最近、世間を大いに賑わせているお手軽な対話型AIですが、日本人の英語学習や指導、とりわけ英作文(英文ライティング)に有効に活用出来るでしょうか?英語学習者であり、英語講師である私には大いに気になるところです。皆さんも、とても興味がありますよね。
私も早速使ってみました、と言いたいところなのですが、2023年4月3日現在、すっかり例の対話型AI”ChatGPT”については出遅れてしまいました。今さら試すのは、ちょっと癪です。ところが2023年の3月末に、iPhone向けの対話型AIのアプリとして、“GeePeeTee”が新しく発表されたと伝えられました。そこで今度こそは乗り遅れないようにと、早速インストールし、その実力をチェックしてみた次第です。
という訳で、GeePeeTee先生の英語指導力の現状を紹介いたします。
2002年の大阪大学の入試問題では、次のような和文を英訳せよという問題が出されました。
私たちは、ことばを使っていると、ことばというものが色々な意味で「力」を持っているということを経験すると思います。人を喜ばせたり、悲しませたり、人の心を動かして何かをさせるーーことばには、このような力があります
私は下記のように英訳してみました。
Using language, you have experienced how powerful language is in various kinds of way; it is language that makes people happy or sad or moves them to do something. They are the power of language.
そして、GeePeeTeeに添削をお願いしました。すると次のようなアドバイスが返ってきたのです。
There are no objectively incorrect statements in the passage, but there are couple of suggestions that could be made for improvement.
要するに、文法的ミスはないが、さらに改善出来ますよと云うのです。
Here’s a corrected version of the passage:
“You have likely experienced the power of language in various ways. Language has the ability to make people happy or sad, and it has the power to motivate people to take action. These are just some examples of how powerful language can be.” (アンダーラインを私による)
どうでしょうか。確かに良い英文になったようです。
分詞構文などを使わず、「経験すると思います」を”have likely experienced”と修正してくれました。(ただし、GeePeeTeeに和文は読ませていません)。
また、”the power of language”という表現を用い、the powerを”the ability to V” と承けました。簡潔で良い表現です。
そして、最大の改善ポイントは、”moves them to do something”という直訳的英語を”motivate people to take action”にしたところです。
最後の締めくくりの”just some examples”は、和文にはない英文ですが、適切なセンテンスでしょう。
GeePeeTeeの英作文指導(添削)について、私はかなり気に入りました。
これも2002年の大阪大学の和文英訳問題です。(一部削除してあります)。
「写真を撮るときは、ただカメラに向かうのではなく、あなたの好きな人の顔を思い浮かべて、話しかけるような気持ちになると良い」
今回は、GeePeeTee先生に直接和文を読ませ、それを英訳してくれるように要請しました。すると、次のように即座に返答してきました。
Here’s the translated sentence in English: “When taking a photo, it’s good to not just face the camera, but also imagine the face of someone you love and speak to the camera as if you’re having a conversation with them.”
