大学入試等の自由英作文はどのように採点されるのでしょうか。ちょっと昔から議論されてきたのは、減点方式か加点方式かというものでした。
減点方式とは、文法や表現等に致命的ミスがあると、それを減点していく採点方法です。例えば、”discuss about the problem”と書くと、aboutが不要なのでマイナス1点とします。この採点方式が採用されていると論じる人たちは、受験生(高校生)には説得力のある英文などどうせ書けっこないのだから、加点方式は不可能であると判断し、出来るだけ文法ミスを少なくするようにとアドバイスします。
他方、加点方式であれば、多彩な表現を適切に用いているか、内容は整合性があっているか、論理的な文章展開かなどの項目について、得点を与える方式となるでしょう。
以前ネットで英語塾のウェブ・サイト等を検索してみたときは、減点方式を支持する人が多いという印象を受けました。しかし、和文英訳問題ならばいざ知らず、自由英作文の問題で減点方式だけが採用されるのは、ほとんどあり得ないと当塾は考えます。減点方式だけで自由英作文を採点してしまうならば、そもそも自由英作文を出題する意義ーー複数の英文を適切に並べていく能力を測定する試験の意義ーーが失われてしまうからです。
実際に高校生に自由英作文を指導しているとよく判るのですが、受験生が直面している問題は、説得力の有る素晴らしい文章を書けないといった高尚なことではなく、凡庸で当たり障りのないシンプルに分かりやすい英文を書けないことなのです。つまり、彼らの書く英文は、多くの場合、文と文のつながりが不明だったり、話が突然に飛躍したりしています。あるいは、設問を無視したり、非常に低レベルの根拠を提示したりします。言い換えれば、文法ミスはないかもしれないが、致命的欠陥のある文章を書いてしまいがちなのです。しかし、そういう欠陥英文を減点法では適切に対処できません。自由英作文という問題の意義は、細かい文法規則をどれだけ守るかではなく、文章全体として意味のある英文を書けるかどうかを測ることに有るのですから。
さてここで致命的欠陥のある英文とはどんなものなのか、説明しておく必要があるでしょう。(英作文の参考書には、稚拙な英文例が載っていることはほとんどありません。しかし、大半の受験生は稚拙な英文を書いているはずです)。箇条書きで書いてみると、次のような英文です。
- 同じ表現やフレーズを繰り返し使用する英文
- あまりにも無内容な議論を繰り広げる英文
- 問題文の問に全然応えようとしない英文
- 文と文とがつながっていない英文
を指しています。もう少し具体的に見ていきましょう。
「無内容な議論」とは?ーー「Aを好きだから、Aが良い」は駄目です。
次のような問題を想定してみましょう。
問 ” The seashore or the mountain? Where do you want to spend your summer vacation? Choose between the two and give a reason.” (夏休みは海で過ごしたいですか、それとも山で過ごしたいですか。2つのうちの一つを選び、その理由を一つ述べなさい)。
答 ” I like to go to the mountains because I like the mountains. Moreover, I do not like the seashore.” (山が好きなので山に行きたいです。それに海は好きではないからです)。
どうでしょうか?「Aが好きだからAをしたい」というのは、あまりに無内容な論理展開ではないでしょうか。しかし減点オンリーの採点方式では、うまく対処できません。これは困りますね。
ここでは、なぜ山に行きたいのかを具体的に述べておく必要があったのです。たとえば、” I like to go to the mountains because I feel happy when I am walking or climbing in the mountains”(私は山に行きたいです。というのは、山を歩いたり登ったりするのは楽しいからです)といった具合に書かなければならなかったのです。「山が好きだから」を根拠にするのではなく、山が好きな理由を具体的に提示しなくてはならないのです。
「好きだから、好き」のような無内容な英文は、ちょっとあり得ないように見えるかもしれません。しかし英語で文を書こうとすると、日本人の多くは頭がとても悪くなり、こういう英文を平気で書いてしまいます。だからこそ、凡庸だがまともな英文を書ける受験生を評価できるような採点方式が求められているはずなのです。
もう一度、2つの答案を比べてみてください。
問「あなたは夏休みに山に行きたいですか、それとも海に行きたいですか、理由を一つ挙げて説明してください」
答1「私は山が好きなので、山に行きたいです」
I like to go to the mountains because I like the mountains.
