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2016/06/06

大学受験ー英語長文の難易度

 

 

前回、大学受験の入試英語については、大学ごとに難易度の格差があると書きました。今回は、具体的にどんな差異があるのか、特に入試英語の中核である英語長文に着目しながら、ざっくりと説明していこうと思います。(取り上げる大学は、東京・神奈川に限定します)。

 

大学受験ー私大の英語長文の難易度

 

最初に結論を述べれば、ある段階までは大学の序列がそのまま反映し、大学の序列が上がるにつれて英語長文が難しくなります。しかし、GMARCHや早慶上智になりますと、英語長文の難易度は大学序列をそのまま反映していません

 

英語長文は、いわゆる大東亜帝国(大東文化、亜細亜、帝京、国士舘)や、多摩大学、関東学院大学、桜美林大学、東海大学は、比較的易しいと言えます。

 

日東駒専(日本大学、駒沢大学、専修大学、東洋大学)だとかそれに準ずる大学(神奈川大学、玉川大学)になると、ちょっと難しくなります。まずは最初の関門です。日大レベルの大学に合格するためには、英検2級以上の英語力で、センター試験で言えば200点満点中150点以上が必要です。これらの大学のなかでは、日本大学が出す入試問題の英文の内容と語彙がかなり難しいのですが、やはり日本大学の占める大学間の序列を反映しているのでしょう。(例えば、日大の経済学部では、 Britannica の百科事典から「大恐慌」の項目の英文をそのまま持ってきて入試問題に取り上げました)。

 

次の関門は成城、明治学院、成蹊大学、国学院などの大学です。設問は比較的易しめですが、本格的な長文読解力が求められます。語彙や内容も難しくなります。日東駒専とは格が違うのだ、と言わんばかりです。

 

なお余談ですが、安倍総理を輩出した成蹊大学ですが、その英語問題ははっきりとリベラルな政治的見解を支持しています。ですから、もし安倍総理の右翼・保守的政治的方向性を好きだという大学受験生がいましたら、成蹊大学は受験しないほうが良いかもしれません。逆に、安倍総理は大嫌いというだというならば、成蹊大学の入試英語は楽しめるのではないでしょうか。

 

次に来るのは、東京理科大とGMARCH、すなわち、学習院、明治、立教、中央大学が来ます。これらの多くの大学・学部に合格するためには、かなり長い英語長文をぐんぐん読めるようにならなければなりません。成蹊大学の英語の試験では、いくら長文であったとしても、パラグラフ(段落)ごとに設問を解いていけばよい問題が主流です。しかし、GMARCHの場合は、複数のパラグラフからなる長文全体の内容を把握しなければ、問題が解けないようになっているのです。

 

GMARCHは素直で良い英語長文が出題されることが多いと思います。英語を教える立場から見ますと、GMARCHの大学受験で合格する英語力を習得するのはとても有意義です。皆さんにも、最低限はこれらの大学に合格してもらいたいですね。

 

最後にもちろん、早稲田、慶應、上智が来ます。もちろんGMARCHより難しいのです。しかし、純粋により高い英語力が必要だというよりは、むしろ特殊な「受験英語力」が求められている場合が多いようです。記号選択方式で普通に入試英語問題をつくろうとすると、どうやらGMARCHレベルで頭打ちになってしまうのでしょうね。早慶レベルの英語問題を作成するとなると、難問奇問を作成せざるを得なくなっているのだと推察しています。「受験英語」の弊害という言葉が世間にありますが、ずばり、早慶の受験英語が問題なのです。特に名指しすれば、慶応大学法学部の英語入試問題は、大変な難問ばかりです。受験生はかなり辛いですが、教える側にとっても、厳しい闘いとなります。早慶とも忍耐力とウサギ跳び根性が求められます。(後述しますが、早慶の問題が全て難しすぎるわけではありません)。

 

