長く厳しい中学受験勉強を乗り越え、ついに憧れの私立中高一貫校に入学したと思ったら、その安心も実は束の間、早くも中学一年生の段階で、**「深海魚」への入り口 **に差し掛かっている現実をご存知でしょうか。
先日、面白いデータが出てきました。**「中高一貫校の中学校に入学した生徒数」と「6年後の高校卒業生数」の差を調査してとめたものなのですが、名門一貫校に入学した生徒さん全員が、その学校を卒業できたわけではなく、毎学年、必ず何パーセントかは、学外にドロップアウトしている現実を示しているのです。
今回は、そのデータを紹介するとともに、その最大の原因と推測される**「英語」**という教科について、掘り下げていきます。
◆ データが示す、静かに学校を去る生徒たち
まずは、衝撃的なデータをご覧ください。これは2019年度に各中学校へ入学した生徒が、6年後の2025年に高校を卒業する際に何名になっているかを示したものです。
主要な私立中高一貫校の入学者数と卒業者数の比較 (2019年入学→2025年卒業)
※開成は高校からの入学者を含むため参考値
このデータから、いくつかの重要な点が見えてきます。
(1)5%〜8%が学校を去っている現実: 多くの学校で5%〜8%の生徒が6年間のうちに学校を離れていることがわかります。もちろん、保護者の海外転勤や、より上位の高校(日比谷、開成など)を目指すといったポジティブな理由もゼロではありません。しかし、その多くは「成績不振」によるもの、つまり、学校の授業についていけなくなったことが原因だと考えられます。もちろん、退学やドロップアウトの最大の原因は英語だと断定してよいでしょう。
(2)小学校からの内部進学者がいる学校で大きい傾向:四谷雙葉、洗足で減少率が高いものは、おそらくは小学校からの持ち上がりの生徒がいるためでしょう。(同様に、暁星や白百合など、下からの小学校からあがってくる学園も、減少率が高いことが予想される)
(3)数字だけでは見えない「深海魚」の存在: 麻布学園のように減少率が低い学校は、単純に落ちこぼれる生徒が少ないというわけではありません。むしろ、成績不振でも留年や外部受験の勧告をせず、卒業まで在籍させるという学校の方針が反映されている場合があります。このような「数字に表れない学力不振層」、いわゆる**「深海魚」**の存在は、ドロップアウトする生徒数よりも遥かに多い、というのが教育現場での共通認識です。正確なデータは存在しないのですが、生徒の15%〜35%が英語で「深海魚」状態にあると予測されます。
◆ 深海魚を作り出すのは「英語」
数学の落ちこぼれも大きな問題ですが、多くの場合、私立文系コースを選択することで大学受験への直接的な影響を回避できます。しかし、英語は文系・理系を問わず、すべての大学受験で必須です。逃げ場がないからこそ、英語のつまずきは深刻な問題となるのです。
理由1:入学時点での「英語格差」が想像以上に大きい 中学受験では問われないため、生徒たちの英語力は入学時点ではゼロに近いと思われがちです。しかし現実は全く違います。小学校から英語塾に通っていたり、海外経験があったりして、既に基礎を習得している生徒がいる一方で、アルファベットの読み書きやローマ字すらおぼつかない生徒もいます。このスタートラインでの圧倒的な差が、最初の授業から大きな壁となって立ちはだかるのです。
理由2:そもそも「学び方」が分からない。国語や算数は、小学校からの延長線上にあり、子どもたちは「問題集を解く」といった自分なりの勉強法を持っています。しかし、中学から本格的に始まる英語は、学習の要領が掴みにくい教科です。なにしろ、問題集を解くだけでは英語の学習にはならないのですから。
理由3:英語の勉強は退屈なので、やりたがらない 単語や文法をただ暗記する作業は非常に単調で、多くの子どもが**「英語の勉強は退屈だ」**と感じて、勉強しないで放置しがちになります。また、英語を勉強する意義や目的を感じられず、ただ苦痛な時間に思えます。
理由4:子どもの自立と反抗期で、親の関与が難しくなる小学生の頃のように「勉強しなさい」と言葉をかけるだけでは、中学生になった子どもは素直に机に向かってはくれません。特に自我が芽生え、反抗期に差し掛かるこの時期、保護者が強く学習を強制しようとすると、かえって反発を招き、親子関係が悪化してしまうことも少なくありません。勉強から逃げる子どもと、それを叱る親、という悪循環に陥ってしまうかもしれません。
理由5:私立中高一貫校特有の授業スピードと語彙力の高さ 公立中学の1.5倍以上の速さで進む授業、毎週のように課される数百の英単語の暗記。これらの圧倒的な学習量が、わずかなつまずきを、あっという間に取り返しのつかないほどの大きな遅れへと変えてしまうのです。
◆ 我が子を守るために、保護者ができること
では、どうすれば我が子を「深海魚」にせず、充実した6年間を送らせることができるのでしょうか。なにしろ英語が全然できないと、Fランク大学しか進学できません。つまり、小学校の勉強の出来ない同級生と、大学では再度同級生になってしまうのです。
*「中学入学がゴールではない」と親子で意識を共有する:中学受験の合格は、あくまで6年間の学びのスタートラインです。「入学して一安心」ではなく、ここからが本番なのだという意識を、まずは保護者様が持ち、お子様にも伝えてあげてください。
* 「中1の1学期」のスタートダッシュを全力でサポートする:勝負は最初の3ヶ月です。この時期に英語への苦手意識を持たせないことが何よりも重要です。特に英単語の暗記がポイントとなります。「今週の単語テスト、一緒にやっみようか?」など、反抗期を刺激しない形で伴走してあげるのも良いですね。
*小学校の段階で、ある程度英語を習わせておく。これも有力な方法論で、推奨する先生もたくさんいらっしゃいます。中学受験の勉強のために非常に忙しいとは思いますが、小学生向けの英語教室に通わせるのも、将来の保険として一考に値します。
最後に、最も大切なこと:再浮上は必ずできる
ここまで、データと経験に基づいた少し厳しい現実についてお話ししてきました。
しかし、最後に大急ぎで付け加えなくてはならない、とても大事なことがあります。それは、英語でいったん落ちこぼれてしまっても、本人が「やる気」になって真剣に取り組めば、必ず再浮上できるということです。たとえ何年間もの学習の遅れがあるとしても、適切な学習法と本人の努力があれば、その差は必ず克服できます。言語の学習は、正しいアプローチで臨めば、脳が驚くほど柔軟に対応してくれる分野でもあります。
大切なのは、お子様自身が「もう一度頑張ってみよう」と思えるきっかけを、周囲が作ってあげることです。今回の記事が、そのための第一歩となれば幸いです。保護者の皆様の役割は、決して諦めずに可能性を信じ、お子様が再び立ち上がるためのサポートをしてあげることなのかもしれません。
シリウス英語個別指導塾 by 東大式個別ゼミ
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