title-praivacy
2024/03/15

2024年東大の英文要約問題[1] ーー問題と解答例

2024年東大の英文要約問題[1]ー問題と解答例

 

 

はじめに

 

本来は、「生成AI✖️東大英語(3)ーー生成AIには話のオチが分からない」というタイトルのブログを書くつもりでしたが、書いているうちに予定が完全に変わってしまいました。結果、2024年の東大の英文要約の解説をニ回に分けて書くこととになりました。

 

 

なぜ予定を変更せざるを得なくなったのか。一つには今回の英文は、少々書き手の意図が分かりにくいものだったからです。

 

 

さらに重要なのは、大手予備校がオンライン上で発表する模範解答に、大いに不満を覚えたからです。些細なミスなどではなく、英文のオチだとか、主張をはっきりと咀嚼せず、重要そうに見える単語を単に並べたものばかりだったからです。

 

 

構成としては、今回は東大が出した問題およびその解答例を、大手予備校の代表的なものと当塾のもののを紹介することにします。そして次回には、詳しい英文の解説を提供いたします。

 

 

 

1)東大英語はどんな球種を投げてくるか分からない。

 

前回のブログにおいて、生成AI(ChatGPTなど)は要約文の作成において、起承転結の転の部分を敏感に捉えて理解する事ができないと論じました。しかし、当たり前のことですが、東大英語の文章はいつも起承転結の方法で論述しているわけではありません。2020年の英文は、たまたま起承転結だったに過ぎないのです。

 

 

 

特に東大の入試問題の場合に顕著なのですが、全く意表をつく文章の展開になる可能性があります。最初に結論があってその後に理由を述べますよとか、最初に問いかけがあって最後に結論が来ますよ、といった陳腐なワン・パターンにはとどまらないのです。

 

 

 

要するに、東大が要約問題で用いる英文は、ワンパターンな文章展開を予期していたのでは、歯が立たないのです。現行の生成AIの能力からすると、ほぼ読解不可能だろうと予想できます。

 

 

 

2) 2024年の東大英語要約文には、最後にオチがある

 

2024年の東大要約問題では、最初にちょっとした謎が提起され、最後のパラグラフで凄いオチが出てきました。前半の文章の80%では、文意が分かりにくいまま進んだのですが、最後の最後にボソッとした呟きが入り、読み手は「ああ、結局そういうことだったのか」と驚嘆することになります。

 
オチの結果、前のパラグラフで導入された怪しげな命題がひっくり返され、やっぱり反語的な意味だったのだと悟り、読み手がゾーッとさせるブラック・ユーモアが提示されることになりました。とても興味深い小話でした。

 

 

もっとも、ある種の予備知識や、政治・歴史・社会等についての教養がないと、このオチとブラック・ユーモアを理解することは出来ません。普通の高校受験生には、少々あまりにもハードルが高すぎました。(もっとも受験生は心配する必要はありません。オチを理解できなくても、ある程度以上の点数を取れるよう配慮があるはずです)。

 

 
もちろん生成AIが読解することは、やっぱり難しすぎました。

 

 
他方、英語講師はオチを説明することによって、英文全体の要約をしなければならないはずです。しかしながら、ほとんどの予備校や塾講師は気が付いていないようで、英単語の意味を和訳してペタペタと並べ、平板で面白くもなんともない要約を作り上げてしまいました。さらには、絶対にやってはいけないはずの、致命的なミスすらしている「模範解答」すら見出されます。

 

 

 

 

3)2024年の東大の英文要約問題

 

以下は、2024年の東大入試の英語問題1(A) の全容です。

 

 

以下の英文を読み、 その内容を70~80字の日本語で要約せよ。 句読点も 字数に含める。

  There is no doubt that one of the major issues of contemporary U.S. history is corporate propaganda. It extends over the commercial media, but includes the whole range of systems that reach the public: the entertainment industry, television, a good bit of what appears in schools, a lot of what appears in the newspapers, and so on. A huge amount of that comes straight out of the public relations industry, which was established in this country and developed mainly from the 1920s on. It is now spreading over the rest of the world.

