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2024/03/05

ChatGPT×東大入試(1)ーー生成AIは東大要約問題を解けるか

Chat GPT×東大入試(1)

 

ー生成AIは東大の英語要約問題を解けるか

 

 

 

1)ChatGPTは東大英語要約問題を正解できる?出来ない?

 

 

ChatGPTを使えば文章の要約を瞬時にやってのけると、一部ではちょっと前から大評判です。もちろん英文の要約も、一瞬で仕上げてくれます。

 

 

となると英語教育関係者ならば真っ先に気になるのは、東大の入試英語にある要約問題で生成A Iが合格点を取れるのか否かです。

 

 

まずはネットで検索してみましょう。東大の英語要約問題を生成AIが解けるか否かについて、いくつかのサイトが出てきます。(しかしちょっと不思議なことに、あまり多くのサイトが出てきません。「東大英語 要約 ChatGPT」と検索してみたところ、正面からこのテーマに臨んだのは、2024年2月の段階ではわずか3件でした。)。

 

 

とはいえその3件の記事をチェックしてみると、ちょっとおもしろい結果が出てきました。ChatGPTは東大の英語要約問題を簡単に解くことができると論じると述べるサイト(例「東大入試の英文要約問題とか簡単だろうなと思ったらやっぱり余裕だった」と「東大英語大問1をAIが解決!?チャットGPTが難関に挑戦!」などの記事)と、出来ないというサイトに分かれていたのです。(出来ないと断じるのは、敬天塾さんという塾のサイトでした)。

 

 

Chat GPTの文章要約力について、意見が完全に真っ二つに割れてしまった訳ですが、どちらが説得力があるでしょうか。(宜しかったら、皆さんも読み比べてみてください)。

 

 

2)生成AIは字数制限を守ることが出来ない。

 

結論を先に述べます。生成A Iが東大英語の要約問題を解けるか否かですが、どう頑張っても合格点は取れそうにありません。つまり、敬天塾さんの評価が正しいです。調べてみると、敬天「塾」さんは東大入試を専門とする学習塾さんのようです。情報に信頼性があるのは、至極当然の事かもしれません。

 

 

他方、Chat GPTならば東大英語の要約問題を簡単に解くことが出来ると絶賛したのは、英語学習や教育関係とは無関係な人たちだと分かります。結局こういう人たちが、いい加減な情報発信をしているようです。

 

 

ChatGPT等の生成AIの情報に限定して述べると、具体的な試行錯誤を踏まえず、ただただ便利ですよと紹介しているものがあまりに多いようです。どのような使い方をすれば、どこまで有益なのか、実際に自分で使って検証していない情報を安易に鵜呑みにしてはいけないようです。

 

 

さて、話を戻しましょう。生成A Iはどうして東大英語の要約問題で合格点を取ることができないのでしょうか。答えは実に簡単明瞭です。ChatGPTであれ、Geminiであれ、Claude2であれ、生成AIは要約問題に課される字数制限を守ることが出来ないのです。(ただし2024年3月現在の時点において)東大英語の要約問題は、「70〜80字の日本語で要約せよ」といった設問が与えらるのが普通です。しかし、ほとんどの場合、長過ぎたり短すぎたりする要約文になってしまいます

 

 

ちなみに、「東大入試の英文要約問題とか簡単だろうなと思ったらやっぱり余裕だった」というブログ記事を読んでみますと、Chat GPTは128字で要約していました。しかし、設問をよく読んでみると、は80〜100字の日本語で答えなくてはならないのです。これでは0点です。

 

 

さて、ここで生成AIの致命的な欠陥は、生成AIに書き直しや修正をするようにと何度も命令を出しても、字数制限を厳守出来ないということです。多すぎるか、少なすぎるかのどちらかになってしまうのです。だから生成AIには要約力はあるが、東大の設問に答える力はないと結論づけざるを得ないのです。

 

 

 

3)2020年の東大英語要約問題をChatGPTー4に解かせる

 

 

2020年の東大の英語要約問題を生成AI(Chat GPTー4)に解かせてみました。なお、東大の入試問題、およびChatGPTの解答については、一番最後に参考資料として掲載しておきます。ご興味のある方は御覧ください。

 

 

設問は、与えられた英文を読み、70〜80字で要約するものです。ところが生成AIの最初の要約は、なんと193字です。字数を守るように命令しているのですが、ChatGPTは全く字数制限を考慮してくれないのです。そこで字数を厳守するように命令すると、101字に書き直してくれました。もちろん、これでも長すぎます。だから再度書き直しを強く命ますが、今度は短すぎる59字になってしまいました。そこでもう一度書き直しを命じましたが、出てきた答案は64字で、やはり字数不足です。

 

まとめますと、193字⇛101字⇛59字⇛64字 と長すぎたり短すぎたりしてしまうことしか出来なかったのです。

 

結局、ChatGPTの方が根を上げてしまいました。字数を考慮する、いや字数を数えることは、生成AIが一番苦手とすることのようです。

 

 

4)ChatGPTの問題点は字数厳守が出来ないだけか?(続く)

 

次のことが問われます。生成AIが字数制限を考慮できないのは、甚だしく不味いことなのか、それともどちらかというと、些細な問題に過ぎないのかという問です。

 

実際の大学入試で字数制限を守れないのであれば、それは確かに致命的なミスです。しかし、つまるところ、たかだが東大受験には「向いていない」に過ぎないと考えることも出来るではないですか。おそらく、東大英語の要約問題は解けなくても、たとえば(国立)電通大の昔の要約問題ならば、正解できるに違いないのですから。

 

 

