メタ認知を拒絶する中高生ーー自分の「間違い」と向き合えないのはなぜか

query_builder 2025/07/29
メタ認知を拒絶する中高生ーー自分の「間違い」と向き合えないのはなぜか


メタ認知を拒絶する中高生ーー自分の「間違い」と向き合えないのはなぜか


前回の記事では、プロの個別指導講師との対話を通じて、生徒が自身の学習を客観視する「メタ認知」の能力を育む可能性について論じました。しかし、教育の現場では、このメタ認知を促すこと自体が非常に難しい場合があります。

今回は、どのように、そして、なぜ多くの中高生がメタ認知に抵抗し、自分の間違いと向き合うことを拒絶するのか、その具体的な事例を通して、少し掘り下げていきたいと思います。


学習法の「理想」と「現実」のギャップ

学習法の世界的な権威であるバーバラ・オークリー氏の著作『学力を強くするーーガリ勉しないで成績をあげる脳の使い方』では、子供たち自身が「学習を研究する科学者」になることを推奨しています。彼女は「第三者として自分のしていることを『天井から』眺めて欲しいのです」と述べ、自分の学習を客観視するメタ認知の重要性を、子どもたちに説きます。なにしろ本書の想定する読者は9歳から19歳なのです。

『脳が一生忘れないインプット術』などの著書がある星友啓氏も、YouTube動画「勉強は才能よりやり方で決まる」の中で、**「才能よりも、メタ認知能力を持っている方が2倍学習効果に寄与する」**と語っており、メタ認知が学習における強力な武器であることは間違いありません。

しかし、これらの主張には、ある重要な視点が抜け落ちています。たとえば、星氏が教えているのは、スタンフォード・オンライン・中等教育学校に集う、才能とやる気のある生徒たち(academically talented and motivated students)です。彼らのような例外的に優秀な生徒たちにとって有効な方法は、「普通に優秀な」中高生にも同じように通用するのでしょうか?

残念ながら、とくに私立中堅校の中学生だとか、進学校でも落ちこぼれてしまった中学生の場合には、「ノー」の場合が多いようです。メタ認知の力には大きな可能性がありますが、それを追い求めるあまり、教育現場の厳しい現実から目を背けてはなりません。理想論だけでは、子供たちの心には届かないのです。


生徒がメタ認知を拒絶するときーー 具体的な事例から

多くの場合、精神的にまだ成熟していない中高生にとって、自分の学習状況や間違いを客観的に認めることは、想像を絶する苦痛を伴います。ここでは、私が実際に目の当たりにしてきた「メタ認知を拒絶する生徒たち」の事例をいくつかご紹介します。

  • 事例1:答案の「❌」にショックを受ける小学生  これは当塾の経験ではありませんが、小学生の多くは、自分の答案に赤いバツ「❌」がつけられると、大きなショックを受けるようです。彼らが望むのは、間違いがあるときは、それを消しゴムで消し、正しい答えを書きこみ「⭕️」をもらうことなのです。自分の苦手な箇所を客観的に見つめ、次に活かすというメタ認知的な思考は、幼い彼らにとっては不可能に近いでしょう。

  • 事例2:問題の難易度を自分で判断できない中学3年生(私立中高一貫の準進学校) ある私立中高一貫校の中学3年生に、解いた数学の問題の難易度を「難しいなら星3つ⭐️⭐️⭐️、易しいなら星1つ⭐️」のように記録するよう指導したところ、「自分では判断できない」という答えが返ってきました。自分にとっての難易度(苦手度)を評価するという、メタ認知の第一歩とも言える作業ですが、先生に何もかも判断を委ねてしまおうという未熟な心には、あまりにも難しい注文だったようです。もしかすると、中学受験の過程それ自体になにか問題を抱えていたのかもしれません

