥っているので、冷静な判断ができなくなり、勝手に「これだ!」と早合点をして、決めつけてしまうのだろうと推測しています。いくつかの事例を具体的に取り上げてみましょう。

 

 

まず、前々回のブログ(英作文の学習ルート(3)自由英作文(その3)英検と慶應(経済)の間、当塾の英作文添削事例から」について簡単に振り返ってみます。問題文は「現代社会で幸福な人生をおくるためには、どのような技術を身につけるべきか」という問でしたが、受験生は「現代社会において必要な能力は何か?」であると短絡的に理解し、誤解してしまいました。結果、「自分で考える力」(=思考力)の習得が大事だというやや的外れな回答になってしまったのである。(もちろん、自分で考える力が大事だ、という筋でそのあとを論理的に正しくつなげていけば問題ない英文を書きうるのですが、それは出来なかったのです。)

 

 

他の事例を取り上げてみましょう。

 

 

「なぜ貴方は慶應大学医学部の学生として受け入れられるべきなのか」

2022年度の慶應大学医学部の設問は「なぜ貴方は慶應大学医学部の学生として受け入れらるべきだと思うか」というものでした。ところがある受験生は、「なぜ貴方は慶應大学医学部に入学したいのか」と読み間違えてしまいました。結果、自分の優れた点をアピールする場なのに、慶應大学医学部の優れた点を書き連ねるという大失策を犯してしまったのです。

 

間抜けな話のようですが、自由英作文問題においては非常に多い典型的早合点です。自由英作文を書く際には、どんなに急いでいても深呼吸をし、問題文をしっかりと読み返し、問われていることの核心をしっかりとつかむということを肝に銘じておくべきです。

 

 

「自分が映画に出るとしたら、どういう役割をしたいか」

もう少しやや面倒な早合点の事例を、インターネットから紹介しましょう。

 

 

河合記述模試の結果が帰ってきたのですが、英語の自由英作文の採点基準がわかりません。配布資料には「簡単な英文には高得点はあげられない」と書かれていましたが、指定の字数も守りましたし、内容にも変な事は書きませんでした。しかし、部分点すらなく、自由英作文は0点でした。以下、内容です。

 

Q.もし自分が映画に出るとしたら、どういう役割をしたいか。理由ともに30文以上で述べよ

 

A.I want to

perform a main cast.

(=>play a leading role).

 

This is because

if I became

a famous person,

I would get 

a (削除big money.

 

Being rich, I could help

my parents do anything

they want to do.

 

赤字は当ブログで付け加えた添削・修正案です)

 

 

なぜこの自由英作文は0点だったのでしょうか。

 

よく問題文を丁寧に読み直してみましょう。すると、設問に対する答えとしては不適切だと分かります。

 

というのは、設問で求めているのは、映画でどのような「役割」を演じたいかだったのに、回答では「主役」を演じたいとしか書いていないからです主役だろうが脇役だろうが、もっと具体的に「どんな役」かを述べなければ設問に答えていることにならない訳です。

 

 

もう少し分かりやすく説明します。例えば、以前NHKで「正直不動産」というTV番組があったのですが、もし主役はどんな「俳優」かと問われたら、ジャニーズ出身の山下智久で、彼が俳優としてどうなのかを説明しなければなりません。しかし、この番組の主役が演じた「役割」を尋ねられるのならば、「嘘をつけなくなった不動産営業マン」と答えるでしょう。問いによって答えは大きく変わるのです。

 

 

要するに、「映画でどんな役割を演じたいのか」という設問ならば、刑事役、大泥棒、怪獣退治をする人、戦国時代の武将、恋愛する大学生をやってみたい等々と答え、さらにその理由をつけ加えなくてはなりませんでした。有名な俳優になって金儲けして云々を書いてしまっては、的外れ答案だと言うことで減点されるのも当然でしょう。(とはいえ、0点は少々厳しすぎる採点かもしれませんね)。

 

 

「諺の『郷にいれば郷に従え」について意見せよ」

 

次もインターネット上の自由英作文(添削希望者)です。設問について重大な勘違いをしています。

 

kotowaza

 

 

Q. 「『郷にいれば郷に従え』についての意見を述べよ」

 

A、I agree with the idea

( +when in Rome,

do as the Romans do”

 

Answerにも、諺を書いておくこと) .

 

Because (because の位置を変えること。注釈で説明する)

I think that

 

proverbs is

(=>are) true.

 

Proverbs

was(=>were) made

 

by old people

(=>ancient people)

 

old peopleでは「老人」になってしまう)。

 

and has

(=>have)

 

been used

 

for many years.

 

In fact, when I went

abroad,

 

I did as people did.

 

So it went well.

 

 

訳 (私は(+「郷に入れば郷に従え」という)考えに賛成だ。諺は真実だと思う(because「からだ」は削除すべし)。諺は昔の人によって作られ、長い間使われてきた(+からだ because は次の節の先頭に置くと良い)。実際、私が海外に行った時、私は人がするようにした。だからうまくいった)。 (赤字は添削の加筆または修正案)

 

 

[注]

アンダーライン部は意味が通らないので、becauseの位置を次のように変えると良い。

 

Because I think that proverb

 

is true. Proverb was made

 

by old people

 

and has been used

for many years.

 

 

=>==>

 

 

I think proverbs are true

 

because they were made

 

by ancient sages

 

and have been used

 

for many years.