さて、私にはしっかりとした確証がある訳ではありません。しかし、ChatGPTには、ある種の致命的な読解力不足があるのではないかと考えています。ダラダラとまとめたりする事ーーそれは貴重な能力には違いないのです!ーーは出来るが、文章の急所やポイント、つまり、「ほら、ここが大事だよね」と書き手が強調したい点を、あるいは「あっ、なるほど。そういうことか」と読み手が相槌を打ちたくなるエッセンスを、生成AIがしっかりとは捉えられいないように思われるのです。だからこそ、東大が求める絶妙な字数の範囲内で、英文を要約する事ができないのではないでしょうか。

 

 

次回に続きます。

 

参考資料

 

2020年東大英文要約問題

 

1A)以下の英文は、高齢者にやさしい(age-friendly町づくりを促進するための世界的な取り組みについて論じたものである。この文章の内容を7080字の日本語で要約せよ。句読点も字数に含める。

 

 

The age-friendly community movement has emerged as a powerful response to the rapidly growing aging population. Although definitions of “age-friendly community” vary, reflecting multiple approaches and methods, many models highlight the importance of strengthening social ties and promote a vision that takes into account all ages. For example, Kofi Annan, who served as the seventh Secretary-General of the United Nations, declared in the opening speech at the UN International Conference on Aging in 1999, “A Society for All Ages embraces every generation. It is not fragmented, with youths, adults, and older persons going their separate ways. Rather, it is age-inclusive, with different generations recognizing and acting upon their common interests.”

 

 

The World Health Organization and other international organizations further articulate this premise by defining aging as a lifelong process: “We are all aging at any moment in our life and we should all have the opportunity to do so in a healthy and active way. To safeguard the highest possible quality of life in older age, WHO endorses the approach of investing in factors which influence health throughout the life course.”

 

 

In practice, however, the age-friendly community movement has focused primarily upon the needs and interests of older adults and their caregivers and service providers. In doing so, it has failed to gather enough data from youth and families about what produces good living conditions in a city or about opportunities for and barriers against working together with older adults.

 

 

What accounts for this gap between vision and practice? One answer may lie in the common assumption of the age-friendly community movement that what is good for older adults is good for everyone. In other words, if the age-friendly movement succeeds in making communities suitable for older adults, those communities will then be suitable for all generations. While there are many shared interests among different generations, recent studies in the United States and Europe indicate that young adults and older adults differ in their voting patterns and attitudes more than at any time since the 1970s. These studies suggest that in order to fully understand what constitutes a city that is friendly to people at different stages of the aging process, it is critical to gather data from multiple generations about what makes a city good for both growing up and growing older.

 

 

 

全訳(拙訳)

高齢者にやさしい町づくり運動は、急速に増加する高齢者人口への有力な対応策として登場しました。「高齢者にやさしい町づくり」の定義は様々で、多様なアプローチや方法を反映していますが、多くのモデルでは社会的絆を強化すること重視し、全ての年齢を考慮に入れる将来像(vision)を訴えかけています。例えば、国連第7代事務総長を務めたコフィー・アナンは、1999年の国連国際高齢者会議の開会演説で、「全年代のための社会とは、すべての世代を喜んで受け入れるものです。若者、成人、高齢者がそれぞれバラバラにわが道を歩んでしまうのではありません。むしろ様々な世代が、共通の利益を認識して行動し、全年齢を包括的に受け入れるものです」と宣言しました。

 

 

世界保健機関(WHO)およびその他の国際機関は、加齢を一生涯にわたるプロセスであると定義し、この前提をさらに明確にしました。『私たちは皆、人生のどの瞬間においても加齢しています。だから、健康的に積極的に年を取っていける機会が、すべての人に与えられるべきなのです。高齢期における生活の質を可能な限り最大限に守っていくために、生涯を通して健康を維持できるような要因に投資していくアプローチを、WHOは支持しています』

 

 

しかしながら高齢者にやさしい町づくり運動は、いざ実践段階となると、高齢者とその介護者およびサービス提供者のニーズや関心に、もっぱら焦点を当てしまいました。すると、都市における良好な生活条件を生み出し、高齢者の協働の機会をもたらしたり、あるいは逆に障壁となってしまうものについて、若者や家族から十分なデータを集められなくなりました。

 

 

この理想像(ヴィジョン)と実践との間のギャップを、どうやって説明できるでしょうか?一つの答えは、高齢者にやさしい町づくり運動において当たり前に想定されていることに見出されるのかもしれません。つまり、高齢者にとって良いものは、すべての人にとって良いという想定に問題があるのかもしれません。別の言い方をすれば、高齢者に適した町作りに成功すれば、その町づくりは全世代の人々に適合したものになるはずだという想定です。異なる世代間に共通する関心事は沢山ありますが、最近のアメリカとヨーロッパの研究では、若者と高齢者とでは、投票パターンや政治社会的態度について、1970年代以降のどの時代をとっても、差異が大きくなっていることが示されています。つまり、加齢プロセスの様々な段階にいる人々にとって良いと思える都市はどんなものかを完全に理解するためには、成長していく人と老化していく人の双方にとって望ましい都市について、複数の世代からデータを収集することが重要なのです。

 

ChatGPTの要約例

 

最初の要約文では、字数制限を完全に無視した。設問では70-80字のところ、193字になってしまった。

 

「エイジフレンドリーコミュニティ運動は、急速に増える高齢化人口に対応するために登場しました。この運動は、異なる世代が共通の利益を認識し、行動する包括的な社会を目指しています。しかし、実際には高齢者へのサービスに焦点を当て、若者や家族からのデータ収集が不足しています。異なる世代のニーズを理解し、全ての世代が幸せに暮らせるコミュニティを築くためには、多世代からの意見を集めることが重要です」。(193字)

 

 

字数厳守を命令したが、101字でまだまだ字数が多すぎる。

「エイジフレンドリーコミュニティ運動は、多世代が共に幸せに暮らすために始まりましたが、実際には高齢者中心の対応で若者の意見が不足しています。全世代に適した都市を作るには、多世代からのデータ収集が必要です(101字)

 

