title-praivacy
2023/05/16

対話型AIとの対話:英文添削をしてもらおう

対話型人工知能(Conversational Artificial Intelligence)は、英文ライティングの添削には最高だ。

 

嘘も平気ででっちあげる人工知能(AI)

 

以前(2023年4月4日)GeePeeTeeについてのブログを書いてから、chatGPT、BARD(Google)、Bing(マイクロソフト)等の様々な対話型人工知能(AI)を試してみた。噂通りで、確かにスゴイ!

 

今までの常識を完全に覆すツールですね。例えば、舞台や単語などの諸設定を決め、これで物語を作ってくれと命令すると、瞬時に文章を作る。単語数や難易度を変えてくれとか、正誤問題を作ってくれと命令しても良い。

 

しかし、すでに頻繁に伝えられているように、とんでもない噓つき野郎でもあると実感した。ネットで調べればすぐ分かるレベルの情報でさえ、全然確かめたりせずに、いい加減な話をでっち上げる。架空の人物、決して存在しないバス路線、間違った年号などなど。

 

英語の文献では、対話型AIの発する嘘を、confabulation (=(精神病者の)作り話)だとか、hallucination(幻覚症状)とか呼ぶようだ。

 

例えば、プロ棋士で一番負け数が多い人は誰かと、iPhoneのGeePeeTeeに質問したところ(プロ棋士で負け数がずば抜けて多いのは、加藤一二三であることは、よく知られています)。

 

神田辰之助九段です。

 

と返事が返ってきました。

 

そんな名前の棋士は全く聞いたことが無かったので、架空の人物を創造してしまったのであろうと考え、いったい神田九段とは何者かと尋ねました。すると、

 

1956年生まれの棋士で、身長は170cm、血液型はAB型。得意戦法は三間飛車だが、大胆な手で敗因になってしまうことが多い。引退後は後進の指導にあたる。

 

と作り話を展開してきた。

 

なお念の為にウィキペディアで調べてみると、1957年生まれの神田辰之助は存在しないが、同姓同名の神田九段が第二次対戦前(1893ー1943年)に活躍していたと言うことがわかった。もちろん、負け数日本一の記録を樹立したわけではない。勝手に名前だけを借用したのだ。

 

対話型AIは、アメリカの司法試験に合格できる能力があるとも言われるが、いい加減に話をでっちあげてしまう場合も多いということなのだ。(とくに日本語で質問をすると、データ入力が英語と比べて少ないので、いい加減なことをさらに頻発しがちである)。

 

我々人類を騙してやろうと企んでいる訳ではないようだが、自分の作る文章について、その情報が正しいか、説得力があるか、論理的かといったポイントには、ほとんど無関心だ。だから悪気なく適当な嘘もでっち上げてしまう。

 

その理由は、対話型AIは、言語データベースに基づく文章生成装置なので、重要なのは言語表現としての「もっともらしさ」だかららしい。言い換えれば、表面的に道理にかなっているように見えさえすれば、それで良い。それが彼らの知能の正体だ。

 

 

AI言語教師と対話しながら

 

そんないい加減な詐欺師のようなAIなんか、全く無意味じゃないかと思う人も沢山いるだろうが、そんなことはない。文章の「内容」の吟味についてはまるでいい加減なのは確かだが、文章の「形式」については、優れた能力があるはずだからだ。

 

つまり、理科や社会は全然ダメな英語や国語の先生のような存在なのだ。あるいは、百科事典的機能はいい加減だが、言語辞典(類語・反対語辞典、表現辞典、コロケーション辞典、表現言語など)の機能は満載と言ったらよいだろうか。そんなAIは、言語の教師として最高ではないのか。

 

このブログは英語塾のブログであるので、我々の興味は次の点にある。英語学習のためには、どのように対話型AIの力を最大限に活用出来るだろうか。

 

オンライン上でしばしば見かけるのは、対話型AI能を使って問題文(英語長文と正誤問題など)や暗記用単語リストを作ってもらうというものだ。そういう使い方はお勧めできない。なにしろ、問題集や単語本などは、すでに山ほどあるからだ。市販の教材優れた教材教材に任せれば良い。

 

同様に、模範回答を作ってもらうとか、宿題代行をしてもうらなどの使い方も感心できない。

 