 

(諺は、古代の賢人たちによって作られ、長年の間活用されてきたので真実だと思う。)

 

 

 

英文の文法的・語法的ミスは上記のように少々手直ししてみましたが、内容面では大きな勘違いが残っています。

 

というのは、そもそも諺というのは、数学の公理のような普遍的真理ではないので、いつでもどこでも成り立つような命題ではありえないからです。当然のことながら、問題を出す側も「いつでもどこでも成り立つ普遍的真理であると証明しろ」と命令したりしません。

 

ところが設問について早合点してしまい、「諺だから真理だ」と的外れな方向に議論を進めてしまいました

 

 

もう少しこの人の答案を丁寧に読んでいきましょう。まずこの諺について、「賛成だ」(I agree with the idea)とまず立場をはっきりさせました。これ自体には大きな問題ありません。(本当は、限定付きで賛成すべきでした)。しかしその理由として、諺は長年の間受け継がれてきたので、「真実だ」(true)だと論じてしまいました

 

諺について、特定の留保なしに諺の全てを真実だと述べるのは、設問者の意図を完全に読み間違えたと言って良いでしょう。

 

 

何故こんなことになったのか。

 

この回答者は、英文を書くときには「抽象→具体」の順番に並べるのだと習って知っています。だからまずは抽象的命題を立てようと焦ったのでしょう。そして「諺だから真実だ」という命題を思いついたので、全く吟味せずに、これならば抽象的な命題としてピッタリだ、と早合点してしまったのでしょう。しかし、諺を論じるのに適切な切り口ではありませんでした。

 

①「問題文を正確に読む力」をまとめます。自由英作文では設問についての早合点、早呑込みが本当に多発しています。普段以上に丁寧に設問文をよく読み返し、ズバリその核心をしっかりとつかみましょう。

 

 

 

なお諺と似たようなモノとしては、古典文学等がある。古典文学も同様に長い年月読まれ続けた作品ですが、通常、「真実」や「真理」がそこにあると評価したりはしません。むしろ、「今なお読むに値する」とか「優れた作品」だという具合に評価します。

もっとも「真実だ」と評価される、古から伝えられた文書がない訳ではありません。キリスト教やイスラム教の宗教的原理主義者が想定している「聖書」がその例です。しかし、今回はそういう類のものではありませんね。

 

 

因みに、上記の問題では、与えられた諺に対してどのように応答すればよかったのか。

 

諺というのは、ある特定の条件において役に立つ(或は、役に立たない)アドバイスなのですから、真実だと切り出すのではなく、特定の条件で有効だと述べるべきだったのです。この人の場合は、海外旅行で役に立ったと後で書いているのだから、むしろこれを最初に持ってくるべきでした。例えば、こんな具合にしてみましょう。(when 以下がある特定の条件です)。

 

I like the proverb

 

“When in Rome,

 

do as the Romans do”

 

very much

 

especially when I go

 

to foreign countries

 

whose local customs

 

are different from

 

those of Japan.

 

(私は「郷にいれば郷に従え」という諺は、日本と習慣の異なる国に行くときに大変役に立つと思います)。

 

さらに具体例としては、

 

For example, when I went

 

to Bali, a very hot country,

 

I wore long pants

 

as people there do.

 

That was why I was welcomed

 

at the temples

 

while those in short pants

 

were not.

 

などと加えられると良かったのです。

 

 

或は、逆にこう書くこともできるでしょう。

 

I do not like

 

the proverb

 

“When in Rome,

 

d

 

as the Romans do”

 

very much

 

 especially when

 

an organization

 

or a society

 

needs transformation.

 

Let us imagine newcomers

 

who do not do

 

as the local people do.

 

I wonder if

 

they might be able to

 

be catalysts for change.

 

(この諺は、組織や社会が変革を必要しているときにはあまり好きにはなれません。というのは、地元の風習に従わない新入りが社会変革の触媒の役割を担ってくれる可能性があるからです)。

 

 

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シリウス英語個別指導塾 by 東大式個別ゼミ
中高一貫校専門 大学受験英語塾 英検
相模大野・中央林間・横浜・藤沢・町田
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2022/06/04

小学生時代の英検準一級合格よりも将来の慶應合格への英語を目指してみては?

英検準一級よりも将来の慶應合格への英語を目指してみては? 

 

最近、小学生のお子さんを英検準一級に合格させたいという問い合わせを受けることが時々あります。たしかに英検準一級に合格することは、小学生や中学生のお子さんにとっては、かなりの勲章です。しかし当塾としては、早くから英検準一級を目指すことについては、あまり推奨している訳ではありません。

 

 

一つの理由は、英検準一級で取り扱われる英語、とくに英語長文は、高校生以上のためのトピックが中心であり、ほとんどの小学生のお子さんには理解しにくいものだからです。そういう大人向きの英文を、小学生に無理やり読ませることに何かメリットがあるのか疑問だからです。(但し、かなり早熟かつ優秀で文章の意味が理解できているようなお子さんならどんどんチャレンジしてよいとは思います。)

 

 