まとめましょう。入試英語の英語長文の難易度は、大学受験のランキングがそのまま反映しており、次のようになっています。

 

 

東海、桜美林=>神大、日大=>明学・成城・成蹊=>GMARCH=>早慶上智

 

 

英語長文の難易度が大学の序列を反映していない場合 (GMARCH

 

最初にも述べましたが、GMARCHと早慶上智では、英語長文の難易度がそのまま大学の序列を反映しているわけではありません。英語長文は易しいのに合格が難しいとか、その反対に、英語長文は非常に難解なのに合格はそれ程難しくない場合があるからです。

 

まずは、GMARCHから見ていきます。さて、GMARCHのなかで人気のある大学と言えば、昔から明治と立教です。偏差値的に言っても他の大学よりも難易度が高いようでます。しかし、この2校の英語長文はそんなには難しくないのです。立教大学などに至っては、むしろ容易な英語長文が多いように思われます。

 

よく考えてみれば簡単に分かることですが、いくら英語長文が易しかったとしても偏差値が高い人気大学なのであれば、それなりの何かがあるはずです。実は立教大学は、問題は易しいように見えても、合格は易しくないのです。実際当塾でも、早稲田や上智に合格した生徒さんが、立教に落ちています。

 

立教大学は、問題は易しいかもしれないが正答率を高くしなければ合格できないのです。普通の大学であれば6割得点すればラクラク合格ですが、立教ならば7割でも不合格でしょう。できたら8割の得点が欲しいところです。いくら英語長文が素直な問題だとはいえ、8割あるいはそれ以上の高得点を取るのは、相当な準備が必要です。易しめの問題を迅速に正確にこなす力が求められているからです。決して甘くみるわけにはいきません。英語は苦手な受験生は、立教大学は断念し、むしろ難問奇問を出す大学を受験した方が良いのです。

 

では、英語長文は難しいが、入試レベルはそれ程高くない大学はあるのかといえば、あります(笑)。法政大学の一部学部ですが、読解問題が非常に難しい。長文としてはかなり短いのですが、相当難しいクイズが出てきます。逆転合格を目指す人に法政が薦められるのは、よく理解できます。英語力はなくても、クイズに強ければ受かる可能性が出てくるからです。(ただし法政大学合格のためには、国語力が求められる)。

 

MARCH のなかで普通に英語長文が難しい大学は、青山学院大学です。「英語の青山」という別名もありますから、当然かもしれませんね。英語長文は語彙も難しければ、内容も難しいのです。特に青山学院大学法学部は抜群の難しさです。確実に東大よりは難しいし、早慶並み、時にはそれより難しいでしょう。たとえば、サンデルの『これからの「正義」の話をしよう』の原文がそのまま入試問題として使われました。青山学院の法学部のほうが東大英語よりも難しいというのは、普通には信じられないかもしれませんが、本当にそうなのです。

 

しかし、GMARCHのなかで人気の高い法学部と言えば、中央の法学部を筆頭に、明治と立教です。青山学院はGMARCHの法学部の中では中下位に位置しているのです。つまり、青山学院法学部の入試英語は、この大学の社会的評価や偏差値のわりには難しすぎるということです。実際、当塾から明治大学法学部、青山学院法学部、法政大学法学部に合格し、明治大学法学部に進学したY君(県立希望ヶ丘高校)の場合、青山学院の英語過去問は難しくて途中で断念させました。(受験学部の過去問を断念させるということは、滅多にありません)。

 

青山学院法学部の受験生は、英語の問題は多少できなくても、他の科目で得点できれば合格できるのでしょう。おそらく青山学院大学法学部に合格し入学する生徒は、英語だけが超得意か、あるいは英語以外の科目で得点を稼ぐことのできる生徒です。英語力については両極端が求められていることになるでしょう。法学部としては英語重視がどういう意味を持つのか、ちょっと不思議には思いますが、ユニークな方針だと言えます。当塾としては、それほど英語だけが超得意、言い換えれば、他教科がまるきりダメな生徒さんがいれば、慶應SFC(総合政策学部、環境情報学部)を第一志望に、第二志望を青山学院大学法学部を薦めたいところです。

 

文章が長くなってしまったので、いったんここで切ります。次回は早稲田、慶應の学部間の差異について書きます。

 

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2016/06/01

大学受験の英語、国公立と 私立でどこが違う?