対話型AIが優れているのは、まさにその「対話型」に意義がある。つまり、個々の学習者に寄り添ってくれるのだ。解答例をいきなり提示する能力だけではなく、一人ひとりの学習者が書いた文について、ある程度以上は元の文を尊重し、その改善案を提示してくれるのは、なんとも有り難いではないか。

 

英語を学習しようと思うならば、まずは自分で英語を書いてみること、そしてそれを対話型AIに添削してもらう。そしてもしその添削やアドバイスが適切だと判断できれば、それを取り入れ、自分の文章を書き改めたり、付け加えたりするそしてさらに、書き改めた文章を再度AIにチェックし添削してもらうのだ。つまり、AIと対話を深めていくように、自分の書いた英文を何度も繰り返し修正して練り上げるのである。それが一番勉強になるのです。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

AIの提案や指摘がどうしても納得できない時にはどうするか。(2023年5月20日補筆)

 

さて、ここで大事なことを付け加える。AIの提案は必ずしも適切であるとは限らない。(具体的事例については、近いうちにいくつかブログで提示しておきたい)。もしその提案が不適切であるときは、どうしたらよいのか。その時は躊躇なく、別解を求めてみたり、別の対話型人工知能に同じ質問を投げかけてみよう

 

あるいは、AIに不明点について質問をしたり、異議申し立てしてみるのも悪くない。(AI側が、自分の主張を強引に押し通そうとする場合もあれば、即座に謝罪することもある)。こちら側が積極的にレスポンスすれば、納得できる回答を引き出せる可能性があります。

 

いずれにせよ、黙ってAIの提案を受け入れるような姿勢だけは、絶対に避けなければいけない。AIの提言をいつも真に受けるような愚か者になってはならないのです。

 

ちなみに、『英語教育』という雑誌に書かれてあった大学教授の模範英文(和文英訳)についてAIに評価を任せたところ、CEFRでB1レベル(英検2級程度)という評価でした。[抗議しても変わらず]。また、英語の哲学図鑑の和辻哲郎の解説記事(英文)を評価させたら、B2レベル(英検準一級レベル)と出ました。[抗議したらC1レベル、つまり英検1級くらいに昇格しました。教養のあるネイティヴが英検1級レベルのはずがありません(苦笑)]。

 

どちらも、率直に言ってナンセンスです。日本人大学教授やネイティヴの哲学系ライターの英文が、僕の生徒よりも低レベルのはずがないのです。おそらく、現行のAIでは英文のレベルの評価は非常に難しいのでしょう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

あるいは、自由英作文の課題で、何を書けば良いのか途方に暮れている時に、いくつかアイデアを出してもらう。例えば、「あなたの行きたい海外の都市を挙げ、その理由を説明しなさい」という問題が出され、困ってしまったとしよう。このとき、例えば、「タイ国のアユタヤ市に旅行する理由をリストにして教えて」(Make a list of the reasons why people go to Ayutthaya.)と質問してみたら良い。そして、そのリストを参照しながら、自分なりの英文を書いてみるのである。

 

実際に、AIに英文の添削をやらせてみると、実に素晴らしい働きを示すことが多い。なにしろ、いつでもほんの一瞬のうちに、添削や推敲に応じてくれるのだ。日本の英語学習者の多くは、ライティング(やスピーキング)となると、独学を強いられているだろうから、かつてない福音だ。なにしろ、自分が書いた英文をしっかりと添削してもらえるなんて、ほとんどの日本の英語学習者には、期待できない状況だったのだから

 

具体事例に入る前に、長所と短所を最後に列挙してみる。

 

 

英文添削者としての対話型AI、その長所と短所

 

長所

 

  • そもそも学習者が書いた英文を全部読んでくれ、添削までしてくれる。
  • 文法ミスの指摘、語彙・表現の修正提案が出来る。
  • 追加事項や補足の提案が出来る。
  • 文章の出来を評価をしてくれる。

 

 

短所

 

