title-praivacy
2022/08/23

英作文で「飛躍」をなくす、あるいは旧情報から新情報へ

日本人(高校生)が自由英作文を書くときに、もっとも注意しなくてはならないことの一つは、一つひとつの文と文との間で、話題が唐突に「飛躍」していないかどうかである。

 

難しいのは、書いている本人(日本語話者)がそのことに気がつきにくいことだ。いや、むしろ、指導者に指摘されても、ミスを認めようとしない傾向にあることだ。今書いている話題に密接に関連しているのだから、断じて「飛躍」などは存在しないのだと言い張るかもしれないのである。要するに、納得できないようだ。

 

しかし、読み手側からすれば、やっぱり「飛躍」があって、すぐには頭に入りにくい文なのである。(もちろん読み難い英文は、東大や慶應(経済学部)などの超一流大学の入試などでは評価が低くなるはずだ)。そこで、英作文の指導者は、書き手に対して不適切であると指摘し、読み易くするように助言することが期待されているだろう。

 

だが、ここで大きな問題が生じている。英作文の指導者がどんなに熱を込めて生徒に説明しても、非常に多くの場合、生徒たちはそれを理解しようとしない。「飛躍」などは存在しない、「先生の言っていることは意味不明だ」と思うのだ。そして、「書き直し」を命じられても、生徒たちは無視するか、全く同じミスで散りばめられた英文を再提出してしまう。

 

どのように提示したら、自由英作文の学習者たちは理解してくれるだろうか。英語の講師としては、度々考えざるを得ない実に重いテーマだ。どんなに頑張っても上智大学か早稲田の教育学部がせいぜいの生徒を、慶應の経済学部や早稲田の政経学部に合格させてしまうくらいの、非常にシンドイ仕事が求められているのである。

 

今回は、まずはどこが間違っているのか、つまり、どこに「飛躍」があるのかを指摘する。ついで、書き手側から予期される反応(不満、反論)を述べ、それに対して我々(英作文指導者側)はどのように反論すべきかを論じていきたい。つまり、「飛躍」と言う論点を使って、文章の読みにくさを説明してみたい。最後には、「飛躍」のない代替の文を提示してみよう。

 

ところで、今回最初に取り上げる自由英作文の英文だが、「生徒」の書いた英文ではない。実は、誰もがよく知っている某名門通信添削会社の模範解答(?)かもしれないのである。自由英作文の添削者や出題者すらも、まともな英文が書けないのかと思うと陰鬱な気持ちになるが、単語と単語、文と文とを正しくつなげことが、いかに難しいのかを示しているようである。

 

 

 

問題

「学校で学ぶ科目の中で、あなたが特に重要だと思うものを一つ挙げ、その理由を50語〜70語の英語で述べよ」

 

(解答例)

“I consider science a very important subject. Technology has been, and will continue to be, a source of national strength for Japan, and I think it is important for us students to study science and support our country. Moreover, science will surely play an important role in solving the problems which face the world today” .

 

 

問題は、最初の二つの文に集中している。そこで、番号等をつけて、再度文を掲載しよう。

hiyaku

 

どのような科目が重要かと問われ、まず最初に①(第一文)で、理科(science)が大事だ宣言する。これは良い出だしだ。当然、②(第二の文)では、その理由を述べることが期待される。

 

②の文を読むと、たしかに理由らしきものが書かれている。「理科(science)」という教科が大事なのは、「技術(technology)」が国力充実のために重要だからだというのである。ユニークさはないが分かりやすい理由であるように見える。しかし、「飛躍」の有無の観点からすると、この英文ではダメなのである。どこが間違っているのか。

 

①の文では「理科(science)」がテーマだったのに、②の文では、冒頭からいきなり「科学技術(technology)」という言葉が登場しているのだ。これがこの文の致命的な「飛躍」である。読み手は、話題がいきなり転換していることに戸惑うはずだ。読み難い文なのだ。

(なお余談であるが、②の文の後半の緑のアンダーラインの部分は、①とほとんど重複した内容で、不要であろう。要するに、単なる字数稼ぎでしかなく、残念な文である)。

 

だがこれに対して、この文の書き手は不満を持つであろう。「理科(science)」が重要な科目であると述べた上で、「科学技術(technology)」が大事だからだと返答しても、全く違和感はないはずだ」と反論するに違いない。たしかに「理科(science)」と「科学技術(technology)」は非常に密接な言葉であり、言いたいことは分からぬでもない。だが、「理科(science)」と「科学技術(technology)」は、やはり異なる別の言葉であって、言葉の言い換えだとは認め難い。

 

 

とすれば、前の文で「理科(science)」が大事だと述べているのに、次の文でいきなり最初から「科学技術(technology)」で文を始めるのは、やはり「飛躍」と言える。

 

では「飛躍」を解消するには、どうしたら良いのか。つまり、「科学技術(technology)」という言葉を使いたいが、飛躍しないようにするにはどうしたら良いのか。そのためには、「理科」と言う言葉から文を始め、「科学技術」という言葉が導かれるようにしたい。そして、この時に、「理科」と「科学技術」の関係を具体的に明らかにしてもらいたいのだ。

 

なお総合系の英語の参考書では、旧情報をまず文の前半で提示し、文の後半部で新情報を追加していきなさい、英語にはそういう情報構造のルールがありますよと説明してきた。我々もその情報系の言葉を使えば、

 

science ==>technology

「旧情報」  「新情報」

 

 

の順番で並べなさい、いきなり「新情報」を提示してはいけない、いうことになる。

 

さて、二つの単語を単に旧情報から新情報へと順番に並べれば良いというものではない。「理科」と「科学技術」が具体的にどのような関係なのかを考えなくてはならないからだ。実はこれが案外厄介なのだが、例えば次のように考えてみよう。(A)(B)(C)と考えてみた。

 

 

(A)理科の実用的応用が科学技術である

The application of scientific knowledge for practical purposes, especially industries is called technology

   

(B)理科教育によって科学技術発展の社会的基盤が形成される

Science education has made the social basis for the technological advancements of the nation.

 

(C)理科教育によって技術者が養成されてきた

Science education has produced engineers.