みなさん、ご存知でしょうか、国公立大学受験と私立大学受験とでは,英語の入試問題の傾向が、相当に異なっているということを。ですから高校二年生ともなれば、自分が国公立大学受験を第一志望とするのか私立大学受験を第一志望とするのかに応じて、勉強の方法を変えていく必要があります。

 

今回のブログでは、国公立大学受験と私立大学受験とでは、大学入試問題がどのように異なるのか、その概要を説明していきましょう。(私立大学の一般入試についての説明です。センター試験受験やTEAP受験については、今回は言及していません)。

 

まずは、求められている英語の技能が異なります。

 

国公立大学では、①読解、②英作文(英語ライティング)、③リスニング が求められます。一方、ほとんどの私立大学では、①英文読解中心です。②英作文は僅かしか求めらませんし、③リスニングはほぼ不要です。

 

ただし、早稲田大学と慶應大学の上位文系学部と慶應の医学部は、本格的な英作文力が求められています。つまり、早稲田大学(政経学部、法学部)慶應大学(経済学部)・医学部) を志望するならば、英作文の勉強はしておく必要があります。(ただし慶応大学法学部は、英作文の問題は出ません)。

 

言い換えれば、早慶の理系学部や文系下位学部(社会科学部、商学部、教育学部)、あるいは上智大学などを志望するのであれば、英語を書く=英作文、ライティングの練習は必要ないということです。

 

なお、私立大学では、英語を重視する特殊な大学・学部・学科(早稲田大学国際教養学部、国際基督教大学、青山学院大学英文科など)を除けば、リスニング試験を課すところは殆どありません。

 

次に述べておきたいのは、入試問題の読解問題の質もかなり異なるということです。少々乱暴ですが、次の様にまとめることができます。

 

国公立大学の英語長文は、①比較的読みやすい長文であるが、②要約や和訳などの記述問題が多くなっています。これに対し私立大学では、①非常に難易度の高い英文を出す大学が多いですが、②ほとんどが記号選択式の問題です

 

もちろんのことですが、国公立大学なのにかなり難しい英文を読ませたり、私立大学なのに比較的易しい英文だったりとか、国公立大学間あるいは私立大学間にも、ある程度の大学間の差が存在します。また、英文和訳の比重が多い国立大学もあれば、和訳問題はそれ程多くない大学もありますので、記述問題にはバリエーションがあります。しかし、いずれにせよ、国公立大学が記述問題中心で、私立大学が記号選択問題中心であるという傾向は、かなり一般的です。

 

まとめましょう。国公立大学と私立大学の英語入試問題からどのようなことが言えるのか。国公立大学の入試には、三技能(読む、書く、聴く)の比較的バランスのとれた英語力が求めらます。英語は基礎訓練を大事にし、リスニングやライティングを怠らないことです。早慶の文系上位学部や、英語重視大学・学科を目指す受験生も同様です。早慶の理系(理工学部)や文系下位学部(商学部、教育学部など)+慶應大学法学部を目指すならば、英文読解や英単語力に特化した英語力が求められています。

 

当塾としては、国公立大学の英語問題のほうが好ましいとは思います。大学入学後あるいは卒業後には、英語のリスニングやライティングあるいは、スピーキングの能力が求められることになるからです。また、一部私立大学の超難解な英語問題は、英語教育上好ましくないし、また特殊なクイズ能力(四択のさいころ名人になる!)を苦労して磨き上げる必要はないと信じるからです。しかしそうは言っても、まずは大学に合格することが一番大事です。切羽詰まった私大受験生のためには、一番能率の良い方法で入試を突破できるように、当塾としても協力を惜しみません。やる気のある受験生は大歓迎です。