もちろん、英検準一級や英検一級に合格する小学生が毎年出てくるのは、事実です。そして、そういうお子さんたちに倣って、合格を勝ち取ろうとする人がいるのでしょう。しかし、合格したお子さんたちのほとんどは、英文の内容を理解して合格したのではなく、よく理解できなかったが、記号選択問題で答えを「当てる」コツを身に着けたにすぎないのではないでしょうか。私達が危惧するのは、意味が分からなくても記号選択で正答を「当てれ」ば良い、答えさえ合えばよいのだ、という大きな誤解を子どもたちに植え付けてしまうことです。そのような勉強法を最初から癖にしてしまうと、中高生になってから伸び悩む可能性大です。

 

 

英語学習というのは、かなりの長期戦です。英検準一級や英検一級なども、その一里塚に過ぎません。これからも英語学習は何十年も続くのです。だとしたら、内容を本当に分かり、英語の面白さを楽しむ勉強法をお子さんにしてもらいたいのです。そのためには、その年齢に相応しい英文を読ませたり、視聴させたりするのが、教育上非常に大事なことです。

 

 

もう一つの理由は、英検準一級よりももっと良い目標があると考えるからです。すでに別のブログでもある程度説明しましたが、英検準一級は易化し、今では上智・MARCHに楽して進学できる方法論になりました。また英検のリーディングは記号選択式問題のみ、ライティングはアルバイト採点者による激甘採点で構成が酷くても高得点が可能です。そのような簡易テストも使い道はあるでしょうが、目標とするにはちょっと残念です。

 

 

望ましいのは、大学教授のようなしっかりとしたプロが採点するテストで、適度な難易度の英文を読ませ、それを本当に理解したか否かを問うようなリーディング・テスト、また語彙・文法力だけでなく論理力・構成力と教養力を問うライティングのテストです。そのようなテストで合格点を取ることを目標にする方が良いのではないでしょうか。

 

 

理想的な英語の試験の一つとして、今回のブログのタイトルにも掲げましたが、慶應大学の経済学部、文学部、医学部の入試問題があります。いずれも、自分が専攻したい分野に関連のある、だがあまりに専門的すぎるわけではない長い長い英語長文を読むことになります。本人の知性と教養力が問われる英文を読むのだということです。

 

そして経済学部の入試問題では、その長文の内容を咀嚼したことを前提に、自分の立場を明確にする小エッセイのライティングが求められます。たとえば、「日本政府はもっと多くの観光客を呼び込むべきか」「日本政府は顔認証の技術を規制スべきか否か」といった問に対して、文献を引用しながら英語で答えなければなりません。つまり、慶應大学の経済学部に合格するためには、日本社会に関する見識を持っていないとダメですよ、小手先のクイズ・テクニックは通用しませんよと入試問題が語っているのです。

 

結論的に私が述べたいのは、小学生のうちに英検準一級に合格することなどよりも、高校生になって慶應の経済学部等の入試英語問題に対応できるように、もっと長期計画で、英語と「英語以外の勉強も」がんばって欲しいということなのです。

 

 

いや、どうしても今現在の目標が欲しいのだという人もいるかもしれません。その場合は仕方ない、ここでちょっと参考になる目標を二つそっと教えましょう。一つは慶應湘南藤沢中等部の英語の問題を解けるようにがんばってみることです。英検準一級とは異なって、リーディング(物語文と説明文、700~800ワード)とライティング(20分程度で書ける作文)の話題は小学生向きのモノです。なお帰国生が受験生の主体のようですから、時間制限は非常に厳しいようです。日本育ちのお子さんの場合は、時間制限を設けないで取り組むのが良いでしょう。もう一つは…やはりここで書くのはやめておきましょう(笑)機会がありましたら、またの機会に致します。

 

最後にもう一言。当塾では中学受験において、英語受験を奨励していません。特別な環境や資質に恵まれた者でない場合は、英語学習はほどほどで良いと考えています。

 

 

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2022/05/29

英作文の学習ルート(3)自由英作文(その3)英検と慶應(経済)の間、当塾の英作文添削事例から

英作文の学習ルート(3)自由英作文(その3)英検準一と慶應(経)の間にある高い壁、当塾の自由英作文の添削事例から

 

はじめに

 

前回のブログ(英作文の学習ルート(3)自由英作文(その2)ー中学教科書に学ぶ英文ライティング)は如何だったでしょうか。正直申し上げて、あまり読んでくださった方は多くはないでしょう。しかしもし読んでいただいた方がいらっしゃいましたら、もしかしたら私と同じように、大学受験生の自由英作文を添削していたりしている人かもしれないですね。そしてそういう人の間にも、「そういうこと、なかなか高校生は分かってもらえないんだよね」と相槌を打ってくださる方もいるでしょうが、ちょっとピンとこないなあという感想をお持ちの方もいるだろうと思います。

 

さて今回は、前回のテーマを継承しながら、当塾の自由英作文添削事例を提示してみることにします。つまり、日本人高校生が英語を書こうとするとき、センテンスの並べ方において、どのように並べてしまうのかを確認をしていきます。そして、センテンスとセンテンスがスムーズにつながっておらず、飛躍や脱線があるとき、どのように直していったらよいのかを考えてみたいのです。

 なお今回の記事の副題として「英検準一級と慶應大学経済学部の間にある高い壁」とつけました。というのは、今回のテーマである「英文の適切な並べ方」ですが、英検準一級の自由英作文の採点基準ではそれが強く求められていないように見えるのに対し、慶應大学経済学部の入試自由英作文の採点基準ではそれが求められていると推定できるからです

大学入試難易度的に言い換えれば、早慶の文系上位学部と上智・MARCH(英検準一級等で入試に代えられる大学群)との間には、英作文・英語ライティングの採点基準が相当異なっており、いわば一つの乗り越えがたい壁のようなものがあるという思いがあるのです。

 では、さっそく自由英作文の設問と、生徒の英文例を取り扱っていくことにします。

 

ある自由英作文とその添削例

 (設問)次のテーマで100-150語程度のエッセーを英語で書きなさい。

 

 What is the most important skill a person should learn in order to lead a happy and meaningful life in the world today? 