 

以上のような英文を補えば、理科の話が唐突に技術の話題に「飛躍」してしまうという問題を避けることができるだろう。繰り返すが、「飛躍」を避けることにより、自然で読みやすい英文になると強調しておこう。

 

(A)(B)(C)からそれぞれ英文を作ってみると、次のようになった。

 

(A)I think of science as one of the most important of all the subjects because the application of scientific knowledge for practical purposes and various industries, what is also called technology, has made our nation modern and advanced one.

 

(B)I think science one of the most important subjects of all. That is because the (science )education has been the social and popular basis for the technological advancements of the nation, without which modern Japanese cannot enjoy affluent and wealthy lifestyles that we have now.

 

(C)I consider science to be one of the most important subjects we learn at school. That is because science education has produced, and will continue to produce a lot of skilled and competent scientists, engineers, and science teachers and professors, who have made very great contributions to the welfare and prosperity of modern Japan.

 

 

結びとして

 

高校生の書く英文では、英文の「飛躍」は非常に多く、かつ教えようとしてもなかなか理解してくれないのが実情である。ところが、今回は大学受験生の通信添削指導会社の作る模範解答に致命的な「飛躍」を見つけてしまい、大変嘆かわしい気持ちの中におります。我が国でしっかりとした英作文指導の仕組みは出来ないものなのでしょうか。

 

飛躍については、もういくつかブログを書いていく予定です。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
シリウス英語個別指導塾 by 東大式個別ゼミ
中高一貫校専門 大学受験英語塾 英検/TEAP
相模大野・中央林間・横浜・藤沢・町田
住所:神奈川県相模原市南区東林間4丁目13-3
TEL:042-749-2404
https://todaishiki-english.com/
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2022/06/19

Yesterday was rainy. に❌をつける英作文講師?

Yesterday was rainy. に❌をつけてしまう英作文講師?

 

以前、受験生に対して安易に大矢復『大学入試英作文ハイパートレーニング 自由英作文編』(以下、『ハイパー自由英作文』略します)を薦めてはいけない。もし相手が誰であろうとお構いなしに、『ハイパー自由英作文』をやりなさいと薦めてしまう人がいたら、学習アドバイザーとしては失格だと書きました。

 

『ハイパー自由英作文』をやれば良いじゃないですかと気軽にアドバイスしてしまう人は、基本的に独りよがりで、個々の受験生が抱える問題を理解出来ていないようですね。

 

ちなみに『ハイパー自由英作文』をやるべき受験生は、首都圏であれば、東大・一橋・東外大・慶應(経済・医) ・早稲田(政経・法)志望者のみです。他の国公立大学志望者や、英検準1級やTEAPの受検者であれば、取り組む必要はありません。

 

 

さて、以上の見解については、ある程度以上の自信があるものの、自説を確かめるために、youtube上で [大矢、自由英作文]と検索してみました。すると一番上位に上がっていたのが、大学生(?)の人気Youtuberさんの英作文講座でした。

 

その人は実は、自由英作文をするのに「模範英文の暗唱は必ずしも必要ではない」という、ちょっと不適切なアドバイスをした人でしたので、私の仮説は間違っていなかったようです。(正しいアドバイスは、「難解な和文英訳の例文を暗唱する必要はないが、中学レベルの基本英文はある程度以上絶対に覚えなさい」です。そうしないと、英文を書けるようにはならないからです)。
さて、そうは言うものの、彼の英作文講座をちょっと見ていました。すると、明らかに間違った英語のレクチャーを始めたので、ちょっとビックリしてしまいました。
下の写真を見てください。

 

Yesterday修正版
「きのうは雨でした」をそのまま日本語に直訳し、“Yesterday was rainy”. としてはいけません。と発言したのです。

 

” Yesterday was rainy.” は、「高3でも書くヤバい文章」だということになっています。また、「だいたい”Yesterday was” なんて表現、気持ち悪いね」とまで言い出す始末です。しかし、” Yesterday was rainy.”は、頻繁に使われる訳ではありませんが、決して間違った英語とは言えません。

 

 

「昨日は雨だった」の英語表現には、実に様々な表現があり、yesterdayやthe rainを主語にしても良いのです。下の文は全部正しい英文です。

 

 

  • It was rainy yesterday.
  • It rained yesterday.
  • We had rain yesterday.
  • Yesterday was rainy.
  • The rain fell yesterday.

 

間違ったことを平気でドヤ顔で明言してしまうのは、教える側の人間としては本当に恥ずかしいことです。プロ講師とはとても呼べませんね。しかし、ここでこのyoutuberさんの失態をとりあげたのは、彼個人の問題点をあげつらいたいのではなく、英作文の指導や添削の現場において、とてもプロ講師(プロ添削者)とは言えない人たちが、同じような問題を起こしているだろうと推測できるからです。
まず、プロ講師と言えない英語教師が添削したり採点したりするとき、模範解答と異なるというだけで、その解答を簡単に❌にしてしまう事例が多いことが予想されます。

 

現に模試の採点なども、かなりいい加減なものが多いようです。

 

 

私も、本当は間違っていないのに×にされている英作文の答案をいくつも見たことがあります。例えば、as if S + V (現在形)で❌にされていました。

(as if S +V の場合は、Vを過去形(仮定法)にする場合が多いが、現在形(直説法)でも良いのです。辞書を見ればちゃんと書いてあります)。

 
次に、プロ講師でない英語講師は、生徒や受験生としての学習方法と、教師としての学び方は、少々異なっていることを理解していないのではないでしょうか。

 

 

受験生は多くの場合、一冊の参考書を徹底的にマスターすればそれでOKです。「昨日は雨だった」ならば、”It rained yesterday.” “It was rainy yesterday”. “We had rain yesterday.“ の三つぐらいを知っていれば、十分でしょう。

 

 

しかしプロ講師としては、三つの表現しか知らないのでは困ります。もちろんプロ講師だとしても、あらゆる表現に精通している訳ではありませんから、正しいか否かよく判らない英文にたびたび出くわすでしょう。だがそんな時には、徹底的に調べなくてはなりません。

 

しかしこのYouTuberさんは、「”Yesterday was rainy”は気持ち悪いね、間違いだね 」と決めつけてしまった。自分が知らない表現は間違いと即決してしまった。プロ講師としてはあり得ない事でした。