  • ある程度以上の英語力がないと、使いこなすのは難しい。 
  • 気まぐれで応じてくれない時がある。(BARDの場合)
  • 動詞の動作主体が何か、代名詞が何を指しているか等については、読み間違えることが時々ある。
  • 文章の論理的不整合を指摘できない。また、文と文とのつながりの良さ(悪さ)や「飛躍」「びっくり!」の有無をよく理解しているとは限らないように見える。(e.g. not の記入忘れなどの致命的なミスであっても、chatGPTやBARDは指摘してくれない。また、日本人に多い過ちだが、センテンスとセンテンスの間に意味的な「飛躍」があり、読み手がビックリしてしまうような悪文であっても、その点を指摘できないようだ)
  • 英文の評価をさせると、一度しか同じ単語を使っていないのに、同一単語を2回繰り返して使ったから減点だ等の不適切なコメントをすることが多い。また、著しい低評価をする傾向がある。
  • 語義の差異などを質問すると、訳の分からない、あるいは、理解の困難な説明をすることがある。(私の語学不足で理解できないのか、それとも良い加減な議論をでっち上げているのか?)

 

 

 

こう書いてみると、AIによる文章添削や採点は、結局のところ、かなりポンコツで、とうてい英語学習者が利用するに値しないのではないかと思われてしまいそうだ。しかし、そんなことを書きたいのでは断じてない。まるで逆だ。

 

多くの場合、充実した指摘、提案をしてくれるからである。ただ忘れてはならないのは、AIを使う学習者側がしっかりとした判断力を持って、AIのメッセージを取捨選択しなければらないということだけである。(だから英検一級程度くらいの英語力は求められるだろう)。

 

例えば、英語教師と対話型AI(chatGPT、BARD、BING、Perplexityなど)とがタッグを組んで、高校生や英検受験生の英文ライティングの添削指導をするならば、英文ライティングの指導は、格段に迅速で能率的になるはずだ。あるいは、英語教師が英語を研鑽したり、英検一級やTOEFLのライティングの独習する時などにも、大いに役立つだろう。

 

 

今回はこれまでとする。次回は、対話的人工知能の英文添削力について、具体的に書く。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
シリウス英語個別指導塾 by 東大式個別ゼミ
中高一貫校専門 大学受験英語塾 英検/TEAP
相模大野・中央林間・横浜・藤沢・町田
住所:神奈川県相模原市南区東林間4丁目13-3
TEL:042-749-2404
https://todaishiki-english.com/
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2023/04/04

対話型人工AI(”GeePeeTee”)は英作文指導・英語ライティング学習に使えるのか?

最近、世間を大いに賑わせているお手軽な対話型AIですが、日本人の英語学習や指導、とりわけ英作文(英文ライティング)に有効に活用出来るでしょうか?英語学習者であり、英語講師である私には大いに気になるところです。皆さんも、とても興味がありますよね。

 

私も早速使ってみました、と言いたいところなのですが、2023年4月3日現在、すっかり例の対話型AI”ChatGPT”については出遅れてしまいました。今さら試すのは、ちょっと癪です。ところが2023年の3月末に、iPhone向けの対話型AIのアプリとして、“GeePeeTee”が新しく発表されたと伝えられました。そこで今度こそは乗り遅れないようにと、早速インストールし、その実力をチェックしてみた次第です。

 

という訳で、GeePeeTee先生の英語指導力の現状を紹介いたします。

 

1)GeePeeTeeの英文添削力

 

2002年の大阪大学の入試問題では、次のような和文を英訳せよという問題が出されました。

 

私たちは、ことばを使っていると、ことばというものが色々な意味で「力」を持っているということを経験すると思います。人を喜ばせたり、悲しませたり、人の心を動かして何かをさせるーーことばには、このような力があります

 

私は下記のように英訳してみました。

 

Using language, you have experienced how powerful language is in various kinds of way; it is language that makes people happy or sad or moves them to do something. They are the power of language.

 

そして、GeePeeTeeに添削をお願いしました。すると次のようなアドバイスが返ってきたのです。

There are no objectively incorrect statements in the passage, but there are couple of suggestions that could be made for improvement.