 

Choose one skill and give reasons to support your choice. (2019年度、明治学院大学経済学部(経営A)

 

長谷川

 高校生の英作文例

I think thinking by ourselves is the most important skill.

 

These days, many people use the Internet or SNS. Of course, they are useful tools, but there is a lot of incorrect information. If we cannot think by ourselves, we will take false messages true ones and be deceived by information on the Internet. That’s why we have to think by ourselves and tell false ones from truth.

 

 Also, we use AI more frequently today than past.  Some people think many jobs that people do now will be taken by.  AI.  In order not to be dominated by AI and coexist with it, the ability of thinking by ourselves is needed for us.  (113 words)

 

 

英検(準一級)的採点と慶應的採点

 この生徒の英文にいったい何点あげられるでしょうか。さしずめ英検(と明治学院大学)の採点方式ならば、一部の文法・語法ミスを減点するだけで100点満点で95点前後の高得点を期待できるはずです。

 

他方、慶應大学(経済学部)の採点ならば、おそらくは採点に値しない不合格答案と評価されるでしょう。あるいはせいぜい30点くらいでしょうか。

 

 

端的に言って、

(1)不適切な論理展開をしており、まともな英文とは言えない。

(2)説得力が乏しい

(3)設問に答える意欲に欠けている

 

と指摘できます。 

 

まずは、英検的採点方式から見てみましょう。下の英文テキストを見てください。

赤の箇所は修正(変更または追加)を要する減点箇所です。

青の部分は、修正した方が良いが減点まではされないと思われる箇所です。

 

 

①I think thinking by ourselves is the most important skill.

 

②These days, many people use the Internet

 or SNS(=>social media).

 

③Of course, they are useful tools(=>media)

but there is a lot of incorrect information.

 

④If we cannot think by ourselves,

we will take false messages (+as) true ones

and be deceived by (+the false) information

 on the Internet.

 

⑤That’s why we have to think by ourselves

and tell false ones from truth (+true ones).

 

⑥Also, we use AI more frequently today

than past=>before).

 

⑦Some people think many jobs that

people do=>havenow

will be taken (+away) by AI. 

 

⑧In order not to be dominated by AI

and coexist with it,

the ability of thinking by ourselves

is needed for us

(=>We need the ability of thinking by ourselves).

 

 

 慶應的添削・採点

 

 他方(私の想定する)慶應大学基準であれば、

いくつかの致命的ミスを指摘せざるを得ません。

それは文法や語法の誤りではなく、

センテンスの展開やつながりに関わる問題です。

 

少々分かりにくいので、テキストは冒頭を①

として番号をつけ、

①②③、④⑤、⑥⑦⑧と分割して説明します。

 

 

①②③

 ① I think thinking by ourselves

(=>critical thinking skills; media(information) literacy)

is the most important skill.

 

②These days, many people use the Internet

or SNS(=> social media).

 

③Of course, they are useful tools(=>media), 

but there is a lot of incorrect information.

 

 

 「今日の世界において、有意義で幸福な人生をおくるために、最も習得すべき技術は何か」という設問に対して、①ではthinking by ourselves「自分で考える技術」が大事だと、主張を最初から提示しています。これは良い書き出しです。(ただし「自分で考える技術」は適切な言葉ではない。しかしこのことについては後でとりあげる)。

 

さて、短い意見文で主張を打ち出したら、すぐその後で、主張の理由を述べなくてはなりません。ところが、背景説明から始めてしまいました。本人としては、①(主張)に対し、[②③④]という一連のセンテンスの塊で理由を提示しているつもりなのでしょう。しかし英文には、数学の計算式のように①+[②③④]といった、[ ]はありません。ですから読者は、①→②→③→④と普通に読み進めます。

 

①を読んだ読み手は「自分で考える力」がどうして重要なのかなと?と思いながら、その答えを求めて②を読み進めているはずです。ところが、主題文の話題(=「自分で考える力」は大事だ)が消えていまい、いきなり話題がインターネットに変わっているのです。③も同様にインターネットです。読み手は自分が露頭に迷ったことを知り、唖然とします。要するに、①→②③において大きな「飛躍」があるわけです。もちろん、この英文に対する評価は著しく低くなるでしょう

 

 

センテンスとセンテンスに大きな飛躍が生じてしまうのは何故か。

 

一言でいえば、理由を提示するときに、<背景説明→理由(主張)>という順番でセンテンスを並べようと執着してしまうからです。もっと言えば、背景説明さえすれば、読み手は理由をなんとなく分かってくれるだろうと甘い考えを抱いているからです

 

また、端的な理由を抽出するのが苦手だからでもあります。(端的な理由を提示できさえすれば、センテンスとセンテンスは自然な流れとしてつなげることが出来たのですが。。。)

 

内容面についてはこれまでとして、英語表現の適切性をチェックしてみます。②のSNSはほとんど和製英語ですからSocial Mediaにすると良いです。③ではインターネッをtoolsと言い換えていますが、違和感があります。media にするのはどうでしょうか。(しかし、toolsでもたぶん減点まではされない)。

 

④⑤

If we cannot think by ourselves,

we will take false messages (+as) true ones

and be deceived by (+the false) information

on the Internet.

