
今回は英語学習において避けて通れない「自由英作文」のトレーニング方法について、ある興味深い提言を元に考察してみたいと思います。
予備校や英語学習参考書で名高い関正生先生は、著書『ポラリス自由英作文』で驚くべき主張をされています。それは「自由英作文の学習には、必ずしも英語教師による添削は不要」というものです。
その根拠として
ほとんどの受験勉強YouTuberの皆さんは「英作文学習には、信頼できる英語教師の添削が重要」と主張しています。しかし実際の予備校講師の間では「添削を頻繁に求める生徒ほど、英語力が伸びにくい」という見解を持っている人が多いようです。つまり、素人は添削を重視するのに対し、玄人はむしろ添削の効果に懐疑的で、関先生の見解を支持しているケースも少なくありません。
東京大・一橋大や早慶上位学部(早稲田の政経・法学部・国際教養、慶應の経済・医学部)を十分に狙えるレベルの学生であれば、関先生の「添削不要論」は概ね適切です。こうした学生には『ポラリス自由英作文』を活用した学習をお勧めします。
旧帝大(北大・東北大など)や横浜国立大・筑波大などを目指す学生には、残念ながら関先生の提言は不適切と言わざるを得ません。このレベルの学生には添削指導が必要不可欠です。また『ポラリス自由英作文』は難しすぎる可能性が高いため、別の参考書に取り組むべきでしょう。
多くの受験生にとって、中学英語レベルの基本的なミス(時制、複数・単数の区別、動詞の有無、前置詞の後の不定詞使用など)を指摘してもらい、正しい英文を書けるようになることは「些細な」問題ではなく、むしろ最重要課題なのです。
英語CPU負荷の問題
自由英作文を書く際、英語力が未熟な受験生は英文を組み立てることで頭がいっぱいになり(英語CPU的に余裕がなくなり)、基本的な文法チェックまで頭が回らなくなります。(無理に強要すれば、フリーズしてしまうかもしれない)。中1の時には簡単にできたはずの文法問題が、内容を考えながらだとできなくなってしまうのです。
高度な模範解答は消化不良に
関先生が提示するような模範解答は、多くの受験生にとっては理解して活用・再現するのが難しすぎます。大半の受験生の目標は、模範例文のような完璧な英文を書くことではなく、「下手くそでも意味が通じる英文をなんとか書くこと」なのです。
私の指導経験から、添削指導の効果は次のように分類できます:
課題 | 効果 |
文法ミスを減らす | ◎(非常に効果的) |
表現ミスを減らす | △(ある程度効果的) |
問題文を正確に読み取る | ○〜✕(人による) |
一文一文を正しく並べる | △〜✕(難しい) |
何を書いたら良いか分からない | ✖(添削では解決困難) |
添削指導を数回受けるだけで、文法ミスは短期間で大幅に減少する可能性があります。自由英作文のある大学(関東・首都圏の主な国立大学)を受験する生徒さんには、添削指導をお勧めします。
例えば次のようなミスの添削が必要になります:
こうした誤読は添削指導である程度改善できる場合もありますが、根本的な英語力と国語力の向上が伴わないと難しい面もあります。
自由英作文を書く際の最大の課題の一つは、一つの英文のあとに、適切な英文を続けて書くということである。例えば、次のような課題がある。
旧帝挑戦レベルの受験生の場合は、これらは非常に難しい課題だと言える。とくに旧情報→新情報という順番に並べるのは、ある程度以上の英語脳と言語脳を身に着けていないと非常に厳しいと言わざるを得ません。短期間の簡単な添削指導では、おそらく達成可能な課題ではないでしょう。
とはいえ、ある程度はこれらの課題(問題)を避けることは可能です。つまり、英検流の定型文のみを馬鹿の一つ覚えのように繰り返してそれに徹する、譲歩構文や逆説のつなぎ言葉(but, howeverなど)を使わないようにする、といった消極的な指導の徹底です。
関先生の「添削不要論」は、一定以上の英語力を持つ優秀な受験生には有効な提言です。しかし多くの受験生にとっては、添削指導を通じて基本的な文法ミスを減らすことが先決です。関先生の議論を真に受けないようにしましょう。
自分の英語力を正しく把握し、それに合った学習法を選ぶことが大切です。東大・早慶上位を目指せるレベルならば『ポラリス自由英作文』にチャレンジするのは有意義です。しかし、それ以外の方は、添削指導を活用したりしながら、根本的な英語力を向上させることが肝要です。
当塾では、生徒さんの英語レベルに合わせた最適な指導を提供しています。お気軽にご相談ください。