さらに字数厳守を命令してみると、今度は59字で少なすぎる。

「多世代が幸せに暮らすための高齢者に優しい町作り運動は、全世代向け都市づくりには、高齢者だけでなく若者の意見も必要です」(59字)

 

再度、字数を守るように命令したが、64字でまだ字数が足りない。設問で求めれれているのは、70~80字なのですが。

「多世代が共生する高齢者に優しい町作り運動では、若者からのフィードバックも集め、全ての年代が快適に暮らせる環境が求められています」(64字)

 

 

人間の要約例

 

「高齢者にやさしい町づくりのためには、高齢者の意見に焦点を当てれば良いと想定されがちだ。しかし現実には世代差が存在するので、全世代の声を集めないとうまくいかない」(シリウス英語個別指導塾、80字)

 

 

高齢者にやさしい町作りは、理念としては全世代の利益に沿うはずだが、現実には高齢者の意向ばかり反映された。しかし世代差が存在するので全世代の声を集めるべきだ」(シリウス英語個別指導塾の別解、74字)

 

 

「全世代を視野に入れるべき町づくりが実際は高齢者優先になるのは、高齢者に良い社会は万人に良いと考えるからだ。 考え方の異なる全世代から意見を募るべきである」 (駿台青本、 76)

 

「全世代対応を目指しているが実際は高齢者優先なのは, 高齢者に 良い社会は万人に良いという前提ゆえかもしれない。 世代間で考え 方は違うので全世代から意見を募るべきだ」 (駿台青本の別解、78)

 

 

「高齢者にやさしい町づくりは、現実には高齢者の利益に焦点を置いているが、全世代の利益を考慮する社会を目指すためには様々な世代からの意見を収集すべきである」 (河合塾、76字)

 

 

「高齢者にやさしい町づくりは全世代共通の利益を目指すが高齢者に良い社会は万人にも 良いと考え高齢者を優先しがちだ。世代間の 差を考慮し各世代から意見を集めるべきだ」 (竹岡『東大要約Unlimited』、80 字)

 

「高齢者にやさしい町づくりは、社会の絆を強め、全世代を考慮することが重要だが、実際は高齢者に焦点が当てられている。今後は複数世代からのデータ収集が必要だ」(大阪英語特訓道場、76字)  

 

「高齢者に優しい町づくりは、社会的な繋がりの強化と全年代への配慮を目指すが、これまで高齢者のみに焦点を当ててきた。今後は様々な世代からデータを集めることが必要だ」 (大学受験.net 80字)

 

「高齢者にやさしい町づくりは幅広い世代にとって共通の利益になると謳われながら、実際には高齢者の利益が偏重されている。全世代からデータを集め改善を模索すべきである」(敬天塾解答、80字)

 

 

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2024/01/28

竹岡『東大要約』の誤読(補足)

 

前回のブログでは、竹岡『東大要約』の「38 欧州での子どもの権利の変遷」では、「大規模産業」という意味不明な言葉を使っていることを指摘し、むしろ「産業化以前」あるいは「産業革命以前」といった用語にすべきだったことを論じました。また、竹岡の不適切な訳語の原因には、研究社の『英和大辞典』があるのではないかと述べました。

 

 

今回は、前回のブログの補足をします。というのは、竹岡の38章の解説文には、その訳語以外にもちょっと誤読をしていることに気が付いたからです。ちょっと細かい点のようにも見えますが、歴史認識の上で重要な論点を含むので、ここで簡単に指摘します。

 

 

 

解答に至る解説文の中にですが、以上のような要約文があります。IMG_3111 (1)

 

 

竹岡「大規模産業(⇛産業革命)が始まる19世紀前半までのヨーロッパでは、子どもは労働力の一部であり、教育を受ける権利などを有さず、親が自由にできる存在だった」と、本文の第一段落で要約しています。

 

 

 

ぼーっと読んでいるとなんの問題もありません。しかし世界史の常識と照らし合わせてみれば、この日本語にはちょっと不味いですね。

 

 

と言うのは、竹岡の要約文を読むと、(1)産業革命が19世紀前半に始まったかのように読めてしまうるからです。しかし産業革命が始まったのは、18世紀前半から中頃だと言われています。だから、これは要約文としては、ちょっと駄目なのです。

 

 

 

(2)竹岡の要約文を読むと、産業革命が始まると、時を待たずして子どもの権利が認められたかのように見えます。しかし、子どもの権利が認められ始められるようになったのが19世紀後半であるが、産業革命が始まったのは18世紀前半だとすれば、産業革命の開始後子どもの権利をなかなか認められなかったのだ。それも100年くらい、あるいはそれ以上の長期にわたって、子どもの権利はずっと無視されてきたのだと解釈できるはずなのです。

 

 

 

考えてみれば、我々は19世紀のイギリスの児童に対して強いてきた重労働の歴史を我々は知っているではありませんか。19世紀の著名なノンフィクションやフィクションーーエンゲルスやディケンズの著作がその代表となるでしょうーーは、今なお言及されています。

 

 

child labor

 

Industrial_Rev

 

 

 

 

 

もっとも私は、要約文に深読み考察を書けと主張している訳ではありません。しかし、産業革命が起きたら、すぐにでも子どもの権利が認められるようになったかのような要約文は、誤解を与えるのでちょっと不味いだろうと指摘しているに過ぎません。ただし、誤解なきように付け加えると、模範解答の部分は問題ありません。不味いのは、途中の要約解説の箇所だけです。

 

 

 

 

 

なお、原文では以下の通りです。丁寧に読めば、「産業革命以後に」子供に対する味方が変化したと記述されているわけではないのです。

 

In pre-industrial Europe, child labour was a widespread phenomenon and a significant part of the economic system. Until and during the nineteenth century, children beyond six years of age were required to contribute to societies according to their abilities.