答2「私は山歩きは楽しいので、山に行きたいです」
I like to go to the mountains because I feel happy when I am walking or climbing in the mountains
答1と答2に同じ点数をあげられるでしょうか。仮に文法や表現上のミスを減点する減点式だとすれば、上記2つの英文にさほど差はつかないでしょう。しかし、それでは「自由英作文」を試験に出す意味がありません。答1のようなクダラナイ英文には、むしろ0点くらいが相応しいのです。減点オンリー方式の採点法がありえないと考える理由がここにあります。
「文と文が適切につながっていない英文」とはーーー[結論⇨理由]が出来ない。
文と文とが分かりやすく繋がっている英文を書けない生徒は、非常に多いですね。あまり話題になることは少ないですが、自由英作文の指導者を密かに悩ませている大問題になっているはずです。
例えば、英作文である事柄について自分の意見を書くよう求められたとき、最初に結論(主張)を書き、その後にbecause(・・・だから)と理由を述べる文を続けるのが定型ですが、何故か理由を書くのではなく、別の話題を唐突に持ち出してしまうことが多いのです。あるいは、for example (例えば) と書いてあるので、具体例が来るのかなと思って読み進めると、全然別の話題が出てきて、読み手(採点者、指導者)を困惑させたり、いらいらさせたりするのです。しかしほとんどの学習者は、それがどうしてヒドイ文章なのか、なかなか理解できません。次の例を見てください。
問「なぜ太陽光調理器(太陽光を銀紙で反射させ、その力で水を沸かせる装置)は便利な道具なのか、その理由を説明しなさい」” Give some reasons why solar cookers are very convenient and helpful? “
答「太陽光調理器はとても大事です。なぜならば途上国では沢山の子供が不衛生な水で死んでしまうからです」” Solar cookers are great because a lot of babies and children in developing countries die from drinking dirty water”
日本人受験生が書きそうな典型的な駄目英文です。唐突に子供の死の話題が出てきましたが、これが駄目なのです。太陽光調理器の優れていることと子供の死との間に、いったいどのような関係があるのか、全く意味不明です。採点者としては、解答者は文と文との繋がりの重要性を理解できていないと判断し、低い点数をつけることになるでしょう。また、こういう駄目英文で満点が取れるようであれば、わざわざ自由英作文を学ぶ意義などありません。
ではどう書けば良かったのか、念のために簡単に説明しておきますと、「太陽調理器は大事だ。なぜならば」の後に、「太陽光調理器を使えば、途上国の子供の死を減らすことができるからだ」” because solar cookers can save many children’s lives in developing countries” とか「太陽光調理器を使えば、燃料費不要で水を煮沸することによって、安全な水を大量に供給できるようになるからだ」” because solar cookers can supply a lot of drinkable water without using any fuels” などとします。そしてその上で、背景説明(途上国で不衛生な水のために乳幼児の死亡率が高いなど)を「後から」付け加えていくと良いのでしょう。(最初に背景説明を書いたら、零点です)
最後に
自由英作文を書くときに、文法や語法のミスを減らすのも確かに大事なことです。しかし、それ以上に求められているのは、「Aが好きだからAが好きだ」のような無内容な論述を脱し、一つひとつの英文を適切に並べていく力、全体として何を言おうとしているのかよく理解できる英文を書く力なのです。自由英作文の採点方法も、当然のことながら加点方式を重視しているはずだと繰り返し強調しておきます。
シリウス英語個別指導塾 by 東大式個別ゼミ
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