 

 

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2016/05/31

バイリンガル(志向)の教師にご用心ーその2

 

既によく知られていることですが、帰国子女などのバイリンガル英語教師は、特に上級レベル以外の英語学習者には不向きです。なぜ向かないのでしょうか?理由は簡単です。彼ら彼女らには、学習者がどこを注意して勉強すべきか、適切なアドバイスができませんし、どこがどうわからないのかが理解できないからです。

 

 

彼ら彼女らは英語圏で英語を自然に習得した人たちですから、初心者がどう勉強したら英語ができるようになるかはわからないのです。誰しも、自分にとってすでに当たり前になっている概念を全く知らない人に理解させることは非常に難しいのです。

 

実際、帰国子女の英語の先生の評判はよくない場合がほとんどです。生徒たちの文句がよく聞こえてきます。

 

更に、バイリンガル教師とはちょっと違いますが、入門段階から英語は英語で勉強しようという方針で授業を進めている中高一貫校もあるようです。

 

その中高一貫校では、英語の授業は全て英語で行われているようで、文法の説明はなく、(または英語で説明されているのかもしれません、生徒には伝わっていませんが、笑)まさに「習うより慣れろ」方式で授業が進められているようです。また、わからない単語があっても想像しながら読み進めていけばよい、という方針で、多読もさせていているようです。(多読はやり方を間違えなければどんどんやってよいのですが)

 

 

英語を英語だけで学ぶことの弊害として例えばどんな例があるかを少し挙げておきましょう。

 

そこの生徒さんに少し教えたことがあるのですが、母語で英文法をしっかりと学んだことも長文を精読した経験もないので、例えばこんな風に英文を理解していました。

 

Whose bicycle do you use every day?  を「この自転車は誰のものですか」

How can I get to the station? は「私は駅に行けますか」といったような感じです。

 

私たちが真剣に文の構造を教えても、なかなか身につきませんでした。そんなことがどうして必要なのか?と文法を意識的に学ぶことの意味がなかなかピンと来ないようでした。

 

要するに、「単語の意味がわからなくても気にするな」「なんとなく全体的に意味がわかればよいのだ」「とにかく英語をどんどん読むことが大事なのだ」と学習の入門段階で刷り込まれているので、常に英文を読むとこんな感じ、私たちのいうところの「単語連想法」を駆使して、怖いくらいに大雑把に英文を読んでいるし、それでよいと思っているのです。(それでも大体の意味があっていればまだ救われるのですが・・・)実は想像力を養うという裏の目的でもあるのでしょうか???

 

教える側としてはまさに、私たち日本人が自然に日本語を習得したように、英語を自然に習得させようという目標を掲げているようです。しかし、勘違いをしてはいけません。私たち日本人が日本語を自然に習得できたのは、24時間365日、日本語に囲まれた生活を送っているからこそできたことです。それを英語でやろうとしても、それは無理なこと。一日たった1,2時間漠然と英語に触れただけで英語力が身に付きますか?ちょっと考えればわかるでしょう。

 

こんな簡単なことがなぜわからないのだろう?それが可能だと本気で信じて学校単位で実践させてしまうとは、なんと馬鹿げたことだろうと思いながら見ています。

 

 

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2016/05/23

バイリンガル英語講師にご用心。

英語圏で育った、いわゆる帰国子女でバイリンガルの英語の先生は、私学の中高一貫校を中心に増えているようです。

 

バイリンガルの英語講師というのは、しばしば憧れの対象です。確かに上級レベルの学習者にとっては、とても頼りがいがあるだ存在だろうとは思います。しかし、中学生などの英語入門者・初級者にとっては、むしろ用心しなければならない存在です。