 

 要するに、文法的ミスはないが、さらに改善出来ますよと云うのです。

 

Here’s a corrected version of the passage:

“You have likely experienced the power of language in various ways. Language has the ability to make people happy or sad, and it has the power to motivate people to take action. These are just some examples of how powerful language can be.” (アンダーラインを私による)

 

どうでしょうか。確かに良い英文になったようです。

 

分詞構文などを使わず、「経験すると思います」を”have likely experienced”と修正してくれました。(ただし、GeePeeTeeに和文は読ませていません)。

 

また、”the power of language”という表現を用い、the powerを”the ability to V” と承けました。簡潔で良い表現です。

 

そして、最大の改善ポイントは、”moves them to do something”という直訳的英語を”motivate people to take action”にしたところです。

 

最後の締めくくりの”just some examples”は、和文にはない英文ですが、適切なセンテンスでしょう。

 

GeePeeTeeの英作文指導(添削)について、私はかなり気に入りました。

 

 

2)GeePeeTee先生の和文英訳力をみてみる

 

これも2002年の大阪大学の和文英訳問題です。(一部削除してあります)。

写真を撮るときは、ただカメラに向かうのではなく、あなたの好きな人の顔を思い浮かべて、話しかけるような気持ちになると良い」

 

今回は、GeePeeTee先生に直接和文を読ませ、それを英訳してくれるように要請しました。すると、次のように即座に返答してきました。

 

 

Here’s the translated sentence in English: “When taking a photo, it’s good to not just face the camera, but also imagine the face of someone you love and speak to the camera as if you’re having a conversation with them.”

 

かなり素晴らしい解答のように思えます。しかし、“When taking a photo“ という英訳は間違いです。というのは、ここで「写真を撮るとき」というのは、文意からすると、自分の写真を撮ること、つまり誰かに撮ってもらったり、セルフタイマーを使って自分の姿を撮影することを意味しているからです。そのことは文脈からは明らかです。

 

ところが、”taking a photo” と英訳してしまうと、「私が何らかのオブジェの写真を撮ろうとするとき」という意味になってしまいます。人工知能が犯しがちな誤訳だと想像できます。
話は続きます。対話型AIですので、こちらがミスを指摘すると、GeePeeTeeは修正に応じたり、謝罪してくれるのです。

 

I apologize for my mistake. Thank you for bringing it to my attention

 

と謝罪の返答がありました。さらにこちらが説明すると、

 

ありがとうございます。その場合、 正しい英訳は、「When taking a selfie」です。おっしゃるとおり、「写真を撮るときは」は自分の顔写真を撮るという意味合いがあります。

 

と返答してきました。

 

3

2

 

煩雑になるので、それ以上の修正は求めませんでした。しかし、「写真を撮る」が何故この場合には自分の顔写真を撮るという意味になるのか、そこまではGeePeeTeeは分からなかったようです。

 

また、自分の顔写真を撮るのだとしても、「taking a selfie」はちょっと不適切でしょう。これだと、2010年代以降ののスマホによる「自撮り」写真になってしまいますから。この和文はおそらくは第三者に撮影してもらう時を想定しているはずです。やはり”taking”(撮る) ではなく、”taken”(撮られる)を使い、”When you have your picture taken” としてもらいたかったところです。

 

 

仮の結論

いかがでしょうか。完璧とは言えないにせよ、Gee Pee Teeには相当の英語力が備わっていることが分かりますね。ある程度以上、たとえば英検準一級以上の英語力のある高校生でしたら、英作文の勉強の相棒にふさわしいようにさえ思えます。いや、それ以上に、英語の先生にとって、頼りになる相談相手と言って過言ではないでしょう。ただし、やはり普通の日本の中高生には、まだ使いこなせないかな

 

世間では、対話型人工AIがあれば、英語の先生は不要だという意見まで出ているようですが、それは過大評価でしょうね。

 

今回は、取り急ぎ上記の報告まで。

 

(2023年4月5日修正)

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
シリウス英語個別指導塾 by 東大式個別ゼミ
中高一貫校専門 大学受験英語塾 英検/TEAP
相模大野・中央林間・横浜・藤沢・町田
住所:神奈川県相模原市南区東林間4丁目13-3
TEL:042-749-2404
https://todaishiki-english.com/
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2023/03/20

一番お勧めの英語の辞典(物書堂のススメ)

春がやってきました。その度に英語学習者に告知したいことがあります。それは、一番使い勝手の良い英語の辞典を、最もリーズナブルな価格で入手する時が来ましたよと言うお知らせです。

 

英語学習者、あるいは英語を日頃使っている人の大半が、最も使いやすいと思っている辞書は何でしょうか。すでに答えは出ています。

 