かなり素晴らしい解答のように思えます。しかし、“When taking a photo“ という英訳は間違いです。というのは、ここで「写真を撮るとき」というのは、文意からすると、自分の写真を撮ること、つまり誰かに撮ってもらったり、セルフタイマーを使って自分の姿を撮影することを意味しているからです。そのことは文脈からは明らかです。
ところが、”taking a photo” と英訳してしまうと、「私が何らかのオブジェの写真を撮ろうとするとき」という意味になってしまいます。人工知能が犯しがちな誤訳だと想像できます。
話は続きます。対話型AIですので、こちらがミスを指摘すると、GeePeeTeeは修正に応じたり、謝罪してくれるのです。
I apologize for my mistake. Thank you for bringing it to my attention
と謝罪の返答がありました。さらにこちらが説明すると、
ありがとうございます。その場合、 正しい英訳は、「When taking a selfie」です。おっしゃるとおり、「写真を撮るときは」は自分の顔写真を撮るという意味合いがあります。
と返答してきました。
煩雑になるので、それ以上の修正は求めませんでした。しかし、「写真を撮る」が何故この場合には自分の顔写真を撮るという意味になるのか、そこまではGeePeeTeeは分からなかったようです。
また、自分の顔写真を撮るのだとしても、「taking a selfie」はちょっと不適切でしょう。これだと、2010年代以降ののスマホによる「自撮り」写真になってしまいますから。この和文はおそらくは第三者に撮影してもらう時を想定しているはずです。やはり”taking”(撮る) ではなく、”taken”(撮られる)を使い、”When you have your picture taken” としてもらいたかったところです。
いかがでしょうか。完璧とは言えないにせよ、Gee Pee Teeには相当の英語力が備わっていることが分かりますね。ある程度以上、たとえば英検準一級以上の英語力のある高校生でしたら、英作文の勉強の相棒にふさわしいようにさえ思えます。いや、それ以上に、英語の先生にとって、頼りになる相談相手と言って過言ではないでしょう。ただし、やはり普通の日本の中高生には、まだ使いこなせないかな。
世間では、対話型人工AIがあれば、英語の先生は不要だという意見まで出ているようですが、それは過大評価でしょうね。
今回は、取り急ぎ上記の報告まで。
(2023年4月5日修正)
春がやってきました。その度に英語学習者に告知したいことがあります。それは、一番使い勝手の良い英語の辞典を、最もリーズナブルな価格で入手する時が来ましたよと言うお知らせです。
英語学習者、あるいは英語を日頃使っている人の大半が、最も使いやすいと思っている辞書は何でしょうか。すでに答えは出ています。
紙の辞典や、いわゆる電子辞書ではありません。ズバリ、iPhone用のアプリで、物書堂から出ている英語辞典と広く合意ができています。
そして、物書堂のセール価格は、毎年4月に実施されるようです。iPhoneを持っている人ならば、ぜひともこの機会に購入しましょう。(追加のお知らせ。2023年の春の「物書堂 新学期・新生活応援セール」は4月3日(月)から4月24日(月)(←クリックしてください) となりました)。
ほとんどの英語学習者の場合、物書堂のアプリの中でまずは一番リーズナブルな価格の『ウィズダム英和・和英辞典』から始めると良いでしょう。(2023年3月20日記す)
中高一貫校の中学生のお子さんが、学校の英語の授業についていけなくなりそうな時、あるいは、すでに授業が分からなくなってしまった場合、どのような手を打てば良いでしょうか。
現実的に考えると、家庭教師または個別指導塾に通わせるしか選択肢がありません。
とはいえ、どの家庭教師・個別指導塾でも良いという訳ではありません。いくつかの条件を挙げてみましょう。
落ちこぼれでしまった生徒を救済するために、絶対に欠かせないのは、家庭教師であれ個別指導であれ、週2回以上の授業を受けることです。たとえどのような事情かあるとしても、絶対に守ってください。
◉塾関係者や語学教育関係者の共通の経験からすると、英語は週一回の授業では成果がほとんど上がらないからです。
◉ある程度の学習密度がないと、前回習ったことをすっかり全部忘れてしまうので、何もかも最初からやり直さなくてはならないからです。これでは英語力を積み上げる事が出来ません。
