慶應義塾湘南藤沢中等部が遂に英語を入試科目に採用!
すでに巷の話題になっていると思いますが、慶應湘南藤沢中等部 (←クリック)は、2019年度から一般受験生も英語で入学試験を受験できるようになるとアナウンスしています。
従来の試験制度では、帰国生のみが英語受験を選択できました。(この時、英語試験は英語による「作文」とされています)。 ところが、2019年からは、一般入試生か帰国生かに係わらず、(1)国語・社会・理科・算数の4科目受験か、(2)国語・英語・算数の3科目受験か、本人が選択できるようになったのです。つまり、一般受験生であっても、理科と社会の代わりに英語を選んで、中学受験に挑戦できるようになるわけです。
私立中学受験で英語受験できるのは、今まではあまり有名ではない中学校ばかりでしたから、たいした話題にもなりませんでした。しかし、来年度の2019年からは、慶應義塾大学の付属中学が英語受験に参加するわけですから、ちょっとした大事件だといえそうです。
では、どの程度の英語力が慶應義塾では求められているのでしょうか。案の定、他の私立中学よりもかなりレベルが高いようです。2016年9月段階の慶應湘南藤沢の案内 (←クリック)によれば、「英検2級~準1級程度」となっています。英語力で英検準一級程度といえば、日本育ちの小学生としては、ほとんど不可能と言って良い位の超高水準ではありませんか。
しかし、もう少し注意して調べてみますと、慶應義塾湘南藤沢中等はそれとは異なったメッセージも発していることが分かります。2018年までの英語参考テストについてですが、慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部のウェブサイトのQ & A(←クリック)が興味深いのです。「中等部入試における<英語参考テスト>とはどのようなものですか」という問いに、 「中等部入試において、英語に自信があり受験を希望する者を対象にしています。一般枠・ 帰国生枠いずれも受験可能ですが、同一問題です。レベルは英検2級程度で、 リスニングテストも含まれています」と解答しています。
英検準1級程度は、一般受験の小学校六年生には厳しすぎます。けれども、英検2級程度となると、日本育ちの小学生にも可能性が開かれているなという気がしてきます。 慶應が求めている英語力は、英検2級程度なのか、英検準1級程度なのか、それが大問題です。
あくまでも推測でしかありませんが、慶應側が求めている英語力をある程度予想することならば出来るでしょう。おそらくは、読解力(リーディング)と語彙力について言えば、英検準1級程度は小学生には難しすぎるという判断が慶應側にあるはずです。英検準一級で出題される英文は、『ナショナル・ジオグラフィック』とかWikipediaに出てくるような文章なのですが、小学生に積極的に読ませたい文章ばかりではありません。たいていのお子さんには、精神年齢がやや高すぎるのですね。 ですから、読解力と語彙力については、英検2級レベルを「本当に習得していれば」、十分余裕があるのではないでしょうか。
ただし誤解してもらっては困りますので、付け加えます。英検2級に合格と英検2級レベルの読解力があるというのは、全く別物です。というのは、英検2級合格者の多くは、英文の意味を正確には理解できなかったが、記号選択問題には正答できたというタイプだからです。英検2級の読解問題は高校生にとっても難解な英文なのです。したがって、英検2級レベルを「本当に習得」しているとしたら、小学生としてはかなり例外的に優秀だとみてください。
他方、書く(ライティング)については、英検2級程度では慶應側は少々物足りないはずです。というのは、我が国の英語教育事情を反映しているからなのでしょうが、英検の書く力の試験について言えば、ちょっと程度が低いからです。前述したように、慶應義塾湘南藤沢の従来の帰国生入試では、英語による本格的作文が求められていましたが、英検2級の英作文課題より遙かにレベルが高かったようにみえます。2019年度から慶應側が求める英作文力が英検2級レベルへと著しくダウンしてしまうとは考えにくいではありませんか。
したがって慶應側は、英検準1級程度の「まとまった文章」を書く力が欲しいなと考えているはずです。 ただし念のために付け加えれば、大人に求められる題材、たとえば、「同性結婚制度の是認についての見解を呼べよ」とか、「我が国の憲法を改正して大統領制の導入すべきか」といった課題を英語で論じられるようにすべきだという意味ではなく、あくまでも、子どもに相応しい題材について、「まとまった文章」を書く力を慶應は求めるはずです。 (このテーマについては、次回もう少し詳しく書きます)。
以上の推測をまとめましょう。慶應の附属中学の入試で求めらるだろう英語力というのは、読解力は英検2級程度が求められるだろうが、書く力は英検準一級に近い程度まで求められてるだろう。つまり、英検2級合格力に加えて書く力を養成すれば、慶應義塾の中学入試に合格する可能性も出てくるのではないか。
そして、<英検2級合格力+英検準一級程度の書く力>は、日本生まれ・日本育ちの小学校6年生にとっては非常に難しい課題ではありますが、全く不可能な課題ではないでしょう。週刊STの愛読者レベルに到達していない小学生であっても、なんとか挑戦できるレベルのではないでしょうか。
とはいえ、従来の英検2級対策あるいは準1級対策は全く通用しません。理由は簡単です。従来の日本の英検対策や英語学習法は、(1)小学生を念頭にいれていない、というだけでなく、(2)書く力(と話す力)を軽視した方法論に則っているからです。このことを踏まえ、次回は具体的な学習法について考察を加えてみましょう。