紙の辞典や、いわゆる電子辞書ではありません。ズバリ、iPhone用のアプリで、物書堂から出ている英語辞典と広く合意ができています。

 

そして、物書堂のセール価格は、毎年4月に実施されるようです。iPhoneを持っている人ならば、ぜひともこの機会に購入しましょう。(追加のお知らせ。2023年の春の「物書堂 新学期・新生活応援セール」は4月3日(月)から4月24日(月)(←クリックしてください) となりました)。

 

ほとんどの英語学習者の場合、物書堂のアプリの中でまずは一番リーズナブルな価格の『ウィズダム英和・和英辞典』から始めると良いでしょう。(2023年3月20日記す)

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
シリウス英語個別指導塾 by 東大式個別ゼミ
中高一貫校専門 大学受験英語塾 英検/TEAP
相模大野・中央林間・横浜・藤沢・町田
住所:神奈川県相模原市南区東林間4丁目13-3
TEL:042-749-2404
https://todaishiki-english.com/
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2023/02/15

中高一貫校の英語の落ちこぼれ高校生への処方箋(後編)

<4>中高一貫校の英語落ちこぼれ高校生(中等部4〜6年生)は、いわゆる「武田塾」モデルを採用できません。

 

武田塾さんは、志望大学別の「学習参考書ルート」を提示することで、大いに注目を集めています。すでに多くの皆さんは、ある程度存知のことと思いますので、詳しく紹介するまでもないでしょう。

 

さて、武田塾さんの「学習参考書ルート」なのですが、大学受験生に対して、参考書・問題集の選び方・使い方ついて、非常に良質な情報を提供しているのですが、必ずしも全部を鵜呑みにして欲しくありません。

 

というのは、武田塾さんが暗黙の前提としている高校生は、県立の進学高の高校生であり、中高一貫校の生徒さんたちを念頭に入れていないからです。県立進学高の生徒さんと中高一貫校の高校生とでは、その現状が大きく異なっている可能性が高いのです。

 

 

英語について言えば、県立進学高の生徒さんたちは、中1や中2レベルの英語ならば、ある程度以上は理解しています。そしてそうでなければ、高校受験を乗り越えられなかったはずです。他方、中高一貫校で英語に躓いてしまった高校生の場合は、中1レベルの英語すら丸で分かっていない場合が多いのです
武田塾さんのYoutube番組をいくつか視聴してみますと、中学英語の復習は大事であると強調はするのですが、三週間や1ヶ月くらい復習をすれば良い、というアドバイスになっています。

例えば、次の二冊の教材(=どちらもお勧めすべき良い教材です!)を、1ヶ月以内に仕上げよと言うアドバイスになるようです。

 

簡単な中学英語のワーク教材(山田『中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく』
中学英文法のまとめ用参考書(大岩『大岩のいちばんはじめての英文法、超基礎文法編』

 

県立進学高の生徒さん、神奈川県で言えば、厚木高校や希望丘高校の生徒さんに対してならば、武田塾さんのアドバイスには賛成出来ます。しかし、中高一貫校の英語の落ちこぼれ君の場合はダメです。

 

 

理由は明白です。たった1か月未満、しかも二冊の薄い教材を一通り仕上げるだけでは、中学英語をマスターできるはずがないからです。

 

 

ちょっと考えてみてください。中学時代にそれなりに努力し、県立相模原高校なり県立湘南高校に合格した人と、3年間遊んで暮らしていた中高一貫校生とに対して、同じアドバイスができるはずがないのです。中学時代を英語をサボってしまった中高一貫校の高校生の場合、武田塾さん流のアドバイス(=2・3週間から一か月未満くらいの中学英語復習)は参考にならないというのは、ご了解いただけるでしょうか。

 

 

もっと徹底的な訓練を集中的に実行する必要があります。3年間とは言いませんが、ある程度のまとまった年月をかけなくてはいけません。

 

我々の経験からすると、中高一貫校の落ちこぼれ君が中学英語の習得をするためには、最短で3ヶ月〜半年くらい、人によっては2年間くらいの時間が必要となります。(数学が得意な生徒さんは比較的短期間で、数学が苦手だと学習時間が長くなる傾向にあります)。

 