ちなみにロンブ・ カトー著 米原万里訳『 わたしの外国語学習法 』(ちくま学芸文庫)によると、外国語を学習するならば、週に最低10−12時間必要だという説が提示されています。
◉週一回だけの授業では、大半の学習者が挫折してしまうからです。
私自身、大学生時代にドイツ語等いくつかの外国語(第三外国語)に挑戦しましたが、週一回の授業しかない場合は、毎回の如く挫折してきました。今考えると、週一回しか授業がない場合、挫折してしまうのは、やむを得ないことなのでした。
◉落ちこぼれ君は学校の英語の授業がちんぷんかんぷん状態なので、塾や家庭教師の授業だけが英語の勉強時間となっているからです。
学校に追いついていれば、塾の授業と学校の授業がかみ合い、週一回でも成果が上がります。しかし、落ちこぼれ君の場合は、週2回以上通塾しましょう。
週2回を勧めると、やはり週一回で良いと希望される方が非常にたくさんいらっしゃいます。予算が足りないか、クラブ等で忙しいからといった理由があるようです。その場合にはどうしたら良いのか。いくつかのヒントを出しておきます。
◉期間限定で週二回の通塾をしましょう。
たとえば、4〜6か月限定で週二回の通塾はどうでしょうか。その後は家庭教師や塾を止めれば良いのです。ただし、予め家庭教師や塾の先生に、その旨、申し出ておくこと。
当塾でも、お医者さんの家庭のご兄弟が、8か月間限定の集中授業を受講されました。お兄さんは、その後、首都圏の国立大学医学部に現役進学されたそうです。
◉一回の授業時間を少し短くしましょう。
例えば、80分×2 → 60分×2 はどうでしょうか。
1時間あたりの料金は、多少割高になることが多いでしょうが、授業回数だけは2回以上を確保してください。
◉高校生になるまで待つ。
実際、高校生になってから、集中して勉強すれば、一気に遅れを取り戻すことは、不可能ではありません。高校生になると、少し大人になってきますから、自覚をもって勉強に取り組むことができます。また、大学受験が目の前に迫っていますから、やらなくては不味いと理解できるからです。そういう訳で、高校生で始めれば、成果が上がりやすくなります。つまり、コスパが良くなるのです。(ただし、いつまで経っても、やる気の出ない高校生も沢山います、念のため)。
◉ 学生講師や素人講師などに教えてもらう。
当塾としては、あまりお勧めしたくはないのですが、料金的に安くなるのであれば、そういう手もアリかとは思います。ただし、お子さんと一緒に遊んでしまう先生だけは、ご注意ください。
◉クラブ等で忙しいのであれば、オンライン授業(スカイプ授業)と対面授業を組み合わせましょう。
オンライン授業は通塾時間がかかりませんし、夜遅くの授業でも負担は減ります。
たとえば、
80分 ×1 対面授業
60分×1 オンライン授業
とするのはどうでしょうか。
当塾(シリウス英語個別指導塾)のようなプロの個別指導講師の経験から申し上げますと、真面目に宿題をこなしている生徒さんであれば、週二回(一回80分または60分)の授業で学校に追いつき、追い越すことが可能です。
しかし、どの生徒さんも必ずしも成績が上昇するとは保証できません。というのは、学校の英語の授業についていけなくなった生徒さんの多くは、なまけ者君だからです。
怠け者君は、ご家庭で宿題をしっかりと、毎日、やりません。完全にサボったりはしないとしても、授業前日の一夜漬けかもしれません。いわゆる「やっつけ仕事」ですね。その場合、週2回ではちょっと厳しいかもしれませんね。お金はかかってしまいますが、週3−4回くらいの授業を受けるのが良いということになります。
◉真面目な性格の生徒さん—-宿題を真面目にこなす生徒さんであれば、週2回でOKでOKでしょう。
◉毎日の宿題をサボりがちな生徒さん—-プロ家庭教師・個別指導塾講師の一対一個別指導で、週3−4回以上が必要です。
◉学生講師等の家庭教師や個別指導塾の場合—-中下位の中高一貫校で一流大学を目指していない場合は、必ずしもプロ講師(家庭教師)でなくても良いかもしれません。しかし、その場合、週4ー5回の授業を受けさせると良いでしょう。
個別指導塾の場合は、必ず1対1の個別指導で、しっかりと丁寧なレクチャーがあるところを選んでください。
個別指導塾と銘打っている塾の多くは、実は先生1人 対 生徒2~3人の指導だったりします。これでは、英文法を丁寧に体系的に説明することは出来ません。授業というのは、問題演習と答え合わせでしかなかったりする訳です。落ちこぼれ君は、これでは英語が分かるようにはなりません。