 

 

 

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2024/01/09

竹岡『東大要約』と研究社『大辞典』の誤訳(英語教材チェックその2)

エライ先生や辞書にも誤訳あり:権威ある辞書の言葉でも、意味不明な言葉を使わないように注意せよ!

 

英語教材を吟味する(その2):東大要約問題の訳語(続)

 

ーー竹岡『東大の英語 要約問題 UNLIMITED』と研究社『新英和大辞典(第六版)』の誤訳

 

 

 

1.意味不明な不思議な言葉

 

 

我々は、エライ先生の本や、権威のある辞書に書かれてあるものは、絶対に正しいと思い込んでしまいがちです。しかし、もちろんのことですが、いつも正しい訳ではありません。

         

 

前回取り上げたのは、高橋善昭先生『英文要旨要約問題の解法』の東大入試問題(1965年)(←クリック)に所収していたもので、’Industrial Revolution’ という用語を論じたものでした。今回取り上げるのも、実は再度、東大入試の要約問題で、しかも、内容的にも非常に似通ったテーマです。ただし、2019年に出題された問題ですから、2024年現在からみてごくごく最近の英文という感じです。

 

 

 

対象となったのは、現役の有名予備校講師の竹岡広信先生の『東大の英語ーー要約問題 unlimited』から、「38 欧米の子どもの権利の変遷」(2019年の東大の英語入試の要約問題)です。

 

 

 

 

いきなりですが、まずは竹岡先生の要約問題の解答例(和文)から見てみましょう。(東大の英語や設問については、一番最後に付録として添付しております)。

 

竹岡の1 竹岡の回答

大規模産業化以前、児童は、労働力であり親の私有財産だったが、19世紀後半以降社会が守るべき独自の存在とみなされ、国家によって法的に保護され様々な権利が与えられた」

 

 

 

冒頭でいきなり、「大規模産業化」という言葉で始まります。しかし、こんな単語を今まで見たことがありますか。おそらくほとんどの人は初めてということになると思います。広い土地を要する産業というのは、いったい何なのでしょうか? 実際、辞書はもちろんのこと、ネットで調べても、それを意味するような言葉が全然出て来ません。要するに、「大規模産業」という単語は意味不明です。もちろん大学入試の模範解答としては相応しくありません。

 

 

 

 

2.「大規模産業化以前」はPreindustrial の訳語だった。

 

 

そこで英文と対照してみると、「大規模産業」つまりここでは「大規模産業化以前」なのですが、”pre-industrial” の訳語として想定されていたと分かります。それならば、普通に前工業化段階の」とか「産業化以前の」、あるいは「産業革命以前の」と訳してもらいたかったです。

 

 

 

誤訳を正すと

 

 

大規模産業化以前、児童は、労働力であり親の私有財産だった」

 

 

 

→「産業革命以前では、児童は労働力であり、親の私有財産だった」

 

 

 

 

 

 

3.研究社『新英和大辞典(第6版)』が元凶だった

 

 

 

 

しかしそれにしても、なぜこんな訳の分からぬ訳語を、竹岡先生ともあろう人が選択してしまったのでしょうか。もちろん、まずは手元の英和辞典を片っ端から調べてみました。

 

 

 

 

 

すると日本で最も権威があるかもしれない大辞典、すなわち研究社の『新英和大辞典』(第6版)にだけは、Preindustrialの訳語として「大規模産業化以前の」が記載されていました。しかも驚くべきことに、他の訳語(「前工業化段階」「産業革命以前」など)は一切掲載されていないのです。

 

 

 

ぜひ写真を御覧ください。(本来のブログの意図から逸脱してしまいますので、このテーマのさらなる詳細については、一番最後の参考資料に掲載いたしますが、要するに研究社『新英和大辞典(第五版、1980年)』では、「大規模産業化以前の」のような不可解な訳語は掲載されていません)。

 

 

 

IMG_0122

 

 

 

 

 

竹岡先生の誤訳の原因は、おそらくは研究社『新英和大辞典』の訳語をまともに吟味せず、そのまま使ってしまったのであろうと推察できます。

 

 

 

しかし、びっくり仰天はそれに留まりませんでした。よく調べてみると、Industry の訳語は、ほとんど全ての英和辞典で「産業、工業」となっているのに、研究社『新英和大辞典』(第六版、2002年)だけは、「工業」という訳語がないのです。非常に不思議です。はっきり言って訳がわからないです。画像を見てください。

 

industry

 

 

 

 

 

4.「大規模産業」の正体を、英英辞典で探ってみた

 

 

とはいえ、ここで追及を緩めるわけではありません。なぜ研究社の新英和大辞典の第六版編集部が、こんな意味不明な言葉を作ってしまったのか、調べてみました。

 

 

 

一つの仮説ですが、おそらくは英米の辞書のpreindustrialの説明または定義を非常に分かりにくく、つまり下手くそに訳してしまったのではないでしょうかいくつか英米の辞書を調べてみたところ、現在の英語辞典(いわゆる英英辞典)では、イギリスのCollins の辞書に、「大規模」という訳語が登場した手がかりを見つけました。ここでは、オンラインのCollins Dictionary の preindustrial の説明をピックアップしてみます。

 

 

IMG_2753

 

Preindustrial refers to the time before machines were introduced to produce goods on a large scale.