 

数学で言えば、「別解」で解いた答案を❌にしてしまうような愚行でしょう。

 
英語の場合は、別解として正しいのか否か、判定するのが難しい場合があります。しかし、現代の辞書やインターネットではかなりのことまで調べることができます。最大限の努力を払って、調べるべきでしょう。

 

例)”Today is raining.” は間違いか否か。

ーーー間違いとは断言はできないが、複数の辞典に一切それに似た表現はない。またインターネットで調べる限り、その表現を用いる人はほとんどいない事がわかる。だから使うべきではない、と判断できます。

 

 

プロ英語講師はもちろんだが、高校生もたまには辞書をよく読んでみよう

 

最後に付け加えておきたいのは、英作文を教える者は、いつも辞書をフル活用しなくてはいけないということです。また、忙しい高校生・受験生も、たまには重要語について、辞書を精読してもらいたいと思います。
今回の場合であれば、辞書でyesterday (名詞)を調べてみれば、yesterday が主語で、wasが動詞の例文を、いくつも簡単に見つけることが出来たはずでした。例えば、

 

 

“Yesterday was my birthday.”

 

“Yesterday was Sunday.”
“Yesterday was my first wedding anniversary.”
“Yesterday was our day; Taro passed the bar examination.”

 

このくらい調べれば、” Yesterday was rainy.” は、ほぼ正しい表現だと推測出来たはずです。プロ講師の自覚がない人は、辞書を引く習慣がないのでしょうね。とても残念なことです。

 
ところで、エースクラウン英和辞典という高校初級用の辞書があります。この辞書でwant を調べると,

 

You (might) want to …
するほうがいいでしょう。

 

というのが出ています。こういう表現はご存知でしたか?実は『プログレス21』のBook 2 にも出てくる大事な表現なんですよ。(こういう表現を知らないと英会話をしているとき、相手の話が全然理解できない場合があります)。

 

 

今回はここまでとします。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
シリウス英語個別指導塾 by 東大式個別ゼミ
中高一貫校専門 大学受験英語塾 英検
相模大野・中央林間・横浜・藤沢・町田
住所:神奈川県相模原市南区東林間4丁目13-3
TEL:042-749-2404
https://todaishiki-english.com/
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2022/06/12

自由英作文(その4)求められる4つの力ー①問題文を正確に読む力

自由英作文に求められる4つの力

ーー①設問文を正確に読むーー

 

日本の大学入試の自由英作文は、きらりと光る才能を見せるような試験ではありません。むしろ、巷に転がっている、典型的だったり凡庸だったりする意見を、そのまま提示しさえすれば、それで満点が取れるはずの試験です。

 

しかし、実際高校生に教えていると、狭義の英語力というよりは、その生徒の思考力や教養力など、総合的な能力が問われる試験のように思えてきます。

 

 

たとえば、「老人の自動車免許返納制度に賛成か、反対か。立場を決め、その理由を述べなさい」という課題があったのですが、ある生徒は「老人は不注意だから免許を返納すべきだ」という立場で自由英作文を書くことになったことがあります。しかし、「不注意」という言葉の内容を具体的に説明することが全く出来ませんでした。これでは自由英作文は書けません。

 

英語の表現が浮かんでこないのではありません、日本語でも一切具体的な事例を出せなかったのです。つまり、「老人は不注意だ」という命題の具体例、たとえば、「老人はアクセルとブレーキを踏み間違える」とか「老人はブレーキを踏み遅れる」といった事例を挙げられなかったのです。

 

おそらく日頃からニュースを見たり聞いたりしないのでしょう。このような生徒の場合、自由英作文では完全にお手上げ状態になってしまうわけです。

 

 

一流大学合格のための自由英作文で求められる能力

 

英検準一級レベルあるいはGMARCHや上智大のレベルを超える自由英作文、つまり、慶應(経済・医)や早稲田(政経、法)、旧帝大や東大・一橋に合格できるような自由英作文を書けるようになるためには、何が求められているのでしょうか。

 

 

ここで私は、内容的にもしっかりと読める自由英作文を書くための能力として、

 

問題文を正確に読む力

抽象語と具体語を行き来する力

物事を抽象化したり、原因や理由を考える力

文と文との「飛躍」に気付く力、また適切に並べる力

 

 

という4つの能力を挙げてみたいと思います。

 

 

  1. 問題文を正確に読む力ーー与えられた設問に対して早合点せず、丁寧に正確にその意図を読み取る能力
  2. 抽象語と具体例ーー空虚で無内容な抽象語に逃げ込まず、有意義な抽象語(や概念)とその具体的事例を往復する能力。
  3. 抽象化ーー物事を抽象化したり、その理由や原因を考える能力
  4. 文と文との「飛躍」に気付く力ーー英語の文と文との間で、話題が予告もなしに突然「飛躍」していないか、検証して気が付く能力、さらには英語的に適切な順番で並べる力

 

 

今回は①について詳しく説明しておきたいと思います。

 

①問題文を正確に読み取る力

 

問題文を読み取る力が大事だなんて、当たり前のことじゃないかと思われるかもしれません。しかし、自由英作文においては、(実は他の教科においてもですが)、この当り前のことを実行するのが実に難しいのです。非常に多くの生徒・受験生が、問題文を読み損なってしまい、的外れな回答を書いてしまっています。

 

 

なぜそういう事態が起きるのか。おそらく、英文を書こうとすると、ある種の興奮状態に陥っているので、冷静な判断ができなくなり、勝手に「これだ!」と早合点をして、決めつけてしまうのだろうと推測しています。いくつかの事例を具体的に取り上げてみましょう。

 

 

まず、前々回のブログ(英作文の学習ルート(3)自由英作文(その3)英検と慶應(経済)の間、当塾の英作文添削事例から」について簡単に振り返ってみます。問題文は「現代社会で幸福な人生をおくるためには、どのような技術を身につけるべきか」という問でしたが、受験生は「現代社会において必要な能力は何か?」であると短絡的に理解し、誤解してしまいました。結果、「自分で考える力」(=思考力)の習得が大事だというやや的外れな回答になってしまったのである。(もちろん、自分で考える力が大事だ、という筋でそのあとを論理的に正しくつなげていけば問題ない英文を書きうるのですが、それは出来なかったのです。)