 

新しい文法事項についてもほとんど何の説明もなしに教材を丸投げしてしまうとか、和訳をしてくれないとか、バイリン英語教師の悪評は私達の耳によく聞こえてきます。使用している教材も英語で書かれた英文法の本だったりするので、難しくて分かりにくいとか、生徒の方ではチンプンカンプンだというクラスの話も聞きます。

 

また、厳密にはバイリンガル講師とは限らないのですが、英語は英語で理解しようとか、和訳や文法用語なしにそのままイメージを取り入れようといった理想を掲げ、その内実は悲惨な結果であるという学校もあるようです。

 

更に、英語学習の方法論だとか英単語の覚え方のアドバイスも的外れだったりする場合が多々あります。お子さんがバイリンガル英語講師に当たった場合は、しっかりと対策を練っていく必要があります。

 

今回は、バイリンガル(志向の)講師や、英語は英語で勉強しましょうと提案する英語教師の指導方針の問題点の一つについて、少し詳しく説明してみましょう。

 

前回、次の様な図を描きました。日本人の英語学習者が英語を読むときには、

 

英語==>英語化された変な日本語(中間言語)==>自然な日本語

 

という回路で理解するのだというご説明をしました。この回路を作り上げることで英語を発信(話す、書く)する時にも、

自然な日本語==>英語化された変な日本語==>模範英語

という回路を用いることができます。これが正しい学習の仕方です。(ただし、「変な日本語」は学習者がステップアップするにつれて、だんだんと不要になります。英語がすり込まれていくうちに、変な日本語なしに英語の意味を理解し話せるようになるからです)。

 

模範英語  ====>英語化された変な日本語====>自然な純日本語

模範英語 <====英語化された変な日本語<====自然な純日本語

 

しかし、バイリンガル講師あるいはバイリンガル志向の講師は、それを良しとしません。「英語化された変な日本語」、あるいは「日本語化された変な英語」といった中間的言語を嫌うのです。英語を読んだり話したりするとき、変な日本語で媒介されるべきではないと考えているからです。言い換えると、英語を読んだり聴いたりしたとき、日本語を介さずに「そのまま理解」できるようにすれば良いと思っているのです。あるいは、自分の言いたい事を「直接そのまま」自然な英語にできるようにさせたいと考えているのです。彼らの理想を図式化すれば次の様になるでしょう。

 

自然な日本語 <==  自分の言いたいこと   ==>自然な英語

自然な日本語  ==> 気持ち、概念、議論など<== 自然な英語

 

たとえば、“this” と学ぶにあたって、「これ」という和訳を用いず、「時間的ないし空間的に近くにあるモノを指す概念」であるというふうに覚えさせるかもしれません。あるいは、「日本語に訳すな、イメージで覚えろ」とか、「オレンジの絵を見たら、orangeが思い浮かぶように、あるいは、orangeという言葉を聞けばこのオレンジの絵が浮かぶように」といったアドバイスになるかもしれません。

 

日本語を媒介させないで、「英語」と「その概念や気持ち」を直接つなぐ回路を設けるというのは、ある意味では非常に理想的です。英語学習者ならば、大いに憧れる境地でもあります。「英語は英語で」とか、「英語を、イメージや絵と直接結びつける」といったバイリンガル(志向の)教師の指導方針は、一見すると格好いいと思うかもしれません。ネイティヴみたいに英語を読んで話せる近道に思われるかもしれません。

 

しかし、日本の普通の学校に在籍する、日本人の生徒には薦められません。というのは、バイリンガル的英語教育は、日本の学校に在籍する、普通のご家庭の、普通の語学センスのお子さんには、ハードルが高すぎるからです。実際、様々な弊害が出ているようです。例えば、英語は英語でという教育を学校で受けている生徒たちは、正確な英文和訳が出来ませんでした。もちろん、和訳しないというのなら読んだ英文の意味を英語で説明してもらいたいものですが、全く英語を話すことはできません。バイリンガル教育だというのならば、生徒自身が英文を英語で説明出来なくてはいけませんね。つまり、「英語は英語で」といった教育方針は幻想だったのです。