ポイントを簡単に申し上げると、問題集や解説書を一通り終わらせるだけではダメだということです。徹底的な反復演習、とりわけ英文の繰り返し音読が必要不可欠です。文法を完全に理解した上で、教科書本文と重要例文を繰り返し音読することです。そして、しっかりと反復練習を自覚的に訓練すれば、並の県立進学高の生徒さん以上の英語力を身に付けられるはずなのです。

 

 

<5>中学英語の習得ーー中高一貫校の落ちこぼれ高校生のための処方箋

 

★中学英語の習得には、プロ家庭教師・プロ個別指導講師に委ねるのが最善だが、独学、集団式の予備校、有料映像授業という方法もない訳ではない

 

中学英語を、独学で習得するのは、やはり難しいですね。

 

中高一貫校の落ちこぼれ中学生に対する処方箋としては、家庭教師や個別指導塾で週2回以上の指導を受けることと書きました。高校生にも、ほとんど同じことが言えます。プロの家庭教師またはプロ個別指導に、週2回以上の指導を委ねるのが良いのです

 

しかし、高校生の場合は、ある程度自覚が高まっているはずなので、やる気のある生徒さんの場合にかぎり、集団式の塾・予備校や有料の映像授業、あるいは独学であっても、理論的には、それなりに有効な学習方法論ではあります。

 

 

 

★中学英語のマスターには音読を中心とした反復演習が不可欠

 

いずれの場合も、復習をしっかりとすることが最大のポイントです。例えば、習った英文を、毎日5ー10回、文法と意味・イメージと発音に注意しながら、丁寧に音読するようなインプットです。

 

逆にやってはいけないのは、記号選択式の問題を解き散らかすような勉強法です。言語学習の入門・基礎段階においては、4択式問題でいくら正解をしても、ほとんど何の意味もありません。

 

当塾(シリウス英語個別指導塾)では、『シリウス発展編』というテキストの例文暗唱を重視しています。『シリウス発展編』は一般に市販されていませんが、市販されているものであれば、例えば、『くもんのハイレベル中学英語、文法・作文』のようなものを、文法と英作文のテキストとして使うのも、良いかもしれません。

 

音読用の長文テキストは、以前であれば、『ニューホライズン』や『ニュークラウン』のような検定教科書は優れていたのですが、教科書改悪の結果、新しい教科書は非常に残念なものになってしまいました。

 

古い版の検定教科書を入手するか、『英会話・ぜったい音読』などを使うと良いのでしょうか。ただし指導者がいないと、独学では勉強しにくい教材でもあります。(例えば、“You will +動詞の原形“ で命令を表す表現などが出てきます。あるいは、go to churchとgo to a churchの使い分けがあって、その意味の違いを理解しなくてはなりません)。

 

 

 

★中学英語の習得には5ヶ月から二年かかる

 

中高一貫校の高校生が中学英語の習得するには、早い生徒さんですと3ヶ月間くらいで完成出来る場合があります。しかし、通常は5ヶ月以上くらいと思ってください。また、学習者によっては、2年間くらいかかるかもしれません。中学英語を習得するのは、やっぱり大変なのですから、仕方ありませんね。

 

すでに述べましたが、数学が得意なタイプの生徒さんですと、英文法の習得は比較的短期間で終えられるようです。逆に言えば、数学が苦手なタイプですと、時間がかかってしまいます。

 

なお、私立文系あるいはGMARCHや上智大学を志望する生徒さんであれば、中学英語の習得期間を多少端折り、短期化するのも一つの方法論でしょう。要するに、中学英語を書く力(ライティング)や話す力(スピーキング)を養成するのに、あまり時間をかけない戦略を採用するのです。これは、武田塾さんの戦略でもあります。

 

 

★大学受験に向けて

以上、中高一貫校の落ちこぼれ高校生が、どうやって中学英語を習得すべきなのか、簡単に解説をしました。

 

中学英語の習得に案外時間がかかることに、驚かれる方もいるかと思います。しかし、何事も基礎は大事なのです。中学英語を完璧にすることを目指し、十分に時間を使ってもらいたい。たとえば6か月以上中学英語の習得に時間をかけるとしても、大学受験には間に合わせることができます。

 