 

 

となっています。 研究社『新英和大辞典』(第六版)に有った「大規模」の元となるであろう “on a large scale”が出てきますね。

 

 

 

Collinsの説明を日本語訳してみましょう。

 

 

「Preindustrial とは、機械を導入して大規模に商品を製造する時代より前の時代を言及する」

 

 

 

どうでしょうか。「大規模産業」と比べると、意味は通じますね。要するに、機械化して大規模生産する、前近代的な手工業でないとい意味なのです。しかし今一つピンとこない表現かもしれません。

 

 

 

5.「大規模産業」をわかりやすく表現すれば

 

 

 

そこで、「機械を導入」と「大規模に製造する」をさらに噛み砕き、漢字で表現します。なぜかこういう表現は、漢字の熟語で表現すると分かりやすくなるのです。また、前回のブログのように、「産業」の代わりに「工業」という言葉を使います。すると、次のようになるはずです。

 

 

 

「Preindustrialとは工場制機械工業が支配的になる以前の時代を指す」

 

 

 

 要するに ”produce goods on a large scale” というのは「工場制」と解釈すべきだったのですそして、” machines were introduced” ですから、全部まとめて「工場制機械工業」と訳してしまえば良い。誰でも意味がわかります。

 

 

 

 

 

最初の竹岡の要約文に戻ると、次のようになります。

 

 

 

工場制機械工業以前の時代では、児童は、労働力であり親の私有財産だったが、19世紀後半以降社会が守るべき独自の存在とみなされ、国家によって法的に保護され様々な権利が与えられた」

 

 

 

「工場制」等の言葉はちょっと重すぎるような気はしますが、一つの解答例とはなるでしょう。

 

 

とはいえ、preindustrial (またはpre-industrial )の訳語であれば、受験生であれば「産業革命以前では」または「産業化以前では」と訳すようにと、私ならば推奨するでしょうか。

 

 

 

もちろん、「工業化以前」では、あるいは「前工業化段階では」でも、もちろん構わないと思いますが、頭の固い英語の先生だと、バツになるかもしれませんから、やめたほうが良いかもです。(イギリスの場合は「産業化」が良いけれど、後発国は「工業化」だとか、面倒くさい議論があるので、立ち入らないほうが無難ですから)。

 

 

 

まとめ

たとえ研究社の辞典であっても、あるいは偉い先生の本であっても、吟味せずに無批判に使うのはやめましょう、ということです。先生であっても、訳のわからないまま、「作業」しちゃうことがあるからです。自戒の言葉でもあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考資料

 

 

東大の入試問題は以下の通りです。

 

 

 

IMG_0125

 

 

 

 

 

他の英英辞典

 

 

 

他のCollinsの辞書、例えば ”Collins COBUILD Advanced American English Dictionaryの”preindustrial”では、Preindustrialについては同様の説明でした。

 

 

IMG_2754

 

 

 

 

ブログ執筆後、Oxford Learner’s Dictionary of Academic Englishにも、“pre-industrial “の説明で参考になるのがあると判明しました。

 

IMG_0128

 

 

 

 

 

この場合、”large-scale industry”ですから、”preindustrial” は「工場制工業以前の」という訳語になるでしょう。

 

 

 

しかし、多くの辞書の場合、”large scale”といった言葉は、その説明(定義)にはありません。

 

 

Collins English Dictionary & Thesaures, preindustrial=of a society, age,etc, before industrialization (産業[工業]化以前の社会や時代の)

 

 

Webster’s New World College Dictionary, of a period before industrialization specif. before the Industrial Revolution (産業[工業]化以前とくに「産業[工業]革命」以前の時代の)

 

 

American Heritage Dictionary, of a society that is not industrialized (まだ産業[工業]化していない社会の)

 

 

Merriam-Webster.com、not industrialized (産業[工業]化していない)

 

 

 

CollinsEnglish

Ameheri

 

Merriam-webster

 

 

 

 

 

 

研究社『新英和大辞典』(第5版、1980年)の場合

 

 

参考のために、手元にある研究社『新英和大辞典』(第5版、1980年)をチェックしてみました。

 

 

すると、

 

  • preindustrial=『産業化以前の」
  • industrial = 「生産業の;産業による;工業用の」
  • industry = 「生産業、産業、実業;製造工業、工業;○○業」

 

となっています。非常に普通の訳語です。

 

 

つまり、第六版(2002年)になって、Preindustrialの訳語が大きく変わったのでした。

 

5ed

 

 

preind

 

 

industrial-1industrial-2

 

 

industry

 

 

 

 

 

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2024/01/07

生成AIの動画要約力(3):大学進学アドバイスの要約(youtube)

0ーー生成AIの要約力

 

 

今回は10〜15分程度の日本語Youtube動画を2本取り上げ、それを生成AI(ChatGPT-4、Claude)に要約させて見ることにします。どちらも大学進学に関するテーマです。
結論を先取りしますと、生成AIの要約には大きな間違いはなさそうですが、大事な論点や情報が欠如していました。役には立ちますが、全面的に依存できないくらいの能力しかないということです。
なお別の機会に詳しく述べますが、東大の入試英語の要約問題をAIに解かせますと、いつも毎回ちょっと「足りない」回答になってしまいます。要するに、AIの要約力の現在地は、そういう段階なのです。

 

 

1 ーー山内太地「潰れそうな私大を公立化した大学の価値」(←必要であれば、クリックしてください)の要約

 

 

 

最初に取り上げるのは、山内太地の動画です。山内さんは、1)日本の大学を全部回り、2)非エリート高校生の立場に立って大学進学を考え、3)危機の時代の大学サバイバルについて見識を持つ大学ジャーナリストです。

 

 

 

 

動画は「潰れそうな私大を公立化した大学に行く価値はあるか」(←必要であれば、クリックしてください)(13:46)です。時間は13分46秒の動画で、隙間時間にサッと見るにはやや長い動画が、生成式AIにとって負担になるほどの長さではないものです。

 

 

 

まずはChatGPTに作業させてみました。早速、要約をみてみましょう。

 

 

 

1-a ChatGPT-4による山内動画(地方の新興公立大学)の要約

 

 

1. 潰れそうな私立大学が公立大学になることで、学生募集に成功し、人気を獲得している例が増えている。

 

 
2. 公立化された大学は、学生募集の面で効率化され、以前よりも学生にとって魅力的になっているが、個々の学生が自分に合った大学かどうかを慎重に考える必要がある。

 

 