 

  Its goal from the very beginning, perfectly openly and consciously, was to “control the public mind,” as they put it. The public mind was seen as the greatest threat to corporations. As it is a very free country, it is hard to call upon state violence to crush people’s efforts to achieve freedom, rights, and justice. Therefore it was recognized early on that it is going to be necessary to control people’s minds. All sorts of mechanisms of control are going to have to be devised which will replace the efficient use of force and violence. That use was available to a much greater extent early on, and has been, fortunately, declining—although not uniformly—through the years.

 

  The leading figure of the public relations industry is a highly regarded liberal, Edward Bernays. He wrote the standard manual of the public relations industry back in the 1920s, which is very much worth reading. I’m not talking about the right wing here. This is way over at the left-liberal end of American politics. His book is called Propaganda.

 

  Bernays’s Propaganda opens by pointing out that the conscious manipulation of the organized habits and opinions of the masses is the central feature of a democratic society. He said: we have the means to carry this out, and we must do this. First of all, it’s the essential feature of democracy. But also (as a footnote) it’s the way to maintain power structures, and authority structures, and wealth, and so on, roughly the way it is.

 

  I should mention that terminology changed during the Second World War. Prior to World War II, the term propaganda was used, quite openly and freely. Its image got pretty bad during the war because of Hitler, so the term was dropped. Now there are other terms used.

 

 

2024-1

 

2024-2

 

 

 

4)模範解答例

 

 

ここでは、模範解答をそのまま列挙しておきます。

 

 

代ゼミ

暴力に頼らず大衆の心を操作し、民主主義体制を維持するため、戦間期に米国で生まれたプロパガンダは、今では呼称を変えて、宣伝広告などとして世界中に広まっている。(78字)

 

 

 

駿台

企業のプロパガンダは暴力に頼らない大衆心理の操作を目的としており、民主主義の本質的特性だが、この用語自体は第二次大戦中の悪印象のため、現在は使われていない。(78字)

 

 

河合塾

企業のプロパガンダが目指す非暴力的な大衆心理の操作は、当初は民主主義の根幹をなし社会を維持する手段とされた。だが、この語は戦時中に印象が悪化し使われなくなった。(80字)

 

 

東進

米国での企業のプロパガンダは、暴力を用いない大衆心理の操作を目標とし, これは民主社会の要と認識されていたが、ヒトラーによる印象悪化を受けてその呼称は変えられた。 (80字)

 

 

 

ChatGPT-4

 

現代アメリカ史の大きな課題の一つは企業プロパガンダで、これは1920年代から発達した公共関係産業によって、大衆の意識を制御することを明確な目標としている。エドワード・バーネイズはこの分野の先駆者で、民主社会における大衆操作の重要性を説いた。第二次世界大戦後、プロパガンダの語感が悪化したため、用語が変更された。(155字)

 

 

シリウス英語個別指導塾

プロパガンダは大衆の思考操作技術だが、以前は民主社会の要として公然と称賛された。だがヒトラーが使い出すとそのウソがばれ、この言葉を使わず内密に思考操作を続けた。(80字)

 

プロパガンダは大衆の思考操作技術だが、以前は民主社会の要として公然と称賛された。だがヒトラーが使うとこの言葉を引っ込め、秘密のうちに技術を運用するようになった。(80字)

 

 

(追加別解 2024/03/17)

宣伝は大衆の考えを操る技術で、暴力を使わずに民主体制やナチズム体制の存続に貢献できる。かつては大っぴらに、現在は水面下で、世界中で広範囲に運用されている。(77字)

 

 

 

 

 

 

当塾の要約解答例は、大手予備校のものとかなり書き方が異なっていることは、読んでいただければすぐにお分かりかと思います。解説・説明は次回で。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
シリウス英語個別指導塾 by 東大式個別ゼミ
中高一貫校専門 大学受験英語塾 英検/TEAP
相模大野・中央林間・横浜・藤沢・町田
住所:神奈川県相模原市南区東林間4丁目13-3
TEL:042-749-2404
https://todaishiki-english.com/
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
お問い合わせ