また当塾のようにしっかりと中学英語を学べば、英作文(ライティング)・英会話(スピーキング)はびっくりするほどの力をつけることができるので、むしろ受験には有利だともいえます。国公立大学はもちろんのことですが、上智大学や立教大学などのTEAPや英検などを利用する外部試験方式では、それらの力が問われているからです。

 

 

今回はこれ迄とします。

 

後記

2023年の冬に、中高一貫校で英語に落ちこぼれたらどうすればよいのかについて、いくつか記事を書いてきました。ここにリンクを貼っておきます。

 

中高一貫校の中学生、英語で落ちこぼれた時の対策(その手は悪手!)  (←クリック)
英語の落ちこぼれ中高一貫校中学生のための処方箋 (←クリック)
中高一貫校高校生の英語落ちこぼれへ組への処方箋(前編)(←クリック)
中高一貫校の英語の落ちこぼれ高校生への処方箋(後編)(←このブログ記事です)

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
シリウス英語個別指導塾 by 東大式個別ゼミ
中高一貫校専門 大学受験英語塾 英検/TEAP
相模大野・中央林間・横浜・藤沢・町田
住所:神奈川県相模原市南区東林間4丁目13-3
TEL:042-749-2404
https://todaishiki-english.com/
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2023/01/30

中高一貫校高校生の英語落ちこぼれへ組への処方箋(前編)

中高一貫校の高校生が、英語はちょっとマズイなと自覚したとき、どうすれば良いのかーー中高一貫校の高校生の英語落ちこぼれへ組への処方箋

 

<1> 現状認識

 

まずは、英語力の現状認識が必要です。

 

中高一貫校の生徒さんの場合、高校受験を経ていませんので、自分の英語力についてシビアーに問われた経験がありません。

 

かなり多くの中高一貫校の生徒さんは、高校受験経験者よりも、英語力がかなり落ちる場合が多いです。しかし、勇気を持って、自分の英語力がどの位置にあるのか、確認してみましょう。中1英語から徹底的にやり直す必要があるのか、それとも中3英語から軽く復習すれば良いのか。今自分がどこにいるのかを確認し、今後の計画を立てていきましょう。

 

 

<2>現状認識の方法

★英文和訳と和文英訳をチェックする。

 

中学英語をどの程度マスター出来ているかをチェックするには、英文和訳と和文英訳の力を調べてみるのが一番です。というのは、英検2級に合格していても、中一英語を和訳したり、英訳出来なかったりすることが、頻繁にあるからです。

 

 

ただし、独りではチェックしにくいでしょう。その場合は、問題集などを用いて間接的に調べてみましょう。

 

 
★シリウス英語個別指導塾の場合

 

当塾では、生徒さんとの個人面談の際に簡単なチェックをしています。少し具体的に言うと、以下の通りです。

 

 

中1レベルの英語を英文和訳出来るか。また、和文英訳できるか?

 

中2〜3レベルの英文を読ませ、文法的に和訳できるか?

 

現状としては、中高一貫校の生徒さんの場合、一流あるいは準一流の中高一貫校の高校生であっても、中2英語のレベルを全然クリア出来ない人が、残念ながらかなり多いようです。たとえば、不定詞(中2英語)を訳せなかったりします。

 

 

結果、当塾の入塾生の場合、ほとんどの生徒さんには、中1英語から復習してもらっています。

 

 

 
★実力問題集を解いてみる。

 

一人で自分の実力を測定しようとするならば、中学生用の問題集を解いてみましょう。本人の志望大学によって、問題集の難易度は変わります。

 

 

<東大、国立医、早慶の志願者の基準>

英文法力

『最高水準問題集 特進中1英語』(文英堂)

『最高水準問題集 特進中2英語』(文英堂)

『最高水準問題集 特進中3英語』(文英堂)

長文読解力

『英語長文 難関攻略30選』(東京学参)ー難関高校入試レベル

『英語長文レベル別問題集(3)』(東進)ーー難関高校入試レベル

 

 

<中堅国立大やGMARCH志望者の基準>

英文法力

『最高水準問題集 中1英語』(佐藤誠司、文英堂)

『最高水準問題集 中2英語』(佐藤誠司、文英堂)

『最高水準問題集 中3英語』(佐藤誠司、文英堂)

長文読解力

『英語長文レベル別問題集(2)』(東進)ー県立高校入試レベル

 