 

大事なことは、性急に「英語は英語で」という回路を作ろうなどと目指すのではなく、まずは自分が培ってきた母語である日本語を最大限に活用していくことです。以前にも紹介しました模範英語と自然な日本語の中間言語のようなもの、あるいは「英語化された変な日本語」だとか「日本語化された変な英語」を活かす事です。そして、そうしているうちに、だんだんと英語の使い方を取り込んでいき、日本語を英語で塗りつぶしていくことが出来るのです。こちらの方が、よっぽど効率的効果的で、確実に成果が出ています。

 

少し分かりにくいかもしれませんが、これからが核心部分ですので頑張って読んでください。バイリンガル的な「英語は英語で」教育の欠点の一つは、「英語だけでは英単語だとか英文法のしくみをほとんど覚えられない」 ということなのです。英検2級くらいの英語学習者ならば、英英辞典だってある程度使えるでしょうし、英語で書かれた英文法の本だってある程度以上は、読めて理解できるかもしれません。しかし、仮に理解できたとしても、記憶に残らないのです。英語入門者であれば、なお一層覚えられません。百歩譲って、英語で英語を完全に理解したとしても、特別な事件でも起きない限り、すっかり忘れてしまう可能性大です。なぜなら、外国語の、ある単語や語句、または文法の規則性を覚えるためには、少なくとも一度は自分の言葉によって、つまり日本語の力を借りてしっかりと意識の中に刻み込むことが必要だからです。外国語=英語によってこれをすることは非常に困難です。

 

 

ちょっと違う例ですが、中学一年生が英単語の意味とスペリングをどう覚えたら良いでしょうか?バイリンガル教師ならば、絵と音声とスペリングを結びつけよとか言うかもしれません。しかし、英語を始めてたった数ヶ月の生徒にそれは無理というもの。最も現実的なのは、変な日本語や変な英語もどんどん活用することです。こんなやり方ちょっと恥ずかしいけれど(笑)、大事な事ですからはっきり書きますよ。英語を初めて学習する中学一年生の多くは英語のスペリングで苦労します。一つの方法論はインチキ英語かもしれませんが、ローマ字英語を使いましょう。やはり、この方が覚えやすいようです。こんな具合です。

 

Wednesday → ウェドネスディ → ウェンズディは水曜日

girl → ギルル → ガールで女の子

notebook → ノテボコ → ノゥトブックでノート

son → ソン じゃなくて サンは息子

 

英語のスペリングと音の関係についての規則(phonics)が定着するまでの間、こういったやり方はやはり便利ですし、有効です。真面目に学習していけば、そのうちこういう恥ずかしい中間語はなくなるはずです。自転車の補助輪はいつか外すためにあるのですから。(ただし、sonをソン、foundはフォウンドだと思い込んでいる中高生は沢山いるのではないでしょうか。いい加減にそろそろ卒業しましょう!)

 

長くなりましたのでまとめます。

 

バイリンガル(志向)の英語講師は、英語を英語で理解するとか、英語を直接イメージと結びつけようとしますが、あまりにも性急なためにうまくいきません。学習者の腑に落ちなかったり、意識の中にしっかりと刻み込むことができないので、結局は覚えることが出来ないのです。良く出来すぎた理想論に騙されないようにしましょう。

 

 

日本人学習者にとっての正しい方法論は、日本語を完全に排除するのではなく、むしろ日本語でしっかりとその論理を理解して、英語化された変な日本語(中間言語)を駆使しながら、英語という言葉の発想を徐々に理解し取り入れることです。これが私達日本人が英語を習得する上で、最も効率的効果的な方法論です。