 

 

他の事例を取り上げてみましょう。

 

 

「なぜ貴方は慶應大学医学部の学生として受け入れられるべきなのか」

2022年度の慶應大学医学部の設問は「なぜ貴方は慶應大学医学部の学生として受け入れらるべきだと思うか」というものでした。ところがある受験生は、「なぜ貴方は慶應大学医学部に入学したいのか」と読み間違えてしまいました。結果、自分の優れた点をアピールする場なのに、慶應大学医学部の優れた点を書き連ねるという大失策を犯してしまったのです。

 

間抜けな話のようですが、自由英作文問題においては非常に多い典型的早合点です。自由英作文を書く際には、どんなに急いでいても深呼吸をし、問題文をしっかりと読み返し、問われていることの核心をしっかりとつかむということを肝に銘じておくべきです。

 

 

「自分が映画に出るとしたら、どういう役割をしたいか」

もう少しやや面倒な早合点の事例を、インターネットから紹介しましょう。

 

 

河合記述模試の結果が帰ってきたのですが、英語の自由英作文の採点基準がわかりません。配布資料には「簡単な英文には高得点はあげられない」と書かれていましたが、指定の字数も守りましたし、内容にも変な事は書きませんでした。しかし、部分点すらなく、自由英作文は0点でした。以下、内容です。

 

Q.もし自分が映画に出るとしたら、どういう役割をしたいか。理由ともに30文以上で述べよ

 

A.I want to

perform a main cast.

(=>play a leading role).

 

This is because

if I became

a famous person,

I would get 

a (削除big money.

 

Being rich, I could help

my parents do anything

they want to do.

 

赤字は当ブログで付け加えた添削・修正案です)

 

 

なぜこの自由英作文は0点だったのでしょうか。

 

よく問題文を丁寧に読み直してみましょう。すると、設問に対する答えとしては不適切だと分かります。

 

というのは、設問で求めているのは、映画でどのような「役割」を演じたいかだったのに、回答では「主役」を演じたいとしか書いていないからです主役だろうが脇役だろうが、もっと具体的に「どんな役」かを述べなければ設問に答えていることにならない訳です。

 

 

もう少し分かりやすく説明します。例えば、以前NHKで「正直不動産」というTV番組があったのですが、もし主役はどんな「俳優」かと問われたら、ジャニーズ出身の山下智久で、彼が俳優としてどうなのかを説明しなければなりません。しかし、この番組の主役が演じた「役割」を尋ねられるのならば、「嘘をつけなくなった不動産営業マン」と答えるでしょう。問いによって答えは大きく変わるのです。

 

 

要するに、「映画でどんな役割を演じたいのか」という設問ならば、刑事役、大泥棒、怪獣退治をする人、戦国時代の武将、恋愛する大学生をやってみたい等々と答え、さらにその理由をつけ加えなくてはなりませんでした。有名な俳優になって金儲けして云々を書いてしまっては、的外れ答案だと言うことで減点されるのも当然でしょう。(とはいえ、0点は少々厳しすぎる採点かもしれませんね)。

 

 

「諺の『郷にいれば郷に従え」について意見せよ」

 

次もインターネット上の自由英作文(添削希望者)です。設問について重大な勘違いをしています。

 

kotowaza

 

 

Q. 「『郷にいれば郷に従え』についての意見を述べよ」

 

A、I agree with the idea

( +when in Rome,

do as the Romans do”

 

Answerにも、諺を書いておくこと) .

 

Because (because の位置を変えること。注釈で説明する)

I think that

 

proverbs is

(=>are) true.

 

Proverbs

was(=>were) made

 

by old people

(=>ancient people)

 

old peopleでは「老人」になってしまう)。

 

and has

(=>have)

 

been used

 

for many years.

 

In fact, when I went

abroad,

 

I did as people did.

 

So it went well.

 

 

訳 (私は(+「郷に入れば郷に従え」という)考えに賛成だ。諺は真実だと思う(because「からだ」は削除すべし)。諺は昔の人によって作られ、長い間使われてきた(+からだ because は次の節の先頭に置くと良い)。実際、私が海外に行った時、私は人がするようにした。だからうまくいった)。 (赤字は添削の加筆または修正案)

 

 

[注]

アンダーライン部は意味が通らないので、becauseの位置を次のように変えると良い。

 

Because I think that proverb

 

is true. Proverb was made

 

by old people

 

and has been used

for many years.

 

 

=>==>

 

 

I think proverbs are true

 

because they were made

 

by ancient sages

 

and have been used

 

for many years.

 

(諺は、古代の賢人たちによって作られ、長年の間活用されてきたので真実だと思う。)

 

 

 

英文の文法的・語法的ミスは上記のように少々手直ししてみましたが、内容面では大きな勘違いが残っています。

 

というのは、そもそも諺というのは、数学の公理のような普遍的真理ではないので、いつでもどこでも成り立つような命題ではありえないからです。当然のことながら、問題を出す側も「いつでもどこでも成り立つ普遍的真理であると証明しろ」と命令したりしません。

 

ところが設問について早合点してしまい、「諺だから真理だ」と的外れな方向に議論を進めてしまいました

 

 

もう少しこの人の答案を丁寧に読んでいきましょう。まずこの諺について、「賛成だ」(I agree with the idea)とまず立場をはっきりさせました。これ自体には大きな問題ありません。(本当は、限定付きで賛成すべきでした)。しかしその理由として、諺は長年の間受け継がれてきたので、「真実だ」(true)だと論じてしまいました

 

諺について、特定の留保なしに諺の全てを真実だと述べるのは、設問者の意図を完全に読み間違えたと言って良いでしょう。

 

 

何故こんなことになったのか。

 

この回答者は、英文を書くときには「抽象→具体」の順番に並べるのだと習って知っています。だからまずは抽象的命題を立てようと焦ったのでしょう。そして「諺だから真実だ」という命題を思いついたので、全く吟味せずに、これならば抽象的な命題としてピッタリだ、と早合点してしまったのでしょう。しかし、諺を論じるのに適切な切り口ではありませんでした。

 