 

 

<3>現状認識から中学英語の復習へーー手を出してはいけない教材

 

現状認識の結果はどうだったでしょうか。

 

中高一貫校のかなりの生徒さんは、英語力に問題アリだったのではないでしょうか。中高一貫校は高校受験がないので、理屈から言えば能率的に勉学できるはずなのですが、現実には英語力で停滞してしまうことが、頻繁に起きているようです。

 

しかし、ご安心ください。高校一年生あるいは中等学校の4年生から真面目に取り組めば、東大・京大を含む一流大学の入学試験に、間に合わせる事が出来ます。日本の大学入試は、幸か不幸か、それほど難しいものではないからです。
とはいえ、どのような教材を用い、どのくらい勉強すれば良いのでしょうか。ここでは、中高一貫校の高校生が手を出すべきではない教材等について、まずは簡潔に説明しておきましょう。

 

 

使うべきでない教材、学習方法

 

❌❌❌❌大人のための学び直し英語系の学習本や無料Youtube

 

 

本屋さんや世の中には、中学英語を「短時間で」マスターしましょうと謳う本やYoutubeの番組であふれています。しかし、これらの本やYoutube番組の多くは、利用してみないほうが良いでしょう。

 

 

ちょっと真面目に考えてみれば分かりますよね。中学の三年間、英語の勉強をまるでサボっていたのに、高校になってから、たった10時間や15時間頑張れば、その遅れを取り戻せたりするなんて、そんな上手い話はあり得ないじゃないですか。

 

 

実は、それらの「速成」を謳う英語学習本は、中高校生のために書かれてはいません。むしろ、いったん有名大学を卒業した人が、社会人になって、もう一度英語を学習し直してみようと思い立った際に、役に立つように出来ている本なのです。

 

 

一度、英語を勉強した人たち、つまり大学受験で英語学習を頑張ったことのある社会人ならば、あまり細々とした説明は不要でしょう。昔習ったことを思い出すキッカケを与えて貰えば、それで十分だからです。だから、さらっと簡潔に書かれているのです。

 

 

社会人向け英語学習本の一例を挙げれば、濱崎潤之輔『中学3年間の英語が一冊でしっかりわかる本』です。一度大学受験を通過した社会人には決して悪い内容ではないのですが、英語が苦手な中高生には到底理解不可能な内容です。これらの本をよく見ると、「大人の学び直し」とか「やり直し英語」と、明記されていますね。要するに、英語の落ちこぼれ高校生向きではないのです。

 

 

Youtubeの無料の中学英語の番組も、事情はあまり変わりありません。2022−23年現在、短時間で中学英語を学び直してしまおうというコンセプトのものばかりですね。中高生には、そういうった趣旨の番組は、ほとんど参考になりません。結論を繰り返せば、高校生の場合は、高校生を意識して作られた英語本や映像授業を選ぶべきなのです。

 

 

 

 

❌❌❌❌ Z会等の通信教育
❌❌❌❌ NHKのラジオ講座、テレビ講座

 

 

通信教育やNHK講座については、以前、落ちこぼれの中学生向きではないと、説明しました。このことは、高校生でも、全く同じです。英語力に余裕ができた時に、使えるかもしれない教材にすぎません。

 

 

以上、前編はこれまでとします。次回では、武田塾さんの学習モデルについて、検討する予定です。

後記

中高一貫校の生徒さんが英語で落ちこぼれた時、どうやって脱出したらよいかというトピックの記事について、リンクを貼っておきます。

 

 

中高一貫校の中学生、英語で落ちこぼれた時の対策(その手は悪手! (←クリック)
英語の落ちこぼれ中高一貫校中学生のための処方箋 (←クリック)
中高一貫校高校生の英語落ちこぼれへ組への処方箋(前編)(←このブログ記事です)。
中高一貫校の英語の落ちこぼれ高校生への処方箋(後編) (←クリック)

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
シリウス英語個別指導塾 by 東大式個別ゼミ
中高一貫校専門 大学受験英語塾 英検/TEAP
相模大野・中央林間・横浜・藤沢・町田
住所:神奈川県相模原市南区東林間4丁目13-3
TEL:042-749-2404
https://todaishiki-english.com/
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
お問い合わせ