中学英文法は、易しいようでいて、実は大変難しいです。というのは、色々な単元を全部覚えていなくてはならないからです。
中学生で習う英文法には、例えば、一般動詞とbe動詞の区別、他動詞と自動詞、疑問詞、進行形、受動態、現在完了、助動詞、接続詞、前置詞などといった非常に多くの単元があります。定期試験であれば、それらを一つか二つマスターしていれば良いかもしれません。
しかし、将来一流大学に進学する中学生の場合、最終的には、全部の単元を完全理解をしていなければなりません。これが難しい。
新しい単元に取り組もうとすると、既習事項を完全に忘れていることを発見する。その繰り返しです。どうやって忘却の連続から抜け出したら良いのか。
巷の本屋さんでは、『中1ワーク』『中1ドリル』『中学英語を一つひとつ○○○』等々、沢山の問題集が売られています。どれも悪い教材ではありません。しかし、これらの問題集を、一通り完成させたとしても、中学英文法は習得できません。というのは、一度やっても、やった端から忘れてしまうのが普通だからです。
もちろん、中学英語のアプリ教材(iPad教材など)も、似たり寄ったりです。中学生は、最初に習ったことを、折り返し地点にたどり着いた時には、すっかり全部忘れてしまっているのです。
英語学習は、忘却との戦いです。忘却を克服する実績やノウハウがあるのかが問われています。
繰り返しになりますが、ポイントをまとめます。
中学生は次からつぎへとすぐに忘れてしまいます。生徒さんが、忘れても、忘れても、何度でも繰り返し学び直させること、そして、それを定着させるようなノウハウや実績があることが求められています。落ちこぼれ君を、最初の第一歩から訓練し、基礎を習得させる経験を積んだ講師(個別指導塾・家庭教師)がいるのかどうかが問われています。
オンライン授業はとても良いのですが、それでもやはり中学生には、対面授業の機会あることが望ましいですね。
対面授業が良い理由の一つは、生徒さんのテキストやノートをチェックしやすいことが挙げられます。
よろしければ、お子さんの単語本(帳)をチェックしてください。何も書き込みがない、きれいな単語本であれば、全然勉強をしていないか、あるいは、勉強法がわかっていない証拠です。きれい過ぎるノートも、感心できません。要するに、中高校生のほとんどは、ノートやテキストの使い方を知らないのです。
対面授業でないと、勉強状況や勉強法の指導を適切に出来ないのです。
(ただし、怠け者クンの場合は週3~4回の授業が必要)
★★★ ほとんど必須要件
(b)プロ講師(家庭教師・個別指導塾講師)による1対1の個別指導であること
(c)中学英文法養成のノウハウと実績があること。
★★強く望まれる
(d)対面授業があること (中学生の場合、オンラインだけでは厳しい)
以上、ぜひ参考にしてください。
後記 中高一貫校の英語落ちこぼれからの脱出のテーマについて、以下のブログを書きました。
中高一貫校の中学生、英語で落ちこぼれた時の対策(その手は悪手!)(←クリック)
英語の落ちこぼれ中高一貫校中学生のための処方箋 (←このブログ記事です)。
中高一貫校高校生の英語落ちこぼれへ組への処方箋(前編)(←クリック)
中高一貫校の英語の落ちこぼれ高校生への処方箋(後編) (←クリック)
前回(一流私立中高一貫校に合格しても伸び悩む、その原因は知的好奇心の欠如 ←クリック)の続きで、O君と魚関係の写真を掲載し、後半で一応のまとめを書き、まずは一区切りとします。お楽しみください。
この人↑は誰だかお分かりになりますか?漁師さんじゃないですよ(笑)。前回ご紹介したO君のお兄さんで、当塾の卒業生でもあります。現在北海道大学水産学部で学んでおられます。
さすが水産学部の学生!って感じですよね。
ここからはお兄ちゃんの方がとった魚達をご紹介しますね。しばしお楽しみください。
これはアカハタという魚だそうです。アカハタというのは根魚(ネザカナとかネウオなど読み方は諸説ある模様)といって、岩がたくさんあるところの下の方に生息しているらしいです。調べてみると英語ではrockfishというそうで、確かにそのまんまですね。
一番上の魚は真鯛(まだい)だそうです。ちょっと桜色っぽいので「桜鯛?」と質問すると、桜鯛というのは春、桜の咲くころにとれる真鯛のことだそうです。ただ、サクラダイという別の種類の魚がいるそうで、それはスズキ目ハタ科の魚。調べてみると、鮮やかな赤色の体に白い斑点が散っているようです。(因みに真鯛はスズキ目のタイ科。)
真鯛の隣がヒラスズキだそうです。波がたつ‘’さらし‘’というところによく生息しているそうです。
これはブリでしょうか?
