
武田塾さんは、志望大学別の「学習参考書ルート」を提示することで、大いに注目を集めています。すでに多くの皆さんは、ある程度存知のことと思いますので、詳しく紹介するまでもないでしょう。
さて、武田塾さんの「学習参考書ルート」なのですが、大学受験生に対して、参考書・問題集の選び方・使い方ついて、非常に良質な情報を提供しているのですが、必ずしも全部を鵜呑みにして欲しくありません。
というのは、武田塾さんが暗黙の前提としている高校生は、県立の進学高の高校生であり、中高一貫校の生徒さんたちを念頭に入れていないからです。県立進学高の生徒さんと中高一貫校の高校生とでは、その現状が大きく異なっている可能性が高いのです。
英語について言えば、県立進学高の生徒さんたちは、中1や中2レベルの英語ならば、ある程度以上は理解しています。そしてそうでなければ、高校受験を乗り越えられなかったはずです。他方、中高一貫校で英語に躓いてしまった高校生の場合は、中1レベルの英語すら丸で分かっていない場合が多いのです。
武田塾さんのYoutube番組をいくつか視聴してみますと、中学英語の復習は大事であると強調はするのですが、三週間や1ヶ月くらい復習をすれば良い、というアドバイスになっています。
例えば、次の二冊の教材(=どちらもお勧めすべき良い教材です!)を、1ヶ月以内に仕上げよと言うアドバイスになるようです。
簡単な中学英語のワーク教材(山田『中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく』)
中学英文法のまとめ用参考書(大岩『大岩のいちばんはじめての英文法、超基礎文法編』)
県立進学高の生徒さん、神奈川県で言えば、厚木高校や希望丘高校の生徒さんに対してならば、武田塾さんのアドバイスには賛成出来ます。しかし、中高一貫校の英語の落ちこぼれ君の場合はダメです。
理由は明白です。たった1か月未満、しかも二冊の薄い教材を一通り仕上げるだけでは、中学英語をマスターできるはずがないからです。
ちょっと考えてみてください。中学時代にそれなりに努力し、県立相模原高校なり県立湘南高校に合格した人と、3年間遊んで暮らしていた中高一貫校生とに対して、同じアドバイスができるはずがないのです。中学時代を英語をサボってしまった中高一貫校の高校生の場合、武田塾さん流のアドバイス(=2・3週間から一か月未満くらいの中学英語復習)は参考にならないというのは、ご了解いただけるでしょうか。
もっと徹底的な訓練を集中的に実行する必要があります。3年間とは言いませんが、ある程度のまとまった年月をかけなくてはいけません。
我々の経験からすると、中高一貫校の落ちこぼれ君が中学英語の習得をするためには、最短で3ヶ月〜半年くらい、人によっては2年間くらいの時間が必要となります。(数学が得意な生徒さんは比較的短期間で、数学が苦手だと学習時間が長くなる傾向にあります)。
ポイントを簡単に申し上げると、問題集や解説書を一通り終わらせるだけではダメだということです。徹底的な反復演習、とりわけ英文の繰り返し音読が必要不可欠です。文法を完全に理解した上で、教科書本文と重要例文を繰り返し音読することです。そして、しっかりと反復練習を自覚的に訓練すれば、並の県立進学高の生徒さん以上の英語力を身に付けられるはずなのです。
中学英語を、独学で習得するのは、やはり難しいですね。
中高一貫校の落ちこぼれ中学生に対する処方箋としては、家庭教師や個別指導塾で週2回以上の指導を受けることと書きました。高校生にも、ほとんど同じことが言えます。プロの家庭教師またはプロ個別指導に、週2回以上の指導を委ねるのが良いのです。
しかし、高校生の場合は、ある程度自覚が高まっているはずなので、やる気のある生徒さんの場合にかぎり、集団式の塾・予備校や有料の映像授業、あるいは独学であっても、理論的には、それなりに有効な学習方法論ではあります。
いずれの場合も、復習をしっかりとすることが最大のポイントです。例えば、習った英文を、毎日5ー10回、文法と意味・イメージと発音に注意しながら、丁寧に音読するようなインプットです。
逆にやってはいけないのは、記号選択式の問題を解き散らかすような勉強法です。言語学習の入門・基礎段階においては、4択式問題でいくら正解をしても、ほとんど何の意味もありません。
当塾(シリウス英語個別指導塾)では、『シリウス発展編』というテキストの例文暗唱を重視しています。『シリウス発展編』は一般に市販されていませんが、市販されているものであれば、例えば、『くもんのハイレベル中学英語、文法・作文』のようなものを、文法と英作文のテキストとして使うのも、良いかもしれません。
音読用の長文テキストは、以前であれば、『ニューホライズン』や『ニュークラウン』のような検定教科書は優れていたのですが、教科書改悪の結果、新しい教科書は非常に残念なものになってしまいました。
古い版の検定教科書を入手するか、『英会話・ぜったい音読』などを使うと良いのでしょうか。ただし指導者がいないと、独学では勉強しにくい教材でもあります。(例えば、“You will +動詞の原形“ で命令を表す表現などが出てきます。あるいは、go to churchとgo to a churchの使い分けがあって、その意味の違いを理解しなくてはなりません)。
中高一貫校の高校生が中学英語の習得するには、早い生徒さんですと3ヶ月間くらいで完成出来る場合があります。しかし、通常は5ヶ月以上くらいと思ってください。また、学習者によっては、2年間くらいかかるかもしれません。中学英語を習得するのは、やっぱり大変なのですから、仕方ありませんね。
すでに述べましたが、数学が得意なタイプの生徒さんですと、英文法の習得は比較的短期間で終えられるようです。逆に言えば、数学が苦手なタイプですと、時間がかかってしまいます。
なお、私立文系あるいはGMARCHや上智大学を志望する生徒さんであれば、中学英語の習得期間を多少端折り、短期化するのも一つの方法論でしょう。要するに、中学英語を書く力(ライティング)や話す力(スピーキング)を養成するのに、あまり時間をかけない戦略を採用するのです。これは、武田塾さんの戦略でもあります。
以上、中高一貫校の落ちこぼれ高校生が、どうやって中学英語を習得すべきなのか、簡単に解説をしました。
中学英語の習得に案外時間がかかることに、驚かれる方もいるかと思います。しかし、何事も基礎は大事なのです。中学英語を完璧にすることを目指し、十分に時間を使ってもらいたい。たとえば6か月以上中学英語の習得に時間をかけるとしても、大学受験には間に合わせることができます。
また当塾のようにしっかりと中学英語を学べば、英作文(ライティング)・英会話(スピーキング)はびっくりするほどの力をつけることができるので、むしろ受験には有利だともいえます。国公立大学はもちろんのことですが、上智大学や立教大学などのTEAPや英検などを利用する外部試験方式では、それらの力が問われているからです。
今回はこれ迄とします。
2023年の冬に、中高一貫校で英語に落ちこぼれたらどうすればよいのかについて、いくつか記事を書いてきました。ここにリンクを貼っておきます。
中高一貫校の中学生、英語で落ちこぼれた時の対策(その手は悪手!) (←クリック)
英語の落ちこぼれ中高一貫校中学生のための処方箋 (←クリック)
中高一貫校高校生の英語落ちこぼれへ組への処方箋(前編)(←クリック)
中高一貫校の英語の落ちこぼれ高校生への処方箋(後編)(←このブログ記事です)