 

当塾ではこのやり方でしっかりと結果が出ています。英文解釈はもちろんのこと、英語話者と英会話もできるようになっていますし、英文ライティングもしっかりとできるようになっています。(当塾の中学2年生の英会話の例を以前とりあげました。宜しければ右をクリックしてください。動画(1)動画(2)  また、英語の多読の自由英作文の事例は(右をクリック→) 「多読記録」でとりあげました)。

 

次回、バイリンガル教師の問題点についてもう一つ書くべきことがありますので書きます。

 

 

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2016/05/20

東大的シリウス英語学習 方法論――文法的な訳し方にこだわる

前回の記事では、日本語と英語は異なる言語かもしれないけれども、「主語と述語」「修飾語と被修飾語」という考え方は共通している。だから、英語を日本語に訳すときにも、その関係を活かすことが出来るという趣旨を述べました。

 

英語を読むときに大事なのは、主語と述語(述語動詞)、修飾語と被修飾語という意味のまとまりを確認することです。そして、日本語に訳すときにも、同じように「主語と述語」「修飾語と被修飾語」と訳してきましょう。英語の「主語と述語(動詞)」は、そのまま日本語の「主語と述語」に訳すことが出来るからです。

 

他方、日本語訳をするときに、ほとんどこのことに関心を払わない人たちが多いのも事実です。英語入門段階の中学生に対して「できるだけ自然な日本語にしましょう」などと指導している、非常に困った英語教師が結構多く存在します。しかし、「主語と述語」「修飾語と被修飾語」に配慮せずに、いきなり自然な日本語に直す英語教育だけは、本当にすぐ止めてもらいのです。(そういう困った英語教師・教授(例、青山学院大学の木村松雄センセイ)がいるので、我々はこういうブログを書かざるを得ないのです)。

 

たとえば、次の英文があります。

 

She   plays   the piano   well.

(主語) (述語動詞)(目的語)(playsの修飾語)

 

適切な指導を受けていない生徒たちの大半は、「彼女はピアノがうまい」と訳します。この和訳は「自然な日本語」に直すという意味では正解かもしれません。しかし、これは我々の基準から言えば0点の答案です。

 

というのは、「主語と述語」「修飾語と被修飾語」の関係が適切に訳されておらず、また目的語(the piano)について「を」という助詞を用いていないからです。英語学習者にとって一番大切なことは、「主語と述語」「修飾語と被修飾語」の関係をしっかりと捉え、それをそのまま直訳することなのです。また、日本語には必ずしも正確に訳せませんが、目的語はなるべく「を」を使って訳すことが大事です。なぜなら、入門・初級の段階では、英文を通して文法を学習しているわけですから、英語の文法を意識しながらその英文を読み解くという繰り返しの中で、次第に文法力がついてくるからです。

 

しっかりと直訳できない生徒については、英語力が伸び悩むことを危惧しています。理由は大きく分けて二つあります。一つは、複雑な英文を読み取ることが出来なくなってしまうことです。

 

“She plays the piano well.“のような中1英文ならば、「彼女」「弾く」「ピアノ」「上手に」を適当に組み合わせるだけでも、意味はだいたい理解できてしまいます。我々は「単語連想法」と言っているのですが、要するに、文法無視のむちゃくちゃな和訳でも意味はおおよそ理解できるでしょう。しかし、学年が上がるにつれて、主語や目的語が長くなり、不定詞になったり、節(S+Vのカタマリ)になったりします。また、修飾語が不定詞、分詞、関係詞節になったりするのです。そのときに、いままでの「単語連想法」では文章の意味はほとんど分からなくなってしまいます。ですから、まずは易しい英文で、徹底的に文法的な解釈の練習をしておかなければならないのです。

 