 
3. 公立化された大学は、研究や教育の質では伝統的な公立大学に劣る可能性があり、地方の高校生にとっては特に魅力的であるが、都市部の生徒にはそうでない場合もある。

 

 

 
4. これらの大学は、地方での就職に強く、公務員や地元の良い会社への就職が期待できる。

 

 

 
5. 私立大学が公立化する動きは今後も続く可能性があり、地方の高校生にとっては有利な選択肢となるが、全国的なレベルでは必ずしも最良ではないかもしれない。

 

 

 
この要約はおそらく大きく間違っている訳ではありません。しかし、ハッキリ言って全然面白くないですね。というのはこの要約では、伝統的国公立大学>公立化した元地方私大>地方私大 というあまりにも分かりきった図式を提示しているだけだからです。要約だとしても、これでは情報力はゼロです。
そして一番まずいのは、具体的な大学名が一切出てこないことです。そこで、次のような指示を出してみます。

 

 

私の命令

 

 

具体的な大学名を挙げて要約することは出来ますか?

 

 

 

また、動画のスクリプトをチラ見してみると、かな漢字変換が非常に不味いので、予め学習させておきます。

 

 

「冥王大学」は「名桜大学」の間違いです。

「高知効果大学」→「高知工科大学」です。

 

 

 

すると、次のように応答してきました。

 

 

 

ご指摘ありがとうございます。それを踏まえて、修正した要約を提供いたします。

 

 

1. 長野大学:公立化前は学生募集に苦戦していたが、公立化後に人気が急上昇し、全国から受験生が集まるようになった。

 
2. 名桜大学(沖縄):交通の便が悪い地域に位置するものの、公立化により人気が急上昇し、全国の受験生が目指すようになった。

 
3. 鳥取環境大学、長岡造形大学:私立大学時代は苦境にあったが、公立化により学生の関心が高まり、人気を回復した。

 
4. 山口東京理科大学、諏訪東京理科大学:東京理科大学から独立し、公立化されたことで名門公立大学としての地位を築いた。

 
5. 高知工科大学、福山公立大学、公立小松大学、公立千歳科学技術大学:これらの大学も公立化により学生募集に成功し、特に地元での就職に強い点が評価されている。

 

 

 

 

 

新興の地方公立大学の名称がいくつか出てきました。しかし、全てワンパターンな説明で、要するに、新興の公立化大学の礼賛でしかありません。批判的な観点がすっぽりと抜け落ちてしまっているのです。これでは要約としては、むしろ劣化です。そこで、次のように修正を要求してみました。

 

 

 

 

 

必ずしも公立大学のことを評価している内容ではありません。しばしば批判的な言及もあるはずです。

 

 

 

ChatGPT

 

批判的な観点を含めた要約を提供いたします。

 

1. 長野大学:公立化により受験生の注目を集めたが、学生一人一人が自身に合った大学かどうかを慎重に考える必要がある。
2. 名桜大学(沖縄):公立化に伴い人気が上昇したが、地理的な不便さや教育の質に関しては考慮が必要。
3. 鳥取環境大学、長岡造形大学:公立化により人気は回復したが、公立化以前の苦境が影響している可能性がある。
4. 山口東京理科大学、諏訪東京理科大学:名門としての地位を築いたが、東京理科大学との関連から独立したことで、教育内容や研究水準についての懸念が残る。
5. 高知工科大学、福山公立大学、公立小松大学、公立千歳科学技術大学:これらの大学は公立化により学生募集に成功したが、地方国立大学と比較して教育や研究の質が劣る可能性がある。また、地元での就職には強いが、全国的な視野での評価は異なる場合がある。

 

 

 

 

 

前よりは良くなりました。しかし、山内太地さんの動画の肝心なメッセージはほとんど伝わっていません。僕が動画要約力試験の試験官であれば、今回の出来では「不合格」です。新興の公立大学に進学する価値があるのか、それとも思い切って都会の私大を選択すべきなのかという、人生の分かれ道に立つ高校生には、なんの役にも立たない要約だからです。
なぜ今回の動画で、生成AI(ChatGPT)が適切な要約を出来なかったのか。おそらくその理由の一つは、AIが映像情報を読みこまないからでしよう

 

 

 

ちなみに今回の山内さん動画「板書」を見てみましょう。これを見るだけで、瞬時に要旨を想像できるようにに思われます。

 

 

特に最後の山内さんのアドバイスは貴重です。すなわち、1)必ず大学のキャンパスに行ってみろ、2)本当に入りたいのか、よく考えてみろ、3)田舎の公立大学の良いところをさがし、もし見つかれば進学してみろ、です。

 

 

 

残念ながら生成AI(ChatGPT)では、これらの大事なアドバイスがすっかり捨象されていました。もしかすると、映像で重要な情報を提供している動画番組を要約させるのは、2024年の生成AIには厳しいのかもしれませんね。

 

 

 

 

下の写真4枚は、山内さんの動画(←興味がある方はクリックしてみましょう)をコピーしたものです。

 

新興公立-0

 

 

新興公立-1

 

 

新興公立-2

 

 

新興公立-3

 

↑山内さんの動画より

 

 

 

 

 

1-b Claudeによる山内太地の動画「潰れそうな私大の公立化」の要約

 

 

ChatGPTによる要約があまりに杜撰でしたから、Claudeにも要約させてみました。

 

 

 

以下の要点をまとめました。

 

 

– 潰れそうな私立大学を公立化した大学に行く価値はあるか

 

 

– 長野大学をはじめ、経営が苦しくなった私立大学が公立大学に転換し人気校に

 

 

– ただし、研究教育内容では地方国立大学に劣る可能性が高い

 

 

– 受験生は国立大学に入れないから行くだけで本当に入りたいか考えるべき

 

 

– 公立大学の立地や設備を確認し、4年間過ごしたいか判断が必要

 

 