これはサクラマスでしょうか?
これがカラフトマスでしょうか?
これは鮭でしょうか?大漁ですね(@_@)
≪ひとまずのまとめ≫
以前こんな記事を書きました。
将来伸びる子にするための子育てをしよう←クリック
将来グングンと柔軟に伸びる子に育てるためには、「大きな余白=見えない学力=栄養たっぷりの土壌」を育んであげることが不可欠だ、という内容です。
皆さん、我が子を少しでもよい大学に通わせたい、優秀にしたいという強い思いを抱きながら、日々子育てに奮闘されているのだと思いますが、なぜかなかなかうまくいかない、という方も多いのではないでしょうか?その原因は実は、知的好奇心が欠如している状態で、必死に成績ばかりを追い求めているからというケースが多いように感じています。小さいうちにしっかりと土壌を耕してあげ、知的好奇心を育んであげる。まず何よりもそこがスタートラインです。
このコンセプトを丸々自然体で実践なさっているご家族、それがO君ご一家なのです。何かを成さねばならない、とか、子を何者かにしなければならない、といった呪縛に全くとらわれることなく、ナチュラルに生活なさっている、私からはそんな風に見えます。
一つの模範とすべきご家族だと思いますので、是非参考になさってください。
例えば、ご兄弟二人とも、中学受験を経験されましたが、親御様が率先してリードしたわけではなく、お子さんが小5か小6の時に自分から受験したい、と言い出したので、それならばと応援しただけのようです。
世間では、眉間に皺を寄せた教育熱心なママたちが、やれ「サ〇ックスだ」「四〇大〇だ」「さらに個別だ」と小さい子どもの手を引っ張ってあちこちの塾に連れまわしている方がいらっしゃいますが、そういう世界からはおよそ無縁な世界で、世間の風潮に踊らされることなく、のんびりとマイペースで、しかも涼しい顔して受験を走り抜けたなんて、カッコイイと思いませんか?
お兄ちゃんの方は、いざ大学受験突入!という時も、高校2年生あたりから本気モードを出し、(かといってそれほどガリ勉しているようには見えませんでしたが(笑))またもや北海道大学水産学部に颯爽と合格を果たしてしまいました。
当塾に通い始めた当初は他の多くの入塾生同様、英文法の基礎からやり直しをするレベルでした。しかし、やればやるだけどんどん伸びていき、わずか2年で基礎から北海道大学合格レベルまで英語力を順調に伸ばすことができました。まさに乾いたスポンジが水を吸い込むかのごとくです。
「見えない学力」=「余白」=「よく耕された栄養たっぷりの土壌」が育まれている子は本当に順調に、やればやっただけの成果が得られます。
前回の記事と当記事に掲載した魚についていろいろと教えてくれたのが中2のO君、上の写真の弟君です。前回の記事にも書きましたが、物心ついたころには家に「図鑑」があっていつもそれを見ていたとのことです。そして「図鑑」を見れば自分が調べたいこととは別に、更に関連した内容も載っているので、どんどん知識が広がっていくのだ、と嬉しそうに話してくれました。
確かに、釣りを趣味とし釣りに没頭しているわけですから、魚の種類だけではなく、この季節にはどんな魚がとれるのだろうか、どんな場所に行けば釣れるのだろうか?エサは何がよいだろうか?etc…知りたいことは無限に表れますが、調べればわかる、ということが体験上わかっているので、主体的積極的にどんどん調べていくのでしょうね。そういえば、O君と話していると、「この写真はお兄ちゃんが五島列島に行った時のもの」とか「〇〇の魚はオホーツク海にたくさん生息している。」といったように、魚の説明の時に地名もよく出てきます。これ、速攻学校の地理の勉強にも役立ちます。
最初は、釣った魚の種類を知りたい、という素朴な好奇心から始まっただけなのに、それが生物の体の仕組みだけでなく、生態系だとか地理的学びへとつながっているわけです。このような生きた学びが、「知らないことを知りたい!」という内発的動機付けに突き動かされ、主体的かつ自然体でできているなんて、なんと素晴らしいことでしょうか!本当に素晴らしいです。