ちなみに、優秀な生徒さんならば、英文を適切に直訳し、求められたらならば自然な日本語へと翻訳できます。 “She plays the piano well”は、 正しい直訳( 「彼女は ピアノを 上手に 弾く」)をしてから、自然な純日本語へと翻訳(「彼女はピアノを弾くのが上手だ」)をすれば良いのです。

 

“She plays the piano well”をいきなり「彼女はピアノが上手だ」と訳すようなやり方が駄目だというのには、もう一つ理由があります。それは英語を口から出したり、書いたりすることが出来なくなるということです。

 

「彼女はピアノが上手だ」を英語に直すのは大変です。純日本語というか、生の日本語だからです。この文を英訳するとしたら、いったい何を主語にすれば良いのでしょうか。「彼女」でしょうか、それとも「ピアノ」でしょうか。また、「上手だ」という日本語の形容動詞の英訳はどうしたら良いのでしょうか。初心者にとっては、大変悩ましい問題のはずです。

 

ところが、「彼女は ピアノを 上手に 弾く」のように、ちょっと英語化した変な日本語ですと、英語に転換するのは簡単です。主語は、助詞の「は」の前にある「彼女」でしょうから、sheにする。述語動詞は「弾く」ですから、playという動詞にする。「ピアノpiano」には「を」がついていますから目的語にすれば良いでしょう。さらに楽器なのでtheをつければ、the piano とする「上手に」は「弾く=play」を修飾していますから副詞のwellを充てればよいと、簡単に理解できるしょう。

 

英文を、「主語と述語」「修飾語と被修飾語」にこだわって日本語に直訳すると、ちょっと不自然でこなれていない変な日本語ができあがります。それが良いのです。そういう「英語を尊重した変な日本語」を一度介入させることによって、英語に戻すのもとても容易になるのです。

 

変な日本語をどんどん覚えれば、話せて書ける英語も増えていきます。例えば、「この道路が あなたを 駅に 連れていく」という和文を貯えておけば、“This road takes you to the station”という英文も簡単に発話したり書いたりできるようになるでしょう。つまり、「英語を尊重した変な日本語」を使いこなせることによって、英語的な発想も身につけ、英語を発信できるようになるのです。

 

ここで、まとめましょう。なぜ、「主語と述語」「修飾語と被修飾語」の関係にこだわって、英文を直訳することを我々は重視するのか。それは、難しい英文を読みこなす土台になると同時に、英語を書いたり話したりするときの助けになるからです。生の英語を生の純日本語へ、あるいは、生の純日本語を生の英語へと、いきなり転換しようとするのではなく、英語っぽい日本語(直訳的日本語)という一種の中間的な言葉を積極的に作りだし、それを媒介することによって英語を理解したり、発話したりしていくのです。

 

他方、学習者が自然な日本語に訳すことばかりしていたら、難解な英語は決して理解出来ず読めない、また片言英語すら発することも出来ないでしょう。

 

下図のような思考回路で言葉を理解したり発話していきます。

 

 

 模範英語    =======>英語化された変な日本語=========>自然な純日本語

 模範英語 <=======英語化された変な日本語<=========自然な純日本語

 

 

ただし、英語の上級者になって、すらすら英語を話せるようになれば、あるいは、本格的な翻訳ができるようになれば、中間的な言語は不要になりますし、自然と無くなってしまいます。あくまでも学習段階で必要なのが変な日本語で、上級者には不要なのです。ですから、英語学習の入門者や初級者がいきなり上級者の真似をしてはいけません。

もちろん、指導者もそういうことをさせてはいけないのです。

 

それから、念のために付け加えておきますと、英検準一級くらいまでの英語中級者は、スラングがあふれる本物の「生の英語」を読んだり聴いたりする必要はありません。文法的にしっかりと丁寧な学校的模範英語に触れているだけで充分です。ですから上の図では、一番左は「模範英語」としておきました。

 

今回のブログ記事、一度は書いておきたかったテーマなので、ちょっと長くなってしまいました。

 

 

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