 

⑤That’s why we have to think by ourselves

and tell false ones from truth (+true ones).

 

 

ついで④⑤に行きます。どうやら②③の背景説明(ネット世界は嘘ばっかり)から、結論(「自分で考える力」があるとネット世界の嘘を見破ることが出来る)に到達したようです。これはダメな文章の展開です。最初に主張(自分で考える力は大事な技術だ)があるのですから、それをサポートする(=理由を述べる)必要があったのに、背景説明から新たに結論を導き出しているからです。簡単にまとめると次のようになります。

 

この英文の論理展開

  主張=>[背景説明=>結論]

 

求められている論理展開

 [主張=>その理由の説明=>その背景説明]

 

 

なぜこんなことになったのか。その大きな理由の一つは、書き手は漠然と結論にたどり着いただけで、その理由を自覚的に抽出できなかったからです。つまり、「自分で考える力があれば、嘘を見破ることが出来るからだ」と自覚的に提示できなかったからです。先取りすれば⑥⑦⑧にも同じ問題が見られます。ここでも、やはり理由を明示的に述べられません。本当であれば、「自分で考える力があれば、失業やリストラされないからだ」と書くべきでしたが、その一文を書けませんでした。

 

なお問題はこれだけではありません。④と⑤の2つのセンテンスがほとんど内容で重複している点です。受験生がやりがちなミスですが、気をつけましょう。大きく減点されないでしょうが、得点にはつながりません。

 

 文法・語法面については、英文に付け加えた赤字を見てください。

 

⑥⑦⑧

Also, we use AI more frequently today

than past=>before).

 

Some people think

many jobs that people do(=>havenow

will be taken (+away) by AI. 

 

⑧In order not to be dominated by AI

and coexist with it(削除する),

 

the ability of thinking by ourselves

is needed for us

(=>We need the ability of thinking by ourselves).

 

 

⑥はAlsoから出発しましたので、「自分で考える技術」が必要である2つめの理由をここで書くべきなのですが、前回と同様に背景説明に終始しています。これも相当マズイ配列です。当然のことながら、①の英文とのつながり見えず、飛躍しています。そして⑧まで読み進めると、どうやら「自分で考える力」があると、AI化が進んでも失業しなくて済むかのように書かれています。理由としてはやや曖昧な書き方です。

 

なお⑧の英文は、In order not to be dominated by AI と始まったのですから、主節の主語が人間ではないとマズイでしょう。したがって、“the ability of thinking by ourselves is needed for us” は能動態にして、“We need the ability of thinking by ourselves”とするのが良いでしょう。その他の英語表現のミスは、赤字で説明しておきましたので省略します。 

 

さて元の英文ですが、どうしたらもっと適切な英文になるでしょうか。ポイントとなるのは、次の事項です。

 

 

☆センテンスとセンテンスの飛躍をなくすこと。

☆主張のすぐ後に理由を明示的に書くこと。

☆背景事情は後から追加すること

 

 

修正案

 (主張)自分で考える力が大事だ

→(理由その1)自分で考える力があれば、嘘情報に騙されなくなるからだ

→(背景説明)ネット世界やSNSには嘘情報がはびこっている。

 

 →(理由その2)自分で考える力があれば、失業しなくなるからだ。

→(背景説明)AIの支配する時代では多くの人が失業してしまう

 

修正英文例

I think thinking by ourselves is the most important

skill in the world today. 

 

First, the ability enables you to see

through lies and fakes. In fact, there are a lot of

fake news and malicious websites on the Internet. 

 

 Second, if you can think by yourself,

you will not lose your job even when computers

and AI take many people’s jobs away.

 

Thinking by ourselves is the very best skill

every one of us should learn, indeed.

 

 

以上の修正案ですが、英文としては、オリジナルよりもかなり読みやすくなっています。しかし残念ながら、まだまだ問題点があるのです。

 

 

まず自分で考える力」”thinking by ourselves”という概念が、抽象的無内容な言葉だからです。小学生の躾にはよく使われる言葉なのかもしれませんが、どんな能力なのか具体的なイメージを思い浮かべるのはほとんど不可能です。ましてやフェイクニュースやら詐欺商法を撃退したり、失業を免れる力があるのだと言われても、困惑してしまいますね。

 

 

要するに、もう少し具体的な意味を持ち得る、有意義な抽象概念を提起すべきだったのです。たとえば、ネット情報に適切に対処できる能力であれば、critical thinking skills (批判的思考能力)やmedia literacy;information literacy(メディア・リテラシー、情報リテラシー)が良さそうです。こういう抽象概念であれば、これに対応する具体例をたくさん挙げることも出来たはずでした。(ただし、これでは失業に対処できる能力ではありません)

 

 