こういうお子さんは、何か教科の学習をしていても、自然と気づきが多くなるはずです。「これはどういうことだろうか?」「どうしてこうなるんだろうか?」この「疑問」がないと勉強は自分の肥やしにならないんです。
O君ご一家のありようは、教育学的に見て、子どもの能力を柔軟に伸ばすための沢山のポイントがあります。本当は、一つ一つ、「こういうところは、勉強面のこういうところにつながっている」といったことを細かくご説明したいところですが、多すぎて、そう簡単にはまとめられませんので、折に触れて引用させていただきたいと思います。
皆様、特にまだ未就学のお子さんをお持ちの親御様方は、とにかくお子さんと自然の中でたっぷりと遊び自然に親しむことをお勧めします。そこには、子どもの好奇心を育む栄養素があちらこちらに溢れています。
日本人(高校生)が自由英作文を書くときに、もっとも注意しなくてはならないことの一つは、一つひとつの文と文との間で、話題が唐突に「飛躍」していないかどうかである。
難しいのは、書いている本人(日本語話者)がそのことに気がつきにくいことだ。いや、むしろ、指導者に指摘されても、ミスを認めようとしない傾向にあることだ。今書いている話題に密接に関連しているのだから、断じて「飛躍」などは存在しないのだと言い張るかもしれないのである。要するに、納得できないようだ。
しかし、読み手側からすれば、やっぱり「飛躍」があって、すぐには頭に入りにくい文なのである。(もちろん読み難い英文は、東大や慶應(経済学部)などの超一流大学の入試などでは評価が低くなるはずだ)。そこで、英作文の指導者は、書き手に対して不適切であると指摘し、読み易くするように助言することが期待されているだろう。
だが、ここで大きな問題が生じている。英作文の指導者がどんなに熱を込めて生徒に説明しても、非常に多くの場合、生徒たちはそれを理解しようとしない。「飛躍」などは存在しない、「先生の言っていることは意味不明だ」と思うのだ。そして、「書き直し」を命じられても、生徒たちは無視するか、全く同じミスで散りばめられた英文を再提出してしまう。
どのように提示したら、自由英作文の学習者たちは理解してくれるだろうか。英語の講師としては、度々考えざるを得ない実に重いテーマだ。どんなに頑張っても上智大学か早稲田の教育学部がせいぜいの生徒を、慶應の経済学部や早稲田の政経学部に合格させてしまうくらいの、非常にシンドイ仕事が求められているのである。
今回は、まずはどこが間違っているのか、つまり、どこに「飛躍」があるのかを指摘する。ついで、書き手側から予期される反応(不満、反論)を述べ、それに対して我々(英作文指導者側)はどのように反論すべきかを論じていきたい。つまり、「飛躍」と言う論点を使って、文章の読みにくさを説明してみたい。最後には、「飛躍」のない代替の文を提示してみよう。
ところで、今回最初に取り上げる自由英作文の英文だが、「生徒」の書いた英文ではない。実は、誰もがよく知っている某名門通信添削会社の模範解答(?)かもしれないのである。自由英作文の添削者や出題者すらも、まともな英文が書けないのかと思うと陰鬱な気持ちになるが、単語と単語、文と文とを正しくつなげことが、いかに難しいのかを示しているようである。
問題
「学校で学ぶ科目の中で、あなたが特に重要だと思うものを一つ挙げ、その理由を50語〜70語の英語で述べよ」
(解答例)
“I consider science a very important subject. Technology has been, and will continue to be, a source of national strength for Japan, and I think it is important for us students to study science and support our country. Moreover, science will surely play an important role in solving the problems which face the world today” .