– 推薦で行く以上、公立大学の長所を見つける努力が必要

 

 

– 個々の大学の努力は評価するが、新設公立大学には厳しく問うべき点もある

 

 

– 受験生は2番手、3番手大学に入るだけでなく、自分にとってベストな大学を見極めることが大切

 

 

 

 

これは、まあまあ悪くない要約になっています。しかし、具体的な大学名は長野大学しかありませんので、ちょっと不満です。そこで次のように命令してみました。

 

 

 

 

 

具体的な大学名も出してください。

 

 

 

Claudeの発言

 

 

はい、具体的な大学名も追記します。

 

 

– 潰れそうな私立大学を公立化した大学に行く価値はあるか

 

 

– 長野大学や高知工科大学、静岡文化芸術大学など、経営が苦しくなった私立大学が公立大学に転換し人気校に

 

 

– ただし、研究教育内容では信州大学や鳥取大学、山口大学などの地方国立大学に劣る可能性が高い

 

 

– 受験生は信州大学や鳥取大学に入れないから長野大学や鳥取環境大学に行くだけで本当に入りたいか考えるべき

 

 

– 公立大学の立地や設備を確認し、4年間過ごしたいか判断が必要

 

 

– 推薦で長野大学に行く以上、長野大学の長所を見つける努力が必要

 

 

– 個々の大学の努力は評価するが、新設公立大学には厳しく問うべき点もある

 

 

– 受験生は2番手、3番手大学に入るだけでなく、自分にとってベストな大学を見極めることが大切

 

 

 

 

これならば、比較的良い要約になっていると思います。
しかし、大切な情報(例。「実際にキャンパスを訪れてみて、高校みたいな小さな大学キャンパスで満足できるのか自問自答せよ」)が欠如し、逆に分かりきった内容(例。「潰れそうな私大が公立化しても、伝統のある地方国立大学よりも劣る」)がとりあげられるなど、大いに不満でもあります。
また、生成AIに動画について質問をすると、山内太地さんの情報や意見ではなく、生成AIの意見を陳述しだすかもしれませんから、要注意要です。実を言うと、今回Claudeは次のような「情報」を提供したりしました。

 

 

 

Claude

公立化した地方私大は、早稲田大学や慶應義塾大学、明治大学、中央大学、立教大学などの東京の有名私大に劣る可能性がある。

 

バカバカしくてお話にならないくらい、陳腐な情報です。

 

 

この動画の地方在住受験生が知りたいのは、たとえば(公)長野大学と明治大学のどちらが良いかではなく、(公)長野大学と、桜美林大学や関東学院大学のような都会の私大ならばどちらが良いのかという選択問題だからです。あるいは、お金をかけて上京して東京の私大に入る価値はあるのか、それとも地元の新興の公立私大に進学したほうが良いのか、という問題なのです。
AIは便利だが、使い方も工夫しなければなりませんね。

 

 

 

1-c Chat-GPT4.5への命令を変えて、山内動画を要約させてみた

 

そこで再度Chat-GPTに、今度はChat-GPT4.5(非公式版)に命令(=プロンプト)し直してみました。命令によっては、より適切な要約も出来るかもしれないからです。

 

 

私の命令は以下のものです。

 

 

以下はあるyoutubeのスクリプトです。これを、潰れそうな地方私大が公立化して出来た地元の公立大学に行こうか、それとも都会の私立大学に進学したほうが良いのかと迷っている高校生に役立つように役立つようにまとめてください。(ここで、山内動画のスクリプトを添付)

 

そうしたら、次のような答えが返ってきました。

 

 

 

📚 **YouTubeスクリプト要約:地方公立大学と都会私立大学の選択**

 

このYouTubeスクリプトは、地方私立大学が公立化した後の状況と、それが高校生の大学選びにどのように影響するかについて議論しています。以下に、地方に住む高校生が地元の公立大学か都会の私立大学かを選ぶ際に考慮すべきポイントを要約します。

 

 

1. **公立化された大学の特徴**:
– 経営難から公立化された大学は、人気が急上昇し、全国の受験生から注目を集めるようになりました。
– これらの大学は教育内容や就職においても一定の定評がありますが、伝統的な公立大学や国立大学に比べると優れているとは言い切れない面があります。

 

 

2. **地方公立大学の選択理由**:
– 学費の安さや地元への近さが主な理由ですが、それだけで選ぶべきではありません。
– 地元での就職に強い点や、地域に密着した教育を受けられることが魅力です。

 

 

3. **都会私立大学の魅力**:
多様な学問分野活発な学生活動広範な人脈構築の機会があります。
大企業への就職機会が豊富で、都会特有の華やかな環境を提供します

 

 

4. **自分に合った選択を**:
– 経済的な理由だけでなく、教育内容、キャンパス環境、将来の目標などを総合的に考慮して選ぶべきです。
– 実際にキャンパスを訪れ、自分がそこで学び、生活することをイメージすることが重要です。

 

 

スクリプトは、公立化された大学に対する一般的な見方と、受験生が直面する現実に基づいた意見を提供しています。重要なのは、単に公立化されたという事実ではなく、その大学が受験生個人のニーズや目標にどのように合致するかを慎重に考えることです。

 

 

 

ううむ、ちょっと困りましたね。苦笑いしてしまいます。多少良くなった側面もありますが、全体としてむしろ悪くもなっています。生成AIが自分の意見(=オンライン世界で溢れている一般論を反映した陳腐な意見)を混入させてしまっているのです。

 

 
というのは「3.都会私立大学の魅力」は、Chat-GPT4.5(非公式)の捏造だからです。山内さんは都会の私立大学のオしだとは思いますが、こんな発言はしていません。そもそも、都会私立大学に入学すれば大企業への就職機会が豊富だとか、都会の華やかな環境ありますよなどといった謳い文句は、ちょっと詐欺的です。
ここで対象となるのは、有名国立大学だとか地方国立大学をめざす高校生ではありません。つまり、信州大学や静岡大学をめざしているのではなく、例えば、(公)長野大学に進学すべきかどうか迷っている高校生です。言ってみれば、県立の二番手三番手の高校生を想定してみるのです。