 問題はさらにもう一つあります。最初の設問をよく読んで下さい。「今日の世界で幸福で有意義な人生を送るために必要な技能」を書かなくてはいけないのです。元の英文だろうと修正案だろうと、幸福で有意義な人生のために必要な能力かと言えば、ちょっとばかりズレていますね。少なくともこの英文には、人生について言及は全くありません。つまり、設問にしっかりと答える文章になっていないのです。これは致命的なミスだといえます。

 

 

主な問題点を再度述べておけば、次のようになります。
設問に適切に応えていない。(①と全体)

センテンスとセンテンスの間の飛躍。(①→②、①→⑥)

文頭の主張をサポートする構成になっていない。(全体)

主張の理由がやや曖昧で、主張の直後にない。(⑤、⑧)

センテンスとセンテンスが重複している(④と⑤)

 

 

今回は以上です。次回は自由英作文を書く際の高校生の抱える問題点についての考察を書く予定です。

 

 

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2022/05/23

英作文の学習ルート(3)自由英作文(その2)ー中学教科書に学ぶ英文ライティングー

英検準一級で求められるライティング  

 

英検準一級のライティング部門は自由英作文ですが、難しい技巧は必要ありません。旧検定教科書(=2020年以前の教科書。現行教科書よりかなり易しい)の中学2年生レベルをしっかりと書けるならば、90%以上の高得点をとれるはずです。

 

なぜそんなことが可能なのか。実は英検の自由英作文(English Composition)では、いつも同じ形式の英文を書くことだけが求められるからです。まずはある命題が提示されますから、それに対して YesかNoかの立場をはっきり提示し、ついでその理由を挙げる、そしてもう少し具体的に肉付けする。そういう英文さえ書ければ良いのです。

 

たとえば、2021年度第3回の英検準一級の試験では、

 

“Should people use goods that are made from animals?”

(人間は動物から作られた製品を使うのを止めるべきか)

 

 

という命題が提示されました。これに対して受検者がYesの立場を取るならば、まずその旨を明示します。ついで設問のヒントにある“Animal rights””endangered species”([動物の権利]「絶滅危惧種」)という観点を用いて、Yesの理由を説明し、まとめます。あるいはNoの立場を取るならば、同様にまずは自分の立場を最初に明らかにし、ついで“Product quality”, “Tradition“ (「製品の質」「伝統」)といったポイントを利用して自分の意見の正当性を論じ、まとめることになります。

 

 

以上のような意見文の形式を学ぶのに、中学2年生用の旧検定教科書『New Horizon2』(2017年)は非常に有益です。写真は、この教科書の終わりの方にある”Let’s Read 3: Cooking with the Sun”の119頁です。これを詳しく解説していきましょう。

 IMG_8761 IMG_8762

中2の教科書『New Horizon2』(2017年)の解説

 

写真の英文を取り出し、最初から番号を打つと以下のようになります。

 

A solar cooker is helpful to people in developing countries.

(太陽光調理器は開発途上国の人々にとって役に立つものである)

 

Why? (なぜか)。

 

First, making a solar cooker does not cost much. ④ You can make one with only cardboard and aluminum foil.

 

Second, people in developing countries can get cleaner water by boiling it with a solar cooker. Drinking water from rivers and lakes is one of the biggest causes of disease.

 

Third, a solar cooker is safe because it does not make smoke. More than one third of the people in the world burn firewood indoors to cook. A lot of children die from its smoke.

 

 

①②でまず問題提起し(太陽光調理器は開発途上国でなぜ役立つのか)、太陽光調理器の利点として3点を挙げる形式で文を展開しています。それぞれFirst (③④)、Second(⑤⑥)、Third(⑦⑧⑨)という単語を、それぞれ文頭に置いています。

 

まずは③④のパラグラフから見てみましょう。文頭でFirst(一番目に)と記してありますが、これは第一の理由を述べることを予告します。そしてその後すぐにmaking a solar cooker does not cost much(制作費用が高くない)理由を提示しています。このとき重要なのは、Firstと書いた後で④→③の順番で並べてはいけないということです。Why(何故か?)という問いに対してFirstと書いたからには、何が何でも端的に一番目の理由を書くのが英語の約束事だからです

 

ついで⑤⑥のパラグラフを見てみます。⑤ではSecond(二番目に)と文を始め、“get cleaner water”(よりきれいな水を得る事が出来る)と、「なぜ?」の理由が端的に示されます。そして、その後の”by boiling it with a solar cooker”を読むと、「あ、そうか、太陽光調理器で生水を煮沸消毒できるからなんだね」と理解できます。さらに⑥では、開発途上国の飲料水事情にはかなり多くの悩みがあること、つまり上水道が整備されておらず、水質汚染のために病気になることが多いらしいこと、したがって「きれいな水」を入手する手段が痛切に求められているのだという背景が説明されています。

 

日本人高校生に立ち塞がる英語ライティングの壁

 

以下、同じように説明を続ける事が出来るわけです。ところで私の説明について、どのような感想を持ちますでしょうか。おそらく多くの方は、英文はとてもシンプルなのに、日本語の説明がぐちゃぐちゃして、ちょっと読むのが面倒くさいな~と思われたのではないでしょうか(笑)。しかしそれには実は理由があります。こういうシンプルな英文ではありますが、大半の日本人高校生にとって、このような英文を書くことは非常に困難だからです。難しいのは一つひとつ英語の表現を文法的・語法的に正確にすることより、英文を正しい順番で並べることなのです。もう少し説明しましょう。