①「問題文を正確に読む力」をまとめます。自由英作文では設問についての早合点、早呑込みが本当に多発しています。普段以上に丁寧に設問文をよく読み返し、ズバリその核心をしっかりとつかみましょう。

 

 

 

なお諺と似たようなモノとしては、古典文学等がある。古典文学も同様に長い年月読まれ続けた作品ですが、通常、「真実」や「真理」がそこにあると評価したりはしません。むしろ、「今なお読むに値する」とか「優れた作品」だという具合に評価します。

もっとも「真実だ」と評価される、古から伝えられた文書がない訳ではありません。キリスト教やイスラム教の宗教的原理主義者が想定している「聖書」がその例です。しかし、今回はそういう類のものではありませんね。

 

 

因みに、上記の問題では、与えられた諺に対してどのように応答すればよかったのか。

 

諺というのは、ある特定の条件において役に立つ(或は、役に立たない)アドバイスなのですから、真実だと切り出すのではなく、特定の条件で有効だと述べるべきだったのです。この人の場合は、海外旅行で役に立ったと後で書いているのだから、むしろこれを最初に持ってくるべきでした。例えば、こんな具合にしてみましょう。(when 以下がある特定の条件です)。

 

I like the proverb

 

“When in Rome,

 

do as the Romans do”

 

very much

 

especially when I go

 

to foreign countries

 

whose local customs

 

are different from

 

those of Japan.

 

(私は「郷にいれば郷に従え」という諺は、日本と習慣の異なる国に行くときに大変役に立つと思います)。

 

さらに具体例としては、

 

For example, when I went

 

to Bali, a very hot country,

 

I wore long pants

 

as people there do.

 

That was why I was welcomed

 

at the temples

 

while those in short pants

 

were not.

 

などと加えられると良かったのです。

 

 

或は、逆にこう書くこともできるでしょう。

 

I do not like

 

the proverb

 

“When in Rome,

 

d

 

as the Romans do”

 

very much

 

 especially when

 

an organization

 

or a society

 

needs transformation.

 

Let us imagine newcomers

 

who do not do

 

as the local people do.

 

I wonder if

 

they might be able to

 

be catalysts for change.

 

(この諺は、組織や社会が変革を必要しているときにはあまり好きにはなれません。というのは、地元の風習に従わない新入りが社会変革の触媒の役割を担ってくれる可能性があるからです)。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
シリウス英語個別指導塾 by 東大式個別ゼミ
中高一貫校専門 大学受験英語塾 英検
相模大野・中央林間・横浜・藤沢・町田
住所:神奈川県相模原市南区東林間4丁目13-3
TEL:042-749-2404
https://todaishiki-english.com/
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2022/05/29

英作文の学習ルート(3)自由英作文(その3)英検と慶應(経済)の間、当塾の英作文添削事例から

英作文の学習ルート(3)自由英作文(その3)英検準一と慶應(経)の間にある高い壁、当塾の自由英作文の添削事例から

 

はじめに

 

前回のブログ(英作文の学習ルート(3)自由英作文(その2)ー中学教科書に学ぶ英文ライティング)は如何だったでしょうか。正直申し上げて、あまり読んでくださった方は多くはないでしょう。しかしもし読んでいただいた方がいらっしゃいましたら、もしかしたら私と同じように、大学受験生の自由英作文を添削していたりしている人かもしれないですね。そしてそういう人の間にも、「そういうこと、なかなか高校生は分かってもらえないんだよね」と相槌を打ってくださる方もいるでしょうが、ちょっとピンとこないなあという感想をお持ちの方もいるだろうと思います。

 

さて今回は、前回のテーマを継承しながら、当塾の自由英作文添削事例を提示してみることにします。つまり、日本人高校生が英語を書こうとするとき、センテンスの並べ方において、どのように並べてしまうのかを確認をしていきます。そして、センテンスとセンテンスがスムーズにつながっておらず、飛躍や脱線があるとき、どのように直していったらよいのかを考えてみたいのです。

 なお今回の記事の副題として「英検準一級と慶應大学経済学部の間にある高い壁」とつけました。というのは、今回のテーマである「英文の適切な並べ方」ですが、英検準一級の自由英作文の採点基準ではそれが強く求められていないように見えるのに対し、慶應大学経済学部の入試自由英作文の採点基準ではそれが求められていると推定できるからです

大学入試難易度的に言い換えれば、早慶の文系上位学部と上智・MARCH(英検準一級等で入試に代えられる大学群)との間には、英作文・英語ライティングの採点基準が相当異なっており、いわば一つの乗り越えがたい壁のようなものがあるという思いがあるのです。

 では、さっそく自由英作文の設問と、生徒の英文例を取り扱っていくことにします。

 

ある自由英作文とその添削例

 (設問)次のテーマで100-150語程度のエッセーを英語で書きなさい。

 

 What is the most important skill a person should learn in order to lead a happy and meaningful life in the world today? 

 

Choose one skill and give reasons to support your choice. (2019年度、明治学院大学経済学部(経営A)

 

長谷川

 高校生の英作文例

I think thinking by ourselves is the most important skill.

 

These days, many people use the Internet or SNS. Of course, they are useful tools, but there is a lot of incorrect information. If we cannot think by ourselves, we will take false messages true ones and be deceived by information on the Internet. That’s why we have to think by ourselves and tell false ones from truth.

 

 Also, we use AI more frequently today than past.  Some people think many jobs that people do now will be taken by.  AI.  In order not to be dominated by AI and coexist with it, the ability of thinking by ourselves is needed for us.  (113 words)

 

 

英検(準一級)的採点と慶應的採点

 この生徒の英文にいったい何点あげられるでしょうか。さしずめ英検(と明治学院大学)の採点方式ならば、一部の文法・語法ミスを減点するだけで100点満点で95点前後の高得点を期待できるはずです。

 

他方、慶應大学(経済学部)の採点ならば、おそらくは採点に値しない不合格答案と評価されるでしょう。あるいはせいぜい30点くらいでしょうか。

 

 

端的に言って、

(1)不適切な論理展開をしており、まともな英文とは言えない。

(2)説得力が乏しい

(3)設問に答える意欲に欠けている

 

と指摘できます。 

 

まずは、英検的採点方式から見てみましょう。下の英文テキストを見てください。

赤の箇所は修正(変更または追加)を要する減点箇所です。

青の部分は、修正した方が良いが減点まではされないと思われる箇所です。

 

 

①I think thinking by ourselves is the most important skill.