  • 事例3:自分で「❌」を書き込めない中学2年生(私立中高一貫の中堅校) Skype授業をしていた中学2年生は、添削してオンライン上で返却した答案の間違えた箇所に、自分で「❌」を書き込むよう指示しても、実は「❌」を付けていませんでした。私の採点・添削はあくまでもオンライン上のものですから、本人がノートに直接に「❌」を書き込んでくれないと、間違い答案は真っ新なままなのです。何度指導しても同じ間違いを繰り返す原因は、まさにここにありました。しかし、彼は頑なに抵抗しました。自分の間違いを「❌」という形で書き込む行為そのものが、彼にとって大きなストレスとなっていたのでしょう。(skype指導で、生徒がこのような抵抗をされると埒があきませんから、結局は退塾してもらいました)。

  • 事例4:「できた問題だけ」復習したい中学2年生(私立中高一貫の中堅校) 中1の英文法を復習した際、誤答率は5〜10%程度だったため、「間違えた部分を重点的に復習すれば効率的だよ」とアドバイスした生徒がいました。しかし、彼の答えは「できた箇所をしっかりとやりたい」というものでした。彼は、自分が間違えた問題から目をそらし、正解できたという心地よさの中に留まりたかったのです。ここから分かるのは、間違いと向き合うには、まず「間違いをしても大丈夫だ」と思える自信が必要だということです。また、成長しようという意欲を強く持つことも、同じように大事でしょう。

  • 事例5:「分からなかった自分」を隠す生徒たち(中堅校~進学校、中高生) これは多くの中高生に見られる傾向ですが、講師の質問に答えられず、仕方ないので講師が答えを教えると、さも「そんなことは前から知っていましたよ」という態度をとることがあります「今、分からなかったでしょう?」と問いただしても、「はあ…」という返事をしてしまいます。彼らは「分からなかった自分」の存在そのものを無かったことにしようとするのです。要するに、自己欺瞞や誤魔化しによって、自分を守ろうとしているのでしょう。ちょっとこれはマズイ傾向ですが、かなり多くの中高生にそういう傾向を見出せます。特筆すべきは、進学校の高校生であっても、そういう態度をとる者がいるということです。(実は、現在の輪が塾にもそういう態度を取った準進学校の高校一年生がいました。しかし、幸いなことに、彼とは、ある程度以上、メタ認知的な話題で話し合うことができています。なんとか、自分の間違いを誤魔化そうとしたことについて、本人に認めさせるに成功しました)[書き手の独り言ですが、事例5は、非常に困った問題ですが、同時に興味深い現象です。なぜ、「あ、そうだったのか」ではなく、「わかってましたよ」みたいな誤魔化しの態度をとるのか。非常に不可解な心理なのです。もちろん、この泥沼状況から抜け出す方法論の模索は、生徒さんにとっても、我々にとっても重大な課題なのは言うまでもないことです。]


暫定的結論:生徒たちがメタ認知を希求するまで待つ

これらの事例から分かるように、中高生、とくに中学生の場合は、メタ認知を実行する以前に、自分の間違いを受け入れる心の準備ができていない場合があります。このような生徒に対して、メタ認知を無理強いすることは難しいでしょう。


そもそも我々は、メタ認知という万能薬を生徒たちに「与える」ことはできないのです。メタ認知は、先生が生徒に与えらえる能力ではないのです。むしろ、生徒本人が成長し成熟する過程において、自分の力で獲得していくものです。プロ個別指導講師は、生徒との対話を通して、あくまでも触媒的に関与することができるだけなのです。

生徒自身が自己肯定感をもって精神的に成熟し、自ら「もっとできるようになりたい」と心から願うとともに、「自分の頭脳の取り扱い方法を知りたい」と思うようになるその時まで、根気強く彼らの成長を信じて待ち続けることが求められているのです。

ただし、厳しいようですが、一言付け加えておきましょう。今現在メタ認知できない中高生たちが、いつの日か必ず目覚めてくれるという保証はありません。高校生くらいになって、ちょっと大人になると、目覚める場合が多いのは確かです。しかし、目覚めるのは10年後や20年後かもしれません。あるいは、一生目覚めることはないのかもしれないのです。けれども、希望を捨てたりはせずに、待っていてあげてもらいたいのです。






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