問題は、最初の二つの文に集中している。そこで、番号等をつけて、再度文を掲載しよう。
どのような科目が重要かと問われ、まず最初に①(第一文)で、理科(science)が大事だ宣言する。これは良い出だしだ。当然、②(第二の文)では、その理由を述べることが期待される。
②の文を読むと、たしかに理由らしきものが書かれている。「理科(science)」という教科が大事なのは、「技術(technology)」が国力充実のために重要だからだというのである。ユニークさはないが分かりやすい理由であるように見える。しかし、「飛躍」の有無の観点からすると、この英文ではダメなのである。どこが間違っているのか。
①の文では「理科(science)」がテーマだったのに、②の文では、冒頭からいきなり「科学技術(technology)」という言葉が登場しているのだ。これがこの文の致命的な「飛躍」である。読み手は、話題がいきなり転換していることに戸惑うはずだ。読み難い文なのだ。
(なお余談であるが、②の文の後半の緑のアンダーラインの部分は、①とほとんど重複した内容で、不要であろう。要するに、単なる字数稼ぎでしかなく、残念な文である)。
だがこれに対して、この文の書き手は不満を持つであろう。「理科(science)」が重要な科目であると述べた上で、「科学技術(technology)」が大事だからだと返答しても、全く違和感はないはずだ」と反論するに違いない。たしかに「理科(science)」と「科学技術(technology)」は非常に密接な言葉であり、言いたいことは分からぬでもない。だが、「理科(science)」と「科学技術(technology)」は、やはり異なる別の言葉であって、言葉の言い換えだとは認め難い。
とすれば、前の文で「理科(science)」が大事だと述べているのに、次の文でいきなり最初から「科学技術(technology)」で文を始めるのは、やはり「飛躍」と言える。
では「飛躍」を解消するには、どうしたら良いのか。つまり、「科学技術(technology)」という言葉を使いたいが、飛躍しないようにするにはどうしたら良いのか。そのためには、「理科」と言う言葉から文を始め、「科学技術」という言葉が導かれるようにしたい。そして、この時に、「理科」と「科学技術」の関係を具体的に明らかにしてもらいたいのだ。
なお総合系の英語の参考書では、旧情報をまず文の前半で提示し、文の後半部で新情報を追加していきなさい、英語にはそういう情報構造のルールがありますよと説明してきた。我々もその情報系の言葉を使えば、
science ==>technology
「旧情報」 「新情報」
の順番で並べなさい、いきなり「新情報」を提示してはいけない、いうことになる。
さて、二つの単語を単に旧情報から新情報へと順番に並べれば良いというものではない。「理科」と「科学技術」が具体的にどのような関係なのかを考えなくてはならないからだ。実はこれが案外厄介なのだが、例えば次のように考えてみよう。(A)(B)(C)と考えてみた。
(A)理科の実用的応用が科学技術である。
The application of scientific knowledge for practical purposes, especially industries is called technology
(B)理科教育によって科学技術発展の社会的基盤が形成される。
Science education has made the social basis for the technological advancements of the nation.
(C)理科教育によって技術者が養成されてきた。
Science education has produced engineers.
以上のような英文を補えば、理科の話が唐突に技術の話題に「飛躍」してしまうという問題を避けることができるだろう。繰り返すが、「飛躍」を避けることにより、自然で読みやすい英文になると強調しておこう。
(A)(B)(C)からそれぞれ英文を作ってみると、次のようになった。
(A)I think of science as one of the most important of all the subjects because the application of scientific knowledge for practical purposes and various industries, what is also called technology, has made our nation modern and advanced one.
(B)I think science one of the most important subjects of all. That is because the (science )education has been the social and popular basis for the technological advancements of the nation, without which modern Japanese cannot enjoy affluent and wealthy lifestyles that we have now.
(C)I consider science to be one of the most important subjects we learn at school. That is because science education has produced, and will continue to produce a lot of skilled and competent scientists, engineers, and science teachers and professors, who have made very great contributions to the welfare and prosperity of modern Japan.
高校生の書く英文では、英文の「飛躍」は非常に多く、かつ教えようとしてもなかなか理解してくれないのが実情である。ところが、今回は大学受験生の通信添削指導会社の作る模範解答に致命的な「飛躍」を見つけてしまい、大変嘆かわしい気持ちの中におります。我が国でしっかりとした英作文指導の仕組みは出来ないものなのでしょうか。
飛躍については、もういくつかブログを書いていく予定です。