 

 

 

ここで日本人の高校生に、「太陽熱調理器の有用性の理由」を説明する英文を書いてくださいという課題を出したとします。私たちの経験から多くの高校生は、以下のように発想します。

 

開発途上国というのは、日本とは異なって上水道が整備されていないらしい。井戸水とか場合によっては雨水や川の水を使うらしい。だから水が汚いので、赤ちゃんとかが毎年沢山死んだり、病気になる人が多いらしい。しかし、そういった水も、煮沸消毒すればきれいな飲水になるらしい。だから、太陽光調理器があれば、電気やガスがない場所であっても、汚い川の水をきれいに出来るので、とても便利なのだ。

 

大筋として正しい議論ですね。上記の議論の流れは次のようになります。

 

開発途上国の水事情(A)→水の煮沸消毒の必要性(B)→太陽光調理器の利点(C)

 

多くの日本人高校生は、(A)→(B)→(C)という思考の順番をそのまま英文に反映させようとします。(しかし、これでは絶対に論理的で筋の通った文にはなりません。

 

 

 

試しに上記の思考の順番で英文を書いてみましょう。(多くの高校生がたどるよくない英文例です。)

 

A solar cooker is helpful to people in developing countries.

(太陽光調理器は開発途上国の人々にとって役に立つものである)

Why? (なぜか)。

 

First, I hear that many  people in developing countries have to drink water from lakes and rivers. It  is so  dirty that many babies die and many people get sick every year . That is why boiling water is very important.

(高校生が書きがちな英文例。)

 

 

この英文では、「開発途上国で太陽光調理器が役立つのは何故か?」の理由を述べる時に、「最初の理由は」という意味で First と始めています。ここまではOKです。問題は、その直後に(A)である「開発途上国の水事情が良くない」と書いてしまっています。これでは、文と文との間に決定的な脱線と飛躍が起きてしまいます。つまり、「太陽光調理器の利点をこれから語りますよ、第一の理由は○○○」と語り出したにもかかわらず、太陽光調理器の利点ではなくて開発途上国の諸事情=背景を語ってしまうことになるからです。

 

 

 First(第一に)とか、because (○○○だから)と書き始めたら、何が何でもまずは理由を書かなければらないのです。この場合では、太陽光調理器の利点を語らなければならないのです。

 

 

『New Horiozn2』に戻れば、Firstと書き始めたら④→③と書いてはいけない。つまり、「(④)太陽光調理器はダンボール紙とアルミホイルで作れます。(③)だから費用があまりかかりません」という順番で英文をかいてはいけないのです。同様に、⑥→⑤と書いてもいけない。つまり、「(⑥)途上国の病気の原因は、川や湖の水を飲むことから生じている。(⑤)だから、そういう生水を太陽光調理器を用いて煮沸消毒し、きれいな水を飲めるようにすることは、とても大事なことなのだ」としてもいけません。

 

 

 

具体的にはどういう風に書けばよいのか。たとえ、(途上国の水事情)(A)→(煮沸消毒の必要性)(B)→(電気ガスなしに加熱できる太陽光調理器)(C)という順番で思考したとしても、それを英文で書いて表現するときには、(A)→(B)→(C)を、(C)→(B)→(A)と並び替えなければなりません。それは(C)こそが理由の部分であり、また太陽光調理器の話題を継承しているからです。

 

 

とはいっても、多くの高校生は、日本語に典型的な議論の進め方(A→B→C)から自由になるのはかなり困難です。ほとんどの場合、どうしても背景事情から説明したくなり、結果的に文章が飛躍してしまうのです。そして、becauseのような言葉の意味だとか、文と文との間に自然な流れといったことを意識化するのが苦手です。以上のような問題点を克服するためにも、是非とも中学2年生の英語の教科書をよく味わって、読み直してもらいたいのです。なお、このテーマ(日本語的な議論のススメ方から自由になる)については、添削事例を通じてさらに紹介・説明していく予定があります。

 

 

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2022/05/15

高校一年で中一英語から学び直す意義

当塾(シリウス英語個別指導塾)では、中学生だろうと高校生だろうと、英文法を中一からやり直すことにしています。本当に This is a pen. から始めます。
では、中一英語から学び直すのにはどんな意味があるのでしょうか。もしかすると中1〜2の英語ぐらいならば、さすがに分かっているはずだから、そこまでやる必要はないのではないかと思われる方もいるかもしれませんね。そこで、そういった方々の疑問に答えるためにも、高校生が中一英文法からやり直す意義について説明しましょう。

 

 

 
①今までの勉強の穴を見つけ出す。

 

まずはごく当たり前の消極的意義から説明いたしましょう。それは、今までやってきた勉強の抜けを発見することにあります。例えばThisという単語ですが、「これ」のほかに「この」という意味があります。基本的なことですが、知らない生徒さんが時々います。あるいは英検二級合格程度の生徒さんですと疑問詞(what, who, whenなど)を用いた疑問文の作り方(中一レベル) を知らない生徒さんが非常に多いですね。我々が面談で、つまり当塾に入塾する以前によく質問するのは、「誰が窓を壊しましたか」を英訳できるかどうかなのですが、意外にも9割方が答えられません。(答えはWho broke the window?です。Who did break the window?とする人がとても多いです。)