 

②These days, many people use the Internet

 or SNS(=>social media).

 

③Of course, they are useful tools(=>media)

but there is a lot of incorrect information.

 

④If we cannot think by ourselves,

we will take false messages (+as) true ones

and be deceived by (+the false) information

 on the Internet.

 

⑤That’s why we have to think by ourselves

and tell false ones from truth (+true ones).

 

⑥Also, we use AI more frequently today

than past=>before).

 

⑦Some people think many jobs that

people do=>havenow

will be taken (+away) by AI. 

 

⑧In order not to be dominated by AI

and coexist with it,

the ability of thinking by ourselves

is needed for us

(=>We need the ability of thinking by ourselves).

 

 

 慶應的添削・採点

 

 他方(私の想定する)慶應大学基準であれば、

いくつかの致命的ミスを指摘せざるを得ません。

それは文法や語法の誤りではなく、

センテンスの展開やつながりに関わる問題です。

 

少々分かりにくいので、テキストは冒頭を①

として番号をつけ、

①②③、④⑤、⑥⑦⑧と分割して説明します。

 

 

①②③

 ① I think thinking by ourselves

(=>critical thinking skills; media(information) literacy)

is the most important skill.

 

②These days, many people use the Internet

or SNS(=> social media).

 

③Of course, they are useful tools(=>media), 

but there is a lot of incorrect information.

 

 

 「今日の世界において、有意義で幸福な人生をおくるために、最も習得すべき技術は何か」という設問に対して、①ではthinking by ourselves「自分で考える技術」が大事だと、主張を最初から提示しています。これは良い書き出しです。(ただし「自分で考える技術」は適切な言葉ではない。しかしこのことについては後でとりあげる)。

 

さて、短い意見文で主張を打ち出したら、すぐその後で、主張の理由を述べなくてはなりません。ところが、背景説明から始めてしまいました。本人としては、①(主張)に対し、[②③④]という一連のセンテンスの塊で理由を提示しているつもりなのでしょう。しかし英文には、数学の計算式のように①+[②③④]といった、[ ]はありません。ですから読者は、①→②→③→④と普通に読み進めます。

 

①を読んだ読み手は「自分で考える力」がどうして重要なのかなと?と思いながら、その答えを求めて②を読み進めているはずです。ところが、主題文の話題(=「自分で考える力」は大事だ)が消えていまい、いきなり話題がインターネットに変わっているのです。③も同様にインターネットです。読み手は自分が露頭に迷ったことを知り、唖然とします。要するに、①→②③において大きな「飛躍」があるわけです。もちろん、この英文に対する評価は著しく低くなるでしょう

 

 

センテンスとセンテンスに大きな飛躍が生じてしまうのは何故か。

 

一言でいえば、理由を提示するときに、<背景説明→理由(主張)>という順番でセンテンスを並べようと執着してしまうからです。もっと言えば、背景説明さえすれば、読み手は理由をなんとなく分かってくれるだろうと甘い考えを抱いているからです

 

また、端的な理由を抽出するのが苦手だからでもあります。(端的な理由を提示できさえすれば、センテンスとセンテンスは自然な流れとしてつなげることが出来たのですが。。。)

 

内容面についてはこれまでとして、英語表現の適切性をチェックしてみます。②のSNSはほとんど和製英語ですからSocial Mediaにすると良いです。③ではインターネッをtoolsと言い換えていますが、違和感があります。media にするのはどうでしょうか。(しかし、toolsでもたぶん減点まではされない)。

 

④⑤

If we cannot think by ourselves,

we will take false messages (+as) true ones

and be deceived by (+the false) information

on the Internet.

 

⑤That’s why we have to think by ourselves

and tell false ones from truth (+true ones).

 

 

ついで④⑤に行きます。どうやら②③の背景説明(ネット世界は嘘ばっかり)から、結論(「自分で考える力」があるとネット世界の嘘を見破ることが出来る)に到達したようです。これはダメな文章の展開です。最初に主張(自分で考える力は大事な技術だ)があるのですから、それをサポートする(=理由を述べる)必要があったのに、背景説明から新たに結論を導き出しているからです。簡単にまとめると次のようになります。

 

この英文の論理展開

  主張=>[背景説明=>結論]

 

求められている論理展開

 [主張=>その理由の説明=>その背景説明]

 

 

なぜこんなことになったのか。その大きな理由の一つは、書き手は漠然と結論にたどり着いただけで、その理由を自覚的に抽出できなかったからです。つまり、「自分で考える力があれば、嘘を見破ることが出来るからだ」と自覚的に提示できなかったからです。先取りすれば⑥⑦⑧にも同じ問題が見られます。ここでも、やはり理由を明示的に述べられません。本当であれば、「自分で考える力があれば、失業やリストラされないからだ」と書くべきでしたが、その一文を書けませんでした。

 

なお問題はこれだけではありません。④と⑤の2つのセンテンスがほとんど内容で重複している点です。受験生がやりがちなミスですが、気をつけましょう。大きく減点されないでしょうが、得点にはつながりません。

 

 文法・語法面については、英文に付け加えた赤字を見てください。

 

⑥⑦⑧

Also, we use AI more frequently today

than past=>before).

 

Some people think

many jobs that people do(=>havenow

will be taken (+away) by AI. 

 

⑧In order not to be dominated by AI

and coexist with it(削除する),

 

the ability of thinking by ourselves

is needed for us

(=>We need the ability of thinking by ourselves).