 

 

このレベルの高校生が都会の私大を目指すとしたら、日東駒専や神奈川大などの有名私大はほぼ不可能です。目標とすべきなのは、大東亜帝国レベル、あるいはその下のレベルの私大でしょう。たとえば、国士館だとか桜美林あたりが適当な目標大学となるでしょう。このとき、国士舘や桜美林に入れば、大企業や有名企業へ就職できる可能性が増えるよなどといった「アドバイス」を、良識のある人ならばしません。(なお、国士舘が就職に強いのは、大企業ではなく警察官などの公務員である。将来、お巡りさんになりたいという高校生ならば、悩むところであろう)。

 

 

 

我々としては、生成AIにしっかりと面白い情報を伝達してもらいたい。だから、生成AIがあまり良い回答を出してくれないならば、命令(=プロンプト)し直して、より充実した異なる情報を引き出したいのです。

 

 

しかし、詳しい回答を我々が求めようとして過剰な(?)命令を与えると、生成AIは余計なくだらない自己見解(=しばしば、常識的で紋切り型)を混入してしまうのです。まことにAIとの接し方は難しいです。(ただし、「今の見解はあなたの見解ですか?」と質問すれば、生成AIは正直に答えてくれますので、ご安心を)。

 

 

 

2.岡田斗司夫の人生相談の要約

 

 

 

オタキング(オタクの王様)として有名な岡田斗司夫のYOutubeサイトから、その人生相談を取り上げてみましょう。ここでもテーマは大学進学に関連するものを取り上げましょう。

 

私が選んだ動画は、岡田斗司夫の人生相談 「それでも行くというのなら、これだけは覚えておいてください」 【偏差値65以下/Fラン大学/岡田斗司夫/サイコパス/おじさん/人生相談/切り抜き/】 (←クリック) 2023年7月 (10:46)です。
このYoutubeの最初の画像を見ると「カスな大学は行っても無駄です」となっていますが、どういう内容でしょうか。Claudeに要約させてみました。IMG_0115

 

 

 

 

2-a Claudeによる「岡田斗司夫の人生相談」(←クリック)の要約

 

 

要約すると、以下のようなポイントがあります。

 

 

– 偏差値65以下の大学に行っても意味はない

 

 

– 現在の日本の大学は投資に見合う価値がない

 

 

– 10年後には親から無駄な大学に行けと言われることはなくなる

 

 

– 偏差値が高ければ大学に行ったほうがいいが、そうでない場合は行かなくてもいい

 

 

– 大学時代に出会いや可能性を試す場として意味がある

 

 

– 大学受験に失敗し、低レベルの大学に入っても卒業しなかった例がある

 

 

– 成功の定義は個人による。学歴はある意味有効なカードだが、絶対的なものではない

 

 

– コメント欄を活用して意見交換をしてほしい

 

 

 

 

この要約に、いわゆる間違いはありません。しかし、岡田さんのメッセージがほとんど伝わってはこないのです。現在のAIでは、一見すると矛盾に充ちている、彼の主張をうまく交通整理することが出来ないのでしょうね。

 

 

 

2-b Claudeの要約文への修正要求

 

岡田さんは偏差値65以下の二流三流の大学に進学しても、投資としての価値はないかもしれないね。だから無理して行く必要はないかもしれないね、と述べています。しかしこの発言は彼のここでの主要な「イイタイコト」ではないでしょう。エッセイでいえば「前置き」や「譲歩」にあたるものです

 

 

つまり、彼が言いたいのは、3流大学でも運が良ければ良い事もあるかもしれないし、まあ、大学に進学しても良いんじゃないの。たとえば、岡田斗司夫の場合は、こんな良いことがあったよ,なのでした。
微妙な発言ですから、要約に馴染まないともいえますね。しかし、このYOutubeを視聴する意味は、そういう要約しきれない箇所にあるのです。だからClaudeには、次のように、要約文の修正を要求しました。

 

 

 

 

 

「もっといろいろな話題があったと思います。それらの話題も紹介してください」。

 

 

するとClaudeは、

 

 

はい、その通りです。要約ではカバーし切れなかった話題もたくさんありました。

– 岡田さん自身の大学受験の話

 

 

– 親からの自立、自由な時間とお金、彼女がいることを幸せだと考える受験生の話

 

 

– 岡田さんの大学時代にアニメ製作に励んだ話

 

 

– 受験生の能力や個性がない場合に学歴が武器になる話

 

 

– 岡田さんが入学した大学の低いレベルの話

 

 

– 人生の成功の定義は個人差が大きい話

 

 

– コメント欄を活用して意見交換をする大切さ

 

 

 

など、要約では表現しきれなかった話題がたくさん含まれていました。要約という形で簡潔に示したつもりでしたが、充分ではありませんでした。失礼しました。今後はより包括的な要約を心がけます。ご指摘いただきありがとうございます。

 

 

 

最初から、そういう話題を取り入れながら要約をしてくれたら、ずっと良かったのですがね。どうやら、こういう作業は、現在の生成AIには難しいようです。

 

 

 

 

本日のブログの感想

 

 

動画作成者がどんな人物で、その動画はどういう傾向の情報を提供するのか、あらかじめ把握していないと、ChatGPTやClaudeから適切な情報を簡単に引き出すのは難しそうです。生成AIは、質問(プロンプト)を変えれば、異なる文章を生成してくれますが、適切な追加質問や修正要求をするのが難しいのです。

 

 

 

つまり、ChatGPTに頼れば、面白い情報を簡単に収集をできると思っていたら、全くの大間違いだぞ!

 

 

 

 

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