 
②文法用語(品詞、主語・動詞など)を理解し、英文の構造を理論的に学ぶ機会にすること

 

 
日本人が英語を学ぶときは、文法をしっかりと学ばなくてはなりません。文法を学ぶからこそ、様々な英文を理解したり、英語を話したりできるようになるのです。文法学習は語学の根幹にあると言えます。
しかし、現在の日本の中学生は、学校の授業では英文法についてほとんど説明されない場合が多いようです。これは間違った教育政策に根本原因があります。しかし、実を言うと、たとえ先生に説明されてもよく理解できないのが普通です。というのは、英語に馴染みのない中学生にとって、新しい英単語や英文を目の前にして、文法を理解する余裕がほとんどないからです。また、仮にある程度理解したとしても、すぐに忘れてしまいますね。それにも関わらず学校の先生は、何度も繰り返し、同じことを説明してはくれません。
しかし高校生になると、ちょっと事情が異なってきます。頭脳も一段と成熟してきますし、また中学校である程度馴染んだ英文を取り扱いますから、もう少し余裕を持って英語に向かい合うことが出来るようになっています。つまり、英文法を学ぶ準備が整っているという訳です。その上で、先生に何度も何度も同じことを繰り返し説明されたら、あるいは同じ質問を繰り返し浴びれば、さすがによく理解できるようになるというものです。(もちろん中学生でもしっかりと理解できる生徒さんはたくさんいますよ、念のため)。
我々シリウス英語個別指導塾では、以下の事項を重視しています。

 
1)品詞とその役割を覚えること。つまり、動詞(自動詞、他動詞、状態動詞、動作動詞)、名詞、形容詞、副詞、助動詞、接続詞といった品詞とその役割を理解することです。
2)主語(S)、動詞(V)、目的語(O)、補語(C)と五文型の概念を理解し覚えること。

 

3)修飾語と被修飾語主語と動詞他動詞と目的語前置詞と前置詞の目的語の関係について理解を深めること。
例えば、補語(C)と目的語(O)の区別、形容詞と副詞の区別は難しいでよね。しかし当塾では、我々プロ講師が毎回の授業で何度も繰り返し生徒さんに質問するので、ほとんど全ての生徒さんは完全に理解することができるようになります。
今までの塾・予備校の文法教育では、中1レベルの副詞と形容詞の区別がよく分からないうちに、副詞的用法と形容詞的用法を区別せよといった具合に、ちょっと無理な指導をしてきたように思います。

 

我々は中1英語に立ち戻って名詞・副詞・形容詞の概念から始め、さらには名詞句・副詞区・形容詞句、名詞節・副詞節・形容詞節へと、概念をしっかりと定着させるようにしています。

 

 

 

③自分で英文を作れる、つまり英語で書いたり(ライティング)、話したり(スピーキング)できるように、中1英語から学び直す。

 

中学英語を高校生がやり直す最大の理由は、英語を「書く」(ライティング)、「話す」(スピーキング)ことが出来ることにあります。

 

中学英語は、一見するといかにも簡単に見えるかもしれません。確かにその意味を理解することはそれほど難しくはないでしょう。しかし、中1英語のセンテンスを即座に口から発する事はちょっと難しいはずです。読んで分かっても、同じことを書けるとは限りません。聴いて分かっても、同じことを話すことはできないという訳です。消極的に理解するのと、積極的に活用して言葉を発するのとでは、難易度は相当異なります。ご理解いただけるでしょうか?(試しにお子さんの中1あるいは中2の英語教科書の和訳を見て即座に英訳してみてください。その難しさが実感できるでしょう。)

 

 

中学時代ならば、英文を読んで意味が分かる、という消極的理解でもOKでしょう。しかし、これを高校段階でやり直すときには、教科書のような英文を自分がアウトプットできるようになろう、と思いながら学ぶのです。当塾の生徒さんのほとんどが英語のライティングやスピーキングで高得点を取れるようになるのは、中学英語の主体的積極的基礎訓練をしっかりと行っているからなのです。

 

 

なお、この段階の学習は、別のブログで取り上げた英作文学習ルート①にあたるものです。

 

 

学習期間の目安(補足)

 

 

中学英語を高校からやり直すと、我々の経験から言うと、早い人で半年、時間がかかる人で一年半から二年間くらいの年数を要します。生徒さんの状況に応じて履修期間が相当異なるように見えますが、それをやむを得ないこととしてご理解ください。人によって、中学英語の理解のレベルにかなり差があるからです。また、英文法の理解力も個人差が大きいのです。傾向としては、数学が得意な生徒さんは比較的文法は得意で、早く仕上げられるようです。

 

またどの程度中学英語の訓練するかは、各人の将来の志望や受験校によっても異なってきます。「書く力」「話す力」よりも「読む力」を重視したいというならば、中学英語を早めに切り上げるのも、一つの考え方です。私見では、現国が得意な私立文系志望者、例えば早稲田の教育学部や商学部志望などの場合は、文法学習は軽めにして、「読み重視」戦略も有効な方法論でしょう。

 

 

ここからは宣伝ですが、英語の確固たる基礎力を築きたい、しっかりと英作文ができるようになりたい英語が話せるようになりたい、と本気で願っている人には当塾こそがその目標を実現できる最適の塾であると自負しています。指導歴20年を超えるプロ講師が誠実かつ真剣にサポートいたします。

 

 

 

 

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