 

 

⑥はAlsoから出発しましたので、「自分で考える技術」が必要である2つめの理由をここで書くべきなのですが、前回と同様に背景説明に終始しています。これも相当マズイ配列です。当然のことながら、①の英文とのつながり見えず、飛躍しています。そして⑧まで読み進めると、どうやら「自分で考える力」があると、AI化が進んでも失業しなくて済むかのように書かれています。理由としてはやや曖昧な書き方です。

 

なお⑧の英文は、In order not to be dominated by AI と始まったのですから、主節の主語が人間ではないとマズイでしょう。したがって、“the ability of thinking by ourselves is needed for us” は能動態にして、“We need the ability of thinking by ourselves”とするのが良いでしょう。その他の英語表現のミスは、赤字で説明しておきましたので省略します。 

 

さて元の英文ですが、どうしたらもっと適切な英文になるでしょうか。ポイントとなるのは、次の事項です。

 

 

☆センテンスとセンテンスの飛躍をなくすこと。

☆主張のすぐ後に理由を明示的に書くこと。

☆背景事情は後から追加すること

 

 

修正案

 (主張)自分で考える力が大事だ

→(理由その1)自分で考える力があれば、嘘情報に騙されなくなるからだ

→(背景説明)ネット世界やSNSには嘘情報がはびこっている。

 

 →(理由その2)自分で考える力があれば、失業しなくなるからだ。

→(背景説明)AIの支配する時代では多くの人が失業してしまう

 

修正英文例

I think thinking by ourselves is the most important

skill in the world today. 

 

First, the ability enables you to see

through lies and fakes. In fact, there are a lot of

fake news and malicious websites on the Internet. 

 

 Second, if you can think by yourself,

you will not lose your job even when computers

and AI take many people’s jobs away.

 

Thinking by ourselves is the very best skill

every one of us should learn, indeed.

 

 

以上の修正案ですが、英文としては、オリジナルよりもかなり読みやすくなっています。しかし残念ながら、まだまだ問題点があるのです。

 

 

まず自分で考える力」”thinking by ourselves”という概念が、抽象的無内容な言葉だからです。小学生の躾にはよく使われる言葉なのかもしれませんが、どんな能力なのか具体的なイメージを思い浮かべるのはほとんど不可能です。ましてやフェイクニュースやら詐欺商法を撃退したり、失業を免れる力があるのだと言われても、困惑してしまいますね。

 

 

要するに、もう少し具体的な意味を持ち得る、有意義な抽象概念を提起すべきだったのです。たとえば、ネット情報に適切に対処できる能力であれば、critical thinking skills (批判的思考能力)やmedia literacy;information literacy(メディア・リテラシー、情報リテラシー)が良さそうです。こういう抽象概念であれば、これに対応する具体例をたくさん挙げることも出来たはずでした。(ただし、これでは失業に対処できる能力ではありません)

 

 

 問題はさらにもう一つあります。最初の設問をよく読んで下さい。「今日の世界で幸福で有意義な人生を送るために必要な技能」を書かなくてはいけないのです。元の英文だろうと修正案だろうと、幸福で有意義な人生のために必要な能力かと言えば、ちょっとばかりズレていますね。少なくともこの英文には、人生について言及は全くありません。つまり、設問にしっかりと答える文章になっていないのです。これは致命的なミスだといえます。

 

 

主な問題点を再度述べておけば、次のようになります。
設問に適切に応えていない。(①と全体)

センテンスとセンテンスの間の飛躍。(①→②、①→⑥)

文頭の主張をサポートする構成になっていない。(全体)

主張の理由がやや曖昧で、主張の直後にない。(⑤、⑧)

センテンスとセンテンスが重複している(④と⑤)

 

 

今回は以上です。次回は自由英作文を書く際の高校生の抱える問題点についての考察を書く予定です。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
シリウス英語個別指導塾 by 東大式個別ゼミ
中高一貫校専門 大学受験英語塾 英検
相模大野・中央林間・横浜・藤沢・町田
住所:神奈川県相模原市南区東林間4丁目13-3
TEL:042-749-2404
https://todaishiki-english.com/
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2022/05/23

英作文の学習ルート(3)自由英作文(その2)ー中学教科書に学ぶ英文ライティングー

英検準一級で求められるライティング  

 

英検準一級のライティング部門は自由英作文ですが、難しい技巧は必要ありません。旧検定教科書(=2020年以前の教科書。現行教科書よりかなり易しい)の中学2年生レベルをしっかりと書けるならば、90%以上の高得点をとれるはずです。

 

なぜそんなことが可能なのか。実は英検の自由英作文(English Composition)では、いつも同じ形式の英文を書くことだけが求められるからです。まずはある命題が提示されますから、それに対して YesかNoかの立場をはっきり提示し、ついでその理由を挙げる、そしてもう少し具体的に肉付けする。そういう英文さえ書ければ良いのです。

 

たとえば、2021年度第3回の英検準一級の試験では、

 

“Should people use goods that are made from animals?”

(人間は動物から作られた製品を使うのを止めるべきか)

 

 

という命題が提示されました。これに対して受検者がYesの立場を取るならば、まずその旨を明示します。ついで設問のヒントにある“Animal rights””endangered species”([動物の権利]「絶滅危惧種」)という観点を用いて、Yesの理由を説明し、まとめます。あるいはNoの立場を取るならば、同様にまずは自分の立場を最初に明らかにし、ついで“Product quality”, “Tradition“ (「製品の質」「伝統」)といったポイントを利用して自分の意見の正当性を論じ、まとめることになります。

 

 

以上のような意見文の形式を学ぶのに、中学2年生用の旧検定教科書『New Horizon2』(2017年)は非常に有益です。写真は、この教科書の終わりの方にある”Let’s Read 3: Cooking with the Sun”の119頁です。これを詳しく解説していきましょう。

 IMG_8761 IMG_8762

中2の教科書『New Horizon2』(2017年)の解説

 

写真の英文を取り出し、最初から番号を打つと以下のようになります。

 

A solar cooker is helpful to people in developing countries.

(太陽光調理器は開発途上国の人々にとって役に立つものである)

 

Why? (なぜか)。

 

First, making a solar cooker does not cost much. ④ You can make one with only cardboard and aluminum foil.

 

Second, people in developing countries can get cleaner water by boiling it with a solar cooker. Drinking water from rivers and lakes is one of the biggest causes of disease.

 

Third, a solar cooker is safe because it does not make smoke. More than one third of the people in the world burn firewood indoors to cook. A lot of children die from its smoke.

 

 

①②でまず問題提起し(太陽光調理器は開発途上国でなぜ役立つのか)、太陽光調理器の利点として3点を挙げる形式で文を展開しています。それぞれFirst (③④)、Second(⑤⑥)、Third(⑦⑧⑨)という単語を、それぞれ文頭に置いています。

 

まずは③④のパラグラフから見てみましょう。文頭でFirst(一番目に)と記してありますが、これは第一の理由を述べることを予告します。そしてその後すぐにmaking a solar cooker does not cost much(制作費用が高くない)理由を提示しています。このとき重要なのは、Firstと書いた後で④→③の順番で並べてはいけないということです。Why(何故か?)という問いに対してFirstと書いたからには、何が何でも端的に一番目の理由を書くのが英語の約束事だからです

 

ついで⑤⑥のパラグラフを見てみます。⑤ではSecond(二番目に)と文を始め、“get cleaner water”(よりきれいな水を得る事が出来る)と、「なぜ?」の理由が端的に示されます。そして、その後の”by boiling it with a solar cooker”を読むと、「あ、そうか、太陽光調理器で生水を煮沸消毒できるからなんだね」と理解できます。さらに⑥では、開発途上国の飲料水事情にはかなり多くの悩みがあること、つまり上水道が整備されておらず、水質汚染のために病気になることが多いらしいこと、したがって「きれいな水」を入手する手段が痛切に求められているのだという背景が説明されています。

 

日本人高校生に立ち塞がる英語ライティングの壁

 

以下、同じように説明を続ける事が出来るわけです。ところで私の説明について、どのような感想を持ちますでしょうか。おそらく多くの方は、英文はとてもシンプルなのに、日本語の説明がぐちゃぐちゃして、ちょっと読むのが面倒くさいな~と思われたのではないでしょうか(笑)。しかしそれには実は理由があります。こういうシンプルな英文ではありますが、大半の日本人高校生にとって、このような英文を書くことは非常に困難だからです。難しいのは一つひとつ英語の表現を文法的・語法的に正確にすることより、英文を正しい順番で並べることなのです。もう少し説明しましょう。

 

 

 

ここで日本人の高校生に、「太陽熱調理器の有用性の理由」を説明する英文を書いてくださいという課題を出したとします。私たちの経験から多くの高校生は、以下のように発想します。

 

開発途上国というのは、日本とは異なって上水道が整備されていないらしい。井戸水とか場合によっては雨水や川の水を使うらしい。だから水が汚いので、赤ちゃんとかが毎年沢山死んだり、病気になる人が多いらしい。しかし、そういった水も、煮沸消毒すればきれいな飲水になるらしい。だから、太陽光調理器があれば、電気やガスがない場所であっても、汚い川の水をきれいに出来るので、とても便利なのだ。

 

大筋として正しい議論ですね。上記の議論の流れは次のようになります。

 

開発途上国の水事情(A)→水の煮沸消毒の必要性(B)→太陽光調理器の利点(C)

 

多くの日本人高校生は、(A)→(B)→(C)という思考の順番をそのまま英文に反映させようとします。(しかし、これでは絶対に論理的で筋の通った文にはなりません。

 

 

 

試しに上記の思考の順番で英文を書いてみましょう。(多くの高校生がたどるよくない英文例です。)

 

A solar cooker is helpful to people in developing countries.

(太陽光調理器は開発途上国の人々にとって役に立つものである)

Why? (なぜか)。

 

First, I hear that many  people in developing countries have to drink water from lakes and rivers. It  is so  dirty that many babies die and many people get sick every year . That is why boiling water is very important.

(高校生が書きがちな英文例。)

 

 

この英文では、「開発途上国で太陽光調理器が役立つのは何故か?」の理由を述べる時に、「最初の理由は」という意味で First と始めています。ここまではOKです。問題は、その直後に(A)である「開発途上国の水事情が良くない」と書いてしまっています。これでは、文と文との間に決定的な脱線と飛躍が起きてしまいます。つまり、「太陽光調理器の利点をこれから語りますよ、第一の理由は○○○」と語り出したにもかかわらず、太陽光調理器の利点ではなくて開発途上国の諸事情=背景を語ってしまうことになるからです。

 

 

 First(第一に)とか、because (○○○だから)と書き始めたら、何が何でもまずは理由を書かなければらないのです。この場合では、太陽光調理器の利点を語らなければならないのです。

 

 

『New Horiozn2』に戻れば、Firstと書き始めたら④→③と書いてはいけない。つまり、「(④)太陽光調理器はダンボール紙とアルミホイルで作れます。(③)だから費用があまりかかりません」という順番で英文をかいてはいけないのです。同様に、⑥→⑤と書いてもいけない。つまり、「(⑥)途上国の病気の原因は、川や湖の水を飲むことから生じている。(⑤)だから、そういう生水を太陽光調理器を用いて煮沸消毒し、きれいな水を飲めるようにすることは、とても大事なことなのだ」としてもいけません。

 

 

 

具体的にはどういう風に書けばよいのか。たとえ、(途上国の水事情)(A)→(煮沸消毒の必要性)(B)→(電気ガスなしに加熱できる太陽光調理器)(C)という順番で思考したとしても、それを英文で書いて表現するときには、(A)→(B)→(C)を、(C)→(B)→(A)と並び替えなければなりません。それは(C)こそが理由の部分であり、また太陽光調理器の話題を継承しているからです。

 

 

とはいっても、多くの高校生は、日本語に典型的な議論の進め方(A→B→C)から自由になるのはかなり困難です。ほとんどの場合、どうしても背景事情から説明したくなり、結果的に文章が飛躍してしまうのです。そして、becauseのような言葉の意味だとか、文と文との間に自然な流れといったことを意識化するのが苦手です。以上のような問題点を克服するためにも、是非とも中学2年生の英語の教科書をよく味わって、読み直してもらいたいのです。なお、このテーマ(日本語的な議論のススメ方から自由になる)については、添削事例を通じてさらに紹介・説明していく予定があります。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
シリウス英語個別指導塾 by 東大式個別ゼミ
中高一貫校専門 大学受験英語塾 英検
相模大野・中央林間・横浜・藤沢・町田
住所:神奈川県相模原市南区東林間4丁目13-3
TEL:042-749-2404
https://todaishiki-english.com